ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

184 / 226
西住流の本質は真っ向勝負!Byみほ        でも、真っ向勝負と力押しは違うわByエリカ      真の真っ向勝負、見せてあげます!By小梅


Panzer183『真っ向勝負が西住流です!!』

Side:エミ

 

 

挟撃を仕掛けて来たBC自由学園に対して、大洗は偵察を出して、その上で本隊は進軍した訳だけど、最短ルートである橋を渡る所で、別動隊がBC自由の隊長を強襲して虚を突いたけど、BC自由の副隊長ズが駆けつけた事で瞬殺は免れたか。

でも、そのお陰でみほ率いる大洗の本隊は安全に橋を渡る事が出来た訳だ――BC自由の挟撃は見せ技で、その真の狙いは橋を渡ってる大洗を狙い撃ちにする事だったみたいだからね。

 

だけど、その程度の戦術がみほに通じるかってのよ――七年前のあの日……まほさんと戦った時だって、あの時木が倒れて来なかったらみほが勝ってた筈だし、何よりも今年の全国大会でみほはまほさんに勝ってる訳だしね。

歴代の西住流の中でも最強と称されるまほさんを倒したみほには、下手な小細工は通じないどころかむしろ悪手だわ。

 

でも、其れは其れとして、全面対決となった状況ではあるけど話に聞いてた大洗の戦い方とは違うわね?……大洗と言うかみほは、奇策搦め手上等な戦い方を得意としてるって事だったけど、今の所は全くそんな物は感じないわ。

それどころか、大洗はBC自由学園に対して真っ向勝負を行ってる?……其れも、一切の搦め手を使わないで――此れは、この戦い方はあらゆる策をも呑み込んで蹂躙する、力の西住流!?

 

いえ、みほだって西住の人間なんだから西住流を修めていても何らオカシクは無いけど、まさか真っ向からの戦車戦を行うとは思わなかったわ。

此れは、裏技や搦め手を警戒していたBC自由には刺さるでしょうね……裏技や搦め手への対策はしてたとしても、小細工なしの真っ向勝負への対策は出来てなかったでしょうから。

 

マッタク、本当に貴女は予想外の事をやってくれるわみほ……でも、だからこそ貴女と戦う事がワクワクして来るのよ――頑張れみほ!!

 

 

 

「オラァ!最高だぜ!!

 BC自由学園、セコイ策を考えて来たみたいだが、そんなもんが大洗に通用すると思ってんじゃねぇぞ!ガッデメファッキン!大洗だけ見てりゃ良いんだ!!」

 

「やっちまえみほちゃん!!大洗舐めんじゃねぇぞコラァ!!」

 

 

 

……其れは其れとして、この人達を何とかしてよ……大洗の応援は良いんだけど、色々と濃いと言うか、激し過ぎてちょっと怖いから……大洗の試合を見に来る人達も、ある意味で大変よねマジで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer183

『真っ向勝負が西住流です!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

フィールドは遮蔽物の一切ない草原だから、戦場がどうなってるかを把握するのは簡単だね――取り敢えずは、副隊長ズが隊長車が撃破されないように守りながら戦ってる感じだね。

でも、守りを固めた所で、私達の攻撃の手は緩まないよ――圧倒的な戦力で相手を真正面から叩き潰すのが西住流の真骨頂だし、私達を甘く見たBC自由学園にはいい薬になるかもだしね。

 

 

 

「でも、隊長は兎も角として副隊長達はソコソコ出来るんじゃないかしら?こっちの奇襲に気付いて隊長を守るために戻って来た訳だし、所謂受験組とエスカレーター組も役割分担は出来てるみたいだしね。

 堅牢なソミュアが防御を、圧倒的な火力を持つARL-44が攻撃を……オーソドックスな役割分担だけど、其れだけに信頼性が高い戦い方よね。」

 

「そうだねエリカさん……オーソドックスで正攻法だけど、だからこそ西住流はその真価を発揮するのを忘れちゃダメだよ。

 西住流の本質は、どんな相手であっても正攻法で叩きのめす事にあるからね――正攻法を正攻法で凌駕する……やられた方からしたら圧倒的な実力差を見せつけられる訳だから、悔しい事この上ないと思うな。」

 

「正攻法を前に敢えて正攻法で対応するとは……裏技搦め手で来ると思っていた相手には予想外の事でしょうね?……相手の隊長さん、予想外過ぎて思考回路ショートしたりしてませんかねぇ?」

 

 

 

幾らなんでも其れは無いと思うよ小梅さん?

