ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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初っ端から全力で行きます!Byみほ      そう来なくちゃね?行くわよ!Byナオミ      よっしゃー、ぶっ放すぜ!By青子


Panzer36『決勝戦は序盤から全力全壊です』

 

Side:みほ

 

 

 

さてと、試合開始だね。

 

私達も安斎さん達も、基本的な部隊編成は其処まで差は無い――何方も、中戦車をメインにして重戦車を切り札的に混ぜ込んだ戦車配備だからね?

 

 

機動力に関しては略互角だけど、攻撃力では愛和が勝り、砲撃の連射性に関しては私達の方が勝ってるから、総じて戦えば五分五分か。

 

だけど、私は絶対に勝ちたいよ――部長に真紅の優勝旗を持ち帰るって言ったって言う事もあるけど、お姉ちゃんを倒した安斎さんには、絶対に勝ちたい!って言うか勝つ!!

 

 

 

 

「気合入ってんなぁみほ?」

 

 

「軍神覚醒ね?……眠れる本能が目を覚ましたかしら?」

 

 

「かも知れないよナオミさん。

 

 何時も勝つ心算で試合には臨んでますけれど、此の決勝戦は必ず勝ちましょう――勝って、私達の強さを世に知らしめちゃおうよ!!♪」

 

 

「是非もないわみほさん!

 

 其れじゃあ初っ端から飛ばして行くわ!!!鋼鉄の豹の爪牙から逃げる事は出来ないわよ!!!」

 

 

 

 

それじゃあ、其のまま突っ走って下さいつぼみさん!

 

相手に稜線を取らせる心算だって思わせながら進んで下さい――この作戦が、巧く行くかどうかはつぼみさんの操縦技術にかかっていますからね?

 

 

 

 

「上等!!そう言う事ならやってやるわ!!超高速の鋼鉄の豹の爪牙、味わわせてやるわ!!!

 

 

「うん、そうだね♪」

 

 

行きますよ安斎さん……お姉ちゃんを倒したその腕前、見せて貰いますよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer36

 

『決勝戦は序盤から全力全壊です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

 

試合開始直後から、明光大と愛和学院は対照的な陣形を展開していた。

 

明光大が部隊を本隊と護衛の2つに分けて、スタート地点から程近い丘の稜線を取りに行ったのに対して、愛和学院は部隊を広く展開して稜線を取りに行った部隊と、其れの護衛部隊を包囲する陣形を展開して来た。

 

 

形としてはみほが定石に沿って、千代美が定石を潰しに来たという所だろう。

 

 

 

「此処までは定石通り……教科書のお手本として載せても良い位の稜線を取る際の部隊の動かし方だが、此処まで完璧なのは見た事がないぞ?

 

 100点満点と言っても良い位の部隊展開だ!……果たして、これ程までに高速展開をやってのける事の出来る戦車乗りが、今ドレだけいるかだからな?……西住が絶賛するだけの事はあるな西住妹!」

 

 

 

だが、千代美はみほの部隊展開の早さに舌を巻いていた。

 

千代美自身、部隊展開の早さには自信をもって居たが、みほの部隊展開のスピードは、過去に千代美が叩きだした展開スピードを余裕で上回っていたのだ。

 

 

普通なら、此処でペースを乱すだろうが、絶対最強のまほと4年ものあいだ死闘を繰り広げて来た千代美が此れでペースを乱す等あり得ない……その口元には笑みが浮かんでいたのだから。

 

 

 

「上等だ西住妹……お前の力を全て受け止めた上で、私はお前達を超えてやる!!――行くぞ、西住妹!!」

 

 

「受けて立ちます、安斎さん!!」

 

 

 

マイクごしに二度目の試合開始を交わすと同時に、明光大も愛和学院も手加減なしの攻撃を開始!!

 

この状況に於いては稜線を取った明光大の方が絶対有利なのだが、愛和学院はその明光大を包囲する形で陣形を取っているので、一概にどちらが有利とは言い切れないだろう。

 

 

とは言え、みほの目的はあくまで市街地戦に持ち込む事であるので、この稜線での攻防は見せ技に過ぎないのだ。

 

 

 

「主砲を撃ちながら一ブロック前進。

 

 T-34/85とIS-2の砲撃には注意して下さい。特にIS-2はティーガーⅡをも上回る攻撃力を備えていますから、撃破されない様に注意して下さい。」

 

 

『『『『『『了解!』』』』』』

 

 

『そんじゃあ、一発ぶっ込むみほ?』

 

 

『準備OKよ、隊長?』

 

 

『何時でも行けます、西住隊長!』

 

 

「部長、千尋さん、梓ちゃん……やっちゃって下さい!!」

 

 

 

砲撃が飛び交う中で、みほは部隊を敵に向かって前進させていく。

 

其れと同時に、明光大の攻撃の要とも言えるティーガーⅠ2輌とティーガーⅡの3匹の虎による必殺の88mm砲が炸裂し、正面に居た愛和学院の戦車隊の地面を抉り飛ばす!

