ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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此れを戦車として認可するとはね……Byみほ        戦車道を馬鹿にしてんの文科省名誉顧問は?Byエリカ      大凡、戦車とは言えませんね此れは……By小梅


Panzer156『まさかの違法超兵器!?です』

Side:しほ

 

 

遂に試合が始まった訳だけれど、ちよきち、貴女なら大学選抜チームが使ってるシークレットが何であるのかは知ってるわよね?――だから、単刀直入に聞かせて貰うわ。

大学選抜チームの2輌のシークレットは何?

 

 

 

「本当に単刀直入ねしほちゃん……って言うか、気持ちは分かるけど、力入りすぎ。私の肩を握り砕く気?」

 

「その割にはまだまだ余裕そうに見えるのは私だけかしら千代?――まぁ、私も少し力入れ過ぎたかも知れないけれどね。――で、大学選抜のシークレットは一体何なの?」

 

「1輌は戦車なんだけど、もう1輌は○○○よ……こんな物を持ち込むとは、白神名誉顧問は余程大洗を廃校にしたくて仕方がないみたいね?」

 

「そう、考えるしかないでしょうね。」

 

よもや、戦車とも呼べないような兵器を、権力の力で認可してしまうと言うのは、腹立たしい事この上ないわ。

 

 

 

「気持ちは分かるけれど、みほちゃんはこの程度で如何になる戦車乗りではないでしょう――寧ろ、○○○ですら、みほちゃんの前では塵芥でしかないと思うわ。

 みほちゃんなら、白神の用意した悪魔兵器を必ず撃破する筈よ。」

 

「ちよきち……確かに指揮官がみほならば、其れは有り得るわね。」

 

大学選抜が○○○を使用している事には多少驚いたけれど、其れでみほが崩れるなどと言う事は有り得ない――だから、全力で応援させて貰うわみほ。

隻腕の軍神の力、存分に見せてあげなさい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer156

『まさかの違法超兵器!?です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

さてと、陣形は整ったね?後は大学選抜が如何出てくるかだけど、稜線を取った此の陣形は、普通ならこちらが有利になるから、簡単に攻め込む事は出来ないんだけど……

 

 

 

「大学選抜が使ってるであろう謎の超兵器を使えば、此の陣形は簡単に崩す事が出来るって訳ね?」

 

「うん、そう言う事。

 と言うか、此の陣形は大学選抜が使ってる『ソレ』が何であるのかを明らかにする為の陣形でもあるからね。」

 

撃破するにしても、『ソレ』が何であるのか、ハッキリとは分からなくてもある程度のアタリを付けておかないと、有効な対策を取る事は難しいし、何の考えも無しに突っ込んだら、其れこそ突入部隊が全滅なんて事になりかねないからね。

だから、先ずは此の陣形で『様子見』に徹する……其れが上策だよ。

 

 

 

「でもみぽりん、相手の超兵器で稜線のひまわり中隊が全滅させられる可能性って無いの?」

 

「多少の被害は覚悟する必要はあるけど、全滅だけは有り得ないよ沙織さん。

 勿論、被害ゼロって言うのが理想だけど、相手が何を使ってるか分からない以上、多少の被害は考えておかないとだから――でも、其れを考慮した上で、ひまわり中隊に稜線を取って貰った訳だから大丈夫だよ。」

 

其れに、稜線の下の林にはケイさん率いるアサガオ中隊が待機して必要な時の援護は出来るようにしてあるから、ひまわり中隊が稜線から撤退する時も、スムーズに行く筈だからね。

後は、試合の中で起きた色々な事に対して、その都度対処と修正をして行けばOK――欲を言うのなら、大学選抜の選手の一部でも良いから、コッチの事を『格下』と思っていて欲しい所だね。

 

 

 

「え~~?格下って思われるのってなんか嫌じゃない?」

 

「いや、みほの言ってる事は正しいわ沙織。

 相手がコッチの事を格下と思ってくれれば、其処に油断が生じて、何処かで致命的な隙が出来る事になるからね。――そして、アタシ等の大隊長殿は、その隙を見逃す程愚鈍じゃない。」

 

「要するに、アタシ達の事を格下に見た連中から、隻腕の軍神様の策の生贄になるって訳だ。」

 

「そして生贄が大量に出て、此方が格下だと思っていたのは大間違いだと気付いた時には、大学選抜チームは壊滅状態になっちまってる訳でごぜーますのよ沙織さん!