確かに戦術レベルは甘かったかもしれないけど、仮にも隊長を務めてる訳だから、予想外の事が起こった程度で回線パンクしてたら使い物にならない事この上ないし……本気で使い物にならなくて、副隊長二人が頑張ってる可能性も捨てきれないけどね。

 

まぁ、何にしても奇襲がなった事で勢いは私達にあるから、このまま一気に押し切るよ!

一輌一殺を目標に、BC自由学園を殲滅せよ!仲違いしている様を見せる事で、私達が油断して付け入る隙が出来ると、大洗の実力を見誤ったBC自由学園の隊長に、目に物見せてあげようか!!

 

 

 

「「「「「「「「「Jawohl!」」」」」」」」

 

 

 

うん、良い返事!

取り敢えずエリカさんと梓ちゃんは向こうの副隊長達を何とかしてくれるかな?あの二輌が隊長車に張り付いてると、隊長車――フラッグ車を撃破するのは簡単じゃないからね。

 

 

 

「任せなさいみほ!アイツ等をフラッグ車から引き剥がす位、造作もない事よ!」

 

「何とかしろって言う事は、別に倒しちゃってもいいんですよね西住隊長?……私の新たな相棒になった此の子が、敵戦車を撃破したいみたいでうずうずしてるんですよ。」

 

「梓ちゃん……戦車の気持ちが分かるようになれば一流の戦車乗りとして合格だよ。」

 

「ちょっと待って、戦車の気持ちとか分かるモノなのみぽりん!?」

 

 

 

普通は分からないよ沙織さん。

だけどね、車長を務める戦車乗りの中には時として自分が乗ってる戦車の気持ちみたいなものを感じ取る事の出来る人が居るんだよ――私だってこの子の気持ちが何となく分かるしね。

大学選抜戦の時に、嘗ての青パンターチームが揃った時は嬉しそうだったし。

 

 

 

「そう言えばあの時は何時もより調子が良かったような……其れって何、実は戦車って精霊がついてたりするの?其れって何処の遊戯王!?」

 

「カードの精霊ならぬ戦車の精霊か~~……案外良いかもね。」

 

まぁ、精霊は兎も角として、機械でもまるで意思を持ってるんじゃないかって思う事ってあるから、付喪神じゃないけど物に魂が宿る事って、あながち嘘でもないのかも知れないよ。

 

さて、お喋りはここまでだね。

BC自由学園の副隊長ズはエリカさんと梓ちゃんに任せるとして、小梅さんは私と一緒に来てくれるかな?――最後に更なる予想外を相手に味わって貰いたいからさ。

 

 

 

「みほさん……了解しました。御一緒させて頂きます。」

 

「うん、其れじゃあ行こう。」

 

この局面に持って行くために貴女達の策に乗ってあげたんだから、今度は――ううん、此処からはずっと大洗のターンだよBC自由学園!試合が終わるまで、私達の猛攻は止まらないよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

予想外の奇襲からの電撃的戦車戦になった事で、BC自由学園の隊長であるマリーは完全に混乱してしまっていた――まぁ、無理もないだろう。

自分の策が全部見破られていた上に、更には最も警戒していた奇策や搦め手を一切使わずに真っ向勝負を大洗が仕掛けて来たとなれば、戸惑うのも仕方ない――全国大会でも大学選抜戦でも、大洗は『正攻法って何?食えるの美味しいの?』と言わんばかりの戦術を展開していたのだから。

目潰しや落とし穴は当たり前、進路妨害で橋を落とすのは得意技、戦車じゃないモノを攻撃して上から何かを降らせるなんてのは得意中の得意な大洗が、そんなモノを一切使ってこないとなると、奇策や裏技を想定して立てていた作戦やら何やらはマッタク持って無駄になるのだ……詰る所、大洗が正攻法で攻めて来た時点で、BC自由学園の勝利の可能性は露ほどもなくなったのだ。

 

 

「く……押田君、もっとアグレッシブに攻撃するんだ!そうでなくては大洗には通じないぞ!!」

 

「分かっているよ安藤君……君の方こそマリー様をお守りしろ!こちらは相手を攻撃するので精一杯だからな。」

 

 

其れでも、未だにフラッグ車が撃破されていないのは、安藤レナと押田ルカの二大副隊長がマリーの乗るフラッグ車をキッチリと役割分担をして護衛していたからだ。

受験組トップの安藤と、エスカレーター組トップの押田の実力はBC自由学園では五本指に入る程なのだ――そんな二人が護衛を務めているので有れば、フラッグ車の撃破は容易な事ではないだろう。

 

 

 

 

あくまでも普通ならば。

 

 

 

「其れで澤、貴女はどっちをやる?」

 

「ARL-44を叩きます――スペックを見るなら逸見先輩のティーガーⅡの方が重戦車対決になるから良いんでしょうけれど、中戦車が重戦車を倒すって言うのも燃えますよね?

