ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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なんか、今回は走ってる気がするんだけど?Byみほ      実際結構走ってるでしょ?Byエリカ     本当に。ハードですよ此れは……By小梅


Panzer72『行き成りの振るい落としです!!』

 

Side:みほ

 

 

 

ん……もう朝か~~♪

 

はて、何やら何時もと景色が違う様な?

 

……あ~~~、そうだ。もう家じゃないんだ!昨日から、黒森峰に入学して、陸を離れて学園艦での生活になったんだった!でもって、此処はエリカさんと小梅さんがルームメイトの寮の3人部屋……見慣れた景色じゃない筈だよ。

 

 

時刻は……6時ちょっと前。大体何時も起きてるのと同じ時間かな?

 

何時もだったら、早朝ランニングに行く所なんだけど、エリカさんと小梅さんは誘った方が良いのかなぁ?――中学の夏休み合宿の時は、2人とも私やお姉ちゃんと一緒に朝ランしてたけど、今はぐっすり眠ってるから起こすのも悪いしねぇ?

 

 

……うん、今日は1人で行く事にしよう。

 

エリカさんも小梅さんも、入学式と私の荷解きの手伝いでつかれてるだろうしね……特にエリカさんは、入学式で新入生代表の挨拶なんてモノをやってたから、疲労度は高いと思うし。

 

 

「其れじゃあロンメル、アンドリュー、行ってきます。

 

 7時になったら、エリカさんと、小梅さんを起こしてあげてね?……但し、くれぐれも噛みついたり引っ掻いたりしない様に。分かったかな?」

 

 

『ガウ。』

 

 

『コン♪』

 

 

 

 

うん、宜しい!

 

あ、それからアンドリューは舐めるのもNGだよ?猫の舌をより強力にした虎の舌で舐められたら、人の皮膚なんて簡単に剥けちゃって、大変な事になるから。……って、そんな事は、言われなくても分かってるよね。

 

 

其れじゃあ早朝ランニングに行ってきます。エリカさんと小梅さんと一緒に走るのは、明日からになるだろうけど、一緒に早朝ランニングが出来るようになったら、朝から良い気分になれるかもね♪

 

 

……だけどまさか、ランニングに出る時ですら、許可証が必要だとは思わなかったよ。

 

まぁ、門限を過ぎて、外出可能時間前だから仕方ないのかも知れないけど、機甲科及び運動部の自主練くらいは、許可なしでもやれるようにしてほしい所だね?……今度、お姉ちゃんに相談してみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer72

 

『行き成りの振るい落としです!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

許可を貰って寮の玄関まで来たら、やっぱり居たねお姉ちゃん。其れから近坂先輩も。おはようございます!

 

 

 

 

「みほか、おはよう。お前も此れから早朝ランニングか?」

 

 

「おはようみほ。入学した次の日からとは、良い心掛けね。」

 

 

「まぁ、此れも日課になってるのでやらないと落ち着かないと言うか……お姉ちゃんと近坂先輩もそうでしょう?」

 

 

……あ、此処では隊長と副隊長って呼んだ方が良いのかな?つい、此れまでの癖で、今まで通りに読んじゃったんだけど……若しかして、拙かったかな?

 

 

 

 

「戦車道の時ならば咎める所だが、今はプライベートだから問題なかろう。

 

 其れにだ、今年の機甲科の面子の多くは、西住本家での合宿の経験者だから、みほが私にどう接しているかを知っているから、変に公私を分ける方が違和感を感じる奴が多いさ。」

 

 

「とか言いつつ、実は『お姉ちゃん』と呼んでもらえない事が、ちょっと寂しいのよね~、まほは♪」

 

 

「凛!!」

 

 

「あら、間違ってた?」

 

 

「ぐ……若干間違っていないだけに、非常に悔しく腹立たしい……ではなくてだな!――まぁ、アレだ、公私を分けるのは大事な事だが、無理して分ける必要もないと言う事だ。」

 

 

 

 

……何だか若干突っ込み所が有った気もするけど、其れはスルーした方が良さそう……私の姉が、こんなにシスコンな筈がないから。

 

にしても、何て言うか息がピッタリだねお姉ちゃんと近坂先輩って。まるで、長年連れ添った相棒みたいだよ?