 まぁ、大前提として戦車道最強姉妹と名高いみほさんとまほさんが同じチームである以上、勝率は120%!更にダージリン様をはじめとした各校の隊長が加わって勝率は260%!そして、中学時代に無敵伝説を作り上げた私達青パンターチームが再結成した事で、最終的な勝率は380%にまで上昇して居ますですのよ!!!」

 

「つぼみん、微妙に意味が分からない……」

 

「あはは……まぁ、其れだけ私達は強いって事だよ沙織さん。」

 

さてと、陣形は整ったから、後は大学選抜が来るのを待つばかりなんだけど――

 

 

 

『此方ひまわり。大学選抜チームの戦車を目視した。これより攻撃を開始する。』

 

「お姉ちゃん。

 了解しました、手筈通りにお願いします。――頼りにしてるよ、お姉ちゃん。」

 

『了解した。……しかし、『頼りにしてるよ』か……その言葉だけで、あと10年は戦えるような気がする。』

 

『姉住ちゃーん、君は一体何を言ってんだーい?』

 

 

 

会長さん、私も同じ事を思いました。……まぁ、取り敢えず問題は無さそうだから良いかな。

其れじゃあ、オープンコンバット!何を持ち出して来たかは分からないけど、其れを持って来た意味は無かったって言う事を教えてあげようかな?

戦車道に、戦車でないモノを持ち込んだ事を、後悔して貰うよ白神文科相名誉顧問殿。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

陣形を整えた大洗連合に対し、大学選抜は稜線を取ったひまわり中隊に向けて1個中隊を送り込んで来たのだが、其れはみほが予想した通りの展開でもあった。

正体不明のシークレット兵器が、超長射程攻撃を可能にしているモノだと仮定した場合、稜線に陣取った部隊と言うのは格好の得物になるので、其れを踏まえた場合、高確率で稜線は取らせに来る筈とみほは読んでいた。

そして、稜線を取れば其処に釘付けにする為の部隊が来る事まで予想済みだ。

故に、既に手は打ってある。

 

 

「全員、相手戦車の位置は記憶したか?」

 

「当然よマホーシャ!」

 

「……よし、其れでは攻撃開始!」

 

 

まほが相手戦車の位置を記憶したかと問えば、カチューシャが代表する形で其れに応え、まほは其れに頷くと攻撃開始を命令!

そして、次の瞬間――

 

 

 

――ボウゥゥゥゥン!!

 

――カッ!!

 

 

 

「んな、スモークですって!?」

 

「其れだけじゃなくて閃光弾!?ぐあぁぁ、目が!目ガァァァァ!!!」

 

 

大洗十八番の『目暗まし』が炸裂!!

其れだけならば驚く事ではないだろうが、其れをやったのがまほ率いる中隊だったと言うのが大学選抜側からしたら衝撃的だった――西住まほと言えば、大学戦車道界隈でも知らない人は居ない位の有名人で、西住流其の物と言える剛健質実にして実直な戦車道を行う選手だ。

其れが、こんな裏技を使ってくるとは思っても居なかっただろう。

 

だが、そこがみほの狙いでもあった。

まほに定石に沿った行動をさせた上で、まほらしからぬ攻撃を展開する――そうすれば、大学選抜チームを混乱に陥らせる事が出来ると、そう考えたのだ。

稜線を取った方が有利と言う定石を踏まえつつ、その上で定石外の事を行うと言う、二律背反とも言えるモノを行う事で先制パンチを喰らわせたのである。

 

 

「各員砲撃準備。……撃てぇ!!!」

 

 

まさかのまほの目暗ましに動きを止めた大学選抜チームに対しての攻撃命令をまほは下す――スモークで相手が見えないんじゃないかと思うだろうが、相手の位置は目晦まし前に確認しているので問題ない。

目晦ましを喰らってしまった相手は真面に動く事が略々不可能なので、相手戦車の大体の位置さえ覚えておけば、後は記憶頼りの攻撃でも有効な攻撃になるのだ。

 

だが、まほが攻撃命令を下した瞬間に其れは起きた。

 

 

 

――ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!

 

 

 

突如ひまわり中隊の上空から何かが飛来し、そして盛大に地面を穿った!――その威力は、爆撃の如し!

