ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

164 / 226
みほ、何で此れを推奨したの?Byエリカ        黒のカリスマの入場テーマ曲カッコ良くない?Byみほ      其れは否定できませんけれど……By小梅


Panzer163『推奨BGMは『クラッシュ』です!!』

Side:愛里寿

 

 

互いに残った戦車は3輌……私の方は、私の他にアズミとルミが残ってくれたのは僥倖だった。もしも中隊長が残ってくれなかったら可成り厳しかったと思うから。

でも、其れでもこの戦いには勝てる可能性を見い出す事が出来ない。

何時だったかお母様が『戦車道最強は誰かと聞かれたら、其れは西住みほであると答える以外にない』と言っていたけれど、実際に試合で対峙してみて、其れは間違いじゃなかったと確信した。

 

一緒に居るまほさんやエリカさんが強いのは言うまでも無いけど、みほさんから感じるオーラは、まほさんやエリカさんとは格が違う――隻腕の軍神の名に恥じない程に強い。

此れがお母様が認めた、最強の戦車乗りの覇気……!!

 

 

 

「愛里寿ちゃん。」

 

「……みほさん?」

 

「此れが最終決戦、出し惜しみしないで思いっきりやろう?

 勝っても負けても恨みっこなし……最高の戦車道をしよう。――持てる力の全てを出して、限界までぶっ飛ばしてこれ以上は無いって言う位の戦車道の試合をしようね。」

 

 

 

キューポラの上に立って、肩にパンツァージャケットの上着を引っ掛けたみほさん……正直ってカッコ良すぎだと思う。

ティーガーⅠに乗る姉のまほさんも、略帽外してキューポラに仁王立ちして腕組んでるとか迫力あり過ぎ……こんな事を言ったらお母様に叱られるのは確実かもだけど、この姉妹には勝てる気がしない。

 

いや、西住姉妹だけなら何とかなるかも知れないけど……

 

 

 

「狂犬に食い殺されたい奴からかかって来なさい。」

 

 

 

其処に大洗の狂犬こと逸見エリカさんが追加されたら流石にキツイ。

大洗の狂犬は作戦とかは関係なく、敵とみなした相手は速攻で噛み殺す事で有名だから、絶対に油断する事は出来ない――油断した、その瞬間に噛み殺されたとか笑えないからね。

でも、『最高の戦車道をしよう』と言われたら、其れに応えないなんて事は出来ないから……私の持てる力の全てを出して、挑ませて貰います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer163

『推奨BGMは『クラッシュ』です!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

中央広場に集結した大洗連合と大学選抜の残存車輌数は互いに3輌。

大隊長である愛里寿とと隊長であるアズミとルミが残った大学選抜に対し、大洗は大隊長であるみほと中隊長であるまほと隊長クラスではないモノの、大洗において最も攻撃的な戦い方を得意とするエリカと言う組み合わせだ。

単純に盤面だけを見るのならば、大隊長と中隊長が揃っている大学選抜が有利に見えるだろうが、実際はそうではない――確かに愛里寿は島田流始まって以来の天才と言われる程の天才的戦車乗りであり、アズミとルミも大学戦車道界隈では名が知られている実力者だが、大洗の残存戦力は、天下の西住姉妹と、中学2年から不敗記録を持つみほがその不敗記録の中で唯一勝てなかったエリカなのだ。

しかも此の3人、去年は黒森峰で一緒に戦って来た戦友同士でもあり、連携面で言うのならば毎年メンバーが変わる大学選抜チームよりも上なのである。

其れを加味した場合、果たして盤面が如何動くかは予想できず、間違いなく最終決戦となる此の中央広場での戦いは此れまで以上に盛り上がる事にあるのは間違いない。

 

 

「ディスイズファイナル、ファイナルバーロー!!

 最終決戦だオラァ!!目ん玉ひん剥いてよく見とけ、能無しの文科省特別顧問!!テメェがどんな策略ぶつけようとなぁ、みぽりん率いる大洗には通じねんだオイ!!

 みぽりんだけじゃねぇ、まほりんとエリリンも居るんだ、大洗が負ける確率なんぞ最初っから0%に決まってんだろ!

