ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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さぁて、盛り上げて行こうか!Byみほ        テンションマックス!上等よ!Byエリカ      作戦はガンガン行こうぜ!ですね!By小梅


Panzer171『文化祭ウォーPart3:The Tank Battleです』

Side:みほ

 

 

文化祭でのエキシビションマッチで、20年前の最強チームと戦う事になるとは夢にも思ってなかったけど、私だって考え得る最強のチームを結成したから負ける心算は毛頭ない。

そもそもにして、ボコメイトにして島田流の後継者である愛里寿ちゃんが同じチームなら、最悪の場合でも引き分けには持って行ける……西住流と島田流は、相反する戦い方の流派だけど、其れだけに同じチームになってギアが噛み合ったその時は、どんな相手が現れたとしても問答無用で鎧袖一触しちゃうだけの力を発揮するだろうからね。

 

 

 

「いや、其れは西住と島田が組んだ場合じゃなくて、貴女と愛里寿が組んだ場合でしょうに……西住流と島田流始まって以来の天才と称される貴女達が手を組んだチームとか、今の現役世代からしたら悪夢みたいなチームだわ。」

 

「悪夢……と言う事は私がジェイソンで――」

 

「私がフレディかな?」

 

「違うわよ!!

 だ~~れが、エルム街の悪夢で13日の金曜日だって言った!!それから、ジェイソンギミックのヒールレスラーに物申す!ジェイソンはチェーンソーじゃなくて鉈よ鉈!!鉈で脳天カチ割って虐殺するのがジェイソンなのよ!!」

 

 

 

……うん、エリカさんも絶好調みたいだから大丈夫だね♪

 

 

 

「アレの何処に大丈夫な要素が有るんですの?ちょっと、説明願いてーですわ。」

 

「ローズヒップ、其れは聞いちゃダメだ。」

 

「突っ込み不要だ、良いな分かったな?」

 

「釈然としねーですが、了解です事よ!!」

 

 

 

で、納得しちゃったよローズヒップさん。

でも、落ち着くなぁこの空気……この緊張の中に何とも言えない緩さがあるのが青パンターの特徴だったからね――思えばあんこうチームも大体こんな感じなんだよね……青パンターチームの特徴なのかも。

兎に角、相手は現役を引退したとは言え、20年前の戦車道の世界で名前を挙げた伝説の戦車乗りだけど、恐れずガンガン行こうぜ!だね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer171

『文化祭ウォーPart3:The Tank Battleです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

試合開始の火蓋が切って落とされた大洗女子学園の文化祭での戦車道エキシビションマッチ――文化祭での出し物的なショーではなく、本気の戦車道バトルと言う事で、正門前に設置されたパブリックビューイングは既に超満員札止め状態だ。

 

 

「アイム、チョーノ!!

 フレー!フレー!みぽりん!!ガッデーム!みぽりんだけ見てりゃいいんだオラァ!!」

 

 

そうなれば、黒のカリスマが黙っている筈もなく、渾身の応援でみほ率いる現役チームにエールを飛ばす……もちろんレジェンドチームの事も応援しているが、黒のカリスマの本命は現役チーム。

若い力が勝ってこそ、戦車道の発展に繋がると考えているのだろう……その考えは間違いではないが、他の観客に威圧感を与えないように。

いや、大洗の人達は此れ位では怯まないだろうけど、耐性の無い他校の生徒とか、町外の人達とかビビるかも知れないので。

 

 

兎に角、先ずは両リームの陣形を見てみよう。

みほ率いる現役チームは梓を先頭に、その後ろに愛里寿、殿にみほを据え、2両目のセンチュリオンの両翼をエリカと小梅が護衛となった十字の陣形に対し、しほ率いるレジェンドチームは、しほのティーガーⅠを中心に他の4輌が両翼を展開する一文字の陣形になっていた。

十字の陣形はどの方向からの攻撃にも対応出来る陣形であり、突破力は低いが攻守のバランスのいい陣形で一方の一文字の陣形は多方向からの攻撃には対応しずらいモノの、横一直線に並んでいる事から正面突破の能力が高い攻撃型の陣形だ……先ずは、戦車隊の陣形でみほとしほの差が如実に出たと言えるだろう。

 

正攻法、裏技、搦め手何でもござれのみほに対して、しほは西住流ではないにしろあくまでも『攻め』の戦車道で戦うと言う事なのだろう。

 

 

「しかしまぁ、何だなしほ?

