ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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体育祭でもPanzer Vor!!Byみほ      全力で行くわよ?Byナオミ     おっしゃー、圧倒的に勝つ!By青子


Panzer66『激闘!熱闘!!体育祭です!!!』

 

Side:みほ

 

 

 

2学期、其れは1年の中で最もイベントが盛りだくさんの学期!

 

体育祭に文化祭に、3年生は卒業旅行兼修学旅行!それに加えて学校独自の秋のイベントが目白押しだから、もう食べられませんって位に全てのイベントを堪能しないとね!

 

 

そして本日は、その重要イベントの一つである体育祭の当日です!!

 

今年の私は青組だけど、同じ青組には、梓ちゃん達が居るから結構頼りになるね♪――目標は、2位以下に100点以上の差をつけて勝つ事だけど、出来るかな?

 

 

 

 

「出来るかどうかは問題じゃねぇ!

 

 大事なのはやるかやらねぇかだろ?――何よりも、みほが2位以下に100以上の差をつけて勝つと言った以上、アタシ等の勝利は絶対!

 

 アタシ等の力を見せてやろうぜみほ!!」

 

 

「隻腕の軍神は、戦車を降りても最強だって言う事を教えてあげましょう?――無知な下級生に、其れを教えてあげるのも上級生の務めだと思うしね。」

 

 

「みほさんと澤さんが一緒のチームなら負けは無いわ!!圧倒的勝利をもって、中学校生活最後の体育祭の優勝を攫っちゃいましょう!!」

 

 

 

 

勿論その心算だよ?

 

たかが体育祭、されど体育祭……こう見えて、私って負けず嫌いだから、例え体育祭であっても、絶対に負けたくない――だから、勝ちに行くよこの体育祭は!!

 

 

勝って優勝して、其れで最高の思い出にしようよ。

 

 

 

 

「異論はねぇぞみほ!!満場一致ってやつだ!!」

 

 

「なら、目標を達成できるように、頑張らないとだね♪」

 

 

中学生活最後の体育祭、いよいよ開幕だね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer66

 

『激闘!熱闘!!体育祭です!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言う訳で始まった体育祭。

 

先ずは、ブラスバンド部に率いられての入場行進に始まって、其処から全学年がトラック内に入った所で開会式……校長先生のお話しが長くなかったのは良かったよ。

 

 

まさか『本日は晴天にて体育祭日和。各組、全力で競技に挑んで下さい!』って言うシンプルな物になるとは思わなかったからね……校長先生は、校長先生で考えたのかもね。

 

 

で、開会式のラストと言えば選手宣誓で、其れを務めるのは私。

 

まぁ、選手宣誓其の物は、去年もやってるし、今年の戦車道大会でもやってるから緊張なんてものは全くないけれど、此処は大事な所だからキッチリと決めないとね!

 

 

「宣誓!我々選手一同は、スポーツマンシップにのっとり、力の限り正々堂々と戦う事を誓います!!選手代表、3年1組、西住みほ!!」

 

 

「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」」

 

 

 

 

保護者と来賓のみならず、全校生徒からも拍手を貰えたって事は、取り敢えず選手宣誓は巧く行ったみたいだね……何と言うかホッとした。……保護者の中に、ハンディカム装備してるお母さんと、三脚にデジタル一眼を付けて撮影してるお父さんと、お手軽にスマホで撮影してる菊代さんは見なかった事にしよう。

 

って言うか菊代さんは、絶対写真をお姉ちゃんに送る心算だよね……まぁ、実害はないから良いって事にしとこうかな。

 

 

 

 

「お疲れさんみほ……今の選手宣誓、カッコ良かったぜ!」

 

 

「今の選手宣誓で、完全に会場を飲み込んだのは間違いないわ――流石はみほ、選手宣誓で会場を飲み込んでしまうとは見事としか言い様がないわね。」

 

 

「みほさんのカリスマ性は半端じゃないわ……みほさんは、生まれながらにして人の上に立つリーダーなのよきっと!!」

 

 

 

 

あはは……想像以上の高評価をありがとうございます。

 

だけどつぼみさん、私が生まれながらのリーダー気質って言うのは如何だろう?其れは、どっちかって言うとお姉ちゃんの方が合ってるんじゃないかなぁ……って、よくよく考えてみたら、小さい時は私がお姉ちゃんを引っ張って遊びに行ってたっけか?

