ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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此れ位は、ジャブでしょエリカさん?Byみほ      此の程度は屁とも感じないわ!本気で来なさい!Byエリカ      この戦いは、激しくなりそうですねBy小梅


Panzer59『一進一退の大激戦の決勝です!』

 

Side:みほ

 

 

 

私が最も得意とする市街地戦が出来る場所に、黒森峰よりも先に入る事が出来たのは僥倖だね。

 

最短ルートと、準最短ルートは潰して来たから、黒森峰の部隊が到達するにはまだ時間が掛かるだろうから。

 

 

仮にエリカさんが最短ルートに積み上げられた倒木を吹き飛ばして来たとしても、ストレートに最短ルートを通って来るのに比べたら、どうしたって余分な時間が掛かる――だから、黒森峰の部隊が此処に到達するには最低でもあと5分はかかる筈。

 

 

僅か5分、されど5分!5分あれば市街地戦の仕込をするのは充分だからね!

 

 

「各員2輌一組になった上で散開して、市街地に散らばって下さい。

 

 市街地ならば遭遇戦がしやすくなりますので、黒森峰の部隊を発見したら、私に許可を得ずに攻撃しちゃって下さい……私達の戦車道って言う物を、黒森峰の皆さんに教えてあげましょう!!」

 

 

『『『『『『『了解!!』』』』』』』

 

 

 

 

うん、頼もしいね♪

 

残り8輌だから、必然的に4チームに分かれる事になるんだけど、梓ちゃんは独立部隊として私とは別行動をして貰っていいかな?

 

梓ちゃんなら、例え単騎で黒森峰の戦車と遭遇しても、相手がエリカさんや小梅さんでない限りは負ける事はないだろうから、そうであるなら私と梓ちゃんは別行動の方が良いんだよ。

 

そうすれば、本来4組である所を5組にする事が出来る訳だから。

 

 

其れに、こう言う風にすれば、ツェスカちゃんと遭遇した時に一騎打ちも出来るでしょ?

 

 

 

 

「西住隊長……ありがとうございます!!独立部隊としての任、果たして見せます!!」

 

 

「うん、戦果を期待してるよ梓ちゃん♪」

 

 

さて、決勝戦は此処からが本番だよエリカさん、小梅さん!――隻腕の軍神の真髄、たっぷりと味わって貰うよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer59

 

『一進一退の大激戦の決勝です!』[chapter:

 

]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:エリカ

 

 

 

さてと、市街地に到着した訳なんだけど、異様なまでに静かね?――小学校の時は、市街地に入った途端に電撃戦その物の速攻を受けた挙げ句に、部隊を引っ掻き回されて負けたから、其れを警戒してたんだけど、今回はそうじゃないみたいだわ。

 

市街地での電撃戦を仕掛けて来ないって言う事は、或いは地の利を生かした待ち伏せ戦術かしら?……或は、此方を集団で移動させた上での包囲絨毯砲撃か……予測がつないわね。

 

 

だけど、此処でウダウダ考えたっていい答えが出る筈もないわ――『下手な考え休むに似たり』って言葉もある位だからね。

 

 

 

 

「ですね……でも、一体如何したものでしょうか此れは?

 

 市街地戦はみほさんの十八番であり、同時にみほさんの能力を最大限に発揮する事が出来る、みほさん絶対有利の戦場ですよ?――正直な事を言うと、市街地に入り込んだみほさんを倒せる自信が無いです。」

 

 

「其れは間違ってないわ小梅……市街地戦に於いて、みほは無敵よ――まほさんも『シミュレーター上の事とは言え、市街地戦では一度もみほに勝つ事は出来なかった』って言ってたからね。」

 

 

まず間違いなくみほが相手だと、通常の市街地戦のマニュアルは役に立たない……だから、市街地戦の常識、定石は完全に無視するわ。

 

みほ達が先に入った以上、市街地はみほの手の平って言っても過言じゃない――其れを考えると、此のまま集団でいる方が危険ね?

