ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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バレンタインイベントは外せない!のかなぁ?Byみほ      まぁ、やっといて罰は当たらないでしょ?Byナオミ      おっしゃー、取り敢えずチョコ作るぞ!By青子


Panzer44『バレンタイン・ウォー!です!』

Side:みほ

 

 

 

文化祭も終わって一息……とは行かないのが二学期!

 

文化祭の2週間後には、絶対外せない一大イベントの『修学旅行』が待ってた!!

 

明光大の修学旅行は、1年生が春先の日光で、3年生が秋の京都、そして2年生は秋の船中泊で、秋が深まる北海道にHere we goだよ!

 

半日授業を終えてから、夜の7時にもう一度学校に行くって言うのは流石に大変だったから、旅行の準備をあらかじめ持って来ておいて、駅のコインロッカーに預けといて、再集合時間の前に取りに行ったけどね。

 

其れまでの時間は、何時もの放課後通りにナオミさん達と過ごしたけど――その日は梓ちゃん達のチームも参戦して、エアホッケー勝負とかして楽しかったっけ♪

 

 

そんなこんなで着いた北海道も楽しかったかな。

 

本土では味わえない自然の空気と、熊本とは異なる北国の雰囲気に、何よりも御飯が美味しかったのが印象に残ってるんだよね凄く!!

 

 

班別行動で小樽に行った時に、事前に決めてたお寿司屋さんで名物の『あずましい丼』って言うのを頼んだけど、まさか店頭サンプルよりも盛が凄いとは思わなかったよ?

 

これでもかって言う位に盛られた、刺身の魚に、有頭エビの御造りに、イクラとウニがふんだんに乗ってたからね?……此れで1500円は安い何て言うもんじゃないかな。

 

 

北海道はサンプルよりも本物が凄いって言う話は聞いてたけど、まさかこれ程とは思ってなかったからね。

 

 

まぁ、人生初の北海道旅行は満喫できたかな。

 

お母さんとお姉ちゃんにお土産で買ってった北海道でしか売ってない『熊の置物のキーホルダー』は気に入って貰えたみたいだし、菊代さんにお土産として買ってった『札幌限定ブリザードボコ』のぬいぐるみも喜んでもらえたからね♪

 

 

 

そんなこんなで、イベント盛りだくさんの二学期があっという間に過ぎて、気が付けば三学期も1月が終わってもう2月。

 

三学期は卒業式以外のイベントは無いって思ってたんだけど……あったんだよね、三学期最大のイベント行っても過言じゃない『バレンタインデー』が。

 

 

隊長チームの皆には去年と同様に『友チョコ』をあげるとして、今年はエリカさんと小梅さんにもあげておこうかな?

 

取り敢えず、お姉ちゃんとお母さんとお父さんには渡しておかないね――私とお姉ちゃんから貰う事が出来なかったら、お父さん泣いちゃう。

 

 

それじゃあ、頑張るとしようかな♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer44

 

『バレンタイン・ウォー!です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で自宅のキッチンでチョコレートを手作りしようと思ったんだけど……何このグラウンドゼロ?

 

しっちゃかめっちゃかになった調理器具に、あたりに飛び散った溶けたチョコレートと、ココアパウダー。そして、キッチンの床で見事なまでのKOポーズになってるお姉ちゃんとお母さん……一体此処で何があったし。

 

 

 

 

「奥様とまほお嬢様は、バレンタインのチョコレートを手作りしようとして、そして失敗して、其れでも西住流の如く退く事を選択しなかった結果このような惨事になってしまわれたのですよみほお嬢様。

 

 こうなる事を予測して助力を申し出たのですが、断られてしまいましたからね……」

 

 

「お母さんもお姉ちゃんも、其処は菊代さんの助太刀を受け取ろうよ。

 

 家庭料理は兎も角として、ちょっと凝った料理やお菓子に関してはお姉ちゃんもお母さんも壊滅的なんだから、やろうとするのが間違いだと思うんだよねぇ……」

 

 

「なにぃ、みほだって凝った料理は得意ではないだろう!」

 

 

「その身体で料理が出来る時点で色々と凄いのだけれど、そもそも料理に関しては私達よりもみほの方がレベルは上なのは否定出来ないわよまほ。」

 

 

 

 

あ、KO状態から復帰した。

 

兎に角、右腕しか使えないから手際は悪いかも知れないけど、料理の腕其の物はお母さんやお姉ちゃんよりも遥かに上だよ?将来的に一人暮らしする事だってあるかも知れないから、その時の為に菊代さんに確り習ったモン。

 

 

 

 

「菊代仕込みだったとは……なら納得だわ。」

 

 

「だとすると、実は凝った料理も作れるようになってたりするのか?