 

思えば、エリカさんを半ば強制的にⅡ号戦車に乗せたのも私だし――アレが、リーダーの気質の芽生えみたいなものだったとしたら、確かに私って、つぼみさんの言う通りなのかなぁ?

 

 

なら、リーダーとして3年1組を、引いては青組を引っ張って行かないとね!

 

 

「それじゃあ、優勝目指して、パンツァーフォー!!」

 

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」(青組全員*鍵カッコ数省略)

 

 

 

 

青組全員、総勢92人が一斉に了解って言うと可成りの迫力があるね♪

 

今ので、他チームは少し気圧されたみたいだし、一気に勢いで呑み込んで、勢いを止めずにそのまま優勝街道まっしぐらで行きましょう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

 

こうして、みほの選手宣誓の後に開始された体育祭は、一番最初の競技である、1年生による100m走から熱戦が繰り広げられていた。

 

こう言う競技は、大抵の場合陸上部が圧倒的に有利になるのだが、戦車道部の部員が其れに喰らい付く形でギリギリのデッドヒートを見せ、上位を陸上部が独占と言う状態を許さなかった。

 

西住流フィジカルトレーニングによって鍛えられた身体は、陸上専門の陸上部員と陸上競技で競っても、勝てないまでも負ける事は無いレベルの成績を残す事が出来るようだ。

 

 

其の1種目目が終わった時点での順位は、青組と白組が同点トップで、以下赤組、緑組、黄色組の順で並ぶが、その差は僅差である。最初の競技で、得点が大きく開かなかったのは、展開としては面白いだろう。

 

 

とは言え全ての種目を見ていく事は出来ないので、みほ達元隊長チームの面々と梓達新隊長チームの面々の出場競技を見て行こう。

 

 

 

・3年生:借り物競争

 

 

 

この競技には、みほ、青子、ナオミ、つぼみが全員エントリー。

 

運動神経には自信があるし、スポーツテストの50m走に於いても、陸上部をぶっちぎって1位から4位までを独占している面々だが、借り物競争は、足の速さだけでなく、如何に容易く借りられる物が書かれたカードを引くかがカギとなる競技であり、足の速さの他に運の強さと、カードを選ぶ直感力が物を言う競技なのだ。

 

 

第1走者はつぼみ。

 

自称『明光大一の俊足』の俊足であり、実際に50m走の記録は6秒89と言うトンデモないタイムを叩き出している韋駄天であり、此の体育祭の殆どの競争競技にエントリーしてる猛者だ。

 

 

 

「初っ端からリミッター外して行くわよ!!」

 

 

 

その俊足を発揮し、スタートダッシュからトップスピードに乗ってるんじゃないかと誤解するほどの勢いでカッ飛び、一番で借り物が書かれたカードをゲット!

 

だが、書かれていた借り物は、何と『ステンレスのバケツ』。

 

ハッキリ言って、応援している生徒や、保護者、来賓や教員が個人的に其れを持っている可能性はゼロである……つまりは、何処かから持って来なくてはならない訳で、此れは可成りのタイムロスとなる。

 

最も近い場所でも、昇降口の掃除用具入れになるのだから、可成りきついだろう……普通ならば。

 

 

 

「ステンレスのバケツですって?上等だわ!!」

 

 

 

言うが早いか、つぼみは砂煙を巻き上げながら昇降口まで突撃し、そしてステンレス製のバケツを手に持って帰還!この間僅かに30秒!!