 

なら此処からは、部隊を散開させて市街地を進むのが上策……此れなら、遭遇戦もやり易くなるし、仮にみほが集団で待ち構えている所と遭遇しても、1~2輌の小隊なら追撃を躱す事も難しくは無いもの。

 

 

「各員散開!諸君らの健闘を望む!!」

 

 

『『『『『『『Jawohl!!』』』』』』』』

 

 

 

 

マッタク持って、頼りになる返事ね……でも、私達ならみほの十八番である市街地戦でも戦う事が出来る。勝つ事だって出来る筈!

 

隊長としてはみほには勝てないかも知れないけれど、黒森峰と明光大って言う大きな括りで見たら分からない――隊長としては、及ばなくても、チームとしては負けないわ!

 

 

そうだ、言い忘れてたけど、ツェスカは単騎で自由に動いてくれていいわよ?貴女は、私が指示するよりも、自分で考えて動いて貰った方が戦果が上がりそうだし、明光大の副隊長の澤と、タイマンで戦いたいんでしょ?

 

 

 

 

「そ、其れはそうですが、良いんですか逸見隊長!?」

 

 

「私と小梅だけライバルとやり合っておいて、貴女がライバルとガチで戦う事が出来なかったなんてのは不公平でしょ?

 

 だから此れで良いのよ。ねぇ、小梅?」

 

 

「うん、そう言う事だから安心して良いよツェスカ。此れはエリカさんと決めた事だから――貴女は貴女のライバルと存分に戦ってきてね?」

 

 

 

 

何よりもライバルとのガチバトルは、勝っても負けても己の糧となる物が大きいし、共に高め合うライバルがいてこそ人は成長できるって、私は信じてるのよ……己の経験からね。

 

指揮官の首は、私と小梅で取るから、副官の首は貴女が取って来なさいツェスカ――貴女の手で、私達の中学最後の試合に華を添えて欲しいのよ。

 

 

 

 

「その心遣いに感謝を!……そして、必ずアズサを倒して見せます!!見てて下さい逸見隊長!赤星副隊長!!」

 

 

 

 

えぇ、戦果を期待してるわツェスカ。……私達が、この選択をしたって事は、みほもまた澤に同じような事を命じているのかもしれないけどね。

 

さてと、貴女には私と一緒に来てもらうわよ小梅?――みほと遭遇した場合、私だけの力じゃ勝てないけど、貴女が一緒なら勝てるから。

 

 

 

 

「最初からその心算ですよエリカさん。

 

 私は黒森峰の副隊長――隊長を補佐する立場の人間ですから、みほさんとの戦いになったら全力で、全力を越えてサポートしますから安心して下さい!1人では無理でも、2人ならみほさんにだって勝てる筈ですから!」

 

 

「其れを聞いて安心したわ小梅!」

 

 

此れは、小梅も完全に火が点いたわね?

 

小梅は普段は大人しいし、戦車道でも副官として冷静に補佐をしてくれるけど、その反面、一度火が点くと誰よりも激しく燃え上がって、戦いが終わるまでその火が消える事はないもの。

 

校内の紅白戦で、隊長チームvs副隊長チームで何度か戦った事があるけど、小梅に火が点いた時には勝つのが難しかった――小梅が同じチームに居た場合の勝率は100%だけど、小梅が相手に居た場合の勝率は50%だったからね。

 

 

この小梅が一緒なら、みほに勝つ事も出来る!

 

さぁ、部隊は整ったわよみほ?――決勝戦第2幕の開演と行きましょうか!!

 

 

第2幕は主役がトリプルキャストの凄い一幕になるのは確定しているわ……私と小梅の戦車道と、貴女の戦車道のどちらが上か、白黒つけ

 

させてもらうわ、みほ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

 

決勝戦の第2幕である市街地戦だが、此れは奇しくも明光大、黒森峰共に部隊を散開させて市街地を進むと言う異例の展開を見せていた。

 

形としては、市街地での遭遇戦を考えたみほの戦術に対して、エリカが応えたと言う所だが、実のところそんな事は無く、エリカは単純に、集団で固まっている方が危険として部隊を散開させたに過ぎない。

 

 

だが、其れが逆にみほの戦術に対応する布陣となっていた。

 

此れもまた偶然なのだが、明光大の散会した部隊は、黒森峰の部隊を目指して進軍しており、逆に黒森峰の部隊は、進撃する明光大と戦う事を望んでいるかのように進んで行く。

 

 

