ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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遂に始まったね……!Byみほ        見せてやろうじゃない大洗の戦車道を!Byエリカ       此れが私達の戦車道!ですねBy小梅


Panzer207『開幕!第64回戦車道全国大会です』

Side:みほ

 

 

あふ……もう朝か。

此処は大洗の学園艦の寮じゃなくて、アンツィオの学園艦の寮のペパロニさんの部屋――どんな選手宣誓にしようか意見をすり合わせてる内に良い時間になっちゃったからそのまま泊ったんだっけか。

まぁ、深夜までペパロニさんとの『打ち合わせ』(意味深)は続いたんだけどね。

 

 

 

「ん、んあ~~……良く寝たぁ。」

 

「おはよう、ペパロニさん。」

 

「おう、おはようさんみほ……なはは、盛大にやっちまったみたいだなアタシ等?……此れ、逸見と赤星と中須賀に殺されたりしないよなアタシ?死ぬのは嫌だぜ?」

 

「其れは大丈夫だと思うよ?」

 

エリカさんも小梅さんもエミちゃんも、ペパロニさんが参戦するのを駄目だと言わなかったどころか、むしろどうぞだったからね……って言うか、ダメだったらそもそも私はここに来てないよペパロニさん。

 

 

 

「言われてみりゃ其れもそうだな……取り敢えず朝飯にするか?

 つっても大したモンないから、パニーニにトマトとパンチェッタ(イタリアの生ベーコン)チーズ挟んだサンドイッチでかまわねぇか?其れから、インスタントのスープで。」

 

「うん、充分だよ。」

 

「ワリィな、何時もだったら食材もっとあるんだけど、昨日の夜で結構使っちまったからさ。ご利用は計画的にだったなマジで。」

 

「何か昔そんなCMあったよね?」

 

「サラ金のCMだよな!」

 

「……否定出来ないけど、言い方。」

 

「間違ってね―ならいーだろ別に♪」

 

 

 

ペパロニさんの此のノリは中学の頃から全然変わってない所か、高校生になって更にパワーアップしてるような?……此れは、間違いなくアンツィオに進学したのが影響してるだろうね。

ノリと勢いが売りのアンツィオに於いてはペパロニさんみたいな人はチームの中心人物になるだろうし、そうなれば結果を出そうと更にガンガン行く様になって元々の『イケイケキャラ』が更に強烈になるのは想像に難くないからね――でも、そうなってもペパロニさんは暑苦しい感じはしないのが不思議だよ。……アンツィオに入る前からこんなだったからかも知れないね。

まぁ、其れは其れとして、ペパロニさんとの最高の選手宣誓は出来たから、後は此れを開会式でブチかますだけだね――私とペパロニさんのタッグで満天下の度肝を抜いてあげるよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer207

『開幕!第64回戦車道全国大会です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてやって来ました第六十四回戦車道高校生大会の開会式!

出場校三十二校が戦車で会場入りする様は圧巻の一言だね?特に黒森峰は、重戦車が多いから迫力がハンパない……って言うか、開会式にマウス持って来るってのは大盤振る舞い過ぎじゃないかな理子さん。

 

 

 

「いや、アレは一種の心理戦じゃないかしら?

 開会式の時点で敢えて最大の戦力を見せておく事で相手の戦意を喪失させるのが狙いなのかも知れないわ……そう、プロレスラーが試合前に東京都の分厚い電話帳を破いてみせたり、満員のバス五台を引き摺ってファンを驚かせるように、ね。」

 

「エリカさん、其れは少し深読みし過ぎではないでしょうか?」

 

「理子さんは確かに優秀な戦車乗りだけど、其処まで深くは考えてないと思うよ?精々、『開会式はマウスも出して派手に行っとくか』位だと思うな。」

 

「……言われてみれば其れもそうね。深読みし過ぎたわ、忘れて頂戴。」

 

「って言われても、自信満々に語るエリカさんをバッチリ動画に撮っちゃったんだけど……Twitterにアップしちゃダメかな?」

 

「ダメに決まってんでしょうが!って言うかなに撮ってるのよ貴女!

