ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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うん、ちょっとお祖母ちゃん殺してくるね♪Byみほ       気持ちは分かるが、落ち着けみほ…Byまほ


Panzer21『合宿5日目~伏兵は西住流家元です~』

Side:みほ

 

 

 

そんなこんなで合宿も5日目を迎えた訳なんだけど……まさかこんな事になるとは――流石に此れじゃあ、プログラム通りの練習は出来ないと思うんだけど、如何しようかお姉ちゃん?

 

 

 

 

「確かに……此れは予想外だったからね――さて、如何したものか。」

 

 

「台風が来てる訳じゃないんだけどね……」

 

 

 

 

――ドバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!

 

 

 

 

合宿5日目は、昨日までの晴天が嘘の様な、バケツをひっくり返したような大雨で、テレビの天気予報によると、熊本の降水量は多い所では1時間に200mmとの事で普通に台風を超えてる様な気がする――って言うか、台風以上だよ此れ!!

 

悪条件での練習は大事とは言っても、こんな状況じゃ戦車を使っての訓練は出来ないから、今日はミーティングが主になっちゃうかな?

 

 

 

 

「其れが無難な所なんだろうが、それではあまりにも面白くない………折角の合同合宿なんだから、普段あまりできないような事をしたいと思うんだよ私は――何かないかなみほ?」

 

 

「そう言われてもねぇ?

 

 ん~~~~……其れじゃあいっその事、今日一日は遊んじゃう?

 

 将棋とかチェスとか戦略性の高いボードゲームをメインに、戦車を使う対戦型のビデオゲームとかも使って、遊びの中から学んで貰うって言うのは如何だろう?悪くないと思うんだけど。」

 

 

「よし、それで行こう。午後は、身体を動かせるように、室内で出来るスポーツで汗を流しても良いかもしれないしな。

 

 この悪天候では戦車を動かす事は出来ないから、そう言う形での訓練が適切なのは言うまでもないし、黒森峰ではまず行われない事だからいい刺激にもなりそうだ。」

 

 

 

 

午後は体を動かす遊び……うん、其れで行こう!

 

一見遊びに見える事でも、実は自分の実力の底上げになってたなんて言うのは案外少なくない事だから、まさかの土砂降りであっても、私達の成長の妨げには一切ならないよ!

 

何よりも、どんな訓練だって、訓練を受ける側に『向上心』があれば、絶対にプラスになる訳なんだから♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer21

 

『合宿5日目~伏兵は西住流家元です~』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:ナオミ

 

 

 

まさかの大雨という事で、今日の訓練は色々なゲームを使っての訓練という事だったけど……大型筐体のゲームを用意する事が出来るって言うのは、ドレだけの財力があるのよ西住流は!?

 

普通にゲーム機が数台あれば済む事でも、ガンコン標準装備の筐体を用意するとは、流石は西住流と言った所なのかしら?――つぼみがやってるレースゲームも、バイク型の操縦席を有したモノだしね……いっそ、突っ込む事が間違いかも知れないわ此れは。

 

 

でも、揃えた物は兎も角として、このゲームを使った訓練て言うのは決して悪くない。恐らくは、合宿参加者全員が思ってるんじゃないかしら。

 

私のやってるシューティングゲームは砲手としての正確な照準セットの訓練になるし、つぼみのやってるレースゲームは操縦能力の向上に繋がり、青子がやってる腕相撲ゲームは装填士の筋力強化になる。

 

何よりも、みほやまほさんがやってる『将棋』や『チェス』と言ったボードゲームは、車長に必要な能力を鍛えるには持って来いのモノだしね?