 大学選抜?ガッデム!!みぽりんと大洗連合だけ見てりゃいいんだ!アイアム、チョーノ!!」

 

 

そして盛り上がって来たとなれば、観客席の黒のカリスマが黙っている筈がない。変に発音が良いせいで、『バトル』が『バーロー』に聞こえたかもしれないが、其れは突っ込むだけ無駄である。

だって黒のカリスマだし。

nOsの面々も力の限り声援を送り、巨漢の外国人レスラーは巨大な応援旗を全力で振って応援する。因みにそんな彼の腕回りは58cm……女性モデルのウェストと同じである。普通に凄い。

 

 

「オラァ!負けんじゃねぇぞみほちゃん、まほちゃん、エリカちゃん!!

 文科省特別顧問のクソッタレな野望なんぞ噛み砕いてぶっ壊しちまえ!!オレが隊長務めてた頃よりも強い大洗を造ったみほちゃんだったら絶対出来るって、オレは信じてるぜ?

 淳五郎、テメェも声出せ声!見た目はその筋の人にしか見えねぇんだから大声の一つや二つ出せんだろ!オレに告って来た時のあのモノスゲェ気合を見せろ!!」

 

「か、母さん無茶を言わないでくれ!!」

 

 

序に好子さんも絶好調であった。今日もまた旦那は尻に敷かれているらしい……頑張ってくれ淳五郎さん。

其れは兎も角、好子の目は主婦の其れではなく、現役の戦車乗りのモノになっていた――大洗連合の奮闘が、引退した好子の中で眠っていた戦車乗りの本能を目覚めさせた……それ程までのモノだったのだ此の試合は。

 

 

「千代、此の試合……勝つのは私の娘達よ。」

 

「えぇ、それで良いわ……あの子に負けを教えてあげて?負けを知らなければ、あの子の更なる成長は望めないから。」

 

 

西住流と島田流の家元も望んでいるのは大洗連合の勝利であるようだった……が、其れを絶対に望んで居ないのは文科省の特別顧問である白神だろう。

当然だ、大洗が勝って廃校か完全撤廃になってしまったら、彼にしたら大損なのだから――何故大損なのかは、辻局長が調査中なので詳細を語る事は今現在出来ないが。

だが、白神特別顧問にはこの言葉を送ろう……『アンタ、喧嘩売る相手間違えたね。』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、最終決戦の場となった中央広場だが、3輌が真正面からぶつかり合う展開になるかと思っていたら、大学選抜側はアズミとルミが前に出て来て、愛里寿は其の後ろに。

如何やら、先ずはパーシング2輌で相手になるらしい――まぁ、戦車の性能的な事を言うのならば、パーシングは対ティーガー戦車として開発された戦車なので、大洗の残存車輌がパンター、ティーガーⅠ、ティーガーⅡと言う事を考えれば確かにパーシング2輌で撃滅する事は可能だろう。

 

だがしかし、戦車道は戦車の性能だけでは決まらないというのは、今年の大洗が示した事でもある――そして、其れはこの戦いでも同じだ。

 

 

「本日の天気は、晴れ時々模型のミサイルとなっていますのでご注意ください♪」

 

「んな!?遊具のミサイルを発射したですって!?」

 

「アトラクションとしての機能だったみたいで攻撃力は皆無だが、意表を突くには充分だったな……虎に狩られるというのはどんな気分だ虎殺し?」

 

 

みほが持ち前の戦車道の常識が通じない戦術で相手の虚を突き、まほが持ち前の剛健質実な西住流でもって虚を突かれた相手を撃破する抜群のコンビネーションが展開されていた。

みほの戦車道は西住流の対局に位置するものだが、だからこそ王道の西住流と交わった時には最大の力を発揮するのだ――現実に、技のみほと力のまほでアズミを撃破してしまったのだから。

 

此れで残存車輌は大洗が1輌有利になったが、其れでも愛里寿はみほ達の戦いを動かずに見ていた。と言うよりは観察していた。――よく観察する事で、対応しようとしているのだろう。

