ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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お姉ちゃんが負けた……なら、仇を取らないとね?Byみほ      ……何となく、殺意の波動に目攻めてないみほ?Byナオミ      微妙に目覚めてるわね…Byつぼみ


Panzer35『決勝戦の相手は予想外です!』

Side:まほ

 

 

 

『黒森峰フラッグ車、ティーガーⅠ行動不能!愛和学院の勝利です!!』

 

 

 

 

……負けたか。

 

だが、負けたにも拘らず、心はとても晴れやかだ。

 

勝ち戦でも、味わった事のない感覚だ……この感覚は一体何なのだろうな?初めての事で戸惑ってしまうな此れは。

 

 

 

 

「如何だ西住!!

 

 小学5年の時から苦節4年、遂に勝ってやったぞ!!」

 

 

「あぁ、実に見事だったよ安斎。

 

 一対一サシの勝負を挑んで来たと思ったら、その舞台に伏兵を仕込んでいるとは思わなかったよ。実に見事な戦術だった。

 

 序盤でエリカと小梅を分断したのも、全てはこの状況に持ち込むためのモノだったんだらろう?そうでなくては、あの分断は意味をなさないからな。」

 

 

「あぁ、その通りだ。

 

 1、2回戦を見る限り、お前を倒すには、先ずはあの2人をお前の傍から引き剥がす必要があったからな……其れが出来なかったら私達には勝ち目がなかったから、死ぬ気で分断の方法を考えたよ。」

 

 

 

 

成程な……だが、其処までやって私が一対一の勝負に応じなかったらどうする心算だったんだお前は?

 

 

 

 

「その時はその時だが、お前なら必ず受けてくれると私は思っていたよ。

 

 挑まれた勝負からは逃げないのが、私の知ってる西住まほって言う戦車乗りだからな?寧ろ、乗って来なかったらちょっと失望してた。」

 

 

「そうか……そうだったか。

 

 お前は『西住流の西住まほ』ではなく、西住まほ本人を見てくれていた訳だ。」

 

 

確かに、挑まれた勝負を受けないのは私の流儀に反するし、其れが最高のライバルである安斎から挑まれた物ならば尚更だからな。

 

搭乗戦車をIS-2から、T-34/85に変えたのも此れを見越しての事だったという訳だ。

 

完全にしてやられたよ……完敗だ安斎。そして、ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer35

 

『決勝戦の相手は予想外です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、準決勝で私を倒したとは言え、優勝するには明光大を倒さねばならないのだが……みほが隊長を務めてる明光大は、準決勝で強豪の横須賀中を破っているから安斎とて楽にはいかないだろうな。

 

最大限ぶっちゃけて言うなら、総合力ではみほは私を上回るからね……私の妹だからと、私と戦うのと同じ感覚で挑んだら間違いなく負けるぞ安斎。

 

 

 

 

「まぁ、確かに1回戦から準決勝までの3試合を見る限り、純粋な西住流とは言えないかもしれないが、あの状況判断能力は凄い物があると認めざるを得ないさ。

 

 其れに、一体頭の中にどれだけの戦術が組み立てられてるのかって思ったからなぁ?」

 

 

「それがみほなんだ。

 

 みほは、正面から押す私よりも、むしろ策を沢山考えるお前に近いタイプだ安斎。――だが、そうでありながら、みほは西住流の戦い方も出来るからね……ハッキリって隙は無いぞ?」

 

 

「剛柔併せ持ったってか?其れは確かに強敵だけど、私は負けないぞ!!

 

 お前の妹だって、絶対に手加減なんてするもんか!!折角お前に勝ったんだ!此のまま優勝して、優勝旗を持ち帰らないとカッコつかないからな!!」

 

 

 

 

あぁ、全力で相手をしてやってくれ安斎。其れがみほの為にもなるからな。

 

だが、其れは其れとして、とても楽しかったよ安斎……負けたのに、悔しさは微塵も感じないからね?後悔するまでもない位に、私は全力でお前と戦えた……其れを嬉しく思うよ。

 

 

 

 

「礼を言うのは私の方だ。

 

 お前は、何時でも、どんな時でも私と全力で向き合ってくれたからな……私が、此処まで強く成れたのはお前のおかげだ、ありがとう。」

 

 

「そうか……まぁ、私もお前と言う追ってくるライバルが居たから、追い付かせんと必死に頑張る事が出来たから、まぁお相子と言う所だろ。」

 

 

「そうかもな。」

 

 

「其れがベターな落としどころだろ?」

 

 

「確かにな♪」

 

 

 

 

其れに、今回負けた事で黒森峰は再出発をする事に成る……一度、全てをリセットした状態でエリカに引き継ぎが出来るのは良い事さ。

 

先人の残した功績と言うのは、時として後を引き継ぐ者にとって邪魔になる場合があるからな。

 

 

まぁ兎に角、決勝戦も頑張れよ?