 

 

さてと、ガンシューティングはパーフェクトクリアしたから、部長とまほさんのチェス対決でも観戦しようかしら?――一体何方が勝ってるのか。

 

 

 

 

「チェックメイト。」

 

 

「またぁ!?……ぐ……ぐぬぬ……これ以上キングを逃がす事は不可能みたいね――参りました!」

 

 

 

 

って、決着がついたみたいね?勝ったのはまほさんか……流石と言うか何と言うか、矢張り常勝校の隊長を務める人は戦車道でなくても、戦略性の高い戦いって言うのは得意みたいね。

 

 

 

 

「将棋ではギリギリ競り負けたが、チェスは私の趣味だから将棋よりも得意なんだ。

 

 チェス勝負だったら、此処にいる誰にも負けない自信があるぞ?其れこそ、チェスだけはみほにだって負けた事は無いからな。」

 

 

「うわ、そりゃ勝てないわ。」

 

 

 

 

チェスが趣味……なんだろう、物凄く納得すると言うか似合ってる気がするわね?と言うか、みほが敵わないんじゃ、本気で誰もまほさんにはチェスで勝つ事は出来ないと思うわ。

 

 

 

 

「でも、将棋だったら西住妹は隊長に勝つわよ絶対に。」

 

 

「その様子だと、今し方みほに将棋でコテンパンにされたみたいねエリカ?

 

 だけど、貴女がそう言うのは意外ね?貴女なら、余程の事がない限りはまほさんが勝つって言うんじゃないかって思っていたんだけど?」

 

 

「私だってそう言いたいけど、取った相手の駒を使える将棋だと、あの子の戦略の幅が恐ろしい程に広がるのよナオミ!

 

 しかも、取った駒を絶妙なタイミングで最高の場所に打って来るんだから、誇張抜きで未来が予測できてるんじゃないかって疑ったわよ!!

 

 こう言っちゃなんだけど、あの子って本気で未来予知の能力でも持ってんじゃないの!?そうじゃないと、アレは説明できないでしょう!!」

 

 

「私も、将棋では100手に満たずに負けちゃいましたからねぇ……」

 

 

 

 

小梅も負けた訳ね?――流石はみほって言う所だけど、取った駒を自分の手駒で使えるからこそ、みほは将棋が強いのかも知れないわ。

 

チェスは取った相手の駒を使う事は出来ないから、自分の残存戦力のみで戦う事になるけど、将棋は取った駒を使う事が出来るから、戦略の幅で言うのならばチェスの比じゃないのよね?

 

そして、戦術の幅が広くなれば、其れはみほの能力を最も生かす事が出来る事になる訳だから、将棋でみほが無双するのは当然か。

 

限られた戦力の中でも一流の戦術を立てられるみほが、取った駒を手駒に出来るとなったら、その戦術は無限の広がりを見せるだろうから、勝つ事は出来ない――改めて、みほは規格外だわ。

 

尤も、だからこそ私の思いを現実にしてくれるって思えるのだけどね。

 

 

ふぅ、其れじゃあ気分転換に、戦車のゲームで勝負しないエリカ?

 

対戦型だから、基本的に1vs1のタイマン勝負――正直な事を言うと、貴女と戦ってみたいと思ってたのよエリカ。

 

 

 

 

「其れは光栄ね……受けて立つわ、ナオミ!」

 

 

 

 

其れじゃあ早速始めようかしら?――って、ん?

 

 

 

 

 

「何をやっとるか貴様等ーーーーーーーーーーー!!」

 

 

 

 

 

行き成り、着物姿のお婆さんが現れて怒鳴り込んで来た?……誰だこの婆さん――恐らく『西住』の関係者なんだろうとは思うのだけれど。

 

 

 

 

「お祖母ちゃん……」

 

 

「お祖母様……」

 

 

 

 

って、みほとまほさんのお祖母さん?

 

という事は、西住流の現家元……そんな人が中学生の合宿に一体何の用があるって言うのかしら?しかも、行き成り怒鳴り込んで来るなんて、ちょっと神経を疑うわね。

 

 

 

 

「何を遊び呆けておるか馬鹿者共が!

 

 戦車道に身を置く者には休みなどない!遊んでる暇があったら戦車を動かし、そして己を向上させんか、この未熟者達めが!!

