ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

192 / 226
決勝戦……血が騒ぐよByみほ        西住の血が滾ってるみたいね?Byエリカ      暴走は、してないみたいですねBy小梅


Panzer191『無限軌道杯の決勝戦です!』

Side:みほ

 

 

遂にやって来た無限軌道杯の決勝戦!

相手は夏の大会と同じく、私とエリカさんと小梅さんの古巣である黒森峰……相手にとって不足は無い所か、お釣りが出る位だよ。――一強時代は終わったとは言え、黒森峰の強さは健在……寧ろ、お祖母ちゃんとOG会からの干渉が無くなった分、今の方が強いかもだしね。

何よりも新隊長の理子さんは、お姉ちゃんと近坂先輩に徹底的に鍛えられて五回は脱皮したとの事だから、私の知ってる理子さんとは別人だと思うからね……正直、カチューシャさんに勝つとは思わなかったし。

 

 

 

「でも、だからこそ楽しみなんでしょうみほ?

 直下の奴、ハッキリ言って去年とはまるで別人だからね……加えてアイツはみほ率いる遊撃隊だった訳だからみほの手の内は知ってる事になるのだから……簡単には行きそうにないわ。」

 

「簡単に行きそうにないなら寧ろ上等だよエリカさん。

 逆に私の手の内を知ってる理子さんが如何出て来るか楽しみで仕方ない、そんな感じだからね。」

 

だから、戦車乗りとしての闘気が抑えられない……ちょっとでも気を抜いたら、その瞬間に闘気が爆発して軍神招来の超サイヤ人になっちゃうかもだからね。……ふふふ、西住の血が滾るね。

 

 

其れは其れとして、会場は既に超満員札止め状態――全国大会決勝戦の再現とも言える対戦カードな訳だから戦車道ファンが此の試合を見逃す筈がないから、此れはある意味で当然の事かもだね。

なら、折角集まって来てくれた人達の為にも最高の試合をしないとだよ!

 

 

 

「言われるまでも無いわみほ……戦車道の真髄ってモノを、オーディエンスに見せてやりましょう?」

 

「そして其れを見せた上で勝ちましょうみほさん……無限軌道杯も、優勝するのは大洗ですよ。」

 

「最高の戦車道をやった上で勝ちましょう西住隊長!」

 

 

 

うん、勿論その心算だよ。

最高にして至高の戦車道、其れこそが私の目指してる戦車道だからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer191

『無限軌道杯の決勝戦です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決勝戦が始まるまでまだ時間があるから、適当に屋台巡りをしてたんだけど……やっぱり出店してたんだねペパロニさん?

 

 

 

「まぁな。ってか出店しない理由がねぇからな。

 此れだけの人が集まる場所に屋台を出せば結構儲かるからな……鉄板ナポリタンなんざ、通常価格の三倍の九百円で売っても飛ぶ様に売れてっから可成り儲かってるってもんよ。」

 

「逞しいね♪

 其れじゃあ、試合前の腹ごしらえとして鉄板ナポリタンのパニーニサンド、と行きたい所だけど新作のメニューって何かある?」

 

「あるぜ?

 鉄板ナポリタンのウィンナーをチョリソーに、ケチャップをチリソースにした『炎の鉄板ナポリタン』だ!ホットな辛さが堪らねぇ旨さってな!!」

 

「じゃあ、其れのパニーニサンドで。其れからチョコレートのジェラート。」

 

「私もみほと同じのを頼むわ……但しペパロニ、私のは辛さ三倍で頼むわ。」

 

「エリカ、お前意外とチャレンジャーだなオイ……口から火ぃ噴いても責任取らねぇからな?」

 

「分かってるわよ。自己責任で頼むわけだし。」

 

 

 

辛口のメニューを辛さ三倍で頼むとは、若干狂気の沙汰と言えなくもない……ラーメンチェーン店の山岡家の『ウルトラ激辛ラーメン』に更に豆板醤とラー油と一味唐辛子を加える程じゃないにしてクレイジーだよ。

何だって、辛さ三倍なのかなエリカさん?