 消しなさい!今すぐその動画を消しなさい!消さないって言うのならスマホごとボクササイズで鍛えたこの拳の『ゴッドハンドクラッシャー』で粉砕!玉砕!!大喝采!!!するわよ!」

 

 

 

わー、エリカさんの背後に『パンチのラッシュが必殺技で時を止めるのが切り札』なスタンドが見えた気がする。……『オラオラ』か『無駄無駄』かは分からなかったけど。

序に、オベリスクとドレッド・ルートとラビエルは、何で三幻神、三邪神、三幻魔の中で唯一攻撃方法が物理なんだろうね?ゴッドハンドクラッシャーもフィアーズノックダウンも天界蹂躙拳もパンチ……ブレスとかで吹き飛ばすよりも、殴り倒した方が絵面的に強そうだからかな?知らないけど。

……ん?

 

 

 

「…………」(ニヤリ)

 

 

 

アレは……あの眼帯は、抽選会日にルクレールで挑発して来た新参校の子――乗ってる戦車はブラックプリンス、中々良い戦車を持ってるみたいだね?……戦車が良くても乗り手が二流だったら宝の持ち腐れだけど。

バッチリと私に向かって中指立ててくれたから、私もサムズダウンでお返し……だけじゃなくエリカさんは首掻っ切り、小梅さんは裏ピース(イギリスではクタバレの意)、梓ちゃんは親指と人差し指で丸を作る所謂『OKサイン』(フランスではお前は無価値の意)――エリカさんは分かるとしても、小梅さんと梓ちゃんは分かり辛いかな?一般的じゃないからね。

因みに勝ち進めば二回戦で彼女と当たる事になる理子さんは特に何もせずに、ティーガーⅠのキューポラから上半身を出して腕組み……『貴様等眼中にない』と言わんばかりの堂々たる態度、立派に黒森峰の隊長さんだね。その姿を見たら、きっとお姉ちゃんは喜ぶだろうなぁ。

 

……よし、写真撮ってお姉ちゃんに送ろう。『黒森峰新隊長の勇士』ってね。

 

 

で、全校入場した後は、お決まりの国歌斉唱と日の丸の掲揚があって、去年の優勝校である大洗からの優勝旗の返還(流石に右腕一本じゃ持てなかったんんだけど、沙織さんがサポートしてくれた。)を行って、いよいよだね。

 

 

 

『選手宣誓。大洗女子学園隊長西住みほ、アンツィオ高校隊長ペパロニ。』

 

「「はい!」」

 

 

選手宣誓の時が来たよ!

名前を呼ばれた私とペパロニさんは返事をした後、前に出てから同じスピードでマイクの前まで歩いて行き、マイクの前まで来ると、軽く拳を合わせてから右腕を高らかに上げる。

 

 

「「宣誓!!」」

 

「我々戦車乙女一同は!」

 

「戦車道精神に則り、全ての試合で全力を尽くし!」

 

「持てる力の全てを……そう、必要ならば信号機落としや歩道橋クラッシュと言った使って!」

 

「落とし穴上等!マカロニ作戦最高!正攻法に限らない搦め手上等な戦術だって思い切り使って!!」

 

「「全力全壊で戦車道を行う事を誓います!!」」

 

 

決まったぁ!

大抵の選手宣誓では『正々堂々戦う事を誓います』って言うんだろうけど、私とペパロニさんが考えた選手宣誓にその文言はない――確かに野球やバスケットボールには明確なルールがあるから其れを違反するのは大問題だけど、戦車道はレギュレーションの所謂『四十五年ルール』さえ守ればあとは自由だから実はルールが可也緩いから、意外と試合は無法地帯なんだよね。

だからこそ正々堂々って言う文言は外して全力全壊だよ――戦車の性能で劣る学校は正面からのぶつかり合いを避けて搦め手を使う事になる訳だし、其れは大洗もだからね。

『搦め手は卑怯だ』って言う人もいるから正々堂々とは言わなかったけど、全力全壊なら問題ない――全力全壊は、持てる力の全てを注ぎ込んで戦うって言う意味だからね。

甲子園やインターハイではまず聞く事が出来ない選手宣誓は、如何だったかな?

