ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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アイスブルーのパンター……Byみほ         取り敢えず、強そうなのは確かねByナオミ


Panzer2『此れは運命の出会いです』

Side:みほ

 

 

「よし、新入部員は此れで全員ね?

 諸君、ようこそ我が校の戦車道部に。よく来てくれたわ。今年は定員割れも覚悟していただけに、貴女達の入部は心から歓迎するわ。マジ感謝よ。

 私は部長にして隊長の、『近坂凛』よ。以降宜しくね。」

 

 

 

初日に現れたのは、隊長と現在の隊員の先輩達。

隊長さんと併せた数は12人……既存部員で3チームって所で、私達1年生を合わせて、最大で10チームを構成可能になるって言う事だよね。

中学での戦車道の大会は最大使用車両が10輌で固定されていて、戦車の台数で劣る事は無いって言う事になるから、後は練習次第で、他校との錬度の差は埋めて行く事が出来る――此れなら何とかなるかも。

 

 

 

「さて、諸君も知っての通り、我が校の戦車道部は、中学全国大会に出場してからと言うモノ、毎年1回戦負けで、弱小校と認識されているわ。

 まぁ、戦績が戦績だけに、其れを否定する事は出来ないのかもしれないけど、私は自分の母校が弱小呼ばわりされるのは我慢できないのよ。

 だから、何としても、今年こそは1回戦を突破し、叶うのならばそれ以上の戦績を収めたい!!

 貴女達には、その為に力を貸してほしいのよ!!」

 

「言われるまでもありません!!私は、この学校を頂点に導くために入学したんですから!!」

 

「右に同じ~ってね!!アタシも、みほに同調した口だからな……目指すは、天辺だけっすよ!!」

 

「アタシも、みほに賛同するよ。

 この学校をアタシが在学中に優勝に導く……それが、アタシと親との間で交わされた、アタシが戦車道を続ける為の条件だし、何よりもこう言うのも、面白そうだからね。」

 

「私も同意よ!

 第一にして、其れ位の事が出来ないのであれば、私の腕は其れまでだったと言う事ですもの!!」

 

 

 

皆……うん、此れだけの仲間がいれば、きっと如何にか出来る筈!

近坂隊長の夢を実現する為のお手伝い、全力でさせて貰います!――其れが、きっと私達の目的を達成する事に繋がると思いますからね♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer2

『此れは運命の出会いです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「威勢がいいじゃない、今年の1年は。――えぇっと、片腕の貴女、名前は?」

 

「西住みほです。」

 

「へ?西住って、あの西住!?西住流の!?」

 

 

 

はい、その西住です。――尤も、見た通りの片腕なので、私は純粋な西住流という訳ではありませんけれど、戦車道には其れなりに精通している心算です。

尤もやる以上は、誰が相手であっても全力を賭して戦う心算で居ますけれど。

 

 

 

「成程ね……だけど、其れだけに大歓迎よ、西住みほ!!貴女ならば、即戦力になるのは間違いないわ!!」

 

「私だけじゃなくて、ナオミさんとつぼみさんも経験者ですから即戦力になると思いますよ?

 もっと言うなら、青子さんは未経験者だけど、きっと直ぐに戦車に慣れてくれると思いますし、青子さんが集めて来た新入部員だって、きっと直ぐに、戦車に慣れてくれると思いますから。」

 

「え?……えっと、新入部員で、戦車道の経験ある人手を上げて?」

 

「「「はーい。」」」

 

「3人!?……いえ、新入部員が居た事だけでもありがたく思わないと罰が当たるから、此れは喜ぶべき事よね。」

 

 

 

まぁ、青子さん曰く『まだどの部活に入るか決めてない女子を20人引っ張って来た』との事ですから。――其れは其れとして、この学校が所有してる戦車は、何がドレくらいあるんでしょうか?

 

 

 

「良い質問ね西住。

 我が校が所有してる戦車は、ティーガーⅠが2輌、パンターG型が2輌、Ⅲ号戦車J型が4輌、Ⅲ突F型が2輌の計10輌となっているわ。」

 

「此れは……可也高性能な戦車が揃ってますね?