 

 

 

「試合前に気合入れとこうかなと思って。」

 

「其れだったら、辛さ増しよりも、ニンニクトッピングの方がパワーが出ると思うんだけど?」

 

「其れはそうなんだけど、ほらニンニクは臭うから、車内が地獄絵図になっちゃうなぁって……坂口とか遠慮なく『ニンニク臭ーい!』っていいそうじゃない?」

 

「あぁ、確かに……エチケットを守ったからこその激辛と言う訳だね。」

 

エリカさんは妙な所でそう言うのを気にする部分があるなんだよね。

そう言えばペパロニさん、アンツィオの新隊長ってペパロニさんだって噂を聞いたんだけど其れって本当?私はてっきりカルパッチョさんが新隊長になると思ってたんだけど……

 

 

 

「あぁ、其れは本当なんだよ。

 アタシもさ、隊長はカルパッチョの方が良いんじゃないかって姐さんに行ったんだけど、姐さん曰く『確かに他の学校ならば隊長はカルパッチョの方が合っているだろう。だが、アンツィオに限って言うのならばお前以外に次の隊長は居ない!』って事みてぇなんだよ。

 隊長なんてアタシのガラじゃないかも知れないけど姐さんに任されたんだ、立派にドゥーチェとしてアンツィオを引っ張って行って見せるぜ?カルパッチョも副隊長として力を貸してくれるからな!」

 

「確かに、ノリと勢いが売りのアンツィオなら、静のカルパッチョさんよりも、ガッツリ動でイケイケのペパロニさんの方が隊長として向いてるのかも。

 アンチョビさんは、其処ら辺を考えた結果、ペパロニさんを新隊長に任命したんだろうね。」

 

「私としては、結構大胆な事をしたと思うわ……此れが吉と出るか、其れとも凶と出るか、夏の大会が楽しみね。」

 

「へっ、姐さんが決めたんだ、吉と出るに決まってんだろ?其れに、自慢じゃないが、アタシは今年の正月の初詣で、地元の有名所の神社全部参拝して、引いたおみくじは全部大吉だったんだ!

 こんな超強運を備えたアタシが、そう簡単にやられるかってんだ!」

 

 

 

……お正月のおみくじは大吉が普段よりも多く入ってるって事は言わない方が良いかな?

お正月のおみくじの割合は、大体大吉が50%と言う、引けば半分の確率で大吉だからね……寧ろお正月のおみくじ的には、割合で5%以下の凶を連続で引く方が強運と言えるかもなんだよねぇ。

取り敢えず、気合は入ってるみたいだから其れに水を注すのは無粋だね。

 

注文の品を受け取って(ジェラートはエリカさんが自分の分と私の分を持ってくれてる。)更に適当に会場内の屋台巡り……たこ焼き、牛串、フランクフルトにチーズハットクと美味しそうなモノがずらりと。

戦車道の試合の前じゃなかったら全部コンプリートしたい感じだね。

 

 

 

「私達は無理でも、貴女のチームの砲手はフルコンするんじゃない?」

 

「華さんだと其れが否定できないね。」

 

 

 

 

「この店のメニューを全て一つずつお願いします。」

 

「ちょ、其れマジなの華!?」

 

「本気と書いてマジです沙織さん……因みに、此れは未だあくまでも前菜の一部に過ぎません――メインディッシュの前の準備運動ですから♪」

 

「うっそ、この量で!?普通に有り得ない、やだもーーー!!」

 

 

 

 

「……華ってば、何であれで全然太らない訳?」

 

「恐ろしく燃費の悪い身体なんじゃないかな?きっと華さんは、あれ位のカロリーを摂取しないと生きて行く事が困難な人種なんだよ……そう、痩せの大食いの究極形が華さん!