 

 

 

 

「単純に馬が合ったと言うのも大きいだろうが、同学年で私に気兼ねなく話しかけて来てくれるのは凛位なものだからね……私も自然と戦車チームの隊長ではなく、素の西住まほとして接する事が出来ているからだろうな。」

 

 

「相性が良いのは間違いないわね。性格的にも動の私と、静のまほでバランスが取れてるだろうし。

 

 其れに、隊長としてのイメージで皆誤解してるけど、まほってば話をしてみると、ちょっと世間とずれてる所があったり、真面目にボケたり、結構面白いからね。」

 

 

「確かに、お姉ちゃんは時々真面目にボケますからね?」

 

 

「……自分では、マッタク持って自覚は無いんだが、真面目にボケているのか私は……自分で言うのもなんだが、其れはとっても面倒な事をしてしまっているな。」

 

 

「まぁ、良いんじゃないかな?

 

 近坂先輩は、そんなお姉ちゃんを気に入ってるみたいだし。」

 

 

時に、近坂先輩も一緒って事は、早朝ランニングは軽めで行くの、お姉ちゃん?――こう言っちゃなんだけど、幾ら西住家での合同合宿を2度経験してるからって、私達姉妹の早朝ランニングガチバージョンをやったら、登校前にグロッキーになると思うんだけど……

 

 

 

 

「あぁ、其れについては大丈夫だ。

 

 凛は去年から、私と一緒に早朝ランニングを行っていて、段階的に走る距離を伸ばしていった結果、私の本気にも付いて来られるようになったからね。」

 

 

「毎日少しずつ、走る距離を伸ばしてくもんだから、気が付いたらまほのガチランニングに付き合えるようになってたわ……人間の身体の順応性に、限りない可能性を見たわね。」

 

 

 

 

徐々に慣らして行ったって事だったんだ……でも、其れなら私達の本気のランニングが出来るからOKだね♪

 

序に、近坂先輩の事を考えれば、合同合宿を3回も体験してるエリカさんと小梅さんと直下さんなら、ガチランニングにも付き合えるよね?

 

去年の合宿の時には、エリカさんと小梅さんと直下さん、後は梓ちゃんとツェスカちゃんが私の早朝ランニングに付き合ってた訳だしね。

 

 

 

 

「エリカと小梅と直下は問題ないだろうさ……さて、そろそろ行くか。」

 

 

「そうでね、行こうか♪」

 

 

其れじゃあ、早朝ランニング、ぱんつぁ~ふぉ~~!

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

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・・・

 

 

 

 

で、およそ1時間で、早朝ランニング15㎞は終了。……最後まで確りと付いて来た近坂先輩は、本当に毎日お姉ちゃんに付き合ってたんだ。

 

今の近坂先輩は、中学時代とは比べ物に成らないほどの猛者になってる感じだね……黒森峰の副隊長の座に座ってるのは伊達じゃないよ。

 

 

取り敢えず部屋に戻ってシャワー浴びようかな?流石に15kmも走り込んだら、汗がびっしょりだし……って、何やら部屋の中から良い匂いがして来るなぁ?

 

エリカさんと小梅さんが、起きて何か作ってるのかな?

 

 

「ただいま~♪」

 

 

「あ、おかえりなさいみほさん。」

 

 

「おかえり。

 

 早朝ランニングは結構だけど、次からは私と小梅の事も誘いなさいよ?今日は、偶々寝過ごしちゃったけど、普段は私も小梅も、貴女と同じくらいの時間に起きているからね。」

 

 

 

 

なはは……気持ちよさそうに寝てたから、起こすのも悪いと思ってね?だけど、次からは一緒に早朝ランニングをする心算だから、今回だけ大目に見てくれると嬉しいよ。

 

時に、アンドリューとロンメルに、7時になったらエリカさんと小梅さんを起こしてあげてって言って行ったんだけど、ちゃんと起こしてくれた?