 

実の妹と、最強のライバルが激突する決勝戦だけに、何方か一方を応援する事は出来ないが、私は決勝戦の会場にお母様と一緒に行く心算だからな。

 

 

お前とみほが織り成す決勝戦、最後まで確りと見届けさせて貰うさ。

 

……そう言えば、此れまでは決勝戦で戦う側だったが、決勝戦を観戦する側に回るのは初めての事だな?ある意味で、貴重な体験かも知れないな此れは。

 

 

さて、ソロソロ戻るか。

 

試合後の反省会もしなければならないし、今度実家に帰った際に確実に来るであろう、お祖母様からのお小言に対する彼是も考えておかなくてはならないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

 

まさか、黒森峰が負けるなんて、マッタク持って考えても居なかったよ。

 

愛和学院の隊長の安斎さんは、お姉ちゃんがライバルと認めた数少ない戦車乗りの1人だし、何度か試合を見て、可成りの戦車乗りだって言うのは知ってたけど、其れでもお姉ちゃん以上とは思わなかったからね?

 

 

だけど、其れでも勝った……実力差を工夫と戦術で補って、お姉ちゃんの性格までも把握した上でフラッグ車同士の一騎打ちに誘い込んでおきながら、実は伏兵を潜ませていた訳だからね。

 

 

 

 

「まさか、まほ姐さんが負けるとは思ってなかったぜ流石に。

 

 あの三つ編み眼鏡、地味な見た目のくせに実力はトンでもなかったって事だよな?一騎打ちに見せかけた舞台で不意打ちとか、卑怯って思うかもだけど、まほ姐さんの実力を知ってるからこその戦術だしよ。」

 

 

「どっちかって言うと、安斎隊長はみほに似たタイプかも知れないわね?

 

 正面から力で押すよりも、戦術と戦略で相手を攻略するタイプだわ……そうなると、何方が多くの戦術を練れるかが鍵となって来るわね。」

 

 

 

 

確かに、安斎さんは私と似たタイプだと思うよナオミさん。

 

だけど、自慢する訳じゃないけど、戦車道に関する知識に於いては私の方が絶対に上だと思う。……車長専任免許を取得する為に、頭に叩きこんだ知識は半端じゃないからね?其れを駆使すれば、愛和学院にだって勝てるよ。

 

 

近坂部長、愛和学院は決勝戦は如何言う布陣で来ると思いますか?

 

 

 

 

「そうね……フラッグ車は、恐らく隊長車であるT-34/85だろうけど、他の戦車がドレだけ出て来るかを予想するのは難しいわ。

 

 普通に考えればパンターと同クラスの性能を持つT-34を揃えて来ると思うんだけど、IS-2が出てこないとは言い切れないし、若しかしたらKV-2も持ち出してくるかもしれないわ。」

 

 

「となると、戦車の性能では私達の方が僅かに不利と言う事ですね。」

 

 

長砲身タイプのⅢ突ならT-34シリーズともやり合えるけど、Ⅲ号じゃ圧倒的に不利になる訳だからね。

 

でも、其れを踏まえると決勝は火力よりも機動力を重視した方が良いかもしれない……となると、決勝戦のフラッグ車にして隊長車はアイスブルーのパンター以外にはあり得ないよ。

 

安斎さんに勝つには、此の子の力が必要不可欠になるからね。

 

だけど、決勝戦の隊長車はアイスブルーのパンターだけど、同時にティーガーⅡにも出て貰います。性能で劣るⅢ号を減らせば撃破される確率も減りますから。

 

 

 

 

「其れはその通りだけど、貴女がパンターに乗るなら、ティーガーⅡには誰が乗るのよ?

 

 如何にルールギリギリの魔改造を施したと言っても、ティーガーⅡの性能を完全に引き出すのは並大抵の事じゃないわ……現に、其れを扱う事が出来るのはみほ達だけでしょ?」

 

 

「確かに、今まではそうでしたけど……今年の大会を見て、彼女ならばこのティーガーⅡを扱えると思ってますから。

 

 決勝戦でのティーガーⅡの事、貴女に任せるよ梓ちゃん。」

 

 

「へ?えぇぇぇぇぇぇぇ!?わ、私ですか!!?