 きっと華さんだったらかのギャル曽根と大食い対決をしても勝てなくても負けない事が出来ると思う!」

 

「何その羨ましい体質!女だけど女の敵ね!」

 

「女だけど女の敵……聞きようによっては次々と女の子を攻略しまくってる百合女子に聞こえなくもないかな……と言う事は、エリカさんと小梅さんを攻略しちゃった私って女の敵?」

 

「そうは言ってないわよ?」

 

「中学時代に男女問わずラブレター貰ってたんだけど、其の中の女の子を全部攻略しちゃったら?」

 

「其れは普通に女の敵ね。」

 

 

 

うん、若干その基準が分からない。

 

 

 

「はぁ……試合前に何を漫才やってるのよみほ。其れと逸見エリカ。」

 

「其れは言わないお約束。此れが大洗だから。」

 

 

 

っと、エミちゃんと愛里寿ちゃん!応援に来てくれたの?

 

 

 

「うん、応援に来たよみほさん……決勝戦も頑張って。」

 

「アタシ達に勝ったんだから必ず勝ちなさいよみほ……優勝校に負けたって事なら、うちのバカ共も納得するだろうからね……尤も、貴女と戦えたって事だけでも、アイツ等は結構満足してるかもだけどね。」

 

 

 

あはは、そう言って貰えると嬉しいよエミちゃん。其れと、決勝戦も全力で行く心算だよ愛里寿ちゃん、エミちゃん!

時にエミちゃん、一緒に居るのは誰?其のニット帽を被った子とは初めて会うと思うんだけど……

 

 

 

「此の子は白鳥渚――アタシのティーガーⅠの砲手。――そして、貴女に負けず劣らずのボコマニアよ。」

 

 

 

――キュピーン!

 

 

 

『ボコマニア』……其れを聞いた瞬間に、私と愛里寿ちゃんの目は光って、一気に渚さんとの距離を詰めてた――ふふ、数少ないボコメイトなんだから此れは仕方ないよね。

 

「ボコ!」

 

「ボコボコ!!」

 

「ボッコボッコ!!!」

 

 

 

――パァン!!

 

 

 

そしてそのままハイタッチ……略確実に私達以外には一体何が起きたか理解出来ないだろうけど、ボコマニアにはボコマニアだけに通じるインスピレーションって言うモノがあるんだよ。

正に『考えるんじゃない、感じるんだ。』ってね!!

 

 

 

「中須賀、貴女今の理解出来る?」

 

「無理に決まってんでしょ逸見。ってか、あれで通じるボコマニア恐るべし……あの不気味なクマの何が良いのやらだわ。」

 

「む……ボコはドレだけボコボコにされてもめげずに諦めずに相手に挑み続けるのが凄い所なんだよエミちゃん!

 折れない心は正に不屈の闘志其の物……此れは戦車乗りには一番大事な事でしょ?ボコと戦車道には斬っても斬れない関係があるんだよ!」

 

「そ、其れにボコの魅力はアニメでも絶対に同じ姿では登場しない所にあるんです。

 包帯の巻かれてる場所とか、痣の位置とか、絆創膏の場所とか、松葉杖が有ったり無かったり、腕を三角巾で吊ってたり吊ってなかったり……毎回違うって言うのは凄いと思いません?」

 

「ボコは存在してるだけで価値がある。

 其れに姉様は言った……『若しかしたらボコには戦車道の大事なモノが詰まってるのかもしれないね』と。」

 

「「適当な事ぬかしてんじゃねーわよ、継続のチューリップハット!!」」

 

 

 

はい、ボコマニアによるボコの魅力の説明のラストを飾ってくれた愛里寿ちゃんの一言に、エリカさんとエミちゃんが盛大に突っ込んでくれました♪

って言うかエミちゃん、ミカさんがアリスちゃんのお姉さんだって知ってたんだ?