 

 大体にして、天下の黒森峰が、弱小校と合同合宿を行う事自体があり得んわい!如何に善戦したとは言え、所詮は弱小校……西住流を体現している黒森峰には、何の利益もないわ!!」

 

 

「……お言葉ですが、お祖母様、明光大は決して弱小校等ではありませんよ?

 

 戦車道にまぐれ無し、有るのは実力のみ――そう仰っていたのはお祖母様ではありませんでしたか?ならば、明光大は、間違いなく強い。

 

 もっと言うのならば、明光大を弱いと仰るのならば、その明光大に苦戦した我が黒森峰もまた大した事は無いという事になりますが?」

 

 

「明光大は弱くないよお祖母ちゃん……って言うか、この合宿はお母さんが提案して、私とお姉ちゃんで企画した物だから、口出ししないで貰えるかな?

 

 日程そのものは決まってるけど、今日みたいに突発的な事態で戦車を動かす事が出来ない事態が発生した場合に、その日の訓練は如何するかは、私とお姉ちゃんに決定権がある。

 

 私とお姉ちゃんは、今日は此れが適当だと決めたの……其れをとやかく言う筋合いはお祖母ちゃんにはない!」

 

 

「そう言う訳です……何よりも、この合宿に関しては貴女は部外者ですよお祖母様。

 

 故に早々に立ち去って頂きたい、合宿参加者の士気にも関わるのでね――合宿に関わりたいのであれば、企画者であるお母様に許可を取ってからにして頂きたい。」

 

 

「……ふん、そう言う事ならば仕方ない、この場は退くとしよう。

 

 じゃがなまほ、お前はきっと後悔する事になるぞ、弱小校との合同合宿を行ってしまったという事にな。」

 

 

「後悔するかどうか、其れを決めるのは私ですから。」

 

 

 

 

……どうやら、西住流の現家元は、何とも面倒な性格をしてるみたいね?

 

黒森峰を常勝不敗と疑わず、西住流こそが戦車道の最高の流派であって、それ以外は取るに足らない有象無象……そう思っている感じをヒシヒシと感じたわ――少なくとも、仲良く出来る相手ではないわね。

 

 

 

 

「まぁえぇわい。

 

 弱小校の子娘どもよ、精々黒森峰を強くするための踏み台になっておくれ……如何に準決勝に駒を進めてきたとはいえ、所詮は弱小校。

 

 圧倒的な力の差を思い知って、折れて潰れてなくなってしまえばいいわ!ふわ~~~っはっはっは!!」

 

 

 

 

……『さっさとくたばれ糞婆』と思ったのは私だけじゃないわよね?

 

その証拠に、明光大の生徒全員は勿論の事、黒森峰の生徒ですら去りゆく家元様に対して『F○ck you』のポーズを取って居たんだからね。

 

 

 

 

「この陰険婆、犬にでも食い殺されちまえ。」

 

 

「何か言ったかぇ?」

 

 

「……Addio e le feci zia~~♪(さっさとくたばれ、クソ婆~~♪)」

 

 

「フン……」

 

 

 

 

で、度胸あるわね青子?

 

小声の悪口が聞こえたかと見るや否や、イタリア語で思い切り言うとは……家元様は、意味が分からなかったらしく、鼻を鳴らして今度こそ居なくなったけど、場の雰囲気は悪くなったのは言うまでもないわ。

 

 

 

 

「全くお祖母ちゃんは……お母さんが、菊代さんに監視させとくって言ってたのに、どうやって菊代さんの監視の目を逃れて来たんだろう?」

 

 

「さぁな……老いたとは言え、西住流の家元を務めている人だから、妙な所で隙を突くのが巧いんだろうさ。

 

 ふぅ――諸君、西住流の家元が、引いては私達の祖母が無礼を働いた事を謝罪する。特に明光大の皆には非常に不快な思いをさせてしまった……すまなかった。」

 

 

「ゴメンね皆、真剣にやってた所に水を差すような形になっちゃって。」

 

 

「そんな……頭を上げて下さい隊長!其れに西住さんも!」

 

 

「そうです、悪いのは隊長達じゃありません!」

 

 

「あの陰険婆の性格が最悪に悪いだけだっつ~の!