幸いにして部隊を適当にばらけさせていたため被害は無かったが、この攻撃で巻き上げられた大量の土砂が降り注ぎ、其れがひまわり中隊の動きを阻害する事になった。

 

 

 

――バガァァァァァァァン!!

 

 

 

さらに第2波が襲い掛かり、その衝撃で黒森峰から援軍で駆けつけたパンターが吹き飛ばされてしまう。

が、そのパンターの車長は遊撃隊で活躍した狭山だ。

 

 

「簡単に、やられるかっての!」

 

 

吹き飛ばされながらも、砲撃手に指示を出し、空中でチャーフィーをロックオンすると、そのまま砲撃を行って撃破!!先ずは、大洗連合が先手をとった形になった。

が、其れだけでは終わらない。

 

 

「喰らえ……隻腕の軍神直伝の雷光戦車落とし!またの名を『ダイビング戦車プレス』!!!」

 

「な、なんだってーーー!?」

 

 

狭山のパンターは、更に砲撃で強引に姿勢を変えると、そのまま自由落下してチャーフィーに戦車プレス一閃!――この捨て身の攻撃をした事で狭山のパンターは白旗判定になってしまったが、1:2交換になった事を考えれば、決して悪い結果ではなかっただろう。

 

 

勿論チャーフィー2輌が走行不能になったアナウンスが流れ、其れは大学選抜の隊長である愛里寿にも当然伝わったのだが、自軍の秘密兵器での攻撃の後にチャーフィー2輌が撃破されたと言うのは些か解せぬ事だろう。

 

 

「状況報告。」

 

『は、はひ……○○○の砲撃と言うか、爆撃で吹っ飛んだパンターが空中で姿勢立て直して攻撃を敢行して1輌を撃破し、その後特攻とも言える戦車プレスで相討ち撃破と言う事に。』

 

「……つまり、アレの攻撃で大洗の戦車は1輌しか撃破出来ず、逆に此方は2輌失ったと言う訳か。」

 

『そ、そう言う事になります……』

 

「ホントに役立たず。矢張り、頑として受け取るべきではなかったな。」

 

 

が、事の真相を聞いた愛里寿は、白神が押し付けてきた兵器を『役立たず』と斬り捨てた。

当然だ。戦車道と言う競技に於いては明らかな違法兵器である上に、戦車戦能力皆無、自力走行不能、細かい狙いは付けられないと欠点を上げればキリがない。

唯一の長所は、その圧倒的な攻撃力と射程だが、其れが仇となって味方に損害を出してはマッタク持って意味が無いのだから、愛里寿が役立たずと言うのも当然だ。

加えて、この兵器にはその圧倒的な攻撃力を断続的に使用出来る様に、使用されていた当時には存在しなかった、砲弾と薬莢の自動装填装置と薬莢の自動排出装置が搭載されている、『45年ルール』にバリバリ違反した兵器でもあるのだ……愛里寿からしたら、絶対に使いたくはなかったモノだろう。

 

 

「試合結果がどうであれ、白神特別顧問には試合後にお母様からキツイお仕置きを受けて貰う事にしようかな。」

 

 

哀れ白神、試合の結果がどうであれ、地獄を見るのは間違いないだろう。――完全に自業自得ではあるのだが、其れを踏まえた上で敢えて言おう……『合掌』と。

取り敢えず、白神は一度地獄に落ちれば良いだろう。冗談でなく本気でな。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、此の爆撃の事を聞いたみほは、大学選抜のシークレットの1つが何であるのかを考えていた。

爆撃とも言えるだけの破壊力を持った主砲と、超長距離攻撃が可能になる戦車となると種類は限られてくるが、『戦車とは言えない』と言う事を考えると、正体を突き止めるのが困難になるのだ。

 

 

「爆撃並みの破壊力ってなると此れじゃない?ブルムグマ!」

 

「ブルムベアは確かに強力な戦車だけど、此処までの破壊力はねぇだろ?

 爆撃並みの破壊力が有るってなると、シュトゥルムティーガーの方が可能性として高くねぇ?380mmは数ある戦車の中でも最強クラスだぜ。」

 

「戦車ならそうでしょうけど、戦車とは言えないって言うのを考えるとその可能性も低いんじゃないかしら?

