ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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エリカさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!Byみほ      みほぉぉぉぉぉぉ!!Byエリカ     パリーン(何かが弾ける音)      此れは……まさか、種割れ!By小梅


Panzer62『軍神vs銀狼の壮絶な結末です』

Side:まほ

 

 

 

『聖グロリアーナ、フラッグ車行動不能。――黒森峰女学院の勝利です!』

 

 

 

 

ふぅ……勝てたか。

 

黒森峰の高等部でも、最初は天城さんが隊長だったんだが、私が高等部に入学してくるや否や、速攻で私を隊長に指名して、自分は後ろに下がってしまったのだが、其れが逆に良かったのかも知れないな?

 

こう言っては何だが、同輩にしろ先輩にしろ、私と互角に戦えるのは天城さんか凛くらいだったからな――尤も、流石は黒森峰と言うか、私には及ばずとも、隊員のレベルは高いがな。

 

 

だが、決勝を戦った聖グロの新一年生――名をダージリンと言ったか?彼女は、将来間違いなく聖グロの隊長となり、強敵となるだろうな。

 

否、ダージリンだけじゃない。サンダースのルーキーエースであるケイに、僅か半年足らずでアンツィオを全国大会に出場出来るまでに、戦車道を立て直した安斎、そしてプラウダのルーキーエースであるカチューシャとノンナ、何故継続に行ったのかは分からないが、島田流長女の美佳(本人は『今の私は名無しのミカだよ』とか訳の分からん事を言っていたが…)、私が最高学年になる年は、強敵だらけになりそうだ。

 

 

 

 

「お疲れ様まほ。」

 

 

「凛か……お疲れ様だ。――お前が居なかったら、此の決勝戦は、もっと苦戦してたよ。

 

 去年の中学大会で、全試合でフィニッシャーになったお前の実力は本物だと言う事を、改めて実感させて貰った――此の決勝戦でも、聖グロのフラッグ車を撃破したのはお前だからな。」

 

 

「其れは隊長が良かったからよ――貴女が隊長じゃなかったら、私は此処まで出来ていなかったと思うからね。」

 

 

 

 

其れは嬉しい事を言ってくれる――其れは其れとして、中学戦車道の全国大会はどうなったのだろうか?みほとエリカが戦う以上、一方的な展開にはならないと思うのだが……

 

 

 

 

「貴女の予想道理、一方的な展開にはならず、試合はまだ続いてるわ。

 

 それも、明光大も黒森峰も、互いに残るは隊長車でありフラッグ車である1輌のみって言う状況なの――正真正銘の一騎打ちよ、此れは。」

 

 

「!!」

 

 

他の車輌が全滅した上でのフラッグ車同士の一騎打ちなど、前例がないが、だからこそワクワクしてくるじゃないか――みほが、エリカの事を圧倒的に上回るのか、それともエリカがみほの隙を突いてその喉笛を喰いちぎるのか……そう言う戦いだからな此れは。

 

 

だが、何方が勝っても私は満足だ――だから、みほもエリカも己の戦車道を思い切りぶつけ合え!!一切の遠慮など捨て去ってな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer62

 

『軍神vs銀狼の壮絶な結末です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

 

第61回全国中学校戦車道大会の決勝戦は、フラッグ戦でありながら、フラッグ車以外が全滅と言う異例の事態になっていた。

 

 

 

「「Panzer Vor!!」」

 

 

 

明光大も黒森峰も、残存車輌はフラッグ車のみであり、そうなると必然的に、フラッグ車同士の一騎打ちで勝負が決まる物なのだが、この状況なった時点で、多くの観客は、明光大の勝利を確信していた。

 

みほとエリカの間には、明確な実力差が有るにも拘らず、此処まで互角に戦う事が出来ていたのは、他の隊員の存在があって事であり、タイマン勝負ならば、間違いなくみほが勝つと誰もが思っていたのだ。

 

 

事実、一騎打ちが始まった直後は、エリカは防戦一方であり、一瞬でも判断を間違えば即撃破されてしまうのではないかと言う様な状態だったのだ。

 

 

 

 

しかし――

 

 

 

 

「逃がすな、撃て!!」

 

 

「回避!!そして横っ腹に撃て!!」

 

 

 