 

 

 

 

「起こしてくれたと言えば起こしてくれたわね……ゆさゆさ揺すられて、煩いと思って目を開けたら、目の前に虎の顔があれば、どんな奴でも一瞬で目が覚めるってもんよ。」

 

 

「ロンメルは、私のほっぺを甘噛みしてみょ~~~んと伸ばしてくれましたので……嫌でも目が覚めましたよ。」

 

 

「……取り敢えず、ミッションは達成したみたいだねアンドリューもロンメルも――方法は兎も角として、よくやってくれたよ。」

 

 

『ガウ。』

 

 

『コン♪』

 

 

 

 

本当に良く出来た子達だねアンドリューとロンメルは。此れだけ賢い虎と狐って言うのは、結構珍しいんじゃないかって思えるレベルだから。

 

所で、とっても良い匂いがしたんだけど、若しかして朝ごはんが出来てたりする?

 

 

 

 

「もう少しで出来るから、貴女はシャワーを浴びて来なさい。

 

 幾ら貴女でも、息が切れてないとは言え汗は掻いてるだろうから、汗を落としてサッパリして来なさいよ――其の後で朝食にしましょう。」

 

 

「はーい♪」

 

 

と言う訳で、シャワーを浴びて、制服に着替えて来た訳なんだけど……此れは、中々豪華な朝ごはんが並んでるね?

 

良い具合にトーストされたパンが2枚に、ふわっふわのオムレツに、生ハムが付いて、そして野菜たっぷりのコンソメスープが付いて、飲み物に牛乳が用意されてるんだから、栄養バランス的にも完璧な朝ごはんだよ♪

 

エリカさんも小梅さんも、料理上手なんだね?

 

 

 

 

「此れ位は如何って事ないでしょ?

 

 パンは焼けば良いだけだし、スープだって市販の固形コンソメを使って適当に野菜を入れただけだから、其処まで手は掛かってないわよ。」

 

 

「朝は忙しいのであまり手をかけられませんからね……明日からは、みほさんと一緒に早朝ランニングをするでしょうから、手作り朝食は、学校が休みの日だけになりそうですよ。」

 

 

「あ~~……其れはそうかも。」

 

 

早朝ランニングをやったら汗を掻くから、終わった後でシャワーを浴びたくなるし、そんな事をしてたら朝ごはんを作ってる時間なんて無くなっちゃうから、必然的に学食のモーニングメニューになっちゃう訳か。

 

だったら、尚の事、この朝ごはんは有り難く頂かないとだよ。――それじゃあ、いただきま~す!

 

 

 

うん、美味しい!

 

野菜のコンソメは優しい味わいだし、オムレツはこの上なくふわっふわで、トーストは表面はカリっと香ばしくて中はもっちり柔らかい最高の焼き加減……此れは喫茶店のモーニングセットとして出せるレベルだよ。

 

其れと、味もさることながら、片腕の私でも食べやすいメニューにしてくれた事に感謝かな?トーストもバターを塗ってから焼いた、バタートーストだったからね。

 

 

 

 

「其れ位の事はするわよ。

 

 貴女は片腕である事を感じさせない身体能力を持ってはいるけど、片腕じゃやる事が難しい事も多いのも事実なんだから、其処ら辺のフォローはさせて貰うわ。――其れ位は、ルームメイトとして当然の事でしょ?」

 

 

「そう、なのかな?