 文科省が無理矢理戦車として認可したって言う事を考えたら、『まぁ、戦車と呼ぶ事も出来なくないかな?可成り無理があるけど』って言う感じのモノを候補に入れるべきね。」

 

「戦車と言えない戦車と言えば、オープントップの車輌が思いつきますけれど、流石に競技の世界で其れはねーですわよね?」

 

 

明光大青パンターチーム+沙織改め、『超あんこうチーム』のメンバーも、大学選抜のシークレット1が何であるかを推測するが、中々答えには辿り着く事が出来ないのだが……

 

 

「つぼみさん、今なんて言った?」

 

「へ?オープントップの車輌と言いましたが、其れがどうか致しましてですわ?」

 

「オープントップ……其れだ!」

 

 

だがみほは、つぼみが言った何気ない一言で閃いたらしい――此の何気ない一言に気付き、其処から直感で真実に気付く能力も、みほの武器の1つと言えるだろう。

と言うか、究極の直感は最高の理論すら凌駕するのだから、ある意味でみほは最強の武器を搭載しているとも言える……『隻腕の軍神』、この二つ名は伊達では無いのである。

 

 

「オープントップの車輌は、選手の安全が確保できないって言う理由から使用が全面的に認められてないけど、あの兵器なら選手が直接搭乗する事は無いし、いざと言う場合にはその場から逃げてしまえば良いから、可成り強引だけど使う事が可能だよ!」

 

「オイオイ、其れってまさかアレか?」

 

「だとしたら、トンデモないモノを持ち出して来た物ね……文科省の特別顧問のモノクルは、悪知恵が良く働くモノね。」

 

「え?え?な、何なの其れ?」

 

「落ち着いてくださいませ沙織さん。

 大学選抜が持ち出して来た超兵器……其れは、敵の城砦を突破する為に作られた、戦車戦性能皆無の破壊兵器、カール自走臼砲ですわ。」

 

「600mmのコンクリート貫通弾を搭載した、化け物だよ。」

 

「うっそ~~!?何それ、殆ど反則じゃん!やだも~~!!」

 

 

オープントップ車輌と言うつぼみの一言から、みほが辿り着いた答え――其れは、敵の城砦を突破するために使われたと言う、カール自走臼砲。

自走能力は殆どないが、履帯と転輪を搭載して、形だけならば辛うじて戦車と言う事が出来なくもない超兵器だった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

カールによる爆撃とも言える攻撃が行われた直後、実質的には大学選抜側の被害が大きかったのだが、観客席では――

 

 

「ガッデーム!!アイアムチョーノ!!

 カール自走臼砲だぁ?ふざけてんのかオラァ!!あんなもん戦車と言えねぇだろうが!あー!!ガッデメラファッキン!!!

 おい天山、テメェも何か言ってやれ!!」

 

「冗談じゃねぇぞこら、何とかしろよオイ!!」

 

「みほちゃん!行っちゃえよバカヤロー!!」

 

「戦車じゃないモノを持ち出してくるとはトンデモナイな?

 だが、だからこそ燃えてくるってもんだ!みほちゃん、大洗連合の皆、君達の戦車道LOVEでカール自走臼砲なんて撃破してやれ!イヤー!」

 

 

nOsの面々が盛大に盛り上がっていた。

総帥である黒のカリスマ以外は戦車道には明るくないが、其れでもカール自走臼砲が明らかな違法兵器である事は理解したらしく、夫々が夫々の流儀で大洗連合に檄やらエールやらを飛ばして応援している。

巨漢外国人レスラーの降る『nOs』の応援旗も其れを後押ししているだろう。

 

 

「テメェ等気合が足りねぇぞ気合が!!もっと気合い入れろや!!プロレスラーだろテメェ等!!!」

 

「「「「「「「「「「うっす!!!」」」」」」」」」」

 

 

更には秋山好子が、嘗ての番長キャラでnOsのメンバーを煽る煽る!!