 オレ等は全員みほちゃんの戦いを実際にこの目で見てるんだが、みほちゃんはオレ達の戦いって見た事ねぇ訳だから、普通に考えっと情報アドの有るオレ等の方が有利な筈なんだが……みほちゃん相手だと、そうは行かねぇよな?」

 

「そうね、貴女の言う通りよ好子。

 事前の情報の有無はみほが相手の場合には残念ながらアドバンテージにはなり得ない……あの子の戦い方には、其れこそ『お前本当に流派の娘か?』と思う位に一貫性が無いのだから。

 いやぁ、此れはオフレコで頼みたいのだけど、車長専任免許を取った後で、みほがありとあらゆる戦術で西住流の門下生を悉く撃破して行った光景はある意味で爽快だったわ。」

 

「みほちゃんって、昔からやんちゃな所があったけれど、左腕を失ってからは其れに拍車がかかったかも知れないわね……ホント凄い子ね。

 そんなみほちゃんが、娘の愛里寿と同じチームを組んだと言う事は……しほちゃん、答えをお願い。」

 

「みほチームの戦車力は……53億ね。」

 

 

……何その絶望的な戦車力。

いや、しほはみほと愛里寿が同じチームに居る事で生まれる天才同士の化学反応がドレ位であるのかを言いたいのだろう……天才同士が組むと、逆にいい結果が出ないとも言われるが、其れは同じタイプの天才が組んでしまった場合だ。

だが、みほが感性の天才であるのなら、愛里寿は理性の天才と、同じ天才でも全く逆のタイプであるが故に、其れが融合して発生する化学反応は未知数なのだ。

 

そして、その化学反応は早速その力を発揮してくれたようだ。

 

 

「奥様、前方にティーガーⅡ!!」

 

「何ですって菊代!?」

 

「更に左方にⅣ号です!」

 

「華絵、其れは間違い無いのね?」

 

 

レジェンドチームの虚を突くように、正面にはティーガーⅡ、そして左方にはⅣ号の姿が……十字の陣形を展開したみほだったが、先手必勝を狙って、狂犬と懐刀を向かわせたのだろう。

正に奇襲だ。

 

 

「待ち伏せや搦め手を考えていたら、まさかの奇襲とは……やってくれるわねみほ。

 好子はⅣ号を、千代はティーガーⅡに攻撃!!」

 

「「了解!!」」

 

 

この奇襲に少しばかり焦ったモノの、其処は流石の西住流家元、すぐさま思考を切り替えて、突如現れたティーガーⅡとⅣ号への攻撃を下し、其れを聞いた千代と好子は即座に攻撃!!

その砲撃は寸分違わず目標に向かい……

 

 

 

――バガァァァァァァァァァン!!

 

 

 

着弾と共に目標を粉々に打ち砕いた。そりゃもう、清々しい位に。言ってしまえば木っ端微塵。ぶっちゃけるなら粉砕!玉砕!!大喝采!!!

 

 

「「「「「……はい?」」」」」

 

 

この光景にはレジェンドチームの全員の思考が一瞬停止した。

それはそうだろう、如何に主砲が的確に命中したと言っても、戦車が一撃で粉々になる事など有り得ないのだから……だが、だからこそ気付く事が出来た。

 

 

「此れは、精巧な偽物!!」

 

 

其れが偽物だったと言う事に。

 

 

「流石はお母さん、御名答!!これぞ、アンチョビさんが考案した作戦を更に進化させた究極形……マカロニ作戦ドライ!!」

 

「みほ!!」

 

 

其れと同時に、茂みからみほが飛び出し、本当の奇襲をかける。

そう、ティーガーⅡとⅣ号は偽物だったのだ……本物そっくりに作っただけの張りぼて――アンチョビが考えたマカロニ作戦をみほなりに昇華させて、簡単に組み立てられるようにパーツ分けした部材を組み立てる事でよりリアルなデコイを使った作戦だったのだ。