 

 良く分からないけど、その心遣いには素直にありがとうって言っておくよエリカさん。勿論小梅さんも。」

 

 

「いえいえ、此れ位当たり前ですから気にしないで下さい。

 

 其れよりも、今日から本格的な授業が始まりますから、機甲科の授業も始まる訳ですよね?……黒森峰の高等部の機甲科の授業――つまりは戦車道ですが、中等部とは比べ物に成らないレベルみたいです。

 

 聞いた話だと、新入生の半分が、半年以内に機甲科から普通科に転属願を出すとか……可成り厳しい世界なのは間違いなさそうです。」

 

 

 

 

まぁ、黒森峰だからね。

 

絶対王者としての強さを保つ為には、隊員の質の高さが重要になって来るから、厳しい訓練と言う振るい落としにかけて隊員を選別して行く必要が有るって事だよ。

 

序に言うなら、その振るい落としに生き残った者の中でも、レギュラーになれるのはホンの一握りだからね……正に実力主義の厳しい世界だけど、其処を生き残ってこそ、黒森峰の戦車乗りになれるんだろうから。

 

 

「だけど、厳しくとも楽しみだよ私は。

 

 中学の時は、レギュラー確定で、しかも行き成り隊長だったから、こう言う振るい落としって体験した事ないし。……逆に、隊長として振るい落としにかけた事はあったけどね。

 

 だから、自分の方が試されるって言うのは、ちょっと新鮮かな?」

 

 

「そう言いきっちゃう辺りが凄いですよねみほさんは……それで、勿論振るい落とされる心算は無いんですよね?」

 

 

「其れは当然だよ小梅さん♪」

 

 

「そう来なくっちゃね?とは言っても、西住流フィジカルトレーニングを平然と熟せる貴女なら、振るい落とされる事なんて無いでしょうけど。

 

 勿論、私と小梅も振るい落とされる心算は毛頭ないわ。

 

 中学1年の合宿の後で、私も小梅もフィジカルトレーニングの量を増やして体力付けて来たし、貴女が居てくれたおかげで、戦車乗りとしても大きく成長できたって自負してるから。

 

 ねぇ、小梅?」

 

 

「そうですね。多分、体力は3年前の数倍はあると思いますよ?

 

 戦車道に関しては、まほさんが私とエリカさんの才能を見出して、指導してくれたから中学の時も1年生からレギュラーに成れた訳ですが、でも、みほさんと言う最高のライバルが居なかったら、黒森峰の中等部のトップ2になる事は出来なかったかも知れませんね。

 

 正に、好敵手が居てくれたからこそ強くなれたって言うやつですよ。」

 

 

 

 

そ、そう言われると照れちゃうかな?

 

でも、そう言って貰えるのは嬉しいよ――なら、中学ではライバルとして存分に戦ったから、高校では最高の戦友として頑張ろうか?どうせなら『黒森峰に此の3人あり』って言われるようになってみるとか如何かな?

 

 

 

 

「其れも良いわね?黒森峰の三羽烏って感じで。――筆頭のみほは、『黒森峰の隻腕の軍神』で二つ名は確定よね。」

 

 

「其れじゃあエリカさんは、『黒森峰の銀狼』だね。」

 

 

そうなると小梅さんは……観察眼が結構高いから、上空から得物を見つけて強襲する猛禽類――『黒森峰の隼』って言う所かな?隼って言うには、少し大人しいかも知れないけど。

 

如何かな小梅さん?

 

 

 

 

「隼ですか……良いですね?そう呼ばれるように、頑張りましょう!」

 

 

「気に入ってくれたみたいで良かったよ。――其れじゃあ、高校戦車道も全力で行こうか?」

 

 

「言われるまでもないわ。私達の手で、黒森峰の10連覇を達成するわよ!!」

 

 

 

 

そう言えば、そんな大記録もかかってるんだったね今年の大会は。

 

一強時代が続くのは、競技の質の低下を招くけど、出来れば切りよく10連覇は成し遂げたいかな?……こう言っちゃなんだけど、V9で止まるよりもV10を遂げた後で連続V記録が途絶えた方が切りも良いしね……って、OG会に聞かれたら怒られちゃうけどね。

 

 

兎にも角にも、今日から本格的に戦車道も始まるから、キッチリと気合を入れておかないとだよ――お姉ちゃんが隊長である事を考えると、初日から何を仕掛けて来るか分からないからね?