 

 

流石に直撃したのではないので撃破判定にはならないが、此の一撃で攻撃の手が一瞬止まったのは事実であり、その隙を突いて明光大の部隊は一気に中央突破して稜線を駆け降りる。

 

しかも先頭は足の速いパンターが務め、殿には高い防御力にも定評のあるティーガーを配置すると言う見事な布陣での中央突破だ。

 

 

 

「包囲されると見るや否や、有利な地形を捨てるだと?

 

 戦術としては正しいのかも知れんが、其れを即決するってのは普通は出来ないぞ……まして、敵陣を中央突破するなんて西住ですら思いついても、余程追い詰められない限りはしないだろう。

 

 それを、簡単に選択して来るとは、若しかして妹は姉以上に大胆な奴なのか?……だとしたら、序盤で調子付かせるのは拙いな。

 

 中央突破は防ぎようがないが、前後は兎も角として横っ腹はがら空きだ!突破される前に1輌でも仕留めろ!!」

 

 

『『『了解!!』』』

 

 

 

だが相手は、中学最強と謳われたまほを倒した千代美だ。

 

中央突破は仕方がないと斬り捨てながら、敵戦力を少しでも削いでおこうと、包囲陣形を展開してた左右の部隊に命令を下して明光大の横っ腹から攻撃を仕掛ける。

 

 

 

 

――ズドン!!

 

 

――パシュン!

 

 

 

 

『明光大付属中学校、Ⅲ号戦車2輌、行動不能!』

 

 

 

其れは見事に決まり、明光大のⅢ号2輌を撃破する。

 

先手を取れたというのは、大きなアドバンテージになる物だが、2輌もやられて黙ってる明光大ではない!寧ろ、味方が撃破されたら倍返しが、ある意味では当然なのだ。

 

 

 

「Ⅲ号が……まぁ、序盤でⅢ号を失う可能性は考えてたから、此れは予想の範疇だけど、だけどやられっぱなしってのは性に合わないよ。

 

 そう言う訳で、椿姫さん、梓ちゃん……お願い!!」

 

 

『行くわよぉ……おんどりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 

『吹き飛ばします!!』

 

 

 

其れを示すかのように、椿姫が車長を務めるⅢ突がT-34/76の履帯を2連続で切ると、梓のティーガーⅡが履帯を切られたT-34/76を文字通り吹っ飛ばす!!

 

超長砲身から放たれる88mmの威力は通常の長砲身から放たれる100mmに匹敵すると言っても過言ではないが故に、其れを真面に喰らったT-34/76は言わずもがな沈黙!

 

そして、其れで終わらないのがみほだ。

 

 

 

「このまま逃げ切ります……『もくもくスパーク作戦』を始めて下さい!」

 

 

『『『『『『『『『了解!』』』』』』』』』

 

 

 

 

――カッ!!

 

 

――ブオォォォォォ!

 

 

 

 

此処で、発煙筒と閃光弾を同時に愛和学院に向けて放ち、その相互作用で発生した『閃光の煙』で愛和学院の視界を一時的とは言え完全に奪ったのだ。

 

無論、此れまでの戦いを見て、何処かで視界潰しをしてくるだろうと予想してた千代美は、スモークにも閃光にも対応できる装備を各戦車に搭載していたのだが、予測していた物を同時に発動されては堪った物ではない。

 

 

みほとしては、閃光と煙幕を合わせれば強力な目暗ましになる程度の認識だったのだが、煙幕によって乱反射した閃光は、みほが思っていた以上の効果を発揮したのだ。……自分達はその影響を受けない様にサングラスを用意していたのも見事な物だろう。

 

 

 

「此処で視界を奪いに来たか……しかも、スモークを利用して閃光を拡散させるとは、考えた事もなかったぞ?