 

 みほもまほ姉ちゃんも何も悪くねー!てか、マジでムカつくなあの糞婆!本気でパンターの75mm砲をブチかましてやりたくなったっての!」

 

 

 

 

青子の考えは、ちょっと危険……とは言い切れないか、私もちょっと思った事だし。

 

だけど皆の言う通りよみほ。其れにまほさん。

 

此処に居る誰もが、貴女達姉妹が悪いとは思ってないわ――と言うか、行き成り合宿の場に現れて難癖つけて来た、家元様の思考形態の方がオカシイのよ。つぼみもそう思うでしょ?

 

 

 

 

「マッタク持って、常識を疑うわ!

 

 大体にして、ちょっと見ただけで、私達がどれ程真剣にやってるかも理解しないで『遊び』呼ばわりとは、天下の西住流の家元が聞いて呆れると言うモノよ!

 

 あの方は、出来るだけ早く隠居して頂いて、しほ小母様が家元を襲名した方が良いんじゃないかしら?」

 

 

「と、まぁそう言う訳だから、責任は感じないで。全ては、空気を読まなかった家元様が悪いんだから。」

 

 

「そうか……そう言って貰えると、此方としても少しばかり気分が軽いよ。――矢張り、身内が皆の気分を害したと言うのは、気が重いしね。」

 

 

「ありがとう。――でも、それなら尚の事、この合宿でレベルアップしないとだね!

 

 この合宿を経て明光大も黒森峰もレベルアップすれば、幾ら石頭のお祖母ちゃんでも合宿は無意味じゃなかったって認めざるを得ないだろうし、明光大は弱小じゃないって証明できるからね!

 

 今日を含めて、合宿は残り少ないけど全力で頑張りましょう!!

 

 

「「Panzer Vor!」」

 

 

「「「「「「「おーーーーーーーーー!!」」」」」」」

 

 

 

 

で、気を持ち直した西住姉妹の号令で、嫌な雰囲気は一気に霧散したわね……此れもまた、みほとまほさんのカリスマ性が成せる物なんだろうけど、流石としか言いようがないわ。

 

みほもまほさんも、タイプは違うけど『生まれながらのリーダー気質』なんでしょうねきっと。

 

 

だけど、そのお蔭で練習を再開できる雰囲気になった訳だから、さて、次は何をしようかしら?

 

 

 

 

「ナオミ、シューティングゲームで勝負しない?」

 

 

「エリカ……貴女は車長だと思ったんだけど、そんな人がシューティングで私と勝負しようって言うの?」

 

 

「そう思うだろうけど、小学校の頃は、基本は車長だったけど、殆ど全てのポジションを試合毎に熟してたから砲手だって出来るのよ私は。」

 

 

 

 

まさかのオールラウンダーだった?……なら、受けて立とうじゃないエリカ。

 

だけど敢えて言わせて貰うわ――オールラウンダーで何でも熟せるからって、小学校の頃から砲手一本でやってきた私に勝負を挑むのは愚の骨頂であるとね!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

 

ふぅ……午前中はまさかのお祖母ちゃんの乱入も有ったけど、皆があまり気にしないでくれたおかげで、あまり滞る事なく練習が出来たね。

 

そして午後は、室内スポーツでフィジカルトレーニングを兼用した『遊び』で汗を流した――片腕って言う事で、私が出来るスポーツは限られて来るけど、テニスや卓球なら問題ないし、フットサルやセパタクローは寧ろ得意分野だから全然OKだった。

 

 

逸見さんからは『一体どんな運動能力してんのよ!?』って言われちゃったけど、片腕のハンデを埋める為に彼是色々やって来たから、足技は得意だとしか答えようがなかったかな。

 

まぁ、その答えも『アンタハンパ無いわ』って言ってたから、納得はして貰えたんだろうけどね。

 

 

でも、午後のスポーツも間違いなくプラスにはなったんじゃないかって思うな。少なくとも、合宿参加者全員の運動能力は底上げされたのは間違いない事だと思うよ?