 

 

流石に初日から西住流フィジカルトレーニング完全版は無いと思うけど、少し警戒しておいた方が良いかも。

 

お姉ちゃん、頼むから初日から機甲科の生徒が大量離脱する事態が発生するような事だけはしないでよ?……と言っても、学園艦1周して来い位なら、お姉ちゃん的には軽い方かも知れないけどね。

 

 

果てさて、初日は一体どうなるんだろうね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:エリカ

 

 

 

入学2日目から本格的な授業が始まった訳だけど、みほは戦車道だけでなく学業に関しても可成りレベルが高かったわ。

 

隊長の妹って言う事で、教師共も無意識にみほを当てる事が多かったんだけど、主要5教科は勿論の事、黒森峰では必修外国語になってるドイツ語の授業でもバッチリついて来たからね?

 

ドイツクォーターの私が聞いても、みほのドイツ語は完璧だったし……みほの事を超人と称しても、決して罰は当たらないと思うわ私は。

 

そう言えば、体育の時間では、マット運動で片腕ながら側転からの見事なバック宙を決めてクラスメイトの度肝を抜いていたわね……天は二物を与えないって言うけど、天はみほから左腕を奪った代わりに、其れを奪って有り余る代価を用意してくれたみたいね本気で。

 

 

そんな訳で、みほは2日目にして1年生の中での有名人になってたわ――まほ隊長の妹って言う事も有るでしょうけどね。

 

まぁ、本人が自分の凄さを鼻にかける事も無いから、敵を作る事はないんじゃないかしら?……少なくとも、同輩に限ってはって話になるけど。

 

 

何にしても、みほが己の凄さを周囲に認めさせた所で、いよいよ来たわね戦車道の時間が!!

 

ざっと見た所、今年の新隊員は中等部からの持ち上がりと、外部入学を含めて100人ちょっとって所かしら?……この中で、レギュラーに成る事が出来るのは1割程度って言うんだから、黒森峰高等部の厳しさが分かるわ。

 

黒森峰の中等部で隊長を務めてた人が、高等部では補欠にしかなれなかったって話も聞くからね……だけど、それくらい厳しい環境ってのは上等以上の何者でもないわ!

 

戦車乗りとして、更なる高みに至るには、其れ位の厳しい環境で荒波に揉まれないとだからね……にしても、何だって新入生は、パンツァージャケットじゃなくて体操着で集合だったのかしら?

 

 

 

 

「諸君、よく集まってくれた。

 

 私が黒森峰女学園戦車道隊の隊長を務めている西住まほだ。――先ずは、諸君が黒森峰に進学してくれた事を嬉しく思う。」

 

 

 

 

と、此処で隊長が……佇まいはちゃんとしておかないと……みほもそう思ったらしく、背筋をピッと伸ばして隊長の話に耳を傾けてるわね?此れは、隊長の話を真剣に聞いてる証だから、他の新入隊員の模範となったでしょうね。

 

実際に、みほの佇まいを見て、己の姿勢を正した生徒も少なくないもの。

 

 

 

 

「さて、知っていると思うが、我が黒森峰女学園は、高校戦車道の全国大会で9連覇を成し遂げ、今年は10連覇の大記録が掛かってる大事な年だ。

 

 私自身は連覇記録などに興味は無いが、どうせなら10連覇という前人未到の記録をこの手で成し遂げたいと思っているのも事実だが、10連覇の大記録を打ち立てるには、君達の力が絶対に必要になって来るだろう。

 

 だから、先ずは君達の力を見せて貰うとしよう……諸君には、此れから学園艦を1周して貰う。」

 

 

 

 

……はい?

 

ちょっと待って、隊長は今なんて言った!?私の聞き間違いじゃ無ければ学園艦を1周して来いって言ったわよね!?……黒森峰の学園艦は、周囲40㎞って言う化け物学園艦なのに、其れを1周して来いって……行き成りの振るい落としが来たって事か此れは……!