 

 ……いや、だからこそ西住妹は、万年1回戦負けの弱小校を此処まで引き上げることが出来たのか?……並の戦車乗りでは考え付かない戦術が有るからこそ、此処まで来れたって言うのか?……だとしたら面白い!面白すぎるじゃないか!!」

 

 

 

だが、そのみほの鮮やかな采配を見た千代美の顔には、強敵を前にした戦車乗り特有の『鋭い笑み』が浮かんでいた。

 

口角は吊り上がりながらも、その目は鋭さを増し、瞳の奥には闘志の炎が滾る……其れは、準決勝に続いて、安斎千代美と言う戦車乗りの力がマックス状態になった証であった。

 

 

 

「全車に通達!煙幕が晴れたら追撃を再開する。

 

 奴等の狙いは、恐らく市街地戦……先に市街地に入られるのは最早仕方ないが、此方の到着が遅れると街中にどんな仕掛けをされるか分かったモンじゃない。速攻で追うぞ!!」

 

 

「隊長、アタシ等の分までお願いします!」

 

 

 

撃破されたT-34/76の搭乗員からの言葉に頷くと、視界が戻って来たのを確認し、残る戦車を全速前進させて明光大を追いかける。

 

 

 

「ゆっくりでいーよ~~♪」

 

 

「そーそー、運転は安全第一で~~~♪」

 

 

「やかましいわ!!!」

 

 

 

が、走り出した直後に、撃破された明光大のⅢ号の搭乗員からの言葉と、其れに(半ば反射的に)反応してしまった事で、何とも締まらない追撃の始まりとなってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、愛和学院の包囲を明光大必殺の『視界抹殺』でもって切り抜けたみほ達は、メインの戦いの舞台となる市街地に向けて進んでいた。

 

序盤で2輌失ったとは言え、明光大もまた相手戦車を2輌撃破しているのだから数は同じ――否、言い方は悪いが、Ⅲ号のみが脱落した上での同数ならば、戦車の性能差は無くなったと言うべきだろう。

 

愛和学院のソ連戦車に対して一方的に性能負けしてしまうのがⅢ号だったのだから。

 

 

 

「取り敢えずは、大体みほの狙い通りね。

 

 稜線を取りに行くと見せかけて、敢えて包囲させた上で其れを突破して市街地に向かう……相手の意表を突く事は出来たんじゃない?」

 

 

「だと良いんだけどね……安斎さんは、お姉ちゃんを倒した程の人だから安心は出来ないかな?

 

 中央突破を狙った私達に対しても、即座に側面の防御が薄いって言う事を見抜いてⅢ号を撃破しに来た訳だからね。」

 

 

「まぁ、まほ姐さんを倒したんだからタダモンじゃねぇよな?

 

 アレ?でも、そうなるとアイツ等先回りして市街地に入る可能性ってねぇのか?先に入られたら、ちょっとばっかし面倒な事にならねぇ?」

 

 

 

其れでも、此処までは大体みほの思惑通りに進める事が出来ていた。

 

流石に、千代美の包囲陣形の展開の早さには驚いたモノの、結果的には序盤は巧く行ったと言えるだろう。Ⅲ号が序盤で撃破される事も可能性に入れていた事を考えれば、充分の成果だ。

 

 

 

「先回りされる心配はないかな?

 

 今私達が通ってる道が、市街地への最短ルートだから、此処を私達が進んでる以上、先回りされる事は無いよ。

 

 部隊をT34シリーズとIS-2の2つに分けて、T-34シリーズが先行したとしても、最短ルートを通らずに先回りをする事は不可能だから。」

 

 

「でも、先回りはされなくても、T-34シリーズだけ追い付いてくる可能性はあるんじゃない?」

 

 

「うん、だから追い付かせない。

 

 部長、千尋さん、梓ちゃん……『通行止め作戦』開始です♪」

 

 

「了解……てか、本当によく考えるわねこんな事?いや、考えつくかもは知れないけど、其れを実行に移す普通!?

 

 追い付かせないためとは言えマッタクよくやるわ……でも、そんな貴女だから、私も隊長職を辞して隊長の座を譲る事が出来た訳だけどねみほ。――主砲装填、ぶっ放せ!!」

 

 

「此処からは通行止めだよ~~~!!」

 

 

「ご迷惑をおかけしますが、市街地へは迂回して下さい~~!!」

 

 

 

 

――ドガァァァァァァァァァァァン!!

 

 

――ズドォォォォォォン!!!

 

 

――バガァァァァァァァァァン!!!