 

 

 

「誰が相手でも全力を賭して戦う、其れが西住流の真髄!貴女は其れを分かっていますねみほ。」

 

「良い選手宣誓だったわよみほちゃん、ペパロニさん。持てる力の全てを使った全力全壊、其れが戦車道の醍醐味ですもの♪」

 

 

 

って、お母さんに千代小母様!?何で此処に――って、そう言えばお母さんは高校戦車道の、千代小母様は大学戦車道のお偉いさんだから開会式の会場に居てもオカシクナイか。

……いや、其れでも千代小母様が居るのは若干驚きだけど。

 

 

 

「私、みほちゃんのファンだから。」

 

 

 

わぁ、盛大にぶっちゃけた。そんでもってさらりと人の心を読まないで欲しいかな?……お母さんは実直で、千代小母様は自由人って言う感じだったけど、其れは間違いないみたいだね?

そして千代小母様の血は間違いなく美佳さんに継がれていると確信した――まぁ、お母さんと千代小母さんの一言があって、私とペパロニさんによる選手宣誓は満場の拍手に包まれから大成功だね。

 

 

 

「だな……お前と当たるのは決勝か。――必ず勝てよみほ。」

 

「其れはこっちのセリフだよペパロニさん……私と戦う為には四回勝たなきゃだからね?……新生アインツィオが何処まで来れるか楽しみにしてるから、失望だけはさせないでね?」

 

「へっ、失望だけはさせないぜ?」

 

 

 

ペパロニさんの自信に満ちた表情を見る限り、アンツィオは去年よりも可成り強くなったのかも知れないね……料理のデリバリーで得たお金を使えば戦力の底上げも出来た筈だからね。

そして、其れを指揮するのがペパロニさんだって言うのなら、決勝まで駒を進めるのは不可能じゃないよ……なら、先に決勝戦の椅子は大洗が貰うよ!

 

 

 

「そう来なくっちゃよ!決勝戦で当たったその時は……」

 

「手加減不要の全力全壊だね!!」

 

「あたぼーよ!」

 

 

 

今年の大会の決勝が大洗vsアンツィオになったその時は、連盟は保証宜しく……私とペパロニさんが本気で戦車道を戦ったら、ちょっとした市街地は更地になっちゃうからね。

まぁ、其れはあくまでももしもの事だから……今は一回戦に集中だよね。

突撃を切り札にしつつ、旧日本軍が得意としたゲリラ戦術も取り入れた知波単は楽な相手じゃないから、私も気を抜かずに全力で行かないとだね。

だけど負けないよ?

『隻腕の軍神』と、『突撃のヴァルキリー』……どっちが強いのか、勝負だよ西さん!

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

開会式が終われば、いよいよ一回戦の第一試合の始まりだ。

去年の夏と冬を制した大洗と、隊長が代替わりした後に急激に力を増して来た知波単の組み合わせは、戦車道通ならばある意味で垂涎の試合であると言えるだろう。

其れを示すように観客席も超満員札止めの満員御礼状態で――

 

 

「アーイムチョーノ!大洗だけ見てればいいんだオラ!

 今年もやって来たぜこの季節が!パンツァークライマックス!戦車の頂点、決めてやろうじゃねぇか!!ガッデメラ、ファッキンガイズ!!」

 

 

当然居ますよねこの人も……本業のプロレスの興行にすら遅刻するってのに、なんで戦車道の応援は時間道理に来るんですかねぇ?謎ですねぇ?