 

 ……いや、文化祭でのタコ焼きは見事だったが、凝ってると言ってもアレはスナックの類だからな……」

 

 

 

 

ある程度は作れるよ?

 

菊代さんからだけじゃなくて、学校で調理実習がある時は青子さんに教わってるし。

 

青子さんって料理凄く上手で、作る料理が決められてない状態で、各班毎に料理を決めて作るって言う時は物凄く凝った料理を簡単に作っちゃうからね?この間の調理実習はテーマが『春巻き』だったんだけど、私達戦車道隊長チーム(実は普段の班分けも隊長チームで纏まってます♪)は青子さんの指導の下、『麻婆春雨春巻き』と『タコスミート春巻き』って言うのを作ったからね。

 

 

 

 

「みほ、其れ今度作って。なんか凄く美味しそうだわ。」

 

 

「私にも頼む。可能なら、調理品を冷凍してクール便で黒森峰の学園艦に送ってくれ。」

 

 

 

 

まさかの反応だったよ此れ!?

 

……機会があったらね?私としても、自分の料理を食べて貰えるのは嬉しいし♪その時は菊代さんも、是非御賞味ください♪

 

 

 

 

「その時を楽しみにしておきますねみほお嬢様。

 

 それで、このグラウンド・ゼロの跡地は如何いたしましょうか?……本気で爆弾が爆発したんじゃないかって思う位にチョコレートとココアが飛び散っているのですが……」

 

 

「此処は吸い込みの変わらないダイソン先生に頑張って貰いましょう。

 

 其れで、このグラウンド・ゼロの被害を処理した後で、改めてバレンタインのプレゼント作りをした方が良いでしょう――今度は、菊代さんの参戦も拒否権はないからね、お姉ちゃん、お母さん?」

 

 

「「はい……」」

 

 

 

 

簡単に陥落した!――まぁ、この惨状を作り出した事を考えれば当然かもね。

 

菊代さんがサポートしてくれれば、少なくともキッチンでグラウンド・ゼロが起きる事もないし、お父さんに『劇物』が渡される事もないだろうからね……お父さん、よく去年は死ななかったよ。思いのほか頑丈なのかもね。

 

 

 

 

「時にみほ、お前はお父様以外にあげる相手が居るのか?

 

 私は、エリカと小梅に感謝の意を込めてやる心算だが……」

 

 

「ん~~~、戦車道部の皆には当然として、お父さんとお母さんとお姉ちゃん以外ではエリカさんと小梅さんかな?後は菊代さん。

 

 学校が違うから、エリカさんと小梅さんへのプレゼントは、お姉ちゃんから渡してもらう事になるんだけどね――お願いして良いかな?」

 

 

「あぁ、構わないぞみほ。

 

 私も凛へのプレゼントをお前から渡して貰う心算だったからな――安斎の方は、流石に宅配便を使うけれどね。」

 

 

 

 

まぁ、其れは仕方ないんじゃないかな?

 

安斎さんの地元って愛知だし、愛和学院も学園艦だから寄港地が被らない限りは会う事も難しいから、此処は学園艦専用の宅配サービスを使うのが吉だよ。

 

 

 

 

「だな。

 

 しかし、黒森峰は女子高だから兎も角として、共学の明光大ではみほからのチョコを欲しがる男子が居るんじゃないか?

 

 こんな言い方をしたら何だが、みほは容姿も良いし器量も良い。片腕と言う身体的ディスアドバンテージを背負ってはいるモノの、其れを感じさせない位に身体能力は高く、料理も巧い……絶対にもてると思うんだが。」

 

 

「其れもそうね?……その辺は如何なのみほ。」

 

 

 

 

靴箱のラブレターを見る限り、私に好意を寄せてる男の子が多いのは否めないけど、私は付き合う気は毛頭ないから安心して良いよ。

 

私だけじゃなく、隊長チームの全員が彼氏を作る心算なんてないから。

 

其れに、誰か一人を選んだら選んだで面倒な事になりそうだから、誰も選ばないのが一番なんだよ。

 

バレンタインデーに私のチョコを期待してる人も居るかも知れないけど、私は学校の男の子達にあげる予定はないよ?――何よりも、青子さんが『対男子対策』をやってると思うからね。