 

 

 

「偶然なんだけどね。

 前に喫茶店に入った時に、大学選抜の選手と思しき人達が話してるのを聞いちゃったのよ……『継続の隊長は、隊長のお姉さんらしい』ってね。

 正直根も葉もない噂だと思ってたんだけど、此の子が言った事で確信が持てたわ……そんな特徴的なモノの言い方をするのは継続の前隊長のミカだけでしょうに。」

 

「其れは確かにそうだね。」

 

ミカさんは本当に自由気侭で捉え所のない人だけど、謎めいた言い方で確信を突くような事を言うからね……隊長職をアキさんに譲った今は、気侭に何処かでカンテレを奏でてるんだろうなぁ。

 

 

 

「何処のスナフキンだっての……ま、其れは其れとして、絶対に勝ちなさいよみほ?最低でも、勝てずとも負けるんじゃないわよ?」

 

「其れは勿論♪……エミちゃんの祝福のキスに誓うよ。」

 

「ちょ、アンタ此処で其れを言う!?」

 

「え?駄目だった?」

 

「祝福のキスですって?……どういう事か聞かせて貰えるかしらみほ?」

 

「そうですねぇ、お聞かせ願えますかみほさん。」

 

 

 

エリカさん、小梅さん……如何って言われてもねぇ?

準決勝の後で、黄昏てたらエミちゃんに話し掛けられて、『必ず優勝しなさい』って言われたから、其れに答えようと思ったら、答える前にエミちゃんキスされまして。ちゃんと唇に。

『祝福のキスの前渡し』で、更にファーストキスだったみたいなんだ。……えっと、其れでエリカさん、小梅さん、なんでエミちゃんに詰め寄ってるのかなぁ?

 

 

 

「やるわね中須賀エミ……まさか私も小梅も居ない所でみほの唇を奪うとは……だけどねぇ、私と小梅はみほの彼女な訳よ?」

 

「立場的にエミさんのした事に若干思う所があるのですが……如何してエミさんはみほさんにキスを?頬にしたのならば友愛の表現ですけど、唇ではそうは言えませんよね?

 ぶっちゃけて聞きますが、みほさんの事好きですよね?Loveの方向で。」

 

「みほの彼女って、若干突っ込みたい所はあるけど――えっと、だったら何だって言うのよ?」

 

「ハッキリ言いなさい……貴女、みほの事好きでしょ?」

 

「す、好きに決まってんでしょうが!

 えぇ、最初はハッキリ言って好きじゃなかったわよ!姉の戦車突き落とした西住まほの妹だった訳だから!デモねぇ、事の真相聞いて、其れで一緒に戦車乗って、喧嘩もしたけど仲良くなって……トドメはアレよ、アタシがドイツに帰るって決まって空港に向かってた時、戦車で電車に並走して来て『またね』って言って来た時よ!

 何よアレ!普通に反則でしょ!同性だって惚れるでしょ!えぇ、アタシはみほの事が好きよ!何、此れで満足!?」

 

「「満足した。そして喜べ、軍神ハーレム一名追加。」」

 

 

 

うわーお、何時の間にかエミちゃんまで知らない内に攻略してたみたいだよ私……其れを考えると、私ってば実は結構無自覚に戦車女子攻略してたりするのかな?

ナオミさんには華さんが居るからないとしても、ローズヒップさんとペパロニさんは現在フリーっぽいから無いとは言い切れない部分があるよね?そして多分だけど優花里さんも……アレ、此れ結構ヤバくね?

 

 

 

「みほ、『英雄色を好む』って言葉があるから悩むだけ無駄よ!」

 

「其れを言ったら身も蓋もないねエリカさん。」

 

確かに英雄色を好むとは言うけど、女性に其れを当てはめる場合は所謂『逆ハー』であって『百合ハー』ではないと思うんだけど、其れは突っ込んだら負けなんだろうね。

さてと、そろそろ時間だから私達は行くね……応援よろしくね?

 

 

 

「任せなさい!」

 

「全力で応援するから。」

 

「大洗を応援だぁ?当たり前だろ!

 大洗と黒森峰、黄金カードじゃねぇか!つべこべ言わずにこの一戦を目に焼き付けろ!大洗と、その対戦相手だけ見てりゃいいんだオラァ!!