大洗のイベントに参加する日じゃなくても来るのも大分謎だけど、其れだけ大洗愛が本物って事なんだろう。そう思っておくとしようマジで。

まぁ、今日も今日とて黒のカリスマ率いるnOsの皆さんは元気一杯みたいなので観客席は賑やかであるのだが、当然この人達だけではなく……

 

 

「やってやんな隊長さん!大洗の底力は、南極のニンゲンだって倒せる事を教えてやんな!南極のニンゲン見た事ないんだけどね。」

 

「知波単がなんぼのもんじゃい!大洗舐めんじゃねぇ!いてこますぞごるぁ!」

 

「大洗爆音連合大凶天中殺三代目総長ソドム美奈子、この命を掛けて大洗の勝利の為にエールを送らせて頂きます!」

 

 

どん底のメンバーを始めとした『大洗のヨハネスブルグ』の面々も来ている訳で、大洗の応援団は何だがヤンキー塗れの底辺校の応援団並のガラの悪さになっている。

nOsは中心メンバーがプロレスラーなので強面が多いのは仕方ないが、大洗のヨハネスブルグは何て言うか『アンタ本当にJKですか?』って言いたくなるのが居るのが何とも……ピアスや派手な染髪は未だしも、モヒカンとか口ピンってJKがやる事じゃないようん。

それからね、超ロングスカートで胸にサラシ撒いてその上に特服って一体何時の時代のスケ番なのかな其れは?何か色々間違てるから其れ。

もう完全なアウトロー集団になっている大洗の応援団を率いるのは勿論黒のカリスマ!――ではなく!!

 

 

「全力で行けよみほちゃん!優花里も気張って行け!

 オレの前でみっともねえ試合しやがったら只じゃおかねぇからな!フラッグ戦だが、知波単の戦車全部ぶっ倒す位の気概で行けや!!

 オラァ、正洋テメェレスラーだろ!もっとドスの利いた声で応援しねぇか!」

 

「ガッデーム!!」

 

 

秋山理髪店の美人奥様である好子さん……普段は温厚で優しいママさんなのに、どうにも戦車道となると昔の血が騒いで『大洗の荒熊』と恐れられていた頃の性格に戻ってしまうらしい。

て言うか、立場は黒のカリスマより上ですか、そうですか……どうしてこうなった。

因みに誤解なきように言っておくと、普通の大洗の応援に来ていた方々は、此のアウトロー集団とは離れた場所で飲み物やスナック片手に普通に応援しているのでご安心ください。

 

 

 

 

「いやはや、大洗の応援団は凄いでありますね西住隊長?」

 

「うんまぁ、何時もの事だから♪」

 

 

ところ変わって此方は試合会場。――普通、試合会場から観客席は見えないのだが、姿は見えずとも声は聞こえる位に大洗アウトロー応援団の声量があると言う事なのだろう……どんな大声だよ其れ。

そしてそんな事態でも、割と対応が普通なみほと絹代がある意味で凄いね……戦車乙女は滅多な事では驚かないと言う事なのだろう。

 

 

「其れよりも西さん、此の試合楽しませてよ?突撃だけじゃなくなった知波単の底力、私が吟味してあげるから。」

 

「其れは光栄でありますなぁ?ならば我々は、大洗に勝つ事で其れに応えましょう。」

 

 

試合前の挨拶なのだが、既にみほと絹代の闘気はMAX!ドラゴンボール的な表現ならば、互いに高めた気がぶつかり合って火花放電が起きてると言った所だろう。

其れでもしっかりと試合前の握手をしたあたり、戦車乙女の礼は欠かさないと言う事なのだろう……『道』と付いている以上、礼節は疎かにしてはならないのだ。

 

 

「其れでは、此れより大洗女子学園対知波単学園の試合を始める!お互いに、礼!」

 

「「「「よろしくお願いします!」」」」

 

 

そして審判長、蝶野亜美の号令で試合開始!

出は先ず、試合前に両校のオーダーを見て行く事にしよう。

 

 

・大洗女子学園

 

パンターG型×2(パールホワイトカラーリングはフラッグ車)

ティーガーⅠ×1

ティーガーⅡ×1

チャーフィー軽戦車×1

Ⅲ号突撃砲G型×1

コメット巡航戦車×1

ヘッツァー駆逐戦車×1

Ⅳ号戦車F2×2

 

 

 

・知波単学園

 

九七式中戦車57mm砲搭載型×3(一輌は隊長車兼フラッグ車)

九七式中戦車(新砲塔)×4

九五式軽戦車×3

 

 

 