 

 

 

 

「ショートカットのようなずるは駄目だが、それ以外なら歩こうとも、休みながらでも構わないから、完走を目指してくれ。

 

 初日からキツイとも思うだろうが、君達ならば必ずやれると私は信じているよ……中等部からの持ち上がりは兎も角として、外部入学の子達は、黒森峰の厳しさを分かって入って来たんだろうからね。」

 

 

「そう言われましても、初日からこの距離ってのは、流石に厳しくないですか隊長?」

 

 

「ふ……此れも戦車道よ。」

 

 

 

 

隊長、其れを言われたら誰も何も言えないと思いますよ?ぶっちゃけ、其れを言われたら、私も何も言えません――其れに反論出来る人物なんて、日本全国を探してもみほ位のものだと思います。

 

 

でも、隊長がやれと言った以上は拒否権は無いから、やってやろうじゃないのよ学園艦1周を!!――完走する為にも、準備運動は確り行わないとだけどね。

 

 

……そう言えば、私と小梅が準備運動を始めた時には、みほは準備運動がほぼ終わってたけど、あの子ったら、若しかしなくても隊長が学園艦の1周を命じた時から準備運動をしてたって事なのかしら?

 

恐らくはそうでしょうね……流石は姉妹、正に一を聞いて十を知るって言うか、一を聞いて十を理解するって所だわ――本当にやってくれるじゃないのよみほ!!

 

 

だからこそ仲間としては、この上なく頼りになるわ。

 

行き成り訪れた振るい落としだけど、必ず生き残るわよ?……此処で脱落したら、レギュラーなんて夢のまた夢だからね。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

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・・・・・・

 

 

・・・

 

 

 

 

で、走り始めて1時間なんだけど、予想通りと言うか何と言うか、トップは私とみほと小梅と直下の4人だけになったわね?

 

……それ以外の連中は、相当に遅れてるか、或いは脱落したって考えた方が良いわ……其れを考えると、この振るい落としで新入隊員の5割が残れば御の字って言う所でしょうね。

 

 

まぁ、あの合宿を体験してなかったら、私達も脱落してたかもしれないけど。

 

 

にしても、貴女は本当に凄いわねみほ?

 

片腕しかないから、腕の振りによる推進力は、私達の半分しかないのに同じペースで、しかも息切れする事無く付いて来てるって、今更だけど一体どんな身体能力してるのか疑いたくなってくるわ。

 

 

 

 

「あはは……全ては西住流フィジカルトレーニングの賜物かな?

 

 あのスーパーハードトレーニングに比べたら、黒森峰の学園艦を1周するなんてのは、お相撲の横綱が新弟子を捻るよりも軽い事だから。」

 

 

「その感覚の凄さに驚くわ普通に。」

 

 

尤も、軽く息切れしながらも、余裕のみほに付いて行ってる私達も大概なのかも知れないけどね……だけど、私は4人揃って同着なんて事を望んではいないわ――一着になるのは私だからね?

 

 

 

 

――ダッ!!

 

 

 

 

「あ、ずるいですよエリカさん!?」

 

 

「抜け駆けすんなよ、エリカ!!」

 

 

 

 

抜け駆けとは人聞きが悪いわね直下?……私は一番でゴールしたいだけよ。

 

――其れに、こんな行動に出れば、みほだって黙ってないと思うからね?……そうでしょう、みほ?

 

 

 

 

「ふふふ、一番は譲りませんよエリカさん?最初にゴールするのは私ですから!!」

 

 

「そう来なくちゃ面白くないわ……勝負よみほ!!」

 

 

「受けて立ちます、エリカさん!!」

 

 

 

 

んでもって、みほとのバトルが始まって、残りが1kmになった時点では、何方も一歩も譲らずのデッドヒートを繰り広げた結果、最後の100mのバックストレートで、みほが私を抜き去って、其処からは私を寄せ付けずに駆け抜けて、みほは見事1位でゴールイン!

 

私も1秒後にゴールインし、小梅と直下も1分後にはゴールしたから、己の力を示す事は出来たと思うけど、1位で通過したみほのインパクトはハンパなかったから、間違いなく隊長以外の先輩の目にも留まったでしょうね。

 

 

 

 

「其れはエリカさんと小梅さんと直下さんもだと思うよ?