つまり、此れは二重の奇襲……十字の陣形で進行しながら、適当な場所にデコイを設置して、そのデコイで奇襲を錯覚させ、そのデコイを撃破させたところで間髪入れずに本命の奇襲をかけると言う、並の戦車乗りでは考えもつかない方法で攻撃して来たのだみほは。

 

 

「えへへ~~、驚いてくれたお母さん?」

 

「えぇ、驚いたわみほ……驚きすぎて心臓が口から飛び出してしまうかと思ったわ。――でも、此れはまだ序の口でしょう?

 遠慮はいらないわみほ。貴女の持てる力の全てを、隻腕の軍神の力を、私に味わわせてくれないかしら……此の一手には驚かされたけど、此の程度では私の腹は膨れないわ。

 もっともっと、貴女の戦車道を御馳走してくれるかしら。」

 

「うん、言われずともその心算だよ。」

 

 

聞きようによっては、何とも物騒な母と娘の会話だが、戦車道の母と娘なら此れ位普通である。普通なのである。異論はあっても全力で無視だ。

と言うか、戦うとなった以上母と娘などはマッタク持って関係ないのだ。

 

 

「……Glaubst du, du kannst mich gewinnen?(……勝てると思うの、私に?)」

 

「Ich glaube nicht ich gewinne!(思ってるんじゃなく、勝つんだよ。)」

 

「Das kleine Mädchen wird mir sagen……(小娘が……言ってくれるわ。)」

 

「Bist du bereit?Ich bin fertig ... lass uns gehen!!(覚悟は出来てる?私は出来てる……行くよ!)」

 

 

で、ドイツ語で言葉を交わした後で速攻オープンコンバット!!何故ドイツ語なのかって?其れは西住流がドイツ戦車を使う流派だからであると同時に、作者が何となく『ドイツ語ってカッコ良くね?』と思っているからである。

其れは兎も角、みほの奇襲から始まった戦車戦はとても激しい物となっていた。

 

 

「ハッ!相手の方から出て来てくれるたぁ、探す手間が省けたぜ!!喧嘩しようぜ、優花里ぃぃぃぃ!!」

 

「ひぃぃぃぃ!お母さんが、お母さんでないでありますよぉ!!」

 

「アラアラ、優花里さん、落ち着いて。」

 

「母親がいつもと違うとなれば驚くのは仕方ない……私だって、お母様が豹変したら驚くと思う。」

 

 

『喧嘩上等!』とばかりに、好子のⅣ号が愛里寿のセンチュリオンに襲い掛かったかと思えば、みほはエリカと、小梅は梓とのツーマンセルで、それぞれ、しほ&菊代タッグ、千代&華絵タッグと戦車戦を展開する乱戦状態!

其れでありながらも、互いにクリーンヒットがないだけでなく流れ弾での被弾もない、戦車戦が展開されてから、まだ誰も脱落していないのだから驚きである……此れは完全にみほの技と、しほの力が拮抗していると言う事なのだろう。

現役高校生最強と、西住流家元の実力は略互角と言うのだから、見てる側――特に戦車道の知識がある者からしたら相当の衝撃だろう。

言うなればこれは、高校レスリングの全国チャンピオンが、オリンピックの金メダリストと互角の戦いを繰り広げているのに等しいのだから。

 

そんな状況で先に動いたのはみほの方だった。

 

 

「エリカさん!!」

 

「任せなさい……いい歳して、な~にムキになってんのよおばさん!ムキになると気にしてる小じわが更に増えちゃうわよ……言うだけ無駄かも知れないけれど。

 ま、あんまり無理はしない方が良いと思うわよ?……明日、腰痛で動けなくなっても困るでしょう?」

 

 

みほはエリカを召喚すると、其処からエリカの毒舌挑発が炸裂。

流石はエリカ、毒を吐かせたら天才的と言うか、腕組んでドヤ顔で言ってるのがまた腹が立つ事この上ない……もしも相手がダージリンだったらティーカップが粉々になっていただろう。

だがしかし!!