 ドイツの最強重戦車として名高いティーガーⅠに、大戦期最強の呼び名も高いパンター、小回りの利くⅢ号、そして強力な主砲を搭載したⅢ突……ドイツ系の優秀な戦車が揃っているんですね。」

 

其れを踏まえると、如何して毎年1回戦負けなのかが逆に不思議になってくるんですけれど……

 

 

 

「幾ら戦車の性能が良くても、勝ちたい気持ちが無いんじゃ、試合に勝つ事は出来ないわ。

 この学校の戦車道は、元々『戦車道愛好会』っていう同好会から始まった事もあって、大会とかで勝つ事をそれほど重視していなかったのよ。

 勿論、勝つ事が全てだとは言わないけれど、戦う以上はヤッパリ勝ちたいじゃない?

 だけど、昨年の3年生達は、その気が薄くて勝てなかったの。――けど、私は私の在学中に、この学校を大会で勝たせたいって思ってるの。」

 

「そう言う事でしたか。」

 

確かに、幾ら戦車が高性能でも、乗り手の気持ちが宙ぶらりんだったら、その力を発揮する事は出来ませんからね。

西住流の『鋼の心』じゃないですけど、ヤッパリ確りと目標を持って居ないと、どんな事でも結果を出す事って言う事は出来ないと思いますから。

 

 

 

「だよな~~?高スペックでも乗り手がヘッポコじゃあ意味がねぇ。

 逆に言うなら、ヘッポコスペックでも、乗り手に気合が入ってりゃ、本来のスペック以上の性能を叩きだす事だって出来るって事だからな!!」

 

「ある意味で至言ね青子。

 時に隊長、その制服のリボンの色は2年生よね?他の先輩達も全員2年生……3年生は居ないのかしら?」

 

「……非常に嘆かわしい事だけれど、一昨年は新入部員が0で、去年私達が入部しなかったら廃部になってたのよ戦車道は。

 で、3年生は全員卒業しちゃったから、今年2年生になった私が隊長って訳。2年生で隊長ってのは違和感があるかも知れないけど、納得してくれると助かるわ。」

 

 

 

別に違和感なんて無いですよ?

私のお姉ちゃんなんて、1年生で黒森峰とジュニアユースの隊長務めてますし、お母さんも現役時代は中学、高校、大学で1年生から隊長やっていたそうなので。

 

 

 

「何てハイスペック……此れが西住流!

 コホン、其れじゃあずっと外でって言うのもあれだから、貴女達が乗る戦車を見て貰う為にも、格納庫の中に入ってみましょうか?どうぞ~。」

 

 

 

おじゃましま~す……って、うわぁ~~!

此れは、思ってた以上にしっかりとした格納庫ですね?外観から、レンガ造りなのは分かってましたけど、内部もしっかりしてて頑丈そうですし、何よりも、其処に並んでる戦車達も、よく手入れされてて凄く綺麗です!

 

 

 

「ま~~、隊長と気合い入れて頑張ったからね?

 新入生を迎えるのに、格納庫が汚くちゃダメだし、戦車だってちゃんと綺麗にしておかないとダメだって言って、春休み中から休み返上で洗車と掃除をしたからね~~~?」

 

「その甲斐は有ったでしょう?」

 

「そうだったんですか……お疲れ様です。」

 

綺麗に掃除された格納庫に並ぶのは、オキサイドレッドで塗装された戦車達。此れから私達と一緒に戦って行く事になる大切な仲間達――なんだけど、その中に、1輌だけアイスブルーの塗装のパンターが?

 

あの、近坂隊長。あのアイスブルーのパンターは何か特別な戦車なんですか?

 

 

 

「あ~~~…アレねぇ?アレは何て言うか『じゃじゃ馬』なのよ言うなれば。

 もう1台のパンターは普通に動かせるんだけど、アレだけは私達じゃどうしても言う事を聞いてくれない暴れ馬で、間違えないようにアイスブルーのカラーリングにしてるって訳。

 この子をちゃんと動かす事が出来れば、ウチの戦力も底上げが出来るんだけどね……」

 

「じゃじゃ馬ですか……」

 

設計が同じならどうしてそんな事が起きるのか分からないけど、だけどこのパンターは多分『動きたがってる』と思う。

乗り手が居ないからって、格納庫の肥やしになってるのは幾ら何でも勿体ないし――隊長、このパンター、私が乗っても良いですか?