 ガッデメファッキン!アイム、チョーノ!」

 

 

 

そして今日も絶好調だね『oNs』の皆さんは♪

其れじゃあ、全力の応援に応えられるような、最高の戦車道をしてみせるよ――相手は、一皮所か五皮は剥けた理子さん率いる黒森峰だからね。

 

お姉ちゃんと近坂先輩に鍛えられた其の力、見せて貰うよ理子さん!

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

決勝戦開始の時刻となり、両校の隊長であるみほと理子は、試合開始の挨拶の為に審判団の前まで来ていた――みほも理子も、夫々の副隊長を従えてだ。

 

 

「まぁ、貴女なら必ず勝ち進んでくると思ってたわみほ……此処まで来たらもう言葉は要らないわよね?持てる力の全てを出し切ろうじゃない!!」

 

「無論、言われなくともその心算だよ理子さん!」

 

「ツェスカ……負けないよ?うぅん、私が勝つ。」

 

「梓……Ⅲ号からパンターになったんだったけか?……ぶっちゃけて言うと、Ⅲ号じゃ貴女には窮屈だと思ってたから、パンターに乗り換えてくれたのは嬉しい誤算よ?

 此れで、貴女の力は十全に発揮されると思うからね!」

 

 

みほは理子と、梓はツェスカとがっちりと握手を交す……が、其れだけで既に両者の闘気がぶつかり合って若干の火花放電が発生しているのは戦車乗り的には普通の事なのだろう。

審判長の蝶野亜美も何も言わないのだから。

 

 

「其れでは、此れより無限軌道杯決勝戦、大洗女子学園対黒森峰女子学園の試合を始める!お互いに、礼!」

 

 

「「「「よろしくお願いします!!」」」」

 

 

その蝶野亜美の号令で持って、互いに試合前の挨拶を済まし、夫々の陣営へと戻って行く――その間も夫々の闘気は収まる事はなく、特にみほと梓の周りには溢れ出た闘気が火花放電を発生しているような錯覚さえ起こしそうな位だ。

……それって何処の超サイヤ人2?

 

 

其れは兎も角、先ずは両校のオーダーを見て行く事にしよう。

 

 

・大洗女子学園

 

パンターG型×2(アイスブルーカラーは隊長車兼フラッグ車、パールホワイトカラーは副隊長車)

ティーガーⅡ×1

Ⅳ号戦車D型改(H型仕様)×1

Ⅳ号戦車F2×1

Ⅲ号突撃砲F型改(G型仕様)×1

クルセイダーMk.Ⅱ×1

38(t)改(ヘッツァー仕様)×1

ルノーR35改(R40型仕様)×1

ソミュアS35×1

ポルシェティーガー×1

 

 

先ずは大洗女子学園。

此方は準決勝と同じオーダーだ――新しく購入したⅣ号F2がサメチームの一輌のみなのは、短期間で他の戦車にコンバートするのは無理があるとみほが判断したからだろう。

梓の場合は中学時代に何度かパンターに乗っていた事もあるのでコンバートも出来たが、他のメンバーは今の戦車に慣れ切っているので、下手にコンバートするとパフォーマンスが低下する恐れがあるのだ。

ともあれ、大洗は現行出せるMAXの十一輌編成。

 

其れに対して……

 

 

・黒森峰女学園

 

ティーガーⅠ×4(212号車は隊長車兼フラッグ車)

パンターG型×7

ヤークトパンター×4

Ⅲ号戦車J型×5

 

 

 

黒森峰はルールで使える二十輌を揃えて来たが、その顔触れは準決勝までとは大分異なる様子だ。

準決勝のプラウダ戦までは、此れまでの様に重戦車中心で『圧倒的な火力をもって相手を制圧する』と言う、黒森峰の伝統に沿ったオーダーであったのに対し、決勝戦のオーダーは火力は其れなりに抑えた上で機動力を重視したモノとなっていた。

 

 

「黒森峰が重戦車を四輌しか使わないだと?」

 