 なので、ARL-44は任せてください!」

 

「そう言えば全国大会の決勝でも重戦車撃破しまくってたわね貴女達は……しかも、パンターよりも性能の劣るⅢ号で――そしてついた二つ名が『重戦車キラー』ですものね。

 そんな貴女達が最高性能の中戦車であるパンターに乗ったのなら、ARL-44でも相手にはならないか……OK、そっちは任せたわ副隊長!!」

 

「ソミュアはお願いします逸見先輩!」

 

生憎と大洗は普通じゃない。普通である筈がない。素人集団が全国制覇して、学園艦の底の底が無法地帯と化している大洗が普通だと思っているのか?

兎に角大洗に『普通』なんてモノは一切合切通用しないのだ。

厄介な副隊長である押田と安藤には、大洗の副隊長である梓と、狂犬エリカのタッグで迫る!

 

 

「オイコラ其処のガングロ三白眼!隊長車の護衛ご苦労様ねぇ?

 だけど、ソミュアの防御力程度でこのティーガーⅡの凶悪な超長砲身88mmに耐えられるかしら?……アンタ如きの防御力なんぞ、此の虎の王の前ではハナクソ同然よ!!」

 

「んな!?」

 

 

で、先ずは先制攻撃としてエリカが安藤に向かって罵倒一発!

此方に突撃して来たかと思ったら、行き成り面と向かってこんな事を言われた安藤が驚き絶句してしまったのも仕方ないと言えるだろう――が、エリカのターンは此処からだ。

 

 

「って言うか、アンタも大変よねガングロ三白眼?

 あんな見え見えの姑息な作戦しか思いつかないような三流が隊長じゃ、副隊長の苦労が目に浮かぶようだわ……まぁ、隊長が三流の場合、副隊長は優秀であるか、其れとも三流以下の雑魚のどっちかなんだけどね?

 アンタの場合は、こっちの奇襲に気付いて咄嗟に隊長を守った訳だから前者なんでしょうけど、全軍を向かわせたのは悪手だったわね?何輌か残して、橋を渡る大洗の本隊を攻撃していたら、此方に損害を出す事も出来たかもだったのに。

 そんな事にも気が回ならない程、焦ってたって事は……ゴメン、アンタ達の隊長マジでヤバくない?リコールしなさいよその隊長マジで!

 そんなのが隊長のままとか、アンタ達馬鹿なの!?ってうか馬鹿よね!?馬鹿で間違いないわ、此の大馬鹿者が!馬鹿で御免なさいって謝りなさい!今すぐ此処で、ハイ土下座!!」

 

 

いやはや何と言うか、今日も今日とて絶好調である。

ダージリンなんかにかました分かり易い挑発とはまた違うが、適当にBC自由学園の作戦をダメ出しながら、隊長の事を盛大にディスるセリフの数々にはいっそ感心する程だ。

 

 

「他校の生徒である君にそんな事を言われる筋合いはない!

 其れとマリー様は、戦車長としての能力は高いのだぞ!!」

 

「アホか!戦車長の能力が高いだけで隊長が務まるかっての!良い?隊長ってのはね、自分の能力に蓋をしてでもチーム全体とフィールド全体を見る能力がないと務まらないのよ!

 自分の能力に蓋をしないで隊長が務まってるのは、其れこそ大学選抜戦で助っ人に駆けつけてくれた連中位……って、アレェ?結構多いわ!

 って事は此れはアレね、アンタの所の隊長の方が希少種だったって訳ね……ごめんごめん、希少種は逆に大事にしないとね。」

 

 

無論安藤は反論するも、其れを軽快にエリカは切り返し、更に今度はめっちゃムカつく反応までする始末……ホシノが『大洗一速い女』ならば、エリカは『大洗一口の悪い女(敵限定)』である。

相手の神経を逆撫でする事に関してエリカの右に出る者は大洗には……否、全国探したってそうそう居ないんじゃなかろうかマジで?