時間が経つにつれ、エリカは次第にみほの攻撃に対応できるようになり、更にはカウンターを叩き込むようになっていき、一騎打ちが始まって5分が経過した頃には、エリカはみほと互角にやり合っていた。――車長としての能力で劣り、更にはみほに有利な市街地戦であっても、エリカはみほと互角にやり合っているのだ。

 

 

否、車長の能力として劣っていると言うのは、少々語弊があるかも知れない。

 

実は元々、逸見エリカと言う少女は、戦車道の才能に関しては、みほに勝るとも劣らない物を持っていたのだが、小学生の時に、西住姉妹に完敗した事で、自分で『西住姉妹には勝てない』と思い込んでしまい、常に戦車道ではナンバー2に甘んじるようになっていたのだ。

 

 

 

だがしかし、エリカは誰よりもストイックに戦車道と向き合い、人の何倍もの努力をしてその力をぐんぐんと伸ばして行った――だが、其れでも西住姉妹(特にみほに対して)に勝利すると言う事が想像出来ず『自分1人では勝てないが、仲間が居ればその限りではない』と言う考えを持つに至り、己の才能に自ら蓋をしてしまったのだ。

 

 

勿論、その考え自体は間違いではなく、実際に小梅との連携は、みほを追い詰めた。

 

もしも、梓の援護が間に合わなかったら、みほのティーガーⅡは撃破されていたのかも知れないのだから。

 

 

しかし其れはならず、乱入して来た梓が小梅を相討ちと言う形で撃破し、結果として、味方の援護は無い状態でみほと戦う事になってしまったのである。

 

 

だが、何の悪戯か神の気紛れかは知らないが、この状況が、仲間からの支援が期待できないと言う極限の状況が、エリカの精神を研ぎ澄まし、集中させ、その結果として己で施した蓋を開ける事になっていた。

 

 

 

「(エリカさんの動きが目に見えてよくなった――此れは、覚醒したかなエリカさんが。

 

  だとしたら、もう私とエリカさんの間に実力差は殆どない。精々私の方がエリカさんよりも早く戦車道を始めていた位の差しかないかな。)」

 

 

「あんの銀髪、目に見えて動きが良くなったじゃねぇか!?何だよ、今まで手ぇ抜いてたのかアイツ!!」

 

 

「まさか、手を抜いて戦ってこの状況に持って行ける相手じゃないでしょみほは。」

 

 

「なんだか、一気に一皮剥けた感じねぇ……」

 

 

「一皮剥けた……正にその通りだよ。

 

 エリカさんは、此れまでも全力で戦っていたけど、この一騎打ちの中で自分の本当の力が覚醒したんだよ――このエリカさんは、今までのエリカさんとは比べ物にならない程に強いと思う。

 

 今のエリカさんが相手じゃ、私も絶対勝てるとは言い難いよ?」

 

 

「マジかオイ?だが、其れは其れで面白れぇ!てか、最後の一騎打ちが呆気なく終わるってのは無しだからな!!」

 

 

 

其れは、普通ならば有り難くない事なのだろうが、明光大の、特にみほ達隊長車の面々からすれば、嬉しくて楽しい事でしかなかった様だ。

 

簡単に勝つ事は出来ないレベルにまで、一騎打ち開始から僅か5分で到達したエリカの眠っていた才能と、剥き出しにされた闘争本能は、一騎打ちの相手として申し分ない所か最高なのだから。

 

 

そして、其れはエリカもだ。

 

 

 

「みほの動きが見える、ある程度読める……何だって急に――?

 

 若しかして、追い詰められた際の火事場の馬鹿力って奴なのかしら此れが……まぁ、何でも良いわ。此れならみほと互角に戦えるもの。

 

 いいえ、互角じゃない、勝つのは私達よ!!全員、限界なんて突破していくわよ!!」

 

 

「任せとけ逸見!!」

 

 

「明光大がナンボのモンよ!新生黒森峰の力、見せてあげるわ!!」

 

 

「覚悟して貰うよ、妹様!!」

 

 

 

自分の戦車乗りの、車長としての能力が、感覚が行き成り鋭くなった事に驚きつつも、此れならばみほと互角に戦えると、勝てると確信し、仲間に激を飛ばす。

 

仲間達も其れに応え、全力で明光大に向かって行く。

 

 

漆黒と、デザートイエロー。鋼鉄の虎2頭の戦いは、始まった時よりも遥かにその激しさを増していた。

 

 