 

 

 

 

更に、市街地への最短ルートを通りつつ、愛和学院に最短ルートでの追撃をさせないために、なんとティーガーⅠとティーガーⅡの砲撃でルート上の樹木を圧し折って道を塞ぐ。

 

如何に戦車であっても、何本もの樹木が道を塞いでいたら其処を通る事は出来ない。此れでは、愛和学院は否応なしに市街地へは迂回ルートで向かわざるを得ないだろう。

 

策は二重三重とは言うし、相手の進路を潰すのも良くある策ではあるが、此処まで大胆に相手の進路を潰す策など中々思い付く物ではないだろう――みほの能力は底が知れない。

 

 

 

「時に、あの木ってぶっ倒しちゃってよかったのか?」

 

 

「大丈夫だよ青子さん、もし何かあったら連盟の方で何とかしてくれるから。私達は、余計な事は考えないで試合に集中しようね?」

 

 

「連盟が何とかしてくれんなら大丈夫か~~!

 

 そう言う事なら、市街地でも派手に行こうぜ派手に!!民家一戸丸々吹き飛ばす位な、弩派手ですんごい作戦でブチかまそうぜみほ!」

 

 

「うん、勿論その心算だよ!」

 

 

 

そしてみほの顔にも、千代美が浮かべていたモノと同じ笑みが浮かんでいる。

 

其れ即ち、『軍神・西住みほ』が降臨した証であり、同時にみほの中の『眠れる本能』が目を覚ました瞬間でもあった。――瞬間、みほの雰囲気が一変し、纏うオーラが質を変える。

 

其れは、仲間達にも伝わり、皆息を飲む……それ程までに、軍神が降臨したみほは凄いのだ。

 

 

 

「其れじゃあ、行きましょう!優勝の栄冠を手にする為に!!」

 

 

「「「「「「「了解!!」」」」」」」

 

 

 

同時にそれは、味方の士気を大きく高める。

 

軍神・西住みほが降臨した今、市街地での戦闘は激しく、そして凄まじい物になる事は間違いないだろう。軍神と化したみほの力は、普段とは全く異なるのだから。

 

 

試合の本番は、市街地戦……両校が市街地に入ってからが本当の勝負の幕開けだろう。

 

 

 

 

因みに……

 

 

 

 

「此れは……最短ルートを潰して来たなぁ!?

 

 IS-2の主砲でブッ飛ばしても良いんだが、此処で弾を消費するのは有り難くないからなぁ?……仕方ない、迂回して市街地に入るぞ!

 

 マッタク、大人しそうな見た目してて、トンでもないお転婆だな西住妹は……西住も、あの妹を相手に大分苦労したんだろうなきっと……」

 

 

 

明光大を追っていた愛和学院は、最短ルートを倒木に阻まれて迂回する事を余儀なくされていた。

 

此処でも、みほの作戦はズバリ的中したと言えるだろう――だが、千代美とてまほを倒した強者だから、一筋縄で行く相手ではないだろう。

 

 

 

「市街地で何を企んでるかは知らないが、お前の思惑通りにはいかないからな、西住妹!!必ず勝って見せるからな!!」

 

 

 

最短ルートは無理と判断するやなや、迂回路の中で、最も短い時間で市街地に辿り着くみほが待ち構える市街地へと進んで行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:エリカ

 

 

 

此れは、やるじゃないみほ!!

 

稜線を取りに行くと見せかけて、其れを見せ技にして本命である市街地戦に誘い込むとは、実に見事としか言いようがないわ!若しかしたら隊長であっても、此れには対処しきれないかもしれないわ。

 

 

マッタク、本当に貴女は底が知れないわねみほ?実際に戦わないで、見て居るだけでも此処まで興奮させてくれるなんてやるじゃないの!

 

 

見せて貰うわ、貴女が此処からどんな策を繰り出すのかをね!

 

 

 

 

「エリカさん、若しかして明光大を応援してたりします?

 

 まぁ、そうなっても仕方ないですよね?みほさんの指揮は的確にして鋭いし、此処までの采配を見ても、見事の一言に尽きますからねぇ。」

 

 

「うっさいわよ小梅!!」

 

 

でも、案外小梅の言う通りなのよね此れが。

 

此処からアンタがどんな戦略を見せ、隊長を倒した安斎さんが其れに対して如何戦っていくのか……決勝戦に進めなかったのは悔しいけれど、若しかしたら明光大と愛和学院の対決を見れたって言う事は、優勝以上に価値がある物になるかも知れないわね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued…

 

 


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