 

 

「この、我々を愚弄するのもいい加減にしろこの銀髪!口が悪いにも程があるぞ!」

 

「銀髪?……へぇ、アンタにはこの髪が銀に見えるの?カラーの割合的に、ホワイト50%、グレー45%、イエロー5%のこの髪が銀だってのね?

 漫画の白黒画面で描かれたらトーンが張られる事は先ず無い白抜きになるであろうこの髪が銀だと言うのね?言っちゃうのね?

 色を付けてみて銀じゃなかったらどうする?アッシュブロンドや、只の金髪だったら責任が取れる訳?取れないわよね?

 だったら私の髪は銀じゃない!あぁ、銀じゃないとも!はい、銀じゃなくなった!決定、けってーい!!」

 

「……ぎ、銀じゃないかも知れない。」

 

 

更に何やらよく意味の分からない事まで言っていたが、言いくるめられる安藤は如何なのだろうか?

尚、色々と意見は有るだろうが、逸見エリカの髪色は銀であると主張したい所である。って言うか、今まで散々銀髪って言って来たんだから、今更『実は銀髪じゃありません』とか言われても困るのだ。

 

さて、何やら舌戦が展開されてはいたが、其れは全てエリカの思い通りだ。

 

 

「其れよりも、今の自分が何処に居るか見て見なさい?」

 

「へ?あぁ、マリー様!?」

 

 

エリカの罵倒と言うか挑発と言うか、そう言ったモノに反応していた事で、安藤は知らない内に護衛対象であるフラッグ車から引き剥がされてしまっていた。

そして其れを見たエリカの顔が凶暴に歪む――其れはさながら得物を食い殺す狼の如しだ。

 

 

「虎は機を見て一気に得物を力で仕留めるけど、狼は獲物を策に嵌めて仕留める狡猾さを持っているのよ――今の大洗は虎の集団だけれど、其の中に一匹だけ紛れ込んでいた狼には、気付かなかったみたいね?

 坂口、アイン!」

 

「あい~~~~!!」

 

「吹き飛べ!!」

 

 

次の瞬間、ティーガーⅡはソミュアに対して突撃し、強烈な体当たりを喰らわすと同時に、ゼロ距離からの砲撃をブチかましてソミュアを一撃で白旗判定にしてしまった。

ある意味で裏の裏の更に裏――力の西住流の裏に潜んでいた、狡猾な狼によってBC自由学園の副隊長の一人は倒されてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

エリカによって安藤がフラッグ車から引き剥がされていた頃、もう一人の副隊長である押田もまた苦戦を強いられていた――自分に向かって来た大洗の副隊長、澤梓にだ。

攻撃力ならば押田のARL-44の方が圧倒的に勝るが、機動力に関してはパンターの方が遥かに上であり、押田はARL-44の攻撃力を存分に発揮する事が出来ないで居たのである。

正直な事を言うのならば、このパンターをARL-44一輌で相手にするのは可成りきついものがあるのだ――だって、撃っても当たらないのだから。

 

 

「く……此れが隻腕の軍神の副官の力か!!」

 

 

押田は一人歯噛みする……大洗の副隊長がみほの一番弟子であると言う話は人伝にではあるが聞いていたから勿論警戒していた。だが、実際に戦ってみると、人伝に聞いたのとは全く違う相手だった。

ただみほの一番弟子だと言うだけではなく、梓自身がみほから習った事を自らの中で昇華させて自分のモノにしている――そうとしか思えない程に梓の戦い方は見事だったのだ。

パンターの有効射程は維持しつつ、此方の攻撃を回避出来る距離も保ち、そして絶妙なタイミングの砲撃でプレッシャーを掛けて来るのだから。

 

 

「そろそろかな……クロエ、お願い!」

 

「任されたヨ!」

 

 

そんな攻防を繰り返した後に、梓は頃合いを見てパンターを急発進させARL-44に突撃する。そう、其れこそ一切のフェイントとか入れずに一直線にだ。

 

 

「馬鹿な、特攻だと!?……だが、其れならばお望み通り玉砕させてあげよう!」

 

 

その一手に押田は驚くが、此れは逆に好機と、梓のパンターを撃破すべく、砲手にギリギリまで引き付けてから撃つように命じ、そして遂にその距離にパンターが入ったのだが……

 

 

 

――ギュルリ……

 

 

 

「んな!?此処で、戦車ドリフトだと!?」

 

 

撃とうと思った直前でパンターが戦車ドリフトで照準から外れたのだ――普通に考えれば戦車ドリフトは一試合一回の限定技だが、其れはあくまでも地面が土や砂利、コンクリートと言った硬い場合の話だ。

地面が柔らかい草で覆われている草原ならば、土やコンクリートよりも履帯と転輪にかかる負担は大きく軽減されるので、戦車ドリフトは一回限りの限定技ではなくなるのである。

 

此れによってARL-44は目標であるパンターを見失ったのだが、照準の先にはパンターとは別の戦車が居た……其れは、大洗が世界に誇る世紀の最強欠陥兵器ポルシェティーガー!