みほもエリカも、本当に重戦車に乗っているのか疑いたくなるほどに駅前広場を縦横無尽に駆け巡り、互いの砲手は的確に相手を狙うが、操縦士の類まれな戦車操縦でクリーンヒットを許さない。

 

更に、装填士が、重戦車の重砲弾を装填しているのかと疑いたくなるような高速装填を見せ、攻撃の手が止まらない様にしている。

 

そして何よりも、みほとエリカ――車長の指示が的確だ。

 

 

基本的には仕掛けるみほに対して、後の先を取るエリカと言う図式だが、エリカはみほのしてくる事を予想していたかのような指示を出して撃破を回避してカウンターを叩き込み、みほはみほでエリカのカウンターを読んでいたかのように其れを躱して、次の一手を打つ。

 

 

 

「(此のままじゃ、此方が不利――なら、今度のカウンターで此方から仕掛ける!)

 

 回避!そして、撃てぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

だが、此のままでは勝てないと判断したエリカは、みほの攻撃を回避したカウンターの砲撃を放った――みほの乗るティーガーⅡではなく、その頭上に有る横断歩道に。

 

 

 

――ドガァァァァァァァン!!

 

 

 

「んな!?つぼみさん、緊急回避!!」

 

 

「掟破りの逆瓦礫落とし!?か、かしこまりよみほさん!!」

 

 

 

みほが得意とする、戦術の一つである『瓦礫落とし』を逆に仕掛けて、みほの攻勢を一旦止めようとしたのだ。

 

そして、エリカの読み通り、其れは効果があり、みほからの攻撃の手は一瞬だが、しかし確実に止まった。そして、その一瞬があれば、今のエリカにとっては充分だ。

 

 

 

「今よ、撃てぇぇぇ!!」

 

 

 

其処に向けてティーガーⅠの砲撃が放たれる。

 

瓦礫を回避する為に、急発進したティーガーⅡは、ティーガーⅠに対して無防備な側面を曝しており、其れは黒森峰にとっては絶好の好機でしかない。

 

如何にティーガーⅡと言えども、側面装甲ならばティーガーⅠの88mmは貫通してしまう。故に、命中すれば必殺間違いなしだが――

 

 

 

「明光大一の俊足に、躱せないモノなんて無いのよ!!」

 

 

 

最早超反応と言っても過言ではない反応スピードで、つぼみがティーガーⅡを急発進してクリーンヒットを免れる。……が、こんな事が出来たのも、このティーガーⅡが東雲工場にてレギュレーションギリギリの魔改造をされていたからだろう。

 

ノーマルのティーガーⅡでこんな事をやったら、その時点で履帯が切れてゲームオーバーだろうから。

 

 

 

「此れすら躱すとか、本気で貴女は底が知れないわねみほ?」

 

 

「エリカさんだって凄いと思うよ?――まさか、覚醒したばかりで此処までとは思わなかったから。

 

 覚醒した潜在能力を、直ぐに此処まで扱うなんて言う事は、早々できるモンじゃないよ?……それこそ、私やお姉ちゃんだって、解放された潜在能力を使いこなせる様になるのに半年はかかったからね。

 

 若しかしたら、今大会の中で、少しずつエリカさんの潜在能力は開花していたのかも知れないね此れは。」

 

 

「私の潜在能力の覚醒?此の急な力の上昇がそうだって言うの?

 

 だとしたら、戦車道の神様も随分と粋な事をしてくれるものだわ――貴女との一騎打ちで、其れに覚醒したんですからね!!

 

 此の試合、勝つのは私達よ!!勝利は譲らないわ!!」

 

 

「否!勝利とはもぎ取るものです!!」

 

 

「……そうだったわね!!」

 

 

 

だが、其れはエリカのティーガーⅠにも言える事だ。ノーマルのティーガーⅠで此れだけ動き回って居たら、とっくに履帯が断末魔の悲鳴を上げていただろう。

 

共に、魔改造された最強重戦車に乗っているからこそのこの戦車戦だが、その激しさは、衰えるどころかドンドン激しくなっていく。

 

 

 

「「撃て!!」」

 

 

 

互いに相手の戦車を狙いつつ、その時々に電柱を倒したり、信号機を頭上から落としたりと、市街地戦と言う物をこれでもかと言う位に最大利

 

用した戦いが展開されているのだ。

 

 

そして、この展開は、残存車輌がフラッグ車のみと言う事が大きく関係して来ている。

 