天下の西住流と島田流の間に割って入った、大洗の荒熊は、引退して尚健在であるようだ。

 

 

その一方で……

 

 

「ギリギリで認可したのは、此の為だったのですな?」

 

「ふ、言いがかりは止めて頂きたい――手続きに手間取ってしまい、ギリギリになってしまったのですよ。」

 

「しかし、オープントップの車輌を戦車と言うのは……」

 

「其れは、解釈に依るでしょう?」

 

 

戦車道連盟の理事長である児玉は、カールの認可について苦言を呈するも、白神はしれっと其れを受け流す――現状では大学選抜の方に被害が出た状況ではあるが、たった1輌のビハインドなど、カールの力をもってすれば容易に覆せると、そう思っているのだろう。

だが、数分の後に、己の考えは間違いであった事を白神は知る事になるのだが、今の彼にはそんな事は全く予期出来ていなかった。

自分が強引に認可させ、強引に大学選抜チームに使わせたカールが、隻腕の軍神の逆鱗に触れる事になるとは全く想像すらしていなかった。

そして、其の逆鱗がどれ程であるのかと言う事すら、白神は想像すらしていなかったのだ――其れがどれ程であったのかを知る時には、後悔先に立たずであったと言う事は、マッタク持って想像外すらしていなかっただろう。

 

何にしても、隻腕の軍神の逆鱗に触れた白神に、軍神の鉄槌が下される、其れだけは間違いないだろう。……まぁ、精々祈るが良いだろう。

 

祈った所で、助けてくれる神がいるかどうかは分からないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、試合会場では――

 

 

「全軍撤退。タンポポと合流する!」

 

「了解よマホーシャ!」

 

 

狭山のパンターが撃破されたのを機に、まほは稜線からの撤退を決め、即座に行動を開始するが――此処で、思わぬ敵が現れた。大学選抜のチームだ。

目晦ましで足止めをやったと思ったが、先に視界が回復した連中が、退路を塞ぐ形で現れたのだ。

普通ならば、何とも厄介な事ではあるが、大洗には彼女が居る事を忘れてはならない。

 

 

「おぉっと、マホの邪魔はさせないわ!」

 

「貴女達の相手は私達です!」

 

 

まほ達の撤退を妨害しようとした大学選抜チームの前に突如として現れたのは、ケイ率いるアサガオ中隊だ。――ケイの乗るM4シャーマンと、梓の乗るパールホワイトのⅢ号を先頭にアサガオ中隊が大学選抜の行く手を阻むように現れ、ひまわり中隊の撤退を援護する。

 

 

「ケイ……!!」

 

「お久しぶりね、メグミ隊長?」

 

 

其れだけでなく、ひまわり中隊を強襲した大学選抜チームの中隊長はメグミであり、アサガオ中隊の隊長はケイ――此の2人はサンダースの先輩後輩の関係であり、ケイの才能を見出して鍛え上げたのは他でもないメグミだ。

自分の前に現れたケイに驚くメグミとは対照的に、ケイの瞳に宿っているのは純粋な闘気だ……ケイは、此の試合で嘗ての師匠を超える気満々なのである。

 

 

「其処を退きなさいケイ……貴女じゃ私には勝てない。其れは貴方が一番よく知ってるわよね?」

 

「確かに貴女が隊長だった時代は1度も勝つ事が出来なかったけど、今の私はあの頃の私とは違う――中学時代に1度みほと戦い、高校で貴女に才能を見出して貰って鍛えられ、そしてもう1度みほと戦った事で、私は強くなれた。

 今の私なら、アナタを超える事が出来るわメグミ隊長!Come on!Get Serious!!(掛かってなさい!マジでやりましょう!!)」

 

 

其れを示すように、ケイはキューポラの上に立つと、メグミに向かって左手で手招きをした後に、不敵な笑みを浮かべて手招きした左手でサムズダウン!!

あからさまな挑発だが、其れがメグミに火を点けた。

 

 

「上等よ……相手になってあげるわケイ!!」

 

「Ha-ha!This is getting interesting!!(此れは、面白くなって来たわ!!)」

 

 

ひまわり中隊の撤退を援護するアサガオ中隊と、ひまわり中隊を撃破したいメグミ率いる大学選抜中隊の激突――其れは、期せずして起きた、サンダースの師弟対決でもあった。

 

只一つだけ言えるのは、あくまでも冷静さを保ったメグミと、エリカとは違う好戦的な笑みを浮かべたケイの戦いは、絶対に只では済まないだろう。

まして、ケイ率いるアサガオ中隊の副隊長は『軍神を継ぐ者』である梓なのだ――その戦いがタダで済むはずが無いのである。

 

序盤戦最大クラスの戦いが、ここに開幕したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

 


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