「全国大会では火力を重視した事が裏目に出たから、その反省を活かしたのか?……いや、其れなら一回戦からそう言った編成にした筈だな?」

 

 

此れ的は明らかに違う黒森峰の編成に、観客席からはざわめきが聞こえてくる。

其れも、此れまでの黒森峰の戦いを見れば仕方ないだろう――代替わりしたとは言え、新隊長の理子もまた『撃てば必中、守りは堅く、進む姿は乱れなし』の西住流が根幹にある黒森峰の戦術を体現してたのだから。

そうであるにも関わらず、決勝戦で突然の編成変更となれば驚くなと言うのが無理だ。

 

 

「へぇ……此れは、対大洗用の特別編成って所かな?」

 

「でしょうね……直下の奴、ギリギリまで切り札を隠してるとはやってくれるじゃない?」

 

「直下さんも私やエリカさんと同様に、去年はみほさん率いる遊撃隊でしたから、今の黒森峰では誰よりもみほさんの事を知ってると言えますから。

 大艦巨砲主義とは少し違いますが、火力重視で来てくれたら楽だったんですけど、中々どうして簡単には行かないみたいですね?」

 

 

だがしかし、みほ達大洗の経験者の面々はこの編成こそが理子の対大洗の切り札であると気付いていた……如何に強力な火力であっても大洗には其れが通じないのは全国大会で証明されている。

それどころか性能としては明らかに格下のⅢ号に重戦車が悉く撃破されると言う事態まで起きている――其れを考えれば、大洗相手に火力重視と言うのは自殺行為であると考えるのは当然だろう。

 

勿論理子もそう考えた……そして考えたからこそこの編成は決勝戦まで温存していたのだ――全てはみほに、大洗に勝つ為にだ。

 

 

「VIP扱いしてくれるって言うのなら、其れには応えないとだね理子さん?

 ……だけど貴女の戦車乗りとしての能力を正当に評価した上で敢えて言わせて貰うよ……機動力で大洗に挑もうだなんて烏滸がましいにも程があるんじゃないかな?

 奇策が通じるのは、あくまでも相手が凡百な場合に限られる――隻腕の軍神と言われる私に奇策は愚の骨頂!

 ……尤も、その先の策まで用意してあるって言うのならその限りじゃないけどね。」

 

 

其れに対し、みほは他者に見えない様に俯いた状態で軽く笑みを浮かべると、ガバッと顔を上げニヒルな笑みが浮かんだ顔を顕わにする……観客席のオーロラヴィジョンにはこの顔が大アップで映し出された事で黄色い悲鳴が上がったらしい。

ともあれ、黒森峰のオーダーはみほの闘気を更に燃え上がらせるには充分だったようだ――現にみほの瞳は琥珀色に輝いて、瞳孔が極端に小さくなった超集中状態にあるのだから。

 

 

「ふぅ……すぅ……うん、バッチリ!

 其れじゃあ行くよ皆!夏の全国大会に続いて、冬の無限軌道杯も制して、真紅の優勝旗を大洗に持ち帰って、全国制覇はマグレだなんて誰にも

 言わせないようにするよ!

 各員、己の魂を戦車に繋げぇ!戦車と自分は一心同体!人馬一体ならぬ、人車一体!……無限軌道杯も私達が勝つ!Panzer Vor!」

 

「「「「「「「「「「Jawohl!」」」」」」」」」」

 

 

 

 

「相手はみほ……簡単な相手じゃないけど、勝って見せる……行くわよ、Panzer Marsch!」

 

「「「「「「「「「「Jawohl!」」」」」」」」」」

 

 

 

そしてみほも理子もほぼ同時に出撃命令を下し、此処に無限軌道杯の決勝戦の戦いの火蓋が切られた――大洗が夏冬の連覇を成すのか、其れとも黒森峰が夏の雪辱を冬で果たすのか?

何れにしても、決勝戦は準決勝の大洗vsベルウォール戦以上なものになるのは間違いないと見て良いだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。