 

 

 

 

「まぁ、そうなるか……取り敢えず明光大の男子諸君には合掌だ。」

 

 

「みほを落とす事は出来ないわ……出直してきなさい。」

 

 

「みほお嬢様は、男女問わずに人気があるのですね♪――時に、青子さんの男子対策とは如何なものなのでしょうか?」

 

 

 

 

手作りしたチ○ルチョコ大のチョコレートを節分の豆撒きよろしく、教壇から教室内にばら撒くんです。

 

本命を貰ったモテ男子は兎も角として、貰えなかった残念男子は、学校きっての有名人である青子さんからのバレンタインプレゼントを貰えたっていうだけで狂喜乱舞だから大丈夫です。

 

 

其れは兎も角、改めて始めようお母さん、お姉ちゃん。

 

今から始めないと、明日には間に合わないからね?

 

 

 

 

「だな……今度はよろしくお願いします菊代さん。」

 

 

「頼むわ菊代……此れは思った以上の強敵だったからね――貴女のサポートに期待するわ。」

 

 

「そんな大袈裟な――ですが、頼まれたのならば応えましょう。

 

 まほお嬢様も奥様も、私の持てる力の全てを持ってしてサポートをしますから失敗を恐れずに思い切りやって下さいませ!!」

 

 

 

 

菊代さんは人を乗せるのも巧いね?

 

流石は現役時代はお母さんの副官を務めてただけの事はあるかな?――お母さんの『剛』と菊代さんの『柔』が巧い具合に噛み合っていたのかも知れないね……お母さんが現役時代無敵だった訳だよ。

 

 

兎に角、バレンタインは明日だからこれ以上の失敗は許されないから、菊代さんの指示のもとにプレゼントを完成させないとね!!

 

それじゃあ、ぱんつぁーふぉー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:梓

 

 

 

明日はバレンタインデー。

 

西住隊長と隊長車の人達にバレンタインのプレゼントをしようと思って頑張ったんだけど、此れは意外と難しい物があるかなぁ?

 

もっと凝ったモノにしようと思ったんだけど、此処は無難に手作りトリュフで行った方が良いかも。――下手に冒険して取り返しの付かない事になったら、其れこそ泣くに泣けないよ。

 

料理も戦車道も、先ずは基本から。冒険するのは基本が出来てからね――で、クロエは何してるの?(クロエは寮の同室。)

 

 

 

 

「はい、私も御一緒しようかと思いましテ。

 

 2人で一緒にやれば作業も捗って効率も良いですし、実を言うと私の実家は洋菓子店なので、市販チョコを溶かして作るトリュフ位なら割と簡単に出来ますかラ。」

 

 

「あ、そうだったんだ。そう言う事ならお願いしようかな?

 

 経験豊富な人が手伝ってくれるのは助かるし――時に、クロエは誰かに作らないの?」

 

 

「予定はありませんヨ?特に西住隊長は可成りの数貰うでしょうから、余り多くてもいけませんし。

 

 ――あぁ、アズサは西住隊長に渡して下さいネ?恐らくは隊長からはあると思うので、副隊長が貰いっ放しと言うのは良くありませんから。」

 

 

 

 

アハハ……其れは確かに。

 

でも、そうなるとクロエは如何するの?多分西住隊長の性格からして、戦車道部全員にプレゼント用意してるんじゃないかと思うんだけど?

 

 

 

 

「ホワイトデーにお返しすれば良いでしょウ。」

 

 

「成程。」

 

 

それじゃあ、早速作業に取り掛かろうか?

 

先ずはチョコレートを湯煎で溶かして、其処に生クリームと洋酒……ブランデーかラムを入れるんだけど、中学生の寮室にそんな物は置けないので、此処はバニラで妥協。

 

よく混ぜたら、今度は氷水で『緩くない程度』に固めたら、一口大に丸めて、ココアパウダーやシナモンパウダーをかけて完成!……味は如何かなクロエ?

 

 

 

 

「Es ist sehr lecker.(とても美味しいです。)

 

 此れならば、隊長に渡しても喜んでもらえると思いますよアズサ。

 

 では、この調子でどんどん作っていきましょう。パウダーの塗布と箱詰めとラッピングは任せて下さイ。」

 

 

 

 

うん、任せるよクロエ。

 

戦車道部の皆に、先輩達に、何よりも西住隊長に喜んでほしいから頑張るぞーー!!