 

 

「(みほさんとまほさんのコンビネーションには隙がないだけじゃなく、ハンドサインすらなく視線を交わすだけで如何すれば良いかをお互いに理解してる……此のコンビネーションが相手じゃ、アズミとルミだと勝てないかな?)……アレ?」

 

 

だが、観察していたからこそ気付いた……大洗のチームに1輌足りない事に。

 

 

「高みの見物とは、大隊長様は違うわねぇ?余裕綽々ってやつ?」

 

「逸見エリカさん……!!!」

 

 

そしてその足りない1輌は、愛里寿のすぐ横に陣取っていた……乱戦のどさくさに紛れて、大学選抜の大隊長車に此処まで接近したエリカには驚く以外にないのだが、此れには愛里寿も完全に虚を突かれた形だ。

 

 

「暇そうにしてたから、少し遊び相手になってあげるわ……来いよガキンチョ。狂犬の牙に喰いちぎられる覚悟があるならね。」

 

「受けて立ちます……でも、貴女で私に勝てますか?」

 

「いや、勝てないんじゃない?良くて相討ちかしら?私はアンタとは最悪に相性悪いだろうし。

 ……だけど、狂犬は無駄死にはしないわ――勝てなくても、アンタの片腕位は喰い千切らせて貰うわよ?狂犬の牙ってのはね、何よりも強者の血を啜るのが好きなのよ。」

 

「上等、本気で行く。」

 

 

その瞬間にエリカvs愛里寿の戦車戦が勃発!

方やイギリス産の最強戦車で対するはドイツが誇る最強の重戦車だ……戦車の総合スペック的にはそれほど大きな差はないので、そう簡単に決着はつかないだろう。

 

だが――

 

 

「隊長、照準通りに弾が飛んで行きません!!」

 

「なんだと?」

 

 

此処でセンチュリオンに異常発生――主砲が狙った場所に届かなくなり、照準よりも僅かに右にズレるようなっていたのだ……試合前には何ともなかったのだが、此れこそが梓が打ち込んだ楔の正体だ。

Ⅲ号でセンチュリオンを撃破する事は出来ないが、だが楔を打ち込む事は出来る――梓のⅢ号の一撃は、センチュリオンの主砲を、目には見えないレベルで歪めていたのだ。

コンマ1ミリ単位の歪みだが、その歪みが戦車道では致命傷になりかねない―ー特に主砲が狙った位置に飛んで行かないのは最悪レベルであるとしか言いようがないだろう。

だって、此の誤差は砲撃手には相当負担が掛かるのだ――当然だ、照準よりも少しばかりズレた場所を攻撃目標にしなくてはならないのだから。

しかも、修正などすぐ出来る筈もない。と言うか、こんなアクシデントによる照準の修正などは、完全に停車した状態で動かない目標を相手にしなければ先ず無理であり、動き回って戦車戦を行っている最中に修正しろとか、殆ど無理ゲーなのだ。

更に悪い事に今の相手はエリカだ。『敵は噛み殺せ、喰い殺せ、ぶっ殺せ』上等のエリカだ……そんなエリカが、マシントラブルを起こしたセンチュリオンを黙って見過ごす筈もなく、ティーガーⅡの最強の攻撃力を持ってして襲い掛かって来る。

狙った場所に砲撃が飛んで行かないセンチュリオンで、ティーガーⅡの相手をするのは難しいだろう。

 

 

「……照準器の狙いを左に2cm修正。この距離の戦車戦なら、そうすれば当てたい場所に当てる事が出来る。」

 

「え?」

 

「良いから言う通りにして。」

 

「り、了解。」

 

 

そんな状況の中、愛里寿は砲手に照準器の狙いを修正させていた。

流石は天才と言うべきか、この戦車戦の最中に、狙いと実際の砲撃の軌道のずれがどれ程であるかを目で見て確認し、大体の当たりを付けて修正させたのだ。

此れが遠距離砲撃であったのならば、そんな簡単な物ではなかっただろうが、近距離攻撃が多くなる戦車戦であるのならば軌道の振れ幅は小さくなるので修正が出来たのだ……とは言っても愛里寿レベルの戦車乗りでなければ絶対に無理だが。

だが、その修正のおかげで、次の砲撃はティーガーⅡにヒット!実戦投入された戦車の中では抜群の装甲厚を誇るティーガーⅡ故に、撃破される事は無かったが。

 

 

「へぇ?