日本戦車で統一された知波単に対し、大洗が国際色豊かなのは何時もの事だ――と言うか、使用戦車が此処まで多種多様な学校など大洗以外には存在してないだろう。

戦車の車種だけでなく、国籍も違うとなれば整備面での負担がハンパなモノではないのだから……其れを毎度毎度完璧に整備しちゃう大洗の整備班ってマジで如何なってるんですかね?現役のスズキを除く、元大洗自動車部の面々の整備の腕前は『蟹みたいな髪型のイケメン決闘者』、『幼馴染が鋼の錬金術師な機械鎧技師』、『初めて見た新型ガンダムの整備もお手の物なオヤッさん』に匹敵しているのかも知れない。

まぁ、其れは其れとして一見すると大洗のオーダーは攻守速のバランスが取れているように見えるが、実はかなり大胆なオーダーだ。

と言うのも、フラッグ車はみほのパンターではなく梓のパンターなのだ――此れまでフラッグ戦では、一貫してみほ率いるあんこうチームがフラッグ車を務めていたのだが、今回は初めて梓率いるウサギチームにその役目を任せたのだ。

此れはみほが梓の事を信頼しているからこその事だが、其れ以上に驚くべき事は、ヘッツァーとⅣ号F2を投入して来た事だろう――ヘッツァーもⅣ号F2も、搭乗員は今年から戦車道を始めた子がいる戦車なのだから。

勿論、明光大付属出身者を始めとした経験者と組ませているが、マダマダ素人の域を出ていない選手を試合に出すと言うのは大胆と言えるだろう。

如何に先の聖グロとの練習試合で経験を積ませたと言ってもだ。

 

だが、そう思うのは所詮は凡人の考えと言うモノなのだろう……みほは真の天才であり、その思惑は到底凡人たる我々には理解できる筈が無いのだから。

とは言え、此の大胆なオーダーは対戦相手である知波単には結構な効果はあっただろう――大胆極まりないオーダーと言うのは、対戦相手にしてみれば、如何転ぶか分からない博打でしかないのだから。

もしも失敗してくれたら自分達が勝つが、うまくギアが噛み合ったその時は自分達が負ける……正にデッド・オア・アライブ!生きるか死ぬか!勝つか負けるか!天国か地獄か!高町なのはか篠ノ之束か……最後はどっちも地獄だな。

 

 

「此の大胆なオーダー……燃えてまいりました西住隊長!」

 

 

だが、隊長の絹代は如何やら大洗のオーダーに闘気が燃え上がったらしく、やる気元気がメガマックス!元気って変換しようとすると筆頭返還で元姫って変換するのはなんでだ?

取り敢えず、怯まなかった以上、知波単が簡単に負ける事はないだろう。

 

 

で、此の試合のフィールドだが、平坦な草原の所々に小規模の雑木林が点在するフィールドになっている……大洗からしたら真骨頂である搦め手が使い辛いが、知波単からしたら新たな戦術のゲリラ戦がやり易いフィールドである為、地の利は知波単にあると言えるだろう。

……尤も、そんな事はみほも分かり切っているので、何か対策はしているだろうが。

 

 

「其れじゃあ行くよ!Panzer Vor!!(戦車前進!!)」

 

「「「「「「「「「Jawohl!!(了解!!)」」」」」」」」」

 

 

 

「全軍出撃!」

 

「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」

 

 

 

そんな訳で試合が始まった訳だが、知波単は部隊を分散させて小規模な雑木林に潜ませて早速ゲリラ戦の用意だ……機を見ての突撃が新生知波単の必殺技ではあるが、此のゲリラ戦もまた新生知波単の必殺技なのだ。

実際に、去年の無限軌道杯ではゲリラ戦で相手の戦力を減らした上で、機を見ての突撃で勝利を収めていたのだ――今やゲリラ戦は、突撃と同じ位に、或いは突撃以上に知波単に必要な戦術になっているのだ。……まぁ、何処から襲って来るか分からないゲリラ戦と言うのは、相手にするとガチで厄介だからね。

 