 

 

「ほう、言ってくれんじゃねぇか小娘がよぉ?

 確かにオレたちゃ現役を引退したがなぁ、戦車乗りの魂は生きてんだ……コイツはムキになってんじゃねぇ、久々に戦車に乗って戦車乗りの血って奴が滾ってるだけよ!!

 其れになぁ、現役を引退したとは言え、マダマダテメェみたいなケツの青いガキに負けるほど衰えちゃいねぇ!」

 

 

エリカの挑発に好子がまさかのカウンター挑発!

妙齢の女性に対する禁句である『おばさん』を放ったエリカに対し、『小娘』『ケツの青いガキ』と言う挑発ワードでカウンター!現役時代はスケ番隊長であった彼女だからこその返し技と言えるだろう。

 

 

「高校生に向かって小娘ですって?まぁ、其れは兎も角高校生になってまで蒙古斑が残ってる奴なんていないわよ。そんな事も分からない?

 其れとも、そんな事も分からなくなる位にボケちゃったのかしら?……優花里も可哀想ね、まさか母親が40前で若年性認知症になっちゃっただなんて……その歳で入れる介護施設ってあったかしら?」

 

「あ?誰が若年性認知症だボケ。ケツの青いガキじゃなきゃくちばしの黄色いハナタレか?

 つかよ、ガキが粋がらねぇ方が良いぜぇ?……嘗て大洗の荒熊と言われたオレはよぉ、敵と認識した相手は徹底的にブッ飛ばさねぇと気が済まねぇもんだからよ!!」

 

「あら、気が合うわね?

 大洗の銀狼もとい、軍神の狂犬は敵と見た相手は見境なく喰い殺さないと気が済まないのよ。」

 

 

其れに押される事なくエリカが更に挑発返しをし、更に好子が煽る……荒熊と狂犬のボルテージが上がってるのは間違い無く、そうなると完全に嫌な予感しかしない。

と言うか、何かエリカの背後に銀の犬狼のオーラ、好子の背後に3m位のバケモノ熊のオーラが見えるんですが……大丈夫か此れ?

 

 

「上等だオラァ!誰に喧嘩売ったか教えたるわ!!!」

 

「えぇ、懇切丁寧に教えて貰おうじゃないの!!」

 

 

ハイ、大丈夫じゃなかった。

好子はターゲットをセンチュリオンからエリカのティーガーⅡに変更し、そのせいでセンチュリオンはフリーになるが、みほも愛里寿も其れをそのままにはしない。

 

 

「小梅さん、スイッチ!!」

 

「了解ですみほさん!」

 

「今度は私と宜しく、澤さん。」

 

「此方こそ、宜しくね愛里寿さん。」

 

 

すぐさまツーマンセルを組み直し、みほは小梅と、愛里寿は梓とのタッグとなり……

 

 

「勝負です、島田の小母様!」

 

「西住しほさん、一手お願いします。」

 

 

夫々の母親ではなく、みほチームは千代&華絵に、愛里寿チームはしほ&菊代タッグに戦車戦を仕掛けたのだ。

 

 

「な、みほちゃんが私の相手!?」

 

「まさか、そんな一手を切って来るとは……やりますね!」

 

 

此れにはしほと千代も完全に虚を突かれてしまった……其れはそうだろう、チーム構成的にみほも愛里寿も己の母親との直接対決を選択するだろうと思っていたのだから。

と言うか、試合を観戦している観客だって、西住流と島田流の親子対決になるだろうと、なる筈だと思い込んでいた――其処に、みほと愛里寿は楔を打ち込めると判断したのだ。みほは直感的に、愛里寿は理論的に。

感性の天才と理性の天才の化学反応は、二大流派の家元をも出し抜くだけのモノだったのだ。

 

だが、だからと言って簡単にやられるしほと千代ではない。

二大流派の家元と言う事だけあって、この状況にも努めて冷静に指示を出して戦車戦を展開するのは流石だろう……が、千代チームは少しずつだが、確実に被弾する数が増えて来た。