 

 

とは言え、流石に35人分も作るのは大変で、全部が終わった時には寮の就寝時間を完全に過ぎてた……大浴場は無理だから、今日は部屋のシャワーで我慢するしかないか。

 

 

それから、手伝ってくれてありがとうクロエ。おかげで良い物が出来たよ♪

 

 

 

 

「ならば良かったでス。――西住隊長に喜んでもらえると良いですネ。」

 

 

 

 

うん、そうだね♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

 

と言う訳でバレンタインデー当日。

 

うん、大体予想はしてたけど、今日は靴箱からファンレターとラブレターじゃなくて、大量のチョコレートが流れ出して来たよ。……本気でどうやって入ってたんだろう?若しかして、学校の靴箱は限定条件下でのみ四次元空間になるのかなぁ?……ある意味学校の七不思議だよ。

 

 

で、HR前の教室では……

 

 

 

 

「オラァ、チョコ貰えなかったモテない男子どもぉ!

 

 お前等に今から、このアタシが施しをくれてやるから有り難く受け取りやがれぇ!サイズは小さいが、全部手作りだから有り難く思えーー!」

 

 

「「「「「「青子大明神様ーーーー!!!」」」」」」

 

 

 

 

青子さんが教壇の上に立って、豪快にチョコを撒いてた。そして其れに群がる貰えなかった男子……まるで餌に群がるお堀の鯉だね。

 

あ、おはようナオミさん、つぼみさん。はい此れ、バレンタインのプレゼント。

 

 

 

 

「おはよ、みほ。此れは有り難く受け取っておくわ。じゃあ、此れは私から貴女にね。手作りできるほど器用じゃないから市販品だけど。」

 

 

「おはようございますみほさん。有り難く頂戴します♪これは私からです♪」

 

 

 

 

ナオミさんとつぼみさんも用意してたんだ。まぁ、去年もそうだったからね。

 

と言う事は……

 

 

 

 

「みほぉ!こいつはお前にだ!!!」

 

 

 

――バスン!!

 

 

 

 

ストラーイク!

 

うん、推定時速100kmはあるね。其れを右手だけでキャッチしちゃう私も大概だけど。――じゃあこれは私からです青子さん!!

 

 

 

 

――バスン!!

 

 

 

 

「ナーイスボール!推定時速120kmってとこだな此れは。みほは戦車道だけじゃなくて女子野球でもピッチャーとして活躍できっかもな♪」

 

 

 

 

かも知れないね。

 

時に青子さんそろそろ教壇から降りた方が良いんじゃないかな?って言うかもう手遅れかも……先生来ちゃったし。

 

 

 

 

「辛唐ーー!教壇に登って何しとるかーーー!!

 

 今すぐ降りんか馬鹿者ーーーー!!男子も普通に貰ってるんじゃない!と言うか、誰か止めないかーーー!!」

 

 

「あぁ?るせーなぁ……折角だから、アンタにもお裾分けだ先生!

 

 アラフォーで独り身のアンタが、バレンタインデーにチョコ貰えるとは思えねぇからな?生徒の心遣いを有り難く受け取れ、礼は要らねぇ!」

 

 

 

 

そして、その先生に向かってチョコ投擲!

 

結果として、青子さんは呵々大笑した後で、HRの間廊下に立たされました。……立たされながらも、廊下を歩く男性教諭にチョコ配ってたって言うのは凄いと思うけどね。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・

 

 

・・・

 

 

 

 

で、中休み。

 

おーいナオミさん、そろそろ中休み終わるから起きましょう。って、腕の所にチョコ挟まってるよ?

 

 

 

 

「あふ……もう御終いか。

 

 其れでチョコレートですって?……何でこんな所に挟むのよ?体温でチョコが溶けるでしょうに……って、脇の下の方にも入ってた!!