みほもエリカも類まれな戦車乗りであり、隊長としての能力も高いが、隊長であるが故に、普段は自分の隊の状況や相手の状況など、多くの事を瞬時に把握・判断しなければならず、自身の能力のリソースの多くを隊全体と相手チーム全体に割く必要がある。

 

その為に、隊長は本当の意味での全力を出す事が出来ないのだが、互いに残る相手はフラッグ車のみとなったこの状況に於いては、みほもエリカも『隊長』である必要はなかった。

 

 

既に自分達以外の戦車は沈黙してしまい、味方は居ない代わりに敵も1輌のみ。

 

この状況ならば、敵味方問わず状況を全て把握する必要はなく、互いに目の前のフラッグ車にだけ集中できる為に、己のリソースを全て目の前の相手との戦いに割り振る事が出来ていたのだ。

 

 

 

 

「此れが、隊長である事を捨て去った西住隊長と、逸見さん……!」

 

 

「エリカさんもみほさんも凄いオーラ……軍神が銀狼を斬り捨てるのか、それとも銀狼が軍神の喉笛を喰いちぎるのか……予想出来ません。」

 

 

 

そして、其れは客席まで戻って来た両校の副隊長である澤梓と赤星小梅も理解していた。(この2人以外で理解しているのはツェスカ含めて数名のみ。)

 

『隊長』と言う枷から解き放たれたみほとエリカだからこそ、これ程までの戦車戦が行えているのだと。

 

 

 

「それにしても、エリカさんもみほさんも一体どれだけ集中してるんでしょうね?

 

 極限の集中状態の表現で、漫画とかアニメでは見る事がありますけど、まさか現実で見る事になるとは思いませんでした。」

 

 

「今の西住隊長と、逸見先輩ってドレくらいの強さなんでしょう、赤星さん?」

 

 

「さぁ?少なくとも、私達ではとても適わないレベルなのは間違いありませんよ澤さん。」

 

 

 

同時にオーロラヴィジョンに映し出されたみほとエリカの表情には、両校の隊員の全てが驚かされていた。

 

みほとエリカは強敵との戦いを楽しんでいるとき特有の笑みを口元に浮かべているが、瞳からはハイライトが消えて瞳孔が極端に収縮した状態に――『極限の集中状態』とも言うべき状況になっていたのだ。

 

 

ベタな言い方だが、心は熱く燃えても頭はクールで、思考はクリアーと言う、戦う者としては最高の状況だが、真に其れに至れる者は多くはないだろう。

 

まほですら、この状態になった事は無いのだ。(まほの場合は、そうなる必要がある相手が居なかっただけであり、唯一千代美との戦いで、限りなくそれに近い状態にはなっている。)

 

 

此れもまた、実力が拮抗している一騎打ちだからこそみほもエリカもその状態になったのだろう。

 

 

 

そんな状態の2人の戦いは、比喩ではなく目が離せない状況となっている。

 

実力は略拮抗しているが故に、決定打に欠き、中々互いに相手を撃破出来ない――故に、目を離したその一瞬に、試合が決定してしまうかも知れないから。

 

 

現に今も、みほ車が『元祖瓦礫落とし』を炸裂させれば、エリカ車は其れを見事に躱して、カウンターの『掟破りの逆電柱倒し』を仕掛け、倒れて来た電柱をティーガーⅡの主砲が粉砕すると言う、息もつかせぬ攻防が行われたばかりだ。

 

 

 

 

「(残り段数は、あと10発……搭載可能砲弾はティーガーⅠの方がティーガーⅡよりも8発だけ多いから、此のまま長引けばこっちが弾切れ起こしちゃう……次で決める!!)」

 

 

「(残り段数は11発ね……みほのティーガーⅡが何発残ってるか分からないけど、残弾数が心許ないのは確か――次で決めましょうか!)」

 

 

 

 

しかしながら、なかなか決着が付かない戦いと言うのは、弾数を消費しているのと同じであり、みほのティーガーⅡも、エリカのティーガーⅠも残弾数が心許ない状況となっており、試合を長引かせる事は出来ない状況になっていた。

 

なので、互いに次で相手を仕留めると決め、夫々最後の命令を下す。

 

 

 

「「撃てぇぇぇ!!」」

 

 

 

同時に発せられた砲撃命令。

 

だが、何方の砲撃も相手の戦車には向かわず、その頭上に有る信号機のアームを圧し折る!――奇しくも、交差点を真ん中にして向かい合って居た事で、互いに頭上からのシグナル落としを選択する結果になったのだ。

 

 

無論それを大人しく喰らうみほとエリカではなく、砲撃と同時に急発進し、シグナル落としを回避!

