ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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それじゃあ、遊撃隊長の座を勝ち取って来ますByみほ      えっ楽軽いノリで行ったわね?Byエリカ     みほさんんに敵はありませんからね♪By小梅


Panzer74『遊撃隊長争奪戦……本気で行きます!』

Side:みほ

 

 

 

1年生によるバトルロイヤルは、私が率いるチームが勝利した訳だけど、其の後で火種が待ってるとは思わなかったよ。

 

遊撃隊の隊長に選出されたのは予想外だったけど、まさかお姉ちゃんの――黒森峰戦車道チームの隊長である『西住まほ』の決定に異を唱える人が居るとはね。

 

 

其れだけなら兎も角、遊撃隊長の座をかけて私に勝負を挑んで来るなんて……勿論、売られた喧嘩はキッチリ買う心算だけど、私とあの子が戦うかどうかは、全てはお姉ちゃんの判断にかかって来るから、私からは何も言えないんだけどね?

 

果たして、お姉ちゃんはどんな判断を下すのか……

 

 

 

 

「ふむ……良いだろう、不満を抱えたままでは、実戦でいい結果を出す事が出来る筈もないからな。

 

 では、3日後に西住みほと、時坂ヒカリによる、遊撃隊長決定戦を行う事とする。ルールは、二対二のフラッグ戦とし、試合に参加できるメンバーは、1年のみとする。

 

 チームメンバーと使用戦車は、各々で決めて貰う事になるが、無論志願するのもアリだ。遊撃隊長に相応しいのは何方か。そして、自分が力を貸したいと思う相手に、其の力を貸してやってくれ。」

 

 

 

 

で、決まったのは二対二のフラッグ戦……敢えてフラッグ戦にしたのは、そっちの方が殲滅戦ルールよりも戦術眼を計れるって判断したからなんだろうねきっと。

 

となると、3日後に向けて準備をしないとだよ。

 

使用戦車は兎も角、隊員は出来るだけ早く確保しないと、作戦を立てる事も出来ないからね――って、何してるのエリカさん?

 

 

 

 

「さて、みほの実力に盛大にいちゃもんをつけてくれた訳だけど、隊長の鶴の一声で決まりかけていた遊撃隊の隊長の座をみほに賭けさせるって言うのなら、当然貴女も相応の物を賭けるんでしょうね?」

 

 

 

 

ヒカリさんの方に向き直って、鋭い眼光で睨み付けながら『お前も何か賭けろ』って……迫力が凄すぎるよエリカさん!!

 

……喧嘩を売られた側としては、間違ってるのかも知れないけど、喧嘩を売って来たヒカリさんにちょっと同情しちゃうよ……今のエリカさんは、正に銀狼そのものと言っても過言じゃないからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer74

 

『遊撃隊長争奪戦……本気で行きます!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな状態のエリカさんに睨まれたら、大概の人は縮み上がっちゃって何も言えないかも……それどころか最悪の場合は、失神した上で失禁して、拭い去れない黒歴史を刻んじゃうかもだよ。

 

 

 

 

「其れで、アナタは遊撃隊長の座に匹敵する何を賭ける心算なのかしら?」

 

 

「わ、私が負けたら……戦車道を止めるわ!!

 

 私が追い求めて来た道を全て捨てて、戦車道には一切関わらない事にする……対価としては充分でしょう?」

 

 

 

 

エリカさんに迫られたヒカリさんは、私に負けたら戦車道から身を引く事を遊撃隊長の座に対する対価として来たけど……悪いけど、其れは却下と言うしかないよヒカリさん。

 

私が就任予定だった遊撃隊長の座と、貴女の戦車道じゃ対価が見合わない……私に負けた位で、戦車道から身を引くなんて言うのは、あまりにも勿体ないからね。――其れは、口にはしないけどさ。

 

 

 

 

「却下ね。

 

 負けたら戦車道を辞める?……馬鹿言ってんじゃないわよ、このスットコドッコイが!!――そんな物が対価になると思ってるなら、アンタの脳味噌の構造を疑うわ本気で。

 

 地獄の振るい落とし期間を生き残ったんだから、アンタには相応の力があるってのは間違いないけど、だからこそ、其れが抜けたら僅かであっても、黒森峰の戦力がダウンする事になるのよ?