 

勿論その間に、『ひも靴』と言う簡単な借り物を引き当てた生徒がトップに躍り出ていたのだが、バケツを持ってきたつぼみは猛烈な勢いで追いかけ、そしてゴール5m前で抜き去り、更に其処から1mの差を開けてゴールイン!!

 

意地悪な借り物も何のその、持ち前の俊足を120%発揮して、見事に1位となったのだった。

 

 

 

続く第2走者は3位に終わり、第3走者である青子が登場。

 

青子もまたつぼみ程ではないにしても足は可成り速いので、スタートからトップに躍り出てカードを拾ったが……

 

 

 

「マジかオイ?」

 

 

 

青子の借り物は『和服』。

 

此れは可成り難易度が高い借り物だと言えるだろう。今のご時世、こう言う場所に和服で訪れる人など殆どいない――其れこそ、其れなりの上流階級の奥様か、華道や茶道の家元でもない限りは先ず有り得ない。

 

故に、青子の借り物は無茶振りと言えるのだが……

 

 

 

「だが、和服なら1人だけ居るぜ!!菊代さん、悪いけど一緒に来てくれ!!」

 

 

「おや、私ですか?みほお嬢様のご友人の頼みとあらば断わる訳には行きませんね。」

 

 

 

この会場には西住夫妻と共にやって来ていた菊代が居たのだ。

 

井手上菊代と言う人は、普段から和服で過ごしている人であり、其れは西住家の家政婦の時でもプライベートの時でも変わらず、此の体育祭にも若草色の着物で応援に来ていたのだ。

 

全くの偶然だが、此れは本来ならば『ハズレ』となるカードを引いた青子には有り難かった。

 

すぐさま青子は、菊代の手を掴んで猛ダッシュ!!そして、菊代もまた着物に下駄(歯のないタイプ)と言う出で立ちでありながら青子のダッシュに付いて行く。

 

現役時代は、西住しほの片腕と称された戦車乗りの運動神経は、一線を退いた今も未だ健在であったらしい。

 

そのお陰で、青子は見事に1位をゲットし、青組は大きく得点を伸ばす事になった。

 

 

続く第4走者はナオミ。

 

長身の半分を占める長い足は一歩が大きく、其れでタイムを稼ぐ事が出来るスプリンターだ。

 

 

 

「走りでは負けないけれど、問題は借り物よね……ま、せめて楽な物を引き当てる事を願うしかないわね。」

 

 

 

其れでも、借り物競争は足の速さが全てではないと言う事をナオミは知っているので、如何か楽な借り物を引き当てられる様にと願って居たのだが、神様とは意外と残酷な物であったらしい。

 

 

 

「げ……此れはマジ!?」

 

 

 

余程な物が書かれていたらしく、ナオミは校門を出て外に。

 

その間にも、他の選手が次々と借り物カードを引いて行くのだが……

 

 

 

「ごめーん、ちょっと西住さん貸してくれる?」

 

 

 

赤組の走者がみほの所にやって来た。

 

其れだけならば問題は無い。借り物に『西住みほ』と記載されている可能性は決してゼロではないのだし、赤組走者のカードには確かに『西住みほ』と記載されてのだから――一度、マジックで借り物が消されて西住みほと記載されていたが。

 

其れを見る限り、審判にバレない様に不正を働いたのだろうが……事は其れだけで済まなかった。

 

 

 

「おぉっと!みほは白組が貰うわよ!」

 

 

「させるか、西住さんは緑が貰うわ!」

 

 

「黄色も西住さんを指名したわ!」

 

 

 

なんと、白組と緑組と黄色組も、マジックでカードを修正して借り物を『西住みほ』にしていおり、赤、白、緑、黄色の間で凄まじいみほ獲得争いが始まろうとしていたが……

 

 

 

 

「いい加減にしなさいアンタ等!!」

 

 

 

――ドッゴーン!!

 

 

 

其処に、電柱を抱えたナオミが突撃し、赤組、白組、緑組、黄色組の走者を吹っ飛ばす!!