 

 私は西住流のフィジカルトレーニングを日常的に行ってたから、学園艦を1周する位は余裕だったけど、エリカさんと小梅さんと直下さんのフィ ジカルが向上してるのを知ってるのはお姉ちゃんか近坂先輩……或は天城先輩位だろうから、それ以外の人達には、結構新鮮に映ったんじゃないかと思うよ?

 

 何よりも、学園艦1周ていう、無茶振りを言い渡された1年生のうち4人が、ゴールタイム1分以内でゴールしてるんだから、目に留まらないのがオカシイと思うよ?」

 

 

「ふふ、其れは言えてるわね?」

 

 

「って事は、アタシ等レギュラー確定って事かな?」

 

 

「そうは行かないと思いますけど、好印象を残せたのは間違い無いと思いますよ直下さん……取り敢えず、レギュラーに選ばれたら、履帯を切られないように注意してくださいね直下さん?」

 

 

「善処する……ってか、アタシの乗る戦車は、履帯が切れることが前提か!!」

 

 

 

 

アンタは、本気で履帯の呪いを受けてるんじゃないかって思うくらいに履帯が破損するからね……まぁ、その不幸を除けば、直下は優秀な戦車長だから、仲間としては頼りになるけれど。

 

 

でも、最初の振るい落としで、私とみほと小梅と直下の能力の高さを示す事が出来たと思うから、レギュラーに成れるか成れないかは、此処から先の己の努力次第って事でしょうね。

 

 

必ず残ってやるわ、レギュラーに……みほと小梅、直下と一緒に、絶対に!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:まほ

 

 

 

ふむ……大体予想していた事だが、学園艦1周マラソンのトップはみほで、其の後にエリカ、小梅、直下の順で並ぶ結果となったか……最終的に、脱落者は誰もいなかったが、此の4人がトップ4になったのは有り難いな。

 

みほとエリカは、戦車道界隈で知らぬ者はいないし、小梅と直下は、目立たなくとも実力は筋金入りだから、其れを考えると、黒森峰の目標である、前人未到の10連覇も、夢ではないかも知れないな。

 

 

ふふ、つくづく私は恵まれているらしい。

 

中学時代は最高のライバルが居て、高校時代は最高の隊員が居ると来てるからね……ならば、10連覇を成し遂げなければ嘘だな。

 

 

 

 

「えぇ、やってやろうじゃない?って言うか、私達が力を合わせれば、10連覇なんて簡単でしょまほ?」

 

 

「あぁ、その通りだよ凛。」

 

 

私達が力を合わせれば、サンダースだろうが聖グロだろうがプラウダだろうが敵ではない……見せてやるさ、姉妹が揃った時にのみ発動する『真の西住流』って言うモノをな!

 

 

一強時代が続くのは良くないと分かって居るが、10連覇の偉業は成し遂げさせて貰う……今年の黒森峰は、間違いなく此れまでで最強の部隊となっているからね。――寧ろ、此れで負けるのが嘘ってモノだよ。

 

 

だが、そんな事よりも、今はみほと共に戦車道が出来る事が嬉しくてたまらないよ……中学では敵同士だったが、高校では仲間だから、お前の力を頼りにしているよみほ。

 

型に捕らわれない、お前の自由な発想は、黒森峰が発展していく上で絶対に欠かせない物になって行くだろうからな。

 

 

みほと言う存在が、黒森峰の起爆剤になってくれたのなら、戦車乗りの姉として、これ以上に嬉しい事は無いよ――此れからは同じチームの仲間だから、息を合わせてバッチリ行こうじゃないか?

 

私とお前が手を組めば、誰が相手であっても敵ではないし、エリカに小梅に直下、凛は間違いく味方となるだろうからそもそも敵性勢力なんてモノは存在していないのかも知れないな。

 

 

ふふ、如何やら今年は、10連覇って言う錦を飾るのも夢ではないようだ……ならば、成し遂げるしかないだろうね、全損未踏の大記録って言う物をな!!

 

 

みほ達と共に、この大記録を、必ず成し遂げてやる……其れが、今年の私の目標だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 


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