其れに対し、大洗は部隊を分散させる事はせずに、隊長車を先頭に『鶴翼の陣形』で進軍して行く――鶴翼の陣形は両脇の守りが厚くなるので、中央にフラッグ車を配置すればゲリラ戦を仕掛けられたとしてもフラッグ車が行き成り撃破される事はない。

みほらしくない堅実な一手だが、其れは逆に言えばみほもまた知波単のゲリラ戦が厄介だと思っている証だ……みほが警戒するって、絹代のゲリラ戦術はドンだけなのか。

知波単の改革を本気で考えていた絹代の実力は、実は相当なモノだったと言う事なのだろう。

 

 

「(雑木林の前まで来たけど……さて、如何来るか?)」

 

 

ゲリラ戦を予想していたみほは、知波単の部隊が潜んでいるだろう雑木林の前まで来ていた――しかも此処は両脇を雑木林に挟まれている危険極まりない場所だ。

もしも両翼の雑木林からゲリラ戦を仕掛けられたら、如何に左右からの攻めに強い鶴翼の陣形であっても総崩れになる可能性はゼロではないにも拘らず此処に来たのはみほから絹代へのメッセージなのだろう。

『私達をゲリラ戦で倒せるのならばやってみろ』……大体そんな所だと思う――戦車乙女は礼節は重んじる反面、試合中の挑発に関しては一切の手加減はしない。……そうじゃなかったら、エリカが『歩く毒舌マシーン』になる筈が無いのだから。

 

そして、其れに応えるように両脇から攻撃が開始された!知波単の新たな必殺技のゲリラ戦が始まったのだ!

並の戦車乗りならば此れに驚いて、ビビッて戦意を大きく削られてしまうだろうが……隻腕の軍師であるみほ――否、みほだけでなく戦車道の常識ってモンが一切通じない大洗の面々が戦意を削られる事などない!

 

 

「やっぱり来たねゲリラ戦……各員散開!知波単に的を絞らせるな!」

 

「少し凶暴なだけの犬風情が虎に挑むとは愚かな……キングタイガーの異名を持つティーガーⅡと、大戦期最強の重戦車と名高いティーガーⅠに喧嘩を売った事、後悔させるわよ中須賀!」

 

「気が合うわね逸見……アタシも同じ事を思ってたわ!」

 

「慧眼の隼、その二つ名の由来を教えて差し上げます。」

 

 

知波単の奇襲を受けた大洗は戦意を削られるどころか、寧ろ戦意が燃え上がってバーニングソウル!実に美味しそうなレアステーキが焼けそうなほどの火加減だ。――因みに作者はステーキはレアが好みなのだが、読者諸君はどんな焼き方が好みなのだろうか?ちょっと教えて欲しい。

 

 

「今回のフラッグ車は私達兎チーム……なら、絶対に撃破される訳には行かない!全力で行くよ!!」

 

 

――轟!!

 

 

「此れは、西住隊長の軍神招来!!…遂に梓も其処に至ったんだね!!――宿した英霊は……エミヤって、あるぇ?」

 

 

でもって、此処で梓が覚醒し、みほの軍神招来を会得するに至ったが、宿した英霊は何か色々と突っ込み所があったみたいだ……何だってアーチャー宿しちゃったのさ。

まぁ、其れは其れとして、ゲリラ戦を仕掛けて来た知波単に対し、大洗は部隊を散開する事で応戦した事で、いきなり派手な戦車戦が展開される事になったが、此れは未だジャブの応酬に過ぎない。

だが、今年の大会は一回戦の第一試合から燃える展開になったのは間違い無いだろう。

 

 

「頑張れみほ、貴女がナンバーワンよ!」

 

 

……その試合を見ながら、西住流家元は、どこぞの戦闘民族の王子みたいな事を言っていた。――まぁ、みほがナンバーワンだってのは否定しないけどな。

だからこそ、そのナンバーワンに絹代が何処まで喰らい付けるのかが楽しみなのだ此の試合は。

どうなるのか楽しみだが、先ずはじっくりと試合を楽しむとしよう――隻腕の軍神と突撃のヴァルキリーの激突は、まだ始まったばかりなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 


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