 

明光大戦車道部最強の砲撃手は、戦車戦でなくても、的確に敵を撃ち抜く力を持っている様だ――ナオミに吹き飛ばされた4人は顔からグラウンドに突っ込んで、白旗判定なのだから。

 

 

 

「ナオミさん、そんな物もってきてよかったの!?」

 

 

「仕方ないでしょう、書いてあったんだから!」

 

 

 

で、ナオミの借り物は『電柱』。

 

無茶振りとかそう言うレベルではないが、ナオミは運良く電柱の交換工事をしている所に出くわし、老朽化した電柱を貰ってくる事が出来たのである……だとしても1本数十キロはあるコンクリートの柱を1人で持って来ると言うのは驚きだろう。

 

 

 

「取り敢えず審判、あの4人は失格でしょ?」

 

 

「そうね、失格により、各チーム減点5!」

 

 

 

そして、そのナオミの訴えにより、赤組、白組、緑組、黄色組の第4走者は仲良く失格となり、夫々のチームは減点5と言う手痛いペナルティを喰らってしまった……下手な謀はしない方が良いと言う教訓と言えるだろう。

 

 

その後は、各チーム一進一退のレースが続き、遂に迎えた最終走者。

 

青組の最終走者は、今や明光大のヒーローとなった『隻腕の軍神』こと、みほだ。

 

 

みほは、50m走の記録こそ学年4位だが、スポーツテストの全ての種目でトップ5に入っていると言う驚異の身体能力の持ち主であり、同時に運の強さも可成りなモノだ。

 

つまりは、青組最強の存在である総大将なのである。。

 

 

 

――パァン!!

 

 

 

そんなみほが、出発の合図と同時に地を蹴り、一足飛びかと言う勢いでトップに躍り出る。

 

驚くべきは、一足飛び後もスピードは衰えず、寧ろそこからトップスピードに至って、1位で借り物のカードをゲット!――したのだが、みほの表情は優れない。

 

 

何故か?

 

 

答えは単純明快――借り物が『黒』だったからだ。

 

 

余りにもアバウトすぎるこの借り物は、一見簡単そうに見えるが実は可成り難しい借り物だと言えるのだ――走者のみならず、審判団も納得する『黒』を選ばねばならないのである。

 

 

そうなって来るとハードルは可成り高くなるが、みほに迷いはなかった。

 

 

 

「お母さん、一緒に来て!」

 

 

「良いでしょう。」

 

 

 

客席に行ったかと思ったら、即座に母であるしほを選び、そのままゴールに向かって驀進!!

 

そして見事に1位でゴールしたが、借り物として連れて来られたしほも、借り物の定義を満たしてるとして認められた――しほの純和風な黒髪と、黒で纏めた『西住流師範』としての服装が『黒』の条件を見事に満たしていたのだ。

 

 

此の借り物競争で、青組は一気に単独首位に立ったのだった。

 

 

 

 

 

・2年生:障害物競走

 

 

 

2年生の障害物競走には、戦車道部から新隊長である梓と、新部長であるクロエがエントリーしていた。

 

もっと言うのならば、第1走者がクロエで、最終走者が梓である。此の2人もまた、2年生の体力測定上位者なので期待が持てるだろう。

 

 

まず簡単にコースを説明しておくと、スタート直後にハードルが有り、其の後は跳び箱、その着地点には柔らかく分厚いウレタンマットが有り、コーナーの半分はラグビーボールをサッカーのドリブルで運び、残り半分は足を麻袋に突っ込んだ状態でジャンプで移動、最後のストレートに入った直後に平均台が有り、ゴール直前には滑る床と言う、此処までやるかと言う位のコースだ。

 

 

そんな高難易度の障害物競走の第1走者は、位置に付くとピストルの合図と共に一斉にスタート!