 

そのまま、互いに真正面から向かい合って1発ずつ打つが、其れは回避され、すれ違うような形となる。――が、すれ違いざまに互いに砲塔を回転させて相手の戦車に向け……

 

 

 

 

「Feuer!!(撃て!!)」

 

 

「Das ist das Ende!!(打ちかませ!!)」

 

 

 

同じタイミングで、ティーガーの象徴である88mm(アハトアハト)が炸裂し、互いの戦車から白煙が上がる。

 

果たして勝ったのは何方なのか……徐々に白煙が晴れ――

 

 

 

――キュポン×2

 

 

 

ティーガーⅡとティーガーⅠから、同時に白旗が上がったのだ。

 

 

 

 

『明光大付属、黒森峰女学院、共にフラッグ車、行動不能!――よって、此の試合、両者引き分け!!』

 

 

 

 

なんと、一騎打ちの結果は、まさかの引き分け。つまりは、決着付かず。

 

だが、勝敗が付かなかったにも拘らず、観客も、両校の隊員も、惜しげない拍手と歓声を送っていた――勝ち負けと言う結果以上に、みほとエリカの一騎打ちは、人々の心に大きな印象を残したのだ。

 

 

 

「引き……分け?」

 

 

「そう……みたいだね。」

 

 

 

みほとエリカも、まさか引き分けになるとは思っていなかったが、しかしその表情は晴れやかだ――全力を出し切ったのだから当然だろう。

 

しかし、全力を出し切ったと言うのは、精も根も尽き果てたの同じであり、試合後の握手をしようと、戦車を降りたみほとエリカは、握手をするどころか、互いに歩み出た所でダウン!

 

死力を尽くして戦った2人には、最早立つだけの力すら残って居なかった様だ。

 

 

 

「もう無理、限界……此処まで戦った自分を褒めてやりたいわ。」

 

 

「あはは……それは私もだよ――だけど、楽しかったよね?」

 

 

「其れだけは、間違いないわ――だけど、此の試合は、どう処理されるのかしらね?」

 

 

「其れは、私達の考える事じゃない――連盟がどんな判断を下すかって事にかかってるからね。」

 

 

「確かに――だけど、連盟がどんな判断を下そうと、私は満足してるわ。

 

 貴女と全力で戦う事が出来たのだから。――最高の試合だったわ、ありがとう、みほ。」

 

 

「お礼を言うのは私の方だよエリカさん――こんなに興奮した試合は、本当に久しぶりだったから。ありがとう、エリカさん。」

 

 

 

其れでも、みほとエリカは、寝転がりながらも互いに手を握って握手して、健闘を称える。

 

第61回全国中学校戦車道大会は、異例のフラッグ車以外全滅での一騎打ちに加え、前例のない引き分けと言う、後にも先も例のない幕切れとなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、この結果に頭を悩ませたのは連盟だ。

 

互いにフラッグ車以外の戦車が全滅した上でのフラッグ車の一騎打ちだけでも例がないと言うのに、その上、その一騎打ちすら引き分けと言う結果に終わった為に、どう対応するかとの緊急会議を開く事になったのだ。

 

 

その会議では色々な意見が出た。

 

 

『双方とも学園から、同性能の戦車を輸送させて延長戦をしたらどうか?』

 

 

『ダメだ、両校の隊長には、延長戦を行う体力は残って居ない。』

 

 

『ならば、後日再試合を行うと言うのは?』

 

 

『其れも如何だ?実力が拮抗している以上、再試合でも同じ結果になる可能性が否定できない――もし、そうなった場合は如何する?』

 

 

『我々と観客によるジャッジで決めるのは如何だ?』

 

 

『我々は兎も角、観客は自分の贔屓の方に入れるだろうから公平ではない。』

 

 

 

だが、その何れもが却下され、決まって居ない状況となっていた。

 

此のままでは、何もどうしようもないと言う所で、誰かが言った――両校とも優勝で、同点優勝で良いのではないかと。

 

 

 

『同点優勝……そうだ、それで行こう。

 