仕組まれたかのような部隊展開だが、見晴らしの悪い市街地では、マップ上では見敵状態にあっても、実際には互いに相手を確認出来する事が出来ないと言う事もあり、必ずしもマップ上の通りに戦局が動くと言う訳ではない。

 

 

 

「こっちのルートは外れだったなぁ?敵の姿が全然見えない。

 

 Ⅲ突が健在なら、民家の垣根とかに隠れてる可能性もあるけど、Ⅲ突は2輌とも、さっきの稜線の攻防で撃破されてるから待ち伏せてる可能性は低い……だけど、何もないとは思えないんだよなぁ。」

 

 

 

故にラング2輌で構成された小分隊の指揮官である直下は、此処からどう攻めるかを悩んでいた――否、相手が並みの戦車乗りであったのならば迷う事は無かっただろう――黒森峰の戦車道戦術なら、そこそこの相手は火力で押し切る事が出来るのだから。

 

しかし、明光大は其れで如何にか出来る相手ではない。――隊長のみほは西住流の教えを受けている故に、真正面から力で押す戦いも出来るが、みほの真骨頂はあらゆる戦術と戦略を駆使して戦いだ……それを知ってるからこそ、直下は慎重にならざるを得なかったのだ。

 

もしも、此処で読み誤ったら、其れは黒森峰にとって途轍もない打撃となってしまうのは火を見るよりも明らかなのだから。

 

 

だから、直下は慎重になり、周囲をまるで鷹が獲物を狙うかのような鋭い目つきで観察する――エリカや小梅の陰に隠れて、今一つパッとしない直下だが、黒森峰のレギュラーを勝ち取った腕前は伊達ではないのだ。

 

だが、幾ら注意深く周囲を観察しても敵影は見えない。いっその事、ラングの車高の低さを利用して待ち伏せ(ラングもⅢ突並みに車高が低く待ち伏せには適している。)でもしてやろうかと考え、今いる場所を移動しようとしたが――

 

 

 

――ドォォォォォン!!

 

 

 

「んな、敵襲!?」

 

 

 

此処で、明光大からの攻撃を受けた。全く敵影は見当たらなかったのに一体何処から攻撃されたのか?

 

すぐさま直下は、周囲を確認し、そして見つけた――駐車場に止められていた、2台の大型トラックの間からパンターの砲身を。……何とも見事な待ち伏せだった。

 

Ⅲ突よりも遥かに車高の高いパンターで、此処まで気付かれずにいたと言うのは大したモノだろう……尤も、此れには直下が車高が低めのラングに乗っていた事も影響するのだが。

 

もしも直下がパンタークラスの戦車に乗っていたなら、より視点が高くなったために隠れているパンターを発見できたかもしれないが、視点が低いラングでは、隠れているパンターの存在を見つける事が出来なかったのだ。

 

加えて『市街地で、ティーガーとパンターが待ち伏せ戦術を行うのは難しい』と言う先入観から、可能性を排除していたのも痛いだろう。

 

結果として、黒森峰のラング2輌は、明光大のパンター2輌を相手にしなくてはならなくなったのだから。

 

 

ラングもパンターも、主砲は超長砲身の75mm砲で攻撃力は互角だが、機動力と防御力には大きな差がある。

 

最高速度ではパンターの方がラングを20kmも上回っている上に、ラングの主砲ではパンターの後部を取らない限り撃破するのは難しい。

 

更には、ラングは駆逐戦車である為に回転砲塔がなく、攻撃の自由度も相当に低くなってしまう――故に、如何に直下が優秀な戦車乗りであったとしても、此れだけの性能差を覆すのは難しいだろう。

 

 

 

「く……普通、パンターで待ち伏せとかするかぁ!?トラックが停車してなかったらどうする心算だった訳!?」

 

 

「その時は真正面からぶつかったわ!それと、西住隊長の戦車道に常識は通用しないわよ!!」

 

 

「うっわ、すっごい納得!!」

 

 

 

姿を現したパンターと、果敢にやり合う物の、矢張り回転砲塔が無いのは痛く、如何しても対応が後手後手になってしまう上に、2輌のパンターから矢継ぎ早に放たれる砲撃を避ける為に動き回ったせいで、直下名物『履帯の呪い』が発動し、ラングは2輌とも履帯が切れてしまう。

 

こうなってしまっては、もうどうしようもないだろう――足が止まった回転砲塔のない戦車は只の的でしかないのだから。

 

 

 

「撃破される前に何か言っておく事はある?」

 

 

「なんで、こうも簡単に私の乗る戦車は履帯が切れるのよ!!嫌がらせか!?或は呪いか!?はたまた、孔明の罠か!!?」

 

 

「その答えは……其れが貴女の運命なのよ。」

 

 

「おのれぇ!そんな運命、何時か断ち切ってやるーーー!!」

 

 

「ま、頑張ってね?……撃て!!」

 

 

 

――ドォォォォォォン!!