 

運動の仕上げには、西住流ストレッチを行って、筋肉の強さを保ちつつしなやかさを損なわない状態を保持した訳だからね――このストレッチを考えたお母さんは、本気で凄いと思うけど。

 

 

 

で、今日の訓練をすべて終えて、今は皆で温泉でマッタリ中~~……ふぅ、生き返るなぁ~~~♪

 

 

 

 

「死んでたのか!!……と言う突っ込みは野暮よね。

 

 そう言う私も、密かに訓練終了後の、この温泉は楽しみだから――ホント、この温泉は疲れた身体によく効くわ~~、身体が溶けそうね。」

 

 

「逸見さん、腕が溶けかけてます。」

 

 

「嘘!?」

 

 

「うん、嘘♪」

 

 

「だろうとは思ったけど、やっぱり嘘かよ!って言うか、大人しそうな見た目のくせにやってくれるじゃないのよ西住妹!OK、一発殴らせろ!」

 

 

 

 

うん、其れは無理です♪

 

だけど、こうしてみると、逸見さんてきれいな肌してますね?白くて透き通る肌……憧れちゃいます。

 

おまけに、細身なのに付くべきところに必要な筋肉がついてて、それでいて太くない上に全身のバネは失われてないんですから、正に理想の体型だと言っても過言じゃありません。

 

 

ホント、羨ましい身体ですよ。

 

 

 

 

「うひゃん!?……ちょ、突っつかないでよ!

 

 って言うか、貴女だって負けてないでしょ西住妹?――中学女子で腹筋が割れてる子っ何てそんなに居ないと思うし、それに胸だって…」

 

 

「……胸ね?――逸見さん、お姉ちゃんをご覧あそばせ。」

 

 

「隊長を?……成程。」

 

 

 

 

――バイーン

 

 

 

 

戦車道に限らず、上には上がいるモノなんですよ逸見さん。

 

 

 

 

「そうね……精進、したいわね胸に関しては。」

 

 

「つまりそう言う事です。」

 

 

「……みほと逸見、何かあったのか?何やら、凄い形相で睨んでいるが……」

 

 

 

 

うぅん、何でもないよお姉ちゃん――神様は兎角不公平なんだって言う事を、逸見さんと語ってただけだから、気にする事じゃないし、気にしたら負けだよお姉ちゃん!!

 

 

 

 

「では、深入りしない方が良さそうだ。」

 

 

「うん、深入りしないでね?要らない所で、話がややこしくなりそうだから。」

 

 

「みほがそう言うのならば、そうなのだろうな……時に、一緒にサウナは如何だ?

 

 サウナの健康増進効果は世界的に知られている事だが、こと戦車道に身を置く者にとっては可成りの効果が期待出来るらしい――筋肉疲労の緩和は勿論の事、熱い蒸気には、其れを浴びた直後に体を冷却する事で思考能力が向上する事が出来るらしいからね。」

 

 

 

 

へ~~~……そうだったんだ、知らなかったよ。

 

だけど、そう言う事ならサウナを使わない手はないね?何よりも、沢山汗をかいた後のご飯は美味しいから、此れは外せないかもだよ!此れが、戦車道の能力向上に繋がると言うのなら尚の事ね。

 

 

合宿は残す所僅かだけど、だからこそ確信できる――明光大も黒森峰も、合宿を始める前とは比べ物にならない位に全ての面でレベルアップしていると言う事をね。

 

 

 

因みに、この後私と逸見さんは、互いに譲らずに意地を張り続けたせいで、すっかり逆上せてしまい、翌日にお姉ちゃんから有り難いお説教を喰らう事になったのは、いい思い出だろうね。

 

 

うぅん、此れだけじゃなくて、この合宿の全てが、私にとっては良い思い出だよ――だって、二度と同じ事は起きないんだからね。

 

だから、この合宿を皆と一緒に行い、そして此処まで来れた事が嬉しくて堪らないって言う所かな……だから、残り二日も頑張って行こう!!