だが、その欠陥兵器は大洗の自動車部によって究極的に魔改造され、弱点の殆どを改善されてティーガーⅠと同等のスペックを存分に発揮出来る戦車になっているのだ。

 

 

「副隊長お見事!ブチかませホシノォ!!」

 

「此れでも喰らえ!!!」

 

 

そしてパンターの戦車ドリフトは只の回避に非ず!あの戦車ドリフトは、ポルシェティーガーへのスイッチの合図でもあったのだ――梓は自分達のすぐ後ろで戦っていたポルシェティーガーに気付き、車長のナカジマに対して、押田に気付かれないようにバックハンドでスイッチのサインを送っていたのだ……マジで凄い事この上ない。

 

そしてナカジマもその作戦に乗り、結果作戦は大成功し、ポルシェティーガーの放った砲撃は、ARL-44の主砲に突き刺さって爆破炎上し、其のままARL-44を白旗判定に!

此れでBC自由学園は副隊長二人を失った訳だが、其れだけでは終わらず、戦車ドリフトを行ったパンターは、ドリフト先で安藤の代わりにフラッグ車のカバーに入ったソミュアを撃破!

 

其処からはもう一方的だった。

フラッグ車のカバーに入った戦車は悉くパンターとポルシェティーガーに撃破され、何とか大洗の戦車を撃破しようと挑んだ戦車は返り討ちにされ、BC自由学園の残存戦車は遂にフラッグ車のみ――一切の奇策や搦め手を使わない真っ向勝負で大洗はBC自由学園を追い詰めたのである。

……フラッグ戦だからフラッグ車を倒せば勝ちとは言え、一輌で十輌を相手にしろとか幾ら何でも無理ゲーが過ぎる。

ドレだけ無理ゲーかと言われれば、手札0枚で原作効果の三幻神三体を倒せと言う位に無理ゲーである。

 

 

「自分の策が完全に読まれていた気分は如何かなマリーさん?」

 

「最悪極まりませんわね……全ては貴女の掌で踊らされていただけだったとは……自分が滑稽で成りませんわ――ですが、此れはフラッグ戦。

 今目の前に要る貴女を倒せば、残存車輌に関係なく私達の勝ち――覚悟なさいませ、西住みほ!!」

 

 

其れでも、目の前に現れたみほに対して果敢にマリーは戦いを挑む――そうだ、フラッグ戦であるのならば、フラッグ車を撃破した方が勝ちなのだから無理ゲーであってもその一撃に全てを込めるのは間違いではないだろう。

何よりも今日の大洗は搦め手や奇策を一切使わずに真っ向勝負を挑んで来た……ならば、最後に残ったフラッグ車が仕掛ければフラッグ車で対応して来る筈と思っての一手だった。

 

 

だが――

 

 

「小梅さん……やっちゃってください。」

 

「お任せ下さいみほさん!!」

 

 

その直後、パンターの後から小梅が車長を務めるⅣ号D型(H型仕様)が飛び出し、其のままマリーが乗るフラッグ車の真上に!!マリーにバレないようにパンターの後方に立てかけられた鉄板をスロープ代わりにして駆け上がり、其のまま一気に飛び出したのである!

 

そして、飛び出した戦車が意味するのは、西住みほ流戦車道の奥義『戦車プレス』!!!

如何に堅牢な戦車であっても、ヒットすれば略間違いなく白旗判定にしてしまう一撃必殺の一撃が炸裂し、BC自由学園のフラッグ車は哀れ見るも無残な状態に……マリーは咄嗟にキューポラ内に飛び込んだので無事だったが、見事なまでに顔面煤だらけになってしまっていた。

 

 

 

『BC自由学園、フラッグ車行動不能!大洗女子学園の、勝利です!!!』

 

 

 

ともあれ、勝ったのは大洗女子学園。

相手の策を読み切った上で其れを利用して奇襲を仕掛け、奇策を警戒していた相手の裏を掻いて真っ向勝負を仕掛け、最後の最後で其れ迄の真っ向勝負を利用した裏技で決着!