 

 そんな、無理ですよ!アイスブルーのパンターを動かすのだって一杯一杯なのに、第二の隊長車であるティーガーⅡに乗るだなんて絶対に無理ですよ!!」

 

 

 

 

無理ね?……悪いけど、私は出来もしない事を誰かに頼む事はしないよ?

 

貴女なら出来ると思ったから、貴女のチームにティーガーⅡを託した…やってくれるよね、梓ちゃん。大丈夫、貴女なら絶対に出来るから。

 

 

 

 

「西住隊長……分かりました!澤梓、その任承ります!!」

 

 

「うん、ありがとう梓ちゃん♪」

 

 

 

 

「……みほのカリスマ性がマジパネェ件について、何か一言。」

 

 

「言うだけ無駄よ、其れが西住みほだから諦めろ。」

 

 

「みほさんは天然の人誑しだから仕方ないわ――そもそも、私達だってみほさんに惹かれたからこそ此処に居るのですから。」

 

 

 

 

なんか、言いたい放題言われてる気がするけど、其れを否定できないって言うのがある意味では辛い感じかもね。

 

 

コホン……其れで、決勝戦の会場はどうなってますか部長?

 

 

 

 

「流石に富士の演習場とは行かないけど、可成りそれに近いシチュエーションだと思うわ。

 

 開始フィールドは草原だけど、所々に丘が点在して、更には近くに市街地が存在しているからね……この多様なフィールドを、貴女なら如何使うみほ?」

 

 

「真正面からぶつかっても良いんですけど、市街地戦が出来るのなら、相手を其処に誘導するのが一番です。

 

 市街地戦は、私の最も得意とする所ですから♪――フィールドが此処である以上、私の方に分があるって豪語しても良い位ですしね♪」

 

 

「確かに、見通しの利くフィールドよりも、障害物の多いフィールドの方が得意だからね貴女は。

 

 と言う事は、開始直後はあまり戦闘を行わずに、相手を市街地に誘い込むって感じかしら?で、市街地戦になってからが本番と。」

 

 

 

 

そうなります。

 

ただ問題になるのは、当日、相手がどういう車輌編成で来るかです。

 

準決勝の時の様に、T-34シリーズをメインにしたバランス型の布陣を組んで来るのか、それともIS-2の数を増やして攻撃力を上げて来るのかで、此方の動きも変わってきますから。

 

 

 

 

「ま、其れは当日の相手のオーダー見てからで良いんじゃね?

 

 此れまでも大体そうして来た訳だし、そもそもにしてアタシ等は試合の前から事細かに作戦立てるのって性に有ってねー。

 

 つーか、事前に彼是決めちまうよりも、大まかな事だけ決めといて、後は出たとこ勝負の方がやり易いって♪」

 

 

「そうね。其れこそがみほさんの持ち味であり、明光大の戦い方ですもの!

 

 当日のオーダー見てからガツンと決めてやりましょう!!」

 

 

「まほさんを倒した、安斎隊長の力は侮る事が出来ないけど、貴女なら彼女にだって負けないと思うわ。

 

 貴方と彼女はよく似てる――真正面からのぶつかり合いよりも、何方かと言うと策を駆使して相手を翻弄して戦う部分とかね?でも、其れだけに、何方がより多くのカードを切れるかが勝負になって来るわ。

 

 策士同士の戦いでは、手札の多い方が勝つって相場が決まっているからね。」

 

 

 

 

そう言う事だったら負ける気はしないよナオミさん?

 

安斎さんがドレだけの手札を持ってるかは分からないけど、市街地戦に限って言うなら、私の手札は毎ターン6枚ある様な状況だからね!

 

 

 

 

「毎ターン手札6枚って、何それ怖い。」

 

 

「みほがオシリス召喚したら、毎ターン攻撃力6000か~~……こりゃ誰も勝てねぇな?」

 

 

「……何で思考が遊戯王かな?」

 

 

其れ位、市街地戦は得意って事なんだけどなぁ?……まぁ、良いか。

 

何にしても、相手のオーダーは当日待ちになりますが、決勝戦の相手は、姉贔屓をする心算じゃないけど、中学戦車道最強のお姉ちゃんを倒した相手なので、気を引き締めて行きましょう!