 

第2コースのクロエは、軽やかにハードルをクリアすると、そのまま助走をつけて跳び箱を飛び越え、足を取られる分厚いウレタンマットにはやや苦戦するも、他の選手に送れる事無くコーナーに突入。

 

ラグビーボールと言う不規則な転がり方をする物体を蹴ってドリブルするのは至難の業であり、多くの生徒が苦戦しているが、此処でクロエが奇策に出た。

 

 

 

「転がり方が不規則なら、転がさなければ良いんだヨ。」

 

 

 

ボールを足で蹴り上げると、なんとリフティングをしながら移動を開始!

 

確かにラグビーボールは地面を転がした場合には不規則な転がり方をするが、常に横向きになる状態でリフティングすれば安定してボールを運ぶ事が可能になるのだ。

 

尤も、其れも簡単な事ではないが、実はクロエはサッカーも得意で、此れ位のリフティングなら朝飯前であり、此処で他の生徒を抜き、一番で麻袋に到達!

 

そのまま両足を麻袋に突っ込むと、ピョンピョンと移動しながら残るコーナーを曲がり、最終ストレートの平均台を慎重に渡り切り、ゴール直前の滑る床を――

 

 

 

――ズデーン!!

 

 

 

渡ろうとして、盛大に滑った。其れこそ思い切り尻餅をついた。

 

立とうとしても、滑ってしまって巧く行かない……一体全体、表面にどんな加工がしてあるのか知りたい床材だが、こうも滑っては立ち上がるのは無理とクロエは判断し、何と転がりながら移動を開始!

 

此れは巧い一手だろう。

 

靴や手では滑ってしまっても、布である体操服ならば滑らないと言う事を生かして、寝転がってコロコロ転がって滑る床を攻略!

 

そのままゴールまで駆け抜け、1位でゴールインを果たした。

 

 

尚、このクロエの裏技を他の生徒が真似るであろう事を予想した審判団は、第2レース以降ボールのリフティングと、滑る床での転がり移動を禁止するアナウンスを行ったのだった。

 

 

 

この2つの裏技が禁じ手となった事で、レースは混迷を極め、どのチームも1位が連続で取れない状態となり獲得得点は略同じ。

 

青組以外は借り物競争での減点が響いている為、青組との得点差も埋まって居ないのだが。

 

 

そんなこんなで最終走者である梓の番。

 

1位になった人数が略横ばいの状態での最終走者には、大きな責任が生じるだろう――此処で1位になれば大きく得点を伸ばす事が出来るのだから。

 

勿論梓だって、1位を狙っているが、他の組の最終走者は揃いも揃って陸上部。

 

足の速さだけでは決まらない障害物競走であっても、此れは分が悪いだろう――梓が只の生徒であったのならば。

 

 

 

「位置に付いて!よーい……」

 

 

 

――パァン!!

 

 

 

ピストルと同時に飛び出したのは梓だ。

 

借り物競争の時のみほよろしく、一足飛びで飛び出すと、其のまま一気にトップスピードに乗ってハードルをクリアし、その勢いのまま跳び箱を飛び越え……た勢いに任せて頭からウレタンマットに飛び込んで、着地と同時に連続前転でウレタンマットを高速でクリア!

 

みほの一番弟子であり、西住流フィジカルトレーニングにも最初からへこたれずについて来た梓の身体能力は、陸上部の其れを遥かに凌駕しているのである。

 

 

高難易度のラグビーボールドリブルも、両足を巧く使う事で不規則運動を最小限に抑えてクリア。

 

麻袋ピョンピョンも、立ち幅跳びの要領で距離を稼いで4跳躍で終わらせて見せ、最終ストレートの平均台に至っては、何とその上で側転とトンボ返りをして見せて全生徒の度肝を抜いて見せた。

 

そして最後の滑る床だが……

 

 

 

「滑るのなら、其れを利用するだけ!」

 

 

 

猛ダッシュで床に近付くと、其処で軽くジャンプをすると、正座の姿勢で着地しそのまま床を滑る。

 

走るのが難しいなら滑る特性を利用してしまえと言わんばかりに、正座の姿勢のままツイ~~~っと滑り切って此れをクリア!