 

 其れとも、己の進退を賭ける事で、みほの優しい部分につけこんで勝利を譲ってもらう心算だったのかしら?」

 

 

「な、そんな筈が有るか!!」

 

 

「なら、己の進退以外の事を賭けるのね。

 

 そうねぇ……Amaz○n限定の、『ハイパーDXヌイグルミ ゴールデン天使ボコ』を賭けるってのは如何?みほが遊撃隊長の座を賭けるなら、此れ位の対価は用意すべきよ。」

 

 

「あ、其れは普通に欲しいかもだけど、流石に定価10万円は無理だと思うよ?」

 

 

「無理、買える訳ないでしょそんなの!!」

 

 

 

 

だよねぇ?スッゴク欲しいけど、此れを賭けるのは止めるとしようか?――と言うか私は別に、貴女に何か賭けて貰わなくていいよヒカリさん。

 

私が本当に遊撃隊長に相応しいのかって思ってる人は、きっと他にも居るだろうから、私はその疑念を払拭する為に戦うだけだから。……其れから、私を遊撃隊長に選んでくれたお姉ちゃん……もとい、隊長の選択は正しかったって証明する為にもね。

 

 

 

 

「む、何よ其れ?戦う前から、もう勝った気でいる訳!?うっわ、スッゴクムカつくんだけど其れ!!」

 

 

「そうは言ってないよ――無論、負ける気は更々ないけど。

 

 と言うか立場が逆だったら、貴女も負けられないんじゃないかなヒカリさん?……この勝負で負けるって事は、自分を遊撃隊長として推してくれた隊長の顔に泥を塗る事になる訳なんだから。」

 

 

私と貴女じゃ、負けて失うモノの重みがまるで違うんだよ。

 

貴方は負けても何も失わないかも知れないけど、私は負けたら決まりかけていた遊撃隊長の座だけじゃなく、隊長からの信頼だって失うかもしれない訳で、隊長からの信頼を失ったら機甲科での居場所もなくなるかもしれない……だから、絶対に負けられないんだよ。

 

 

 

 

「背負う物が違うって言いたいの?

 

 なら、尚の事私も遊撃隊長の座と等価となるモノを賭けないと不釣り合いよね?……良いわ、私が負けたら、貴女のチームの操縦士になって、戦車道の時は貴女の命令に絶対服従すると約束するわ。……序に、勝負の次の日から1週間、試合で貴女のチームに参加したメンバー全員の昼食を奢るわよ!

 

 こう言っちゃなんだけど、今は車長をやらせて貰ってるけど、小学校と中学校は操縦士だったから、操縦技術は悪くないと思うわよ?

 

 私が負けて失うモノは昼食代だけだけど、貴女は勝って得る物が増えたでしょう?……此れなら、悪くない条件だと思うけど如何かしら?」

 

 

「……うん、確かに悪くないね。」

 

 

今思い出したけど、時坂ヒカリさんは、去年の決勝戦で駅前で私のティーガーⅡとやり合ったティーガーⅠの操縦士だったね……確かに、私の十八番である障害物落としを回避したのは見事だったっかな?

 

まさか避けられるとは思ってなかったけど、物の見事に火の見櫓倒しを回避されちゃったからね?……確かに、私が勝った場合に貴女が失うモノは少ないけど、私が得るモノは大きい……OK、その条件飲んだよ!

 

お姉ちゃん……隊長も其れで良いですよね?

 

 

 

 

「うむ、当事者同士が其れで良いのならば、私は何も言わないよ――最終的に決めるのは当事者だからな。

 

 さて、此れにて本日の訓練は終了とする。各員、確りと体を休めて、明日に備えてくれ。……明日からも、厳しい練習は続くのだからな。」

 

 

 

 

最終的に決めるのは私達か……とは言え、負ける事が出来ないのは変わらないから、3日後の勝負への準備は確り行ってないとだよね。

 

 

 

 

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と言う訳で、今日の訓練は終わって、ただいま寮への道のりを歩いている真最中!――その途中で周囲から聞こえてくる会話は、3日後の私と光さんの勝負に関する事が多いね?

 

『どっちが勝つ?』『どっちを応援する?』なんて物から、『遊撃隊長に相応しいのってどっちって聞かれても難しい』『てか、隊長がそう決めたんだから、其れに従うのが筋なんじゃないの?』何て言うモノも聞こえて来る。

 

……中には『身体障害者が遊撃隊長ってのは如何なんだろう?』って言うモノも聞こえて来たけどね?

 

 

 

 

「まぁ、あんなのは無視するに限るわよみほ。

 

 多分アイツに悪意はなくて、純粋な疑問を口にしてるんだろうけど、其れが無自覚の差別だって事に気付いてない輩だからね?……だからアンドリューは唸らない、ロンメルは尻尾の先に炎宿すんじゃないわよ。」

 

 

「エリカさんの言う通りだよ、アンドリュー、ロンメル。私は別に気にしてないから。」

 

 

『ガウ。』

 

 

『コン。』

 

 

「ホントご主人様の言う事をよく聞くよね此の子達って?