 砲弾があらぬ方向に飛んで行ったから、マシントラブルかと思ったけど、其れを即座に修正して来るなんて流石は島田流の天才少女だわ。

 って言うか、多分砲身が歪んでるんでしょうけど、其れ澤にやられたでしょ?」

 

「澤?」

 

「澤梓。Ⅲ号戦車の車長で、大洗の副隊長にしてみほの一番弟子。

 序に言うと、戦車道を始めたのは中学からなのに、ドイツで小学校の頃から戦車道やっててドイツのジュニアチームでトップ張ってた子とガチンコ勝負して負けない天才児。

 Ⅲ号とセンチュリオンじゃ勝負にならなかったでしょうけど、みほの一番弟子のあの子は確りと楔を打ち込んだみたいね。」

 

「あの白いⅢ号の人がみほさんの一番弟子……確かに、もしももっと性能の良い戦車に乗ってたら危なかったかもしれない。」

 

 

言葉を交わしながらも戦車戦は続く。

互いに相手の攻撃をギリギリで躱しているので決定打を打てては居ないが、徐々にだがエリカの方が有利な状況になって来た――当然だ、常に正面を向いているティーガーⅡに対し、センチュリオンは砲撃を確実に当てる為に僅かに斜めを向かなければならないのだから。

この僅かなずれは砲撃が掠った際に影響し、ホンの僅かでも側面を曝してしまうセンチュリオンの方が蓄積ダメージが如何しても大きくなってしまうのである。

此のまま続ければジリ貧になるのは愛里寿の方だが……

 

 

 

――バチィィン!!

 

 

 

「はぁ!?此処で履帯が切れたですってぇ!?」

 

 

何とここでティーガーⅡの履帯がバースト!

如何に魔改造が施されているとは言え、ティーガーⅡの足回りは最悪レベルに悪く、ギリギリ限界まで改善したとは言っても、遊園地に入ってからのエリカは敵を見つける為に園内を動き回り、見つけたら見つけたで撃破する為に追い回していたので履帯には結構な負荷が掛かっていたらしくて、それが愛里寿との戦車戦で限界を迎えてしまったのだ。

こうなっては只の的だが……

 

 

「坂口、気合で動かせ。履帯が無くても転輪が無事なら少しは動けるから、センチュリオンに向かって突撃しなさい。」

 

「あい?」

 

「犬死は性に合わないって言ってんのよ!どうせ死ぬなら刺し違えるわよ!!」

 

「あ、あいーーーー!!!」

 

「ヤレヤレ、狂犬に常識は通じないか……」

 

「何、なんか文句あるアイン?」

 

「いやマッタク……狂犬は狂犬らしく、最後まで怒り狂って果てるとしようか。」

 

 

何とそこから強引にエンジンを吹かし、センチュリオンに向かって突撃!日本が世界に誇っちゃいけない神風特攻!!

手負いの虎は恐ろしいと言うが、手負いの虎を狂犬が操ってる場合は更に恐ろしい!ドレだけ恐ろしいかと言うと、部屋の明かりを全て消してヘッドホン装着状態でバイオハザードをプレイするのと同じ位恐ろしい。実際可成り恐ろしい!!