 

他の生徒もこの床を同じ方法で攻略するが、もう遅く、梓は1位でゴールイン!

 

デッドヒートの障害物競走は、最後で梓が1位になった事で青組が更に得点を重ねる事になったのだった。

 

 

 

 

・3年生:二人三脚

 

 

 

午前中最後の種目となるこの種目には、青組からはみほとつぼみがコンビで出場している。

 

得点は、相変わらず青組がトップではあるが、他の組も頑張っていて、その点差は可成り埋まってきており、2位の緑組との得点差は僅かに10点――この二人三脚の結果如何によっては、逆転されてしまうだろう。

 

 

みほとつぼみは最終走者であるが、出来れば他のコンビにも1位を取って欲しい所である。

 

取り敢えず第1組は青組が1位を取ったが、其の後は緑が2回、赤が1回、白が2回、黄色が1回と1位を取っており、最終組が走る時点で青組と緑組は同率首位となっていた。

 

つまり、この最終組は青組か緑組は、1位になった方が単独首位となり、それ以外が1位になった場合には、順位を上げる事が出来る状況なのである。

 

 

だがしかし、みほとつぼみに気負いはない。

 

 

 

「つぼみさん、行きますよ!」

 

 

「了解よみほさん!明光大一の俊足と、最強の軍神が組んだら、其れはもう負けなしよ!!」

 

 

 

ガッチリと肩を組んでスタートに備える。

 

そして、スタートのピストルがなった瞬間に……

 

 

 

――ドォォォォン!!

 

 

 

まさかのロケットスタート!

 

みほのつぼみも、繋がれていない方の足で思い切り地面を蹴って飛び出し、強力な推進力を持ってしてスタートダッシュを決めた――に留まらず、其処から凄まじい猛ダッシュ!!

 

パートナーとの息を合わせる事が必要となる二人三脚で、これ程のスピードが出るのかと疑いたくなるスピードでゴールに向かって驀進!!

 

正に阿吽の呼吸。戦車道で鍛えられたツーカーの関係は、二人三脚でもその力を発揮し、2位以下に3m以上の大差をつけての圧勝だった。

 

 

此れにより、午前中の競技が終わった時点で、青組は単独トップに立ち、二着の黄色組が三着の緑組と並んで2位。以下赤と白が続く展開となっていた。

 

 

余談ではあるが、応援合戦の際に、青組の応援団長を務めた梓のボンタンズボン、長ラン、鉢巻、胸にサラシと言う出で立ちは、応援団の中で抜群の人気だったことを明記しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

 

午前中が終わった時点で単独トップ……此のまま午後もかっ飛ばして優勝を勝ち取りたい所だね。

 

で、午後の競技の前には昼休みなので、お父さんとお母さん、そして菊代さんと一緒にお昼御飯です。青子さん達も、家族と一緒にお昼ご飯みたいだね。

 

 

そしてお昼ご飯なんだけど……美味しそうなお弁当!

 

重箱に詰められた色取り取りのおかずに、綺麗な三角形のおにぎり……見てるだけで食欲をそそられちゃうよ!いただきまーす!!!

 

 

「うん、美味しい!この明太高菜のおにぎりは最高だし、唐揚げも衣はカリっと、お肉はジューシーでスッゴクおいしい!流石は菊代さん!!」

 

 

「お褒めに預かり、光栄ですみほお嬢様。」

 

 

 

 

ホントに菊代さんの料理は、ほっぺが蕩けるんじゃないかって思う位に美味しいよ。

 

だけど、このお弁当の中で、ただ1つだけ、此の卵焼きだけは菊代さんが作ったモノじゃない筈だよ……では、いただきます!