 

 

――キュポン!

 

 

――キュポン!

 

 

 

 

『黒森峰女学院、Ⅳ号駆逐戦車1号車、Ⅳ号駆逐戦車2号車、行動不能!』

 

 

 

結果、2輌のラングは奮闘虚しくKO!

 

長い槍を備えた軍馬も、攻守速の全てに於いて最高レベルの水準を持っている鋼鉄の豹の爪牙の前には討たれるより他なかったようだ。

 

此れで、明光大も黒森峰も残存車輌は8輌と、数の上では同じになったが、市街地戦である事を考えると、みほ率いる明光大に分があるのは間違いない。

 

 

得意の市街地戦に持ち込んだ事で、明光大は2輌のビハインドを跳ね返し、逆にアドバンテージを取るに至ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、市街地の少し開けた住宅地では、パールホワイトのティーガーⅠと、デザートイエローのパンターが遭遇し、今正に戦闘に入ろうと言う状況になっていた。

 

早い話が、梓とツェスカが、この場でエンカウントしたのだ。

 

 

互いの動きを把握していた訳ではなく、全く偶然に出くわしたのだ――或は、勝負の神様とやらが、此の2人を引き合わせたのか。

 

何れにしても、期せずして訪れたライバル対決の舞台が幕を上げようとしていたのだ。

 

 

 

「まさか、此処で貴女と会うとはね……Spielen mit den besten und Azusa!(最高の勝負をしましょう、アズサ!)」

 

 

「貴女との一騎打ち、楽しみにしてたよ……勝負だよツェスカ!!」

 

 

 

言うが早いか、梓のティーガーⅠと、ツェスカのパンターのエンジンが唸りを上げ、小細工無しの一騎打ちを開始!!

 

戦車の性能で言うのならば、攻撃力と防御力ではティーガーⅠの方が圧倒的に上だが、機動力に関してはパンターの方が遥かに勝る。

 

加えて明光大も黒森峰も、使用戦車にレギュレーションギリギリの魔改造を施してある為、戦車の性能を限界まで引き出しており、双方の利もまた、限界まで引き上げられているのだ。

 

 

機動力で勝るパンターは、動き回りながらティーガーⅠを狙うが、ティーガーⅠもまた、パンターの攻撃に対して『食事の角度』を取って被ダメージを軽減し、カウンターの88mmを放つ。

 

ティーガーⅠの88mmは、総合性能を考えれば重戦車に搭載されている主砲の威力ではティーガーⅡに次いで強力であり、其れこそマウスやヤークトティーガークラスが相手でなければ、正面装甲を抜く事が出来る。

 

パンターが喰らったら当然一溜りもないが、ツェスカはパンターの機動力を持ってして88mmの攻撃をギリギリで躱し続ける。

 

 

此のまま続ければ、明光大か黒森峰、何方かのフラッグ車が撃破されるまでこの攻防は続いてしまうかもしれないと思う位の互角の勝負が展開されているのだ。

 

 

 

「戦車道を始めて1年ちょっとで此処までって、正直信じられないわアズサ。

 

 ――貴女がドイツに居たら、私がジュニアリーグのトップに立つのは、難しかったかもしれないわね。」

 

 

「そう言って貰えると嬉しいかな?……まぁ、私の場合、師匠先生が良かった上に、西住隊長の教えは私に合ってたみたいだからね。」

 

 

 

そんな激しい攻防の中で、しかし梓とツェスカの顔には笑みが浮かんでいた。最高の好敵手との戦いを楽しんでいる者特有の笑みが。

 

互いにその笑みを浮かべていると言うのは、互いにこの戦いを楽しんでいる証であり、同時にこの戦いが更に激化する証でもある。

 

 

 

「フルスロットル!行くよツェスカ!!」

 

 

「受けて立つわ、アズサ!!」

 

 

 

其れを証明するかのように、梓とツェスカの戦いは更にヒートアップ!