 

 

「覚悟しなさい島田愛里寿!!その首貰ったぁ!!」

 

 

そしてまさかの突撃に、愛里寿は完全に虚を突かれ僅かに反応が遅れてしまった……其れは、1秒にも満たない時間ではあるが、その僅かな反応の遅れが戦車道では命取りになる。

此のままでは愛里寿はエリカと相討ちになるのは避けられないが――

 

 

「隊長はやらせないわ!!」

 

 

愛里寿の危機に、西住姉妹と戦車戦を行っていたルミが割って入って来た。

西住姉妹のコンビネーションに、継続の隊長時代に培ったトリックスターの能力を全開にして対抗していたが、愛里寿の危機を知るや否や、西住姉妹との戦いを放り出して駆けつけたのだ。……まぁ、ある意味では隊長を守った隊員の鑑と言えるだろう。

其の効果は抜群で、センチュリオンに特攻する筈だったティーガーⅡはパーシングによって進路を阻まれ、そのまま接触してセンチュリオンから遠ざかっていく。

 

 

「オイコラ、邪魔すんじゃないわよクソチビ!!」

 

「だから私はチビじゃない!!確かにアズミやメグミと比べたら背は低いけど、決してチビじゃないからな逸見妹!!」

 

「さんを付けろよデコスケ野郎!」

 

「何で年下をさん付けせにゃならんのだ!つーか私はデコでもない!!」

 

「眼鏡。」

 

「あ、其れは否定できないけど。」

 

「胸部装甲まな板(笑)。」

 

「よし、ぶっ殺す。」

 

 

……小学生かお前等は。

会話の内容は色々とアレだが、ティーガーⅡとパーシングは縺れながら進み、其のまま中央広場から外れ、ジェットコースターのレールの足にダイレクトアタック!

そしてその衝撃でジェットコースターのレールが壊れてティーガーⅡとパーシングに降り注ぎ、両車の装甲を粉砕!玉砕!!大喝采!!

 

 

『大洗女子学園ティーガーⅡ、大学選抜パーシング、共に行動不能。』

 

 

此処でティーガーⅡとパーシングはゲームオーバーとなり、残る車輌は大洗連合はみほのパンターとまほのティーガーⅠ、大学選抜は愛里寿のセンチュリオンだ。

残存車輌は、期せずして『西住流vs島田流』の構図となったのだった。

 

 

「時に逸見妹、落ちて来たジェットコースターのレールの一部、よくキャッチ出来たわね?」

 

「毎日西住流フィジカルトレーニングやってれば此れ位は余裕よ?……でも今回はちょっと失敗。もう少し早く反応してれば装甲抜かれなかったと思うから。」

 

「有り得ん……」

 

 

取り敢えず、西住流フィジカルトレーニングを普通に熟せるようになった暁には超人強度95万パワーを得る事が出来るらしかった。

まぁ、それはさておき西住姉妹vs愛里寿だ。

 

 

「此れも躱すか……やるね、愛里寿ちゃん?」

 

「今のは危なかった……流石ですねみほさん。そして、まほさんも。」

 

 

戦いは西住姉妹が優勢に進めていた。

2対1と言う状況もあるだろうが、柔と剛が合わさった西住姉妹のコンビネーションは正に絶対無敵と言えるものなのだから当然と言えば当然だ。

まほの力に対処しようとすればみほの技が其れを邪魔し、みほの技に対処しようとすればまほの力が其れを打ち破る――しかも、その連携を嗚咽マイクどころか、ハンドサインすら使わずに視線を交えるだけで行ってしまうのだから恐ろしい。

 

これは『幼い頃から一緒に戦車に乗っていたからだ』と言ってしまえばそうなのかも知れないが、そうだとしても姉妹で戦車道に勤しんでいる者達の中に此れだけの連携を行える者は存在しないだろう。

島田流の娘であるミカと愛里寿であっても不可能だ。

正に無敵!!

 

だが、この最強姉妹を相手にして、愛里寿の顔には笑みが浮かんでいた。

 

 

「(有り難い……偽物じゃない!!)……楽しいね、みほさん。まほさん。」

 

 

其れは歓喜の笑み。

愛里寿はその才能故に、今の今までミカよりも強い相手とは戦った事が無かったのだが、其のミカも此の試合で撃破してしまい、完全に自分よりも強い相手は失ってしまったのだが、そんな所に現れたミカをも凌駕するみほとまほ――此れに喜ばない筈がない。

 

 

「うん、楽しいね愛里寿ちゃん!だから、もっともっと楽しもう!!」

 

「戦車道は楽しまねば損だからな。」

 

「うん、もっと楽しみたい……もっと、貴女達とこの楽しい時間を共有したい!!」

 