 

 

「……うん、美味しい。美味しいよお母さん!」

 

 

「そう、良かったわ。」

 

 

 

 

お母さんは料理は得意じゃないけど、私の大好きな卵焼きと、お姉ちゃんの好物であるカレーだけは、一生懸命練習して美味しいのを作れる様になってるから、卵焼きだけはお母さんが作ったと思ったんだ。

 

そして其れは大当たりで、本当に美味しかった。

 

出汁を利かせた甘めの味付けは、私の好みだしね?――此の卵焼きのお陰で、午後も頑張れそうだよ!勿論、菊代さんの料理にだって同じ事が言えるけどね。

 

 

 

 

「頑張って下さい、みほお嬢様。」

 

 

「頑張ってね、みほちゃん。」

 

 

「西住流に敗北の文字は無いわ……思い切り楽しんで、その上で勝って来なさいみほ。」

 

 

 

 

はい!頑張ってきます!!

 

午後の種目も、ぶっちぎって行くよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

 

体育祭の午後の部も、各種目でデッドヒートが繰り広げられ、順位が二転三転する激しい争いとなっていた。

 

そんな中で始まった、3年生の男女別騎馬戦:女子の部だが……

 

 

 

「Panzer Vor!!」

 

 

「「「Jawohl!!」」」

 

 

 

此れはもう、青組総大将のみほが無双だった。

 

ナオミと青子とつぼみが組んだ騎馬に、みほが乗った騎馬武者なのだが、みほは片手であると言うハンデをものともせずに、他チームの騎馬の鉢巻を取り、青組を勝利へと導く。

 

 

そして最終戦の、赤組との決勝戦でも戦車道元隊長チームの騎馬は、一番の活躍を見せ、赤組を全滅させた上で青組は被害ゼロと言う、圧倒的な結果をもって勝利したのだった。

 

 

 

 

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そんなこんなで競技は消化され、残るは最終種目である『組別対抗リレー』のみ。

 

この最終種目は、各組の学年別に4人ずつ選手を選出して、学年毎に走るルールになっており、青組は1年に新副隊長である新藤歩美がエントリーし、2年にはクロエと梓が。

 

そして3年には元隊長チームである、みほと青子とナオミとつぼみの4人がエントリーし、アンカーを務めるのはみほだ。

 

他の組も、陸上部のスプリンターを筆頭とした生徒をこの競技に当ててきているので油断は禁物。

 

 

加えて、この時点での得点差は最大で5点と言う状況であり、此のリレーで1位を取ったチームが優勝すると言う分かり易い構図故に、このリレーでの勝利は絶対となって来るのだ。

 

 

正に優勝をめぐる天王山。

 

 

 

「位置に付いて……よーい!」

 

 

 

――パァン!!

 

 

 

その戦いの火ぶたが切って落とされた!

 

先ずは1年生がデッドヒートを展開!どの組も一歩も譲らず、略横ばいの状態で走り抜け、そのまま2年生にバトンタッチ!一応新藤が少しだけ早く2年生の第1走者であるクロエにバトンを渡したので、此れは小さくとも大きな成果だろう。

 

 

そのバトンを受け取ったクロエは、おそるべきスピードでトラックを半周し、次の走者へと流れるようなバトンパス!此処までは順調だ。

 

 

 

が、此処でアクシデントが発生!

 

 

クロエからバトンを受け取った生徒がコーナーで転倒し、更にその際に左足を痛めたのか、左足を引き摺るような形で走る……のだが、其処で他の組から抜かれてしまい、青組は一気に最下位に。

 

バトンを受け取った第3走者が奮闘するも、4位の走者に追い付くのがやっとの状態で、2年生の最終走者である梓にバトンパス。

 

 

 

「行きます!!」

 

 

 

そのバトンを受けた梓は凄まじいスピードで飛び出し、同率5位だった白組走者を追い抜き、4位の赤組走者を猛追し、略並ぶ形で最終組である3年生の第1走者の青子にバトンパス。

 

 

 

「お願いします、辛唐先輩!」

 

 

「任せとけや!!」

 

 

 

梓からのバトンを受けた青子は、猛ダッシュで4位の赤組を追い越し、3位の緑組を猛追し、追い付く事は出来なかったモノの、殆どタイムラグ無しでナオミへと繋ぐ。

 

 

 

「頼んだぜナオミ!」

 

 

「任されたわ。」

 

 

 

そのナオミは足の長さを生かした大きなストロークでの大胆な走りで、緑組を抜き去って単独3位に。

 

2位との差は大きいので追い付く事は出来なかったが、順位を上げて第3走者であるつぼみにバトンタッチ!