 

 

 

 

「「「「「「「「おーーー!」」」」」」」」

 

 

 

 

二度と弱小校とは呼ばせないし、お祖母ちゃんにも明光大の実力を認めさせる――だからこそ、この合宿を完走しないとだよ!この合宿で根を上げてるようじゃ、勝てる相手にも勝てなくなるかもだからね。

 

 

さぁ、明日も全力で行くよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:しほ

 

 

 

お母様がみほ達に接触したか……みほとまほが咄嗟に対処してくれたおかげで、最悪の事態だけは避けられたみたいだけど、みほとまほから上がってきた報告書を読む限り、お母様が好意的に捉えられる事はないでしょうね、明光大と黒森峰の両方でね――正直、お母様は自分の望む『西住流』を追い求め、其れが何時しか勝利のみを追い求める『戦車道の鬼』と化してしまったのだから、笑い話にもならないわね。

 

 

「菊代、明日からは、お母様への監視の目をより厳しくしてくれるかしら――出来るわよね?」

 

 

「御意に……今日の事も、私の至らなさが招いた事ですので、かほ様への監視の目を一層強化しますよ奥様――私としても、まほお嬢様とみほお嬢様の進む道が潰されるのは本意ではありませんから。」

 

 

 

 

そう、ならお願いするわ。

 

 

 

 

お母様、私は貴女の言う西住流を全て否定します。

 

仲間すら犠牲にして掴んだ勝利には何の価値もない……戦車道は戦争ではなく、あくまでも技能を競うスポーツであるのですから、勝利至上主義は何れ淘汰される運命にあるのですよ。

 

近い内に、みほとまほが其れを証明してくれる筈だわ。

 

 

まぁ、其れは其れとしても……この子達は寝てるのよね?なんだか寝息が念仏を唱えているように聞こえるんだけど、私の気のせいかしら?

 

 

 

 

「気のせいではありませんから安心して下さい奥様、私にもそう聞こえますので。」

 

 

「其れが逆に性質悪いわね。」

 

 

「さもありなん。――或は、お嬢様たちは悟りの境地に至ったのかもしれませんね。」

 

 

「尤もらしい事言うな。」

 

 

でも、あの子達が、その領域に達すると言うのは、決してない話ではないわ……親バカかもしれないけど、まほもみほも間違いなく現代最強の戦車乗りであるのは間違いないのだから。

 

 

そしてこの子達こそが、西住流を本来のあるべき姿に戻してくれると私は信じているわ――お母様が固執する、『古い西住流』は淘汰され、その上で消えて行くものでしかないのだから。

 

 

 

カビが生え、錆び付いた古流流派は現代には必要ない――古き西住流には去って貰い、新たな西住流を作り出す…その時期に来てるのかもしれないわね。

 

 

尤も、其れは願ったり叶ったりだったのだけれどね。

 

 

 

この合宿が完遂し、みほとまほが新たなステージに上ったその時に、西住流は新たな力を得る事が出来る――私はそう信じているわ!!

 

だから、頑張りなさいみほ、まほ――貴女達の能力は、既に全盛期の私とお母さまを凌駕しているからね……貴女達に敵は皆無よ!!!!

 

そして、戦車道に新たな風を吹き込んで……貴女達ならば、それが出来る――私は、そう信じているからね!!

 

 

合宿は残り二日……頑張れみほ、まほ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 


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