 

何方も果敢に攻めるが、互いに決定打を欠くと言う、手に汗握る戦車戦!其れこそ、戦車道の年間ベストバウトにノミネートされてもオカシクない程の激烈な戦車戦が展開されて行く。

 

 

躱すツェスカと弾くアズサ……戦車の性能的にも、この拮抗状態を破るのは、外的な何かが無いと難しいかも知れない。それ程に、梓とツェスカの戦いは差が無く、拮抗していたのだ。――もしも梓がパンターに乗って居たら、更に戦局は混迷を極めていたかもしれない。

 

 

ともあれ、戦闘は激化し、梓はパンターの足を止めようと履帯を狙うが、其れは躱され、逆にツェスカはティーガーⅠの後部を取ろうと機動力に物を言わせて動き回るが、ティーガーⅠもそうはさせないとばかりに動いて後部を取らせない――決着の先が全く見えないのだ。

 

 

だが、此の白熱のライバル対決は、唐突に終わりを迎える事になる。

 

 

 

「「撃て!!」」

 

 

 

もう何度目になるか分からない攻撃に対し、梓はティーガーⅠに食事の角度を取らせて砲弾を弾き、ツェスカはパンターの機動力を持ってして回避したのだが、弾かれた弾丸と、避けられた弾丸が、夫々道路の両脇に建っている高層ビルにジャストヒット!!

 

 

 

――ドガァァァァァァァァァァァァン!!

 

 

 

超強力な戦車砲に撃ち抜かれた2つのビルは、砲弾が撃ち込まれた2階付近から崩れ始め、其のままアメリカのビルの爆破解体の動画の如く足元から崩れて完全倒壊!!

 

その影響で、道路には無数の瓦礫が散らばり、其れが梓とツェスカを分断してしまっていた。

 

ビル2つ分の瓦礫となれば其れは相当な量となり、如何に戦車でも乗り越えて行ける物ではない――其れ以前に、乗り越えて行ったとしても、乗り越えた所で相手に狙い撃ちされるのがオチだろう。

 

となれば、これ以上此処で梓とツェスカが戦う事は出来ないのだお互いに。

 

 

 

『まさか、こんな事になるとは……貴女との決着は次に持ち越しねアズサ。』

 

 

『だね……如何やら、此処は私と貴女が決着を付ける舞台じゃなかったみたいだよツェスカ。――だけど、次に会ったら勝たせて貰うから。』

 

 

『言ってなさい……勝つのは私、勝利は譲らないわ!』

 

 

『私だって譲らない……寧ろ、その勝利をもぎ取るから!!』

 

 

『上等、やってみなさいアズサ!!』

 

 

 

故に、此処は互いに一時休戦と言うか、戦闘が強制終了だ。

 

だからと言って終わりではなく、互いに通信越しに次の機会で決着を付けると言う事を言い、夫々に行動を開始する。――梓とツェスカのライバル関係も、この戦いでより強くなったのかも知れない。

 

 

何にしても、ライバル対決の第1ラウンドはドロー。決着は第2ラウンド以降に持ち越される事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

 

黒森峰のラングを2輌撃破したか……此れで、序盤の稜線攻防戦でのビハインドは回復できたけど、相手が相手だけに安心は出来ないよ。

 

エリカさんも小梅さも、相当に力を上げてきてる――其れこそ、2人が力を合わせたらお姉ちゃんに勝つ事だって出来るかも知れないレベルだからね?……だからこそ、ワクワクして来るんだけどね!!

 

 

 

 

「みほがワクワクする程に強くなった銀髪と天パ……相手にとって不足はねぇ!!

 

 つか、その2人を倒した上で勝たねぇと、本当に勝利したとは言えねぇ感じだぜ!!

 

 両方ぶっ倒して、勝とうぜみほ!!」

 

 

「言われなくても、その心算だよ青子さん!」

 

 

私自身の手で、最低でもエリカさんの乗るフラッグ車を撃破しないと本当の意味で勝ったとは言えないからね……だから、此処から更にガンガン行くから、覚悟しておいてね?