 

 

 

「え?い、良いけど、さっきも言った通りこの子はじゃじゃ馬よ!?

 幾ら西住でも、其れを乗りこなすのは難しいと思うわよ!?」

 

「戦車は1人で動かすモノじゃありません。青子さん、ナオミさん、つぼみさん……お願いします!」

 

「よっしゃ、任せとけって!!じゃじゃ馬だろうが何だろうが、手懐けて見せようじゃねぇか!ノリと勢いで、何とかできるかもだしな!!」

 

「暴れ馬ほど、手懐けた後は頼りになるって言うからね……OK、任せなさい。」

 

「寧ろ、じゃじゃ馬位の方が、操縦士としては楽しい位だわ!

 其れに、じゃじゃ馬の暴れ馬を使い熟す事が出来ないんじゃ、とても戦車道の天辺なんて目指す事は出来ないもの!!」

 

「と、言う訳で、この『アイスブルーのパンター』には、西住みほ以下3名が搭乗すると言う事で宜しいでしょうか、近坂隊長?」

 

「乗るって言うなら構わないけど、動かせるかどうかは保証できないわよ?」

 

 

 

大丈夫です。きっとこの子は、私達の思い通りに動いてくれます。――動かしてみても良いですか、近坂隊長?

 

 

 

「良いけど……キツイと思うわよ?」

 

「大丈夫です。つぼみさん、行けますか?」

 

「大丈夫よみほさん。

 流石は大戦期最強の呼び声も高いパンター、操縦系統もしっかりしているわ。」

 

 

 

其れじゃあ行きましょう!Panzer Vor!!(戦車前進!!)

 

 

 

――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……グゥゥゥゥン!!

 

 

 

「んな!?このじゃじゃ馬が、大人しく起動したですってぇ!?

 私達が幾らやっても、直ぐにエンストするのは日常茶飯事で、動いたら動いたで全く言う事を聞いてくれなかったこの子が、こうも簡単に…!

 或は、自分の乗り手を待っていたとでも言うのかしら?……非現実的な、見解ではあるけれど。」

 

 

 

その可能性はあったのかもしれません――だとしたら、此の子の乗り手として認められたって言う事を誇りに思わないと罰が当たっちゃうかも。

だけど、私達が乗り手として認められたって言うなら、其れには全力で応えないと嘘だよね!

 

「つぼみさん、格納庫を出たら、其のまま演習場を50m直進して、其処で急旋回して車体を砲撃訓練用の的に向けて下さい。

 青子さんは、急旋回が始まったと同時に弾丸を装填して即時砲撃が出来るように準備を。ナオミさんは、停止と同時に撃てるように狙いを定めておいてください。」

 

「かしこまりよ、みほさん!」

 

「OK、やれって言うならやってやるぜ!!」

 

「一発必中……狙った獲物は逃がさないわ。」

 

 

 

其れじゃあそのまま進んで下さい。

 

――よし、此処がジャスト50m!戦車停止!……Schuss!(撃て)

 

 

 

「吉良ナオミ……目標を狙い撃つ!!」

 

 

 

――ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!

 

 

 

お見事!

高速で走る戦車が停止したのと同時の砲撃で、1000メートル離れた的に、其れもど真ん中に命中させるなんて、凄いですよナオミさん!!

 

其れだけじゃなく、つぼみさんの操縦技術も見事だったし、何よりも青子さんの装填速度は、未経験者とは思えない程のスピードだったよ!?