 

 

そして必ず勝って、真紅の優勝旗を明光大に持ち帰ろう!!私達なら、絶対に出来るから!!

 

 

 

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「おーーーーーーーーーー!!」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

「私達3年にとっては、此れが中学最後の戦い。

 

 どうせ泣くなら、勝って泣きたいわ――だから、最後の最後で我儘を言わせて貰うわみほ。私達に『優勝』を味わわせて。」

 

 

「はい!最初からその心算です!」

 

 

部長が私の事を隊長にしてくれなかったら、此処まで明光大の戦車道でやりたい事は出来なかったと思いますから、そのお礼と恩返しも込めて、必ず優勝して見せます!!

 

其れに、此の決勝戦は『姉の仇を討つ妹』って言うシチュエーションだから益々負ける事なんて出来ないからね!!

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

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・・・

 

 

 

 

と言う訳で決勝戦当日。

 

試合会場となった○○県××市には、物凄い人が集まってるね?高校戦車道の大会には負けるかも知れないけど、此の観客数は少なくどれだけ少なく見積もっても5000人は堅いよ!

 

出店とか出してる人の数も合わせたら、もっとだろうからね……此れって、中学校の大会の観客数かなぁ?

 

 

 

 

「決勝がこの組み合わせだからかもしれないわね。

 

 無敵にして最強を誇った西住まほを倒した安斎千代美と、その西住まほの妹であり弱小校を今年は決勝まで連れて来た稀代の名将西住みほ――最強を倒した者と、最強の妹にして最強を超える者が戦う決勝戦、此れは盛り上がるでしょ。」

 

 

「成程、そう言う事なんだ。」

 

 

「にしても、決勝を前にして余裕だなみほ?

 

 牛串に始まって、チョコバナナにフランクフルト、そんで今度は焼きイカって……いや、アタシ等も人の事言えた立場じゃねぇのはわかってんだけどさ……」

 

 

「まぁまぁ、良いじゃない青子さん!

 

 此れだけの屋台が出ているんだから、食べないのは損よ損!試合に影響しない程度に、食べましょう。そうしましょう!!」

 

 

 

 

この組み合わせだから此れだけ盛り上がってるって事なんだ。

 

なら、もっともっと盛り上げて行かないとだからね!!この食事は、その為のエネルギーチャージだから問題ないよ!!

 

と言う訳でごちそうさまでした!ナオミさん、コーラ下さい。

 

 

 

 

「はいよ。」

 

 

「頂きます!」

 

 

 

――プシュ!

 

 

――ごくごくごくごくごくごく!!

 

 

 

 

ぷっは~~~~!やっぱり、食後の炭酸は最高だね!

 

炭酸の刺激とコーラ特有の糖分のおかげで、脳味噌にエネルギー補給が出来たから、此の試合における私の能力は120%解放状態になったよ!!

 

 

 

 

「貴女の能力が120%解放って、其れはとても恐ろしいわね?」

 

 

「多分、其れは誰も勝てないんじゃないでしょうか?」

 

 

「!!」

 

 

この声は……逸見さんと赤星さん!!来てたんですか!!

 

 

 

 

「まぁね。隊長と西住師範も来てるんだけど、私と小梅もこの決勝戦は見ておかないといけないって思ったのよ。

 

 隊長を倒した安斎千代美に対して、貴女が如何挑むかって言うのは興味があったし、何よりもこの戦いは色んな意味で私にとっては複雑な試合だし。」

 

 

「複雑な試合?」

 

 

「私達に勝った愛和には負けて欲しくないけど、私としては貴女は私以外には負けて欲しくないのよ。

 

 愛和学院に勝ってもらわないと負けた私達の立つ瀬が無いんだけど、貴女には隊長と私以外には負けて欲しくないのよ西住妹ぉぉぉ!」

 

 

「意外と面倒な性格してますよねエリカさんて♪」

 

 

「んな事は言われるまでもなく分かってるわよ小梅!!

 

 兎に角、黒森峰としては面子を立たせる意味でも愛和学院に優勝して貰いたいけど、逸見エリカ個人としては貴女に勝ってほしいって思ってるのよ。

 

 きっと、隊長だってあなたに勝ってほしいって思ってる筈よ?……だから、必ず勝ちなさい『みほ』。貴女なら出来る筈よ。」

 

 

「頑張って下さい『みほ』さん!!」

 

 

「!!!!」

 

 

名前……はい、頑張ります逸見さん、赤星さん!うぅん、エリカさん、小梅さん!!