 

 

 

「全力で行けつぼみ!!」

 

 

「言われなくとも!リミッター解除!!」

 

 

 

そのバトンを受けたつぼみは、リミッター解除の宣言の通りに、凄まじい猛ダッシュ!

 

明光大一の俊足の名に恥じないスピードを持ってして、前を走っている2位の黄色組走者を猛追!砂煙を上げながら猛追!驀進!!

 

 

その凄まじい迫力に押されたのか、黄色組の第3走者は、僅かにスピードが鈍り、バトンタッチ寸前で追い付かれ、青組も黄色組も略同時にアンカーにバトンタッチ。

 

 

 

「頼みましたよみほさん!!」

 

 

「うん、任せておいて!」

 

 

 

略同時にスタートした青組アンカーのみほと、黄色組のアンカー。

 

黄色組のアンカーは、陸上部のエースだった生徒であり、普通なら勝つのは難しい相手だが、『片腕?何それ美味しいの』と言わんばかりの身体能力を有するみほにとっては強敵ではなかった。

 

 

 

「でやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「!?」

 

 

 

可成り深い前傾姿勢で奪取するみほは、黄色組のアンカーの前に出ると、そのままグングン距離を離して行く。――片腕である為に、腕の振りで得られる推進力が半分の状態でこのスピードは驚異だろう。

 

 

そしてみほは其のまま疾走し……

 

 

 

――パァン!

 

 

 

1位でゴール通過!

 

同時にこの瞬間に、青組の優勝が確定した。

 

 

 

『最終種目のリレーを制したのは、青組!明光大中学のヒーローである西住みほが、リレーのアンカーで鮮やかに決めてくれたーー!!』

 

 

 

今年度の体育祭は、隻腕の軍神を有する青組が優勝を果たした。

 

そして其れは、みほにとって体育祭3連覇を果たした瞬間でもあった。(1年次は赤組で、2年次は緑組で優勝している。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:しほ

 

 

 

お見事、よくやったわねみほ。

 

組は違うとはいえ、中学校3年間で体育祭3連覇と言うのは見事だわ……まほですら、其れは出来なかったのだからね。――何時だったか、まほが『みほは自分よりも強い』と言った事があるけど、此の体育祭を見る限り、その可能性は否定できないわ。

 

だけど、だからこそ、其れが頼もしいわ。

 

 

みほが黒森峰に来てくれれば、剛のまほと柔のみほの最強の布陣が出来上がるからね……其れこそ、自分の娘と言う事を差し引いても、最強チーム誕生は間違いないわね。

 

 

――でもまぁ、今はそんな事は後回しにして、みほの体育祭優勝を喜ばないとね――何なら青組全員を打ち上げに招待しちゃおうかしら?

 

菊代!!

 

 

 

 

「ご安心ください奥様、近くの焼き肉店を貸し切りにして貰いましたので、青組全員が来ても大丈夫ですよ。」

 

 

「ベリーナイス。グッジョブ菊代。」

 

 

貴女の仕事の速さには、相変わらず頭が下がるわ。――尤も、そのお陰で豪華な打ち上げが出来る訳だけれどね。

 

 

其れは兎も角、本当に見事だったわみほ――打ち上げで、色々聞かせて欲しいわ。貴女が明光大の3年間で何を学んだのかと言う事も含めて色々とね。

 

 

 

 

「うん!全部話すよ!聞いて欲しい事も一杯あるから!!」

 

 

「其れは楽しみだわ。」

 

 

何にしても、体育祭の優勝おめでとう、みほ。西住流の名に恥じない、見事な戦いでした。――態々見に来た甲斐がありましたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

 


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