 

 

 

 

「ハッ、とっくに覚悟は完了してるぜみほ!!」

 

 

「どんな命令にだって応えて見せるわみほさん!!」

 

 

「だから、私達に気兼ねせずに、ドンドン命令なさい――例え誰が相手であろうと、撃ち抜いてあげるわ。」

 

 

「……わざわざ言うまでもなかったね。

 

 其れじゃあ先ずは、此方に向かってきてる、黒森峰のパンター2輌を撃破するとしようか?」

 

 

気付かれずに来た心算なんだろうけど甘いよ?フラッグ戦である以上、他の戦車を無視してでもフラッグ車を狙うって言うのは、一番最初に考える物だからね。

 

だから、エリカさんと小梅さん以外の黒森峰の戦車が真っ先に、明光大のフラッグ車である私達のティーガーⅡを狙ってくる事は分かってた。

 

そして、分かっていたから、対応する事も出来る!

 

 

「ナオミさん、撃って!!」

 

 

「了解!吉良ナオミ、目標を狙い撃つ!!」

 

 

「青子さん、次弾装填!!」

 

 

「おっしゃー!任せとけ!!」

 

 

 

ナオミさんの正確な砲撃と、青子さんの高速装填が有れば、どんな相手でも負ける事はないし、其処につぼみさんの操縦が加われば正に鬼に金棒!

 

最初の砲撃でパンター1輌を撃破して、其処から青子さんが高速装填で砲弾を詰めると、つぼみさんが通常のティーガーⅡでは、絶対に有り得ない軌道でパンターの後部を取って、ナオミさんが一撃かまして撃破!!

 

 

此れで数の上では有利になった――

 

 

 

 

『明光大付属中学校、パンター2号車、パンター4号車行動不能!』

 

 

 

と思ったら、こっちのパンターも2輌が撃破された……このパンター2輌は、ラング2輌を撃破した後も更に進軍していて、その中で恐らく、エリカさんか小梅さんと遭遇して戦いを挑んだんだろうね。

 

確かに、フラッグ戦に於いて、発見したフラッグ車か隊長クラスの戦車を叩くのは間違いじゃないし、最もベターな戦術なのは間違いないんだけど、エリカさんと小梅さんが相手の場合はその限りじゃない。

 

エリカさんも小梅さんも、自分を撃破しに来た相手を逆に返り討ちにするだけの力を持ってるからね……下手に挑んでも撃破されるだけ。

 

だけど、だからこそ……

 

 

「楽しいなぁ。うん、凄く楽しい!!」

 

 

「おぉ、ノリノリだなみほ?――なら、もっと楽しむとすっか!!」

 

 

「うん、もっと楽しもう!この戦いを!最高の戦車道を!!」

 

 

最高の戦いだよ此の決勝戦は!!

 

残存車輌は互いに6輌で、実力的な差も殆どない――なら、最後に勝負を分けるのは、何方が勝利に対して貪欲であったかって事になるのかも知れないね?

 

私は勝利に固執してる訳じゃないけど、でもやる以上は負けたくない!!

 

 

第2幕は略互角……なら、始めようか決勝戦の第3幕を!!手に汗握る、最高の戦車戦を!!

 

 

「行くよ、青子さん、ナオミさん、つぼみさん!!」

 

 

「おうよ!全力でやってやらぁ!!」

 

 

「鋼鉄の豹の爪牙からは逃げられないって言う事を、黒森峰の連中に教えてあげるわ。」

 

 

「全力全壊!!リミッター外しちゃうわよ!!」

 

 

 

 

最高の決勝戦、お楽しみは此処からだよエリカさん!小梅さん!!

 

遠慮も何もいらない……私達の持てる力の全てを出し切って、最高の試合をしましょう!!――其れこそ、高校戦車道の決勝戦にも負けない位の戦いを!!

 

 

さぁ、行きますよ!!

 

 

 

――轟!!

 

 

 

 

「本日二度目の軍神招来……今度は『真田幸村』みたいね。」

 

 

「なら、最高ですね♪」

 

 

中学最後の公式戦となる此の決勝戦――勝たせて貰うよエリカさん、小梅さん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 


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