 

 あぁ、更にスカートのポケットにまで!?」

 

 

「其処までされて何で起きねぇんだオメェは?」

 

 

「中休みで此処まで熟睡できるとは驚きね。」

 

 

 

 

確かに、ドンだけ熟睡してたのかってね。

 

まぁ、ナオミさんはボーイッシュな印象で、性格もクールだから男子よりも女子のファンの方が多いから、此れもまた納得かな?チョコ置いて行ったこの気持ちも分からないじゃないからね。

 

 

 

 

「みほが貰うなら兎も角、何で私に……ったく、ホワイトデーのお返しはしないわよ?」

 

 

「まぁ、一方的に送られたのに関しては返さなくても良いと思うよ?それに、こんな渡し方じゃ送り主が不明な訳だしね。」

 

 

送り主の名前でも書いてあれば別だけど、こう言う渡し方をする場合は、大抵匿名希望さんからだからね。だからお返しは考えないのが正解だよ。

 

私も、送り主不明の物に関してはお返しする気はないからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

で、時は流れて放課後の部活動の時間。

 

覚悟はしてたけど、戦車道部の皆からプレゼントをもらって嬉しい悲鳴だよ。中には、私がチョコレートを貰う事を見越して、チョコじゃなくてボコのぬいぐるみを持ってくる子も居たけどね。――私の趣味を分かってる子が居るのは嬉しかったかな♪

 

 

それで――

 

 

 

 

「に、西住隊長、その……バレンタインのプレゼントです!」

 

 

 

 

最後に持って来たのは梓ちゃん。

 

よっぽど緊張してるのか、耳まで真っ赤になっちゃってるよ……あぁ、もう可愛いなぁ!!

 

 

 

――ナデコナデコ

 

 

 

 

「ふぇ?ににに、西住隊長!?」

 

 

「ありがとう梓ちゃん、有り難く頂くね?」

 

 

「はうぁ!……そ、その笑顔は反則です西住隊長。頭撫でられただけでヤバかったのに、此れはもう無理――我が人生に一片の悔いなし。」

 

 

 

 

あれ?梓ちゃん?梓ちゃーん?

 

 

 

 

「此れは……立ったまま気絶してるわね澤は。

 

 ……貴女に頭撫でられて、笑顔向けられた事で、澤の中のメーターが振り切れて機能停止したと見て間違いないわね此れ。」

 

 

「流石はみほさん、半端ないわ。」

 

 

「まぁ、梓は幸せそうだから大丈夫だろ?」

 

 

 

 

た、立ったまま気絶って、立ったまま絶命した弁慶じゃないんだから――でも、それだけ喜んで貰えたって考えるなら、逆に梓ちゃんの立ったまま気絶は、喜ぶべき事なのかな?……まぁ、顔が幸せそうだから、大丈夫かも知れないね。

 

 

まさか、こんな事になるとは思わなかったけど、きっと此れも10年後には笑い話のタネになるんだろうね?

 

取り敢えず、梓ちゃんが復帰したら今日の練習を始めようか?バレンタインで甘~~い雰囲気が漂ってるけど、練習を甘くする心算はないから、その心算で居てね♪

 

 

 

 

 

 

で、この後の練習では、実戦形式の模擬戦で、ティーガーⅠに搭乗した梓ちゃんのチームが異常に強かったです。……此れは、来年の大会が期待できそうだよ!

 

 

そう言えば梓ちゃんのチームが強くなった事に関してナオミさんが『憧れの隊長が自分のプレゼント受け取ってくれたら、其れだけで一時的なブースト効果で能力が上がる』って言ってたけど、仮にそうだとしても、やっぱり最終的には梓ちゃんの能力がモノを言うからね。

 

 

バレンタインのプレゼントが、思わぬ効果を発揮したって言うのは、其れは其れで良い事だから♪それじゃあ、今日の練習は此処までだね。

 

 

 

 

そう言えば、近坂先輩にお姉ちゃんからのプレゼントを渡したら、『まほに渡しといて』って逆にプレゼントを渡されたから、家に帰ったら此れを

 

黒森峰の学園艦に届けて貰う準備をしないとだね♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:まほ

 

 

 

ふぅ、今年のバレンタインデーも凄かったな?……持ち運びが大変な事になるだろうと思って、大きめの紙袋を3つ持ってきて正解だったな。

 

さてと、エリカ、小梅、態々呼びつけて悪かったな?私からのバレンタインのプレゼントだ。

 

菊代さんに手伝って貰ったから、見た目は多少いびつでも、味の方は大丈夫だと思う。

 

 

 

 

「此れは、有り難く頂きますまほ先輩!」

 

 

「ありがとうございます♪」

 

 

 

 

喜んでもらえて何よりだ。

 

其れと此れは、みほからエリカと小梅に渡してくれと言われて持って来た物なんだ。此れも、併せて受け取ってくれると嬉しいな。――ある意味で、みほからのプレゼントは衝撃的かもしれないがね。

 

 

 

 

「みほから……ですか?」

 

 

「どんなチョコレートなんでしょうか?……って、此れは!!」

 

 

 

 

開けるまでもなく見えただろう?