 

必ず勝って、優勝して見せます!!!

 

 

 

 

「そう……楽しみにしてるわ。」

 

 

「明光大の皆さんの健闘をお祈りします!」

 

 

 

 

エリカさん、小梅さん……ありがとう。試合前のこのエールは、とっても心に響いたよ!!

 

此れはもう、絶対に負けられない!!部長の為にも、お姉ちゃんの為にも、そして私達を応援してくれてる人達の為にも絶対に!!!

 

其れは、相手も同じだろうけど、思いの強さなら絶対に負けない!!

 

元より、お姉ちゃんの思いと部長の思いを背負ってたけど、其処に更にエリカさんと小梅さんの思いも追加された訳だから、その分だけ私が受け継いだ思いは強い――だから、勝たせて貰いますよ安斎さん!!

 

 

此の決勝戦、私の中の眠れる本能を目覚めさせる必要があるかも知れないけれどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

 

そして、試合開始の時刻となり、明光大の隊長であるみほと、愛和学院の隊長である千代美は、試合前の挨拶の場に来ていた。

 

 

 

「まさかお姉ちゃんに勝つとは思いませんでした……だから、全力で行きます安斎さん!!」

 

 

「全力で来い西住妹!!

 

 西住は、お前の事を自分を超える戦車乗りだって言っていたからな……その力を見せてみろ!!!」

 

 

「はい!持てる力の全てを持ってして挑ませて貰います!!!」

 

 

 

試合前の挨拶としては、些か荒々しい物がある気がしないではないが、それでもみほと千代美の顔には、此れから強者と試合が出来る事を楽しんでいる笑みが浮かんでいる。

 

一流の戦車乗りのみが、強敵と対峙した際に浮かべる事が出来る笑みを、2人は自然と浮かべていたのだ――ならば、後は戦って何方が強かったのかを決めるだけだ。

 

 

さて、決勝戦の両校のオーダーだが……

 

 

 

・明光大付属

 

 

パンターG型(アイスブルーカラーリング)×1(フラッグ車及び隊長車)

 

ティーガーⅡ×1

 

ティーガーⅠ×2

 

パンターG型(オキサイドレッド)×2

 

Ⅲ号戦車J型改(L型仕様)

 

Ⅲ号突撃砲F型改(G型仕様)

 

 

 

 

・愛和学院

 

 

T-34/85×1(フラッグ車及び隊長車)

 

T-34/76×6

 

IS-2×3

 

 

 

 

ドイツ戦車とロシア戦車の違いはあれど、基本的な布陣は中戦車7輌と重戦車3輌の取り合わせ。敢えて違いを上げるとするならば、愛和学院のチームには自走砲が無いと言う所だろう。

 

回転砲塔のない自走砲は、後を取られると不利になってしまうのだが、其処は使う側の腕でカバーする物故に、自走砲の有無が直接試合に影響する事は無いと見るべきだ。

 

 

 

「勝っても負けても此れが最後……全力で行きましょう!!」

 

 

 

 

「必ず勝つぞ!勝って、優勝旗を持ち帰るんだ!!」

 

 

 

そして、みほも千代美もやる気は充分!!更に、そのやる気は隊員にも伝わり、味方の士気を高めていく。

 

 

 

 

『其れでは、第60回中学戦車道全国大会決勝戦、明光大付属中学校と愛和学院中学校の試合を開始します。お互いに礼!!』

 

 

「「よろしくお願いします!!」」

 

 

 

そして、試合前の挨拶を終えたみほと千代美は夫々自軍のテントに戻って、作戦の最終調整を行う――全ては勝つ為に。

 

 

 

試合前の礼から5分後、決勝戦のフィールドにはみほ率いる明光大と、千代美率いる愛和学院の全戦車が並んでいた。

 

スタート位置は、明光大が平原で、愛和学院が丘が点在する草原だ――正に、一概にどちらが有利とはいえないフィールド故に、ストレートに隊長の腕が試されるフィールドと言えるだろう。

 

 

 

「此れが最後です!行きますよ……Panzer Vor!!」」

 

 

 

 

「行くぞお前等!勝つのは私達だ!Avanti!!」

 

 

 

そして今此処に試合開始!!

 

最強を打ち倒した安斎千代美と、最強の妹である西住みほの直接対決となる此の決勝戦は、過去のどの決勝戦よりも試合前から盛り上がりを見せて居たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 


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