 スポーツの世界に於いて、同点優勝と言う物は決して珍しい物ではない。』

 

 

『実に良きアイディアだ。

 

 此れだけの戦いをしたのならば、明光大も黒森峰も優勝校として恥じない力を有している――あの戦いを見たのならば、観客もまた同点優勝でも納得するだろう。』

 

 

 

 

そして、その意見は驚くほどすんなりと採用され、第61回全国中学校戦車道大会は、同点優勝によって、優勝校が明光大と黒森峰の2校と言う、異例の幕引きとなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

 

『第61回全国中学校戦車道大会、優勝、明光大付属中学校、黒森峰女学院!』

 

 

 

 

試合其の物は引き分けだったけど、まさか同点優勝って言う結果になるとは思ってなかったかな?――再試合の可能性を考えて、次の作戦を考えてたんだけど、如何やらそれは必要なさそうだね。

 

 

壇上では、私とエリカさんが、連盟の会長から優勝旗の授与をされている所。

 

明光大と黒森峰の2つの学校の隊長が、1つの優勝旗を2人で受け取るっていう光景は、マスコミの目を引くのか、なんかうざったい位にフラッシュが炸裂してた気がするよ……

 

 

 

 

「まぁ、仕方ないでしょ?前代未聞が満載な決勝戦だったんだから。――間違いなく、今月の月間戦車道のトップは、私と貴女の戦いがトップを張るんじゃないかって思うわ。」

 

 

「うぅ……其れは勘弁してほしいぁなぁ?

 

 普通にインタビューを受けるなら兎も角、マスコミに押しかけられるのは嫌だよ?」

 

 

「其れについては同意するけど、多分大丈夫でしょ?

 

 貴女は家か学校に居れば安全だし、休日に出かけるにしても、虎と狐がお供で付いて来るでしょうから、猛獣を従えてる女に命知らずな取材をする輩は居ないだろうし、黒森峰の方も、西住師範が何とかやってくれると思うから大丈夫だと思うわ。」

 

 

 

 

……確かに、ロンメルとアンドリューを引き連れていれば、並のマスコミは寄ってこないだろうし、パパラッチの類もアンドリューが猛獣の咆哮をかませば蜘蛛の子散らすように逃げるだろうからね。

 

加えて、黒森峰の過剰な取材はお母さんが『西住流師範』の雷名を使えば簡単に抑える事が出来るから、安心できるかな。

 

 

なら今は、優勝できた事を喜ぼうか!!

 

 

「明光大が!!」

 

 

「黒森峰が!!」

 

 

「「否、私達が王者だ!!!」」

 

 

 

私が右手で、エリカさんが左手で優勝旗を掴んで、其れを高々と掲げる――と同時に、会場からは割れんばかりの歓声と拍手が湧き上がる。

 

其れだけ、此の試合は、強烈な印象を残したって言う事だね。

 

 

 

 

「そうね……私達の戦いが、此れだけ多くの人を魅了した。そう考えれば、この結果も悪くない。寧ろ最高だったって言えるんじゃない?」

 

 

「確かに言えてるかも。」

 

 

何よりも、引き分けだったとは言え、此の試合は最高に楽しめたからね。

 

 

 

 

「よっしゃー!!準備は良いかテメェ等!!

 

 死力を尽くして戦ったアタシ等の隊長を胴上げだ!!明光大も黒森峰もねぇ!!アタシ等の最高の隊長の戦いを讃えて胴上げだーー!!」

 

 

「異論無しです♪」

 

 

 

 

って、わわわ!あっと言う間に明光大の隊員と黒森峰の隊員が集まって来て、そのまま私とエリカさんの同時胴上げ!?――此れは、エリカさんの覚醒以上に予想外だったよ!!

 

 

 

 

「「「「「「「「「「ワッショイ!ワッショイ!!」」」」」」」」」」

 

 

 

「マッタクコイツ等は……でも、悪い気はしないわね。」

 

 

「うん、悪い気はしないね。」

 

 

だって、皆が私達を祝福してくれてるって言う事なんだから、此の胴上げは。

 

引き分けの末のダブル優勝って言う結果だったけど、この大会は、中学校3年間で最高の大会だったって、そう言う事が出来る試合だった。

 

 

中学最後の大会の、其れも決勝戦で此れだけの試合が出来た事には、感謝してもし切れない位だね。

 

 

本当に、最高の試合だったよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

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