パンターの重い砲弾を、アレだけのスピードで装填する事が出来る装填士は、下手したら西住流の門下生にも存在してないかもしれないから。

 

 

 

「へっへ~~!アタシも結構やるだろ?こう見えて、腕力には自信あるんだ~~♪」

 

「此れ位ならば、造作もないわよ、みほさん。」

 

「確かに、じゃじゃ馬の聞かん坊だけど、其れだけにこの子は乗り手の思いに応えてくれるわ。

 それに、この子のトリガーは凄く手に馴染むから、慣れれば多分、今と同じ状態から2000m先の的だって撃ち抜けるかもしれないわね。」

 

 

 

其れは幾ら何でも凄すぎだけど……如何ですか、近坂隊長?

 

 

 

「どうもこうも無いわ……貴女達4人は、このアイスブルーのクルー以外には有り得ないわ本気で!

 折角の戦力なのに、誰も動かせないからお蔵入りさせようと思ってた戦車を、こうも見事に使い熟して見せるとは……正直、信じられないわ。」

 

「でも、現実にこうして動いちゃいましたから♪

 このパンター、私達の専用機にしてしまっても構いませんか、近坂隊長?」

 

「是非もないわ。

 元より、性能の高いパンターが増えるなら、戦力は増強されるからね……まさか、こうなるとは思って居なかったけど、此れは嬉しい誤算ね。

 この戦力増強は有り難い事だから、そのパンターは、貴女達に預けるわ西住。」

 

 

 

はい、預かりました!

この子だったら、きっと私達の仲間として活躍してくれるのは間違いないと思うから!!――宜しくね、アイスブルーのパンター♪

 

 

 

『……………』

 

 

 

私の呼びかけに、戦車が応えた……少しだけ、そんな感じがしたね。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:まほ

 

 

ふむ……今年の1年では、エリカ以外では赤星が特出しているな?――此れならば、即一軍に昇格させても問題は一切ないだろうね…多分。

此れだけの力を有する新入生が、此れから3年間、黒森峰の厳しいトレーニングで鍛えられたらどうなるのか、私にも想像はつかないな。

 

加えて、みほが中学で結果を残して、黒森峰の高等部に進学して来るのは略間違いないだろうからね。……他校とのスカウト合戦になる可能性もまた、有り得ないとは言えないだろうが……

 

そうなったらそうなったで、みほとエリカを次代の隊長、副隊長として育てる事も考えておかねばならないだろうな。まだ先の話ではあるけれど。

 

 

ともあれ、先ずは今年の中学全国大会で結果を残さねばならないだろう。

去年は黒森峰の一強状態(2回戦で戦った、眼鏡の三つ編み――安斎が居る学校は手強かったが)だったが、今年は他校にみほが居る以上、簡単に優勝する事は出来ないだろうな。

 

自覚は無いだろうが、みほには天性のカリスマ性があるから、自然と人が集まってくるからね……私にはない、みほの才能だ。

 

だが、そうであるからこそ、私は最強の王者としてみほの前に立たねばな。――其れこそ、みほと戦うまではパーフェクト勝利位は成さねばな。

 

 

如何やら今年の大会は、例年になく荒れるかも知れないな。

 

 

そして、台風の目となるのはみほと安斎か……面白い!

何方が私に前に立ち塞がったとしても、相手にとって不足は無い――西住流に撤退の文字は無いから、真正面から受けて立ってやろう!!!

 

 

 

「隊長?」

 

「エリカ……今年の大会、言うまでもないだろうが、勝ちに行くぞ。」

 

「――はい!!勿論です!!」

 

 

 

競うべきライバルが居ると言うのが、これ程心が奮い立つものだとは思わなかったよ――もしもみほと安斎が私の敵として立ちはだかると言う事がなかったら、私は永劫この感覚を知らなかったかも知れんな。

 

 

 

 

大会で戦うのを楽しみにしているよみほ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 






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登場人物補完




近坂凛

・明光大付属中学校の戦車道チームの隊長を務める2年生。長い茶髪を一本に纏め、眼鏡をかけている。
『Fate』の『遠坂凛』のコスプレをすると、本物かと思う位によく似ている――らしい。(あるレイヤーさんからの情報。)
自身の母校が戦車道に於ける『弱小校』のレッテルを張られている事を不満に思っており、其れを払拭すべく大会での躍進を誓っている。
搭乗戦車は『ティーガーⅠ』


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