 

砲撃が飛び交い、中央広場の施設が破壊され、一歩も譲らない戦車戦が展開され、正に会場のボルテージは最高潮!!ピンクのスーツを着た凄いリーゼントにオシャレな髭のMCが居ないのが残念でならない。彼が居たら、この興奮を余すことなく伝えてくれただろうに。

 

……失礼、少し暴走してしまった。

だが、其れ程にこの戦いは凄まじいのだ。其れこそ戦車道史に残る戦いであると言っても過言ではない――いや、西住流と島田流の直接対決である時点で戦車道史に残るのは確実と言えるが、其れを抜きにしても此の試合は凄い。

西住姉妹のコンビネーションに対処する愛里寿も流石だが、対処されたら対処されたで新たなコンビネーションを即座に組み立てる西住姉妹も大概であるいえるだろう。

柔と剛の融合……此れこそが、しほが目指していた西住流の完成形だったのかもしれない。

そして――

 

 

激しい戦車戦の末に、みほとまほ、愛里寿は互いに相手を正面から捉える展開になっていた。唯一の違いを上げるとすれば、みほとまほはみほを前にして前後に並んでいると言う事だろうか。

誰が言った訳でもないが、次が最後の攻防となるのは誰もが何となく察していた……其れを感じさせるだけの闘気が、ここには渦巻いている。

 

 

そんな中、みほは少しだけ後ろを向きまほに頷く――其れを受けたまほは、僅かに目を伏せた後に頷き、鋭い目でみほを見る。

其れを見たみほは満足そうに頷き、眼前の愛里寿を見やる。

 

 

「次が最後……行くよ、皆!!」

 

「お~~ほっほ、お任せですわみほさん!明光大一の俊足は伊達じゃありませんのよ!!」

 

「もう装填は完了してんぜ……行こうぜみほ!!」

 

「砲撃は任せなさい?センチュリオンの装甲、抜いてあげるわ。」

 

「行こう、みぽりん!!」

 

「うん、行くよ……此れが最後!『アルティメットボッコ作戦』開始!!」

 

「了解だ!!……行け、みほ!!」

 

 

次の瞬間、パンターが急発進すると同時にティーガーⅠが空砲を放ってパンターの急発進を加速させる。

 

 

「空砲!!」

 

 

空砲とは言え味方を撃つと言う過激さに驚くモノの、愛里寿はパンターを迎え撃つべく照準を定めるが、そう簡単に行くアイスブルーのパンターではない!!

 

 

「おんどりゃぁぁぁぁぁぁですわぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

此処でつぼみが戦車ドリフトを行い、センチュリオンの照準を外す。

しかしその代償は安くなく、パンターの履帯は切れ、転輪も弾け飛ぶが、其れでもパンターは止まらず遂にセンチュリオンの側面をロックオン!!

 

 

「吉良ナオミ、目標を狙い撃つ!!此れで、決めてやるわ!!」

 

「撃てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「打っ飛べぇぇぇぇーーーー!!」

 

 

――バガァァァァァァァァァン!!

 

 

パンターとセンチュリオンの砲撃が同時に行われ……

 

 

――キュポン

 

 

『パンター、センチュリオン行動不能。』

 

 

パンターとセンチュリオンは共に白旗判定に。

パンターの一撃はセンチュリオンの側面を抜いたが、センチュリオンの一撃もまたクリティカルヒットしていたと言う事なのだろう。

 

 

『目視で残存車輌を確認中。

 ……確認終了。大学選抜チーム残存車輌0!大洗女子学園残存車輌1……よって此の試合、大洗女子学園の勝利です!!』

 

 

目視での残存車輌を確認した結果は、大洗連合が1輌生存で大学選抜は全滅……つまり、殲滅戦ルールで大洗は勝ったのだ!

絶対的に不利な状況だった状況は戦車が紡いだ絆が救い、そして試合ではその絆が最大の力を発揮して、格上の大学選抜を殲滅戦ルールで倒してしまった。

 

正に完勝――そう言っても差し支えない結果を、大洗連合は残したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。