理由は簡単、みほチームと千代チームでは機動力に圧倒的な差があるからだ。

チャーチルもブラックプリンスもパンターの最高速度56kmに及ばないのは当然だが、Ⅳ号D型改(H型仕様)の最高速度38kmと比較しても大幅に劣っていると言う鈍足戦車なのだ。

その分装甲が分厚い訳だが、何度も被弾して居れば何れはその装甲も限界が来るだろう……そう、只虚を突くだけが目的ではなく、機動力の差を持ってして千代チームを先に撃破すると言う意図が、この組み合わせには隠されていたのだ。

 

 

「アラアラ、此処まで追い詰められたのってしほちゃんや好子ちゃんと戦った時以来かしら?……実際に戦ってみて、改めてみほちゃんのファンになっちゃったわ私♪」

 

「島田の小母様、其れって島田流家元として如何なんですか?」

 

「みほちゃん、島田流の人間が西住の次女のファンになってはいけないと、一体誰が決めたのかしら?」

 

「なんだか、何処かで聞いた事のあるセリフですね。」

 

「かもね。

 でもね、私は本気で貴女の事を気に入ってるのよみほちゃん……そう、貴女の戦車道が続けられるように大洗のスポンサーになろうかと思う位にはね。」

 

「はい?」

 

 

で、その戦いの中で、千代が爆弾投下!いや、其れはこのタイミングで言う事か?みほが一瞬呆気にとられたのも仕方ないだろう。

 

 

「だから、私みほちゃんの事気に入ってるし、大洗の戦車道も気に入っちゃったからスポンサーになろうかなぁって♪

 島田流がバックについてるとなれば、もしまた白神みたいな馬鹿で阿呆であんぽんたんのロクデナシなこの蟲野郎が現れても大洗に簡単に手出しは出来ないでしょうから。」

 

「其れは非常に有り難いのですが、其れって表沙汰になった絶対に戦車道雑誌にネタとして盛大に使われますよ?『衝撃!島田流家元が、西住流の次女が隊長を務める大洗を援助』ってな具合に。」

 

「あら、其れも良いわね?

 そうなったら、一緒にワイドショーにでも出てみようかしらみほちゃん?」

 

「勘弁してください……寧ろ、そう言う輩は島田の権力で押さえつけて下さいよ……」

 

「善処するわ♪」

 

 

だが、だからと言って戦闘が滞るなんて事は無く、こんな会話をしながらも確りと戦闘は継続されているのだから、この人達の並列思考能力は我々では想像もつかないレベルであるのかも知れない。

ともあれ、此のまま戦闘を続ければみほチームが押し切れるわけだが、そうは簡単に問屋が卸さないのが勝負の世界だ。

 

 

「小梅、避けなさい!!」

 

「華絵、逃げろ!!」

 

「へ?」

 

「はい?」

 

 

何と此の土壇場で、戦車戦もとい、狂犬と荒熊の喰うか喰われるかの喧嘩を繰り広げていたエリカと好子がこの戦闘区域に突貫ぶちかまして、しめし合わせたかのように、エリカのティーガーⅡは華絵のチャーチルに、好子のⅣH型は小梅のⅣ号D型改(H型仕様)に向かっているのだ。

弩派手な喧嘩の最中に、此方に来てしまったのだが勢い余ってと言う所なのだろうが、行き成りの事に小梅も華絵も一瞬反応が遅れ、回避行動が僅かに遅れてしまった。

その結果……

 

 

 

――ドガシャァァァァァァァァァン!!

 

――キュポン!!×4

 

 

 

『みほチーム、ティーガーⅡ、Ⅳ号、行動不能。しほチーム、チャーチル、Ⅳ号、行動不能。』

 

 

見事に4輌纏めて白旗判定に!