正に正統的な力の西住流と、みほによって新たに作られた技の西住流を合わせた複合戦術による完全勝利であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

よ~~~し!一回戦突破!!しかも、パーフェクト勝利だよ!!――試合を決めた最後の戦車プレスは、高さ、角度共に申し分なかったよ小梅さん!!ホントに理想的な戦車プレスだった!!

 

 

 

「そ、そうですか?そう言われると照れちゃいますよ。」

 

「照れなくて良いよ!本当の事だから!!」

 

「わひゃぁ!?な、何をしてるんですかみほさん!?」

 

 

 

なにって……小梅さんの頭をモフモフしてるんだよ?優花里さんほどじゃないけど、小梅さんも天パだからねぇ……小梅さん、貴女の髪、モフモフしているな。

この何とも言えないモフモフ具合が、もうクセになりそうだよ。

 

 

 

「いえ、あのそうではなくてですね、私の髪をモフるのは構わないんですけれど、そんな風に抱きしめられると、何と言いますかみほさんの胸が顔に当たってですね?///」

 

「へ?如何かした?」

 

「いえ、な、何でもありません!!」

 

 

「うわぉ、みぽりん大胆……!」

 

「小梅殿、何て羨ましい!!その役目、是非不肖秋山優花里に譲っていただきたいものです!西住殿にモフられるだなんて、何と言う!!!」

 

「優花里、アンタ血の涙流してるけど大丈夫なの?」

 

「血の涙の一リットルや二リットル、平気であります!!」

 

「いや、其れ普通に死ぬから。」

 

 

 

沙織さん達が何か言ってるけど、小梅さんが何でもないって言うのなら、このままモフっていても良いんだよね?……此のままモフるのも良いかもだけど、アンドリューに寄りかかって、ロンメルを膝の上に乗せた上で小梅さんをモフったら、モフモフ×3で更に凄い事になるかも!!

よし、そうと決まれば直ぐに帰って実行だね!!

 

 

 

「……少し宜しいかしら西住みほさん?」

 

「何でしょうか、マリーさん?」

 

此のまま撤収しようと思ってた所で、話しかけて来たのはBC自由学園の隊長のマリーさん……一体何の用なのかな?

 

 

 

「貴女は何故私達の仲違いが演技であると言う事が分かったの?エスカレーター組も受験組も迫真の演技だった――少なくとも偵察に来た方々は騙せていた筈なのに何故?」

 

「そうですね……言うなればやり過ぎたと言う所でしょうか?」

 

「やり過ぎた?」

 

 

 

そうです、やり過ぎたんです。

抽選会場でのやり取りから、優花里さんとエルヴィンさんが潜入時に撮った映像、そして今日の試合の序盤の動き……全てがあからさま過ぎたんですよ。

言うなれば、受験組とエスカレーター組の対立を演出し過ぎました――双方の対立を効果的に演出するなら、これ見よがしにいがみ合うだけではなく、無言での牽制みたいな、静かな対立も入れないと嘘くさくなるんですよ。

 

 

 

「成程……演出過多だったと言う訳ですわね……其処まで見通されていたのならば、私達の負けは当然の結果と言う訳ね――ならば、素直に受け入れましょう敗北を。

 そして、頑張ってね西住みほさん並びに大洗女子学園の皆さん――勝者を称えるのは敗者に残された数少ない権利ですので、其れを存分に使わせて貰いますわ。」

 

「マリーさん……」

 

隊長としては今一だったけど、スポーツマンとしては中々だねマリーさんは。

ともあれ、一回戦は完全勝利!!――そして、次の試合に勝ったのはポンプル高校……つまり、大洗の二回戦の相手って言う訳だね。

 

で、あっという間に一回戦の全ての試合は終了し、二回戦にコマを進めたのはシードのベルウォール、青師団、知波単、継続、コアラの森、ヴァイキング、大洗、ポンプル、マジノ、聖グロ、アンツィオ、黒森峰、プラウダ、ヨーグルト、ワッフル、サンダースか……なんて言うか、残るべくして残ったって感じかな此れは?

シードであるべルウォール以外の新参校が全滅しちゃったのは残念だけど、どの試合も紙一重だったから、今回の事で諦めずに、来年の全国大会にも是非出てきてほしいモノだよ。

 

色んな学校が参加してくれることが、戦車道の発展にも繋がって行くと思うからね♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。