 

みほはエリカと小梅へのプレゼントだけは箱の中が見える『セロファン包装』で包まれているから、開けずとも中に何が入って分かる仕様だ。

 

それで、如何だった?

 

 

 

 

「あの、まほ先輩、この満身創痍の熊を模したと思われるチョコレートは一体?」

 

 

「こ、此れは流石に――って言うか、此れは何ですか!?」

 

 

 

 

ボコられ熊の『ボコ』。――みほの大好きなキャラクターなんだ。

 

 

 

 

「「え゛?」」

 

 

 

 

何でも、ドレだけボコボコにされても、諦めずに立ち上がる姿が凄いんだそうだ……確かに、そうかも知れないな。ドレだけ負けても諦めずに前に進む事が、やがて自分の力になるのだからな。――そう、エリカ、お前の様にな。

 

 

小学校時代に一方的に叩きのめしてやったと言うのに、お前は其処から這い上がって来たからな?――ある意味では、お前もボコと同じ思考形態だったのかもしれんな。

 

だが、そのおかげでお前に私が去った後の黒森峰を任せられると言う物だ。

 

 

慢心せず、此れからも励めよ2人とも?

 

 

 

 

「はい!勿論その心算です!!」

 

 

「副隊長の名に恥じぬよう、精進します。」

 

 

 

 

なら良い。来年の黒森峰は、私が居た頃よりも強くなっているかもしれないな。

 

みほからのプレゼントが余りにも見た目があれ過ぎて、そのインパクトが全てを持って行った感は否定できない事だけれどね。――まぁ、此れで、チームの結束が固まるのなら、其れは其れで良い事だからね。

 

 

ふふ、今日は練習はお休みかな逸見隊長?

 

バレンタインデーと言う事で校内が浮かれているし、何よりも学園艦が丁度雨の地域を航行してるから、少なくとも実際に戦車を動かすと言うのは難しいだろうと思うのだが?

 

 

 

 

「今日に限ってお休みにしますよ――ボードゲームと言うのも考えたのですが、黒森峰ではボードゲームで得られる利点を学ぶ事は難しいでしょうからね……ですが、明日からはビシバシ訓練して、王者奪還に向けて邁進していきますよ。」

 

 

「来年は、真紅の優勝旗を再び持ち帰らないとなりませんから、簡単ではないと思いますけれど。」

 

 

 

 

ふふ、矢張りそう来たか。

 

だが、お前達がそう思ってくれるのなら安心したよ――お互い大変だろうが、その気持ちがあれば、此れからもお互いに支え合って黒森峰の戦車道チームに良い影響を与えてくれ。それが全軍のレベルアップに繋がるだろうからな。

 

 

ヤレヤレ、バレンタインとは程遠い会話になってしまったが、戦車女子には鉄と油と火薬の臭いの方が合ってるかもしれないから、此れは此れで悪くはないさ。

 

 

来年の黒森峰の活躍を、期待しているぞエリカ、小梅♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:しほ

 

 

 

悪戦苦闘しながらも作り上げた手作りトリュフは、形も歪だっけど、常夫さんは何も言わずにそれを食して、そして最後に『ありがとう、美味しかったよしほ』とか囁くって、反則も良い所だわ此れ!!私、よく陥落しなったわね……まぁ、常夫さんに喜んで貰えたのならば良い事だから文句はないけれど。

 

 

まぁ、何にしても、今年のバレンタインデーは、私も娘達も大成功と言う事ね。――ふふ、偶には、こう言う夫婦間のやり取りってのが有っても良いでしょうからね。

 

 

 

ふふ、聖ウォレンティーヌスの命日にあやかったイベントだけど、其れが此処まで楽しいと思えたのは初めてかもしれないわ。

 

――そう言えば、千代の長女と、横須賀の前隊長と、愛和の安斎さんからもみほへのプレゼントが来ていたから、みほが帰ってきたら、其れを渡さなくてはね。

 

 

如何やらみほは、人を引き付ける魅力があるみたいだわ――だからこそ、戦車道における最強エースと言われているのだからね。

 

自校の生徒からだけじゃなく、他校の生徒からも好かれてたと知ったら、みほは一体どんな顔をするのかしら?……ふふ、楽しみになって来たわ此れ♪

 

 

バレンタインのイベントは、未だ未だ楽しみが尽きそうにはないわ――ビバ、ハッピーバレンタイン♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 


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