まさかの試合の初撃破が4輌同時で、其れが被弾ではなく戦車の激突によるモノだと言うのは戦車道の歴史を紐解いても早々ある事ではないと言って良いだろう……と言うか、先ず有り得ない事だ。

 

 

「島田の小母様、一言でこの状況を言ってみてください。」

 

「ブラックホールにチェーンして、私とみほちゃんだけ除外されて難を逃れたと言った所かしら……ともあれ、本番は此処からね?」

 

「ですね……お母さんの前に、隻腕の軍神の力味わってもらいますよ島田の小母様!!」

 

 

現役チームとレジェンドチームは共に一気に2輌の戦車を失ったが、共にフラッグ車は健在である以上、試合はまだ終わってはいない。否、クライマックスは此れからだと言って良いだろう。

何故なら、みほの闘気が爆発したのだから。

 

 

「我は戦車を極めし者……うぬが無力さ、其の身をもって知るが良い。」

 

「ちょ、なんかみぽりんがオカシイよ!?」

 

「あ~~……殺意の戦車道に目覚めちまったかこりゃ?」

 

「そうみたいだけど大丈夫じゃない?

 みほなら、殺意の戦車道に目覚めても其の力を完全にコントロール出来るから暴走する事だけは無いわ……寧ろ、此れだけの力を自在に使う事が出来るのは頼りになるわよ。」

 

「……滅殺!!」

 

「……此れで暴走してないの?」

 

「お~~~っほっほ、問題ねーですわ沙織さん!

 殺意の戦車道に目覚めたみほさんは、此れ位が平常運転なので暴走なんかとはマッタク持って縁がねーんですのよ!寧ろ、此れくれーの方がつえーですのよみほさんは!!」

 

「そうなの!?……ちょっと怪しいけど、中学時代からの親友が言うのなら間違いないかもね。」

 

 

少しばかりみほが戦車道の暗黒面の力を発揮したようだが、みほは其れを使いこなせているので大丈夫だろう……少なくとも、理性を完全に飛ばしてしまった『暴走エリカ』よりは安心できる筈だ。

まぁ、みほの目を見る限り理性は残っているので大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:愛里寿

 

 

逸見の妹さんが秋山好子さんとの挑発合戦の末にタイマン状態になったのを見て、咄嗟にみほさんは小梅さんと組み、私は澤さんとのタッグを組む事を決めたんだけど……澤さんは大洗の副隊長と言うだけあって凄い人だった。

私が大学選抜の隊長と言う事で、指揮権を私に全て譲ってくれたけれど、澤さんは私の指示を100%……うぅん、それ以上に熟してくれる。

だからとてもやり易い……みほさんが、彼女を副隊長にした理由が良く分かった。

 

「澤さん……先ずはパンターを撃破する。

 そしてパンターを撃破したらみほさんと合流して、3対2の状況でお母様達に挑む……きっとみほさんも、その状況を最低条件として考えている筈だから。」

 

「なら、その最低条件は満たさないと弟子失格だね……OK、しほ小母様に一発かましてやろう愛里寿さん!」

 

「うん、勿論その心算。」

 

 

「二人とも良い目をしているわね……その意気やよし、思い切りかかって来なさい!西住流に逃げると言う選択肢は存在しないから、貴女達の本気に、私も本気で応えましょう。」

 

 

 

……そう来なくては面白くない。

ならば見て貰うとしようか、島田流の跡取りにして大学選抜の隊長、そしてみほさんのボコメイトの実力と言うモノを……ボコメイトはボコメイトの為ならば無限の力を発揮出来るからね。

 

 

 

「あはは……気合が充実だね。

 其れじゃあ、愛里寿さん……元気の出るやつ一発お願い!!」

 

「敵戦車を……撃破せよ。やってやる、やってやる、や~ってやるぜ!!」

 

「了解!!」

 

 

 

私の戦車道を、味わって貰う……そして、みほさんが合流したその時に、私達の勝利は略確定する――みほさんが率いるチームは、余程の相性の悪さがない限り負けるなんて言うのは想像も出来ないからね。

さてと、学園祭の出し物でもある戦いだから、魅せる要素も大事になる……なら、其れも考慮して劇的な幕切れになるように演出する必要があるね――まぁ、その辺は私の担当領域だから上手くやらないとだね。

何にしても、本気で行くから、甘く見てると痛い目を見る、其れだけだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

 


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