 

 多分サーカスで調教された猛獣よりも言う事聞くんじゃない?……って、1週間経って普通にこの光景に慣れてしまった自分が恐ろしい。」

 

 

「慣れないと、精神的に疲れるから、慣れた方が良いんですよ直下さん。

 

 其れよりもみほさんは、3日後の試合は誰と組むか決めてあるんですか?」

 

 

 

 

自分のチームはもう決めてあるよ。今日のバトルロイヤルで一緒のチームになった人達に頼もうと思ってるんだ。

 

練度も個性もバラバラだったけど、今日のバトルロイヤルでそう言った物は把握できたし、バトルロイヤルを勝ち抜いたって事で、自信が付いたと思うからね。

 

だけど、もう1チームは如何しようか考え中なんだ。

 

 

 

 

「もう1チームが考え中なら、そのチームの車長は私じゃ駄目かしらみほ?

 

 大会で戦って、合宿では同じチームを組んだ事も有るから、貴女の命令を熟す自信はあるわ――私の力を使ってみない、みほ?」

 

 

「あ、抜け駆けはずるいですよエリカさん!

 

 私だって、みほさんのチームのもう1チームの戦車長に立候補します!」

 

 

「此れは、エリカと小梅による、みほ争奪戦!?みほの右腕の座を賭けての骨肉の争いか!?……いやぁ、モテモテだねぇみほは。」

 

 

「モテモテって言うのかな此れは?」

 

 

だけど、折角の申し出は有り難いんだけど、今度の試合では、エリカさんと小梅さんとは組む心算は無いんだ……非常に申し訳ないけれど!

 

 

 

 

「「何故!!?」」

 

 

「え~っと……ほら、エリカさんと小梅さんは、黒森峰の中等部で隊長と副隊長を務めてて、引き分けとは言え黒森峰中を王者に返り咲かせたって言う事で名が知られてるからかな?」

 

 

そんな2人と組んで勝っても、多分ヒカリさんは納得しないと思うんだよ。

 

言うなれば『強キャラ使って勝って、勝った気になるな』みたいな感じかな?……だから、今度の勝負に限っては、エリカさんと小梅さんは除外せざるを得ないんだよ。

 

 

 

 

「確かに、強キャラ使って勝っても実力とは言えないけれど……じゃあ、一体誰を誘う心算なの?

 

 こう言っちゃなんだけど、隊長が貴女を遊撃隊長に指名したのを、身内贔屓って感じてる奴も少なくないだろうから、メンバー集めは楽じゃないと思うわよ?」

 

 

「其れは大丈夫だよエリカさん。

 

 もう1チームの車長は、直下さんにお願いする心算だから――良いよね、直下さん?」

 

 

「うぇぇぇ?アタシか!?

 

 いや、普通にOKだけどアタシで良いのか?……と言うか、今の理論で言うと、アタシは強キャラじゃないって事か?……確かに、履帯が切れるからなぁ、アタシは……」

 

 

「いや、履帯と強さは関係ないからね?」

 

 

強さとかじゃなくて、直下さんはエリカさんや小梅さんと比べると、余り名は知られてないから『強キャラ使用』とは言われないと思ったんだよ。

 

だけど、直下さんは、ネームバリューは無くてもキッチリと仕事は熟してくれる人だから頼りになるのは間違いないって思ってるんだ――私や、エリカさん、小梅さんが派手なゴールを決める花形プレイヤーだとしたら、直下さんはそのゴールをアシストする黒子って感じかな。

 

そして、今度の試合では、その黒子の存在が必要なんだよ――ダメかな?

 

 

 

 

「な~る、そう言う事か。

 

 確かにエリカや小梅と比べたら、アタシには華がないかも知れないけど、黒子に徹するのは得意だからね?――OK、そう言う事なら目一杯頑張らせて貰うとするわ!

 

 ……ただ、履帯が切れるかも知れないから、その時は勘弁してね?」

 

 

「……履帯の呪いは、軍神の加護で何とかならないモノかな?」

 

 

「其れは可成り厳しいんじゃないかしら?」

 

 

「軍神の加護が『全ての状態異常をほぼ完全に防ぐ』で『状態異常防御力255%』だとしたら、直下さんの履帯の呪いは『発生率255%』なので、履帯が切れるかどうかは五分五分ッて言う所ですね。」

 

 

 

 

……多分大丈夫だって思っておくよ。

 

 

 

 

「ふふ、貴女の周りは、自然と賑やかになるみたいねみほちゃん?」

 

 

「ふぇ?天城さん!!」

 

 

「「「お、お疲れ様です天城先輩!」」」

 

 

「お疲れ様。……って、そんなに硬くならなくてもいいわよ~~?気軽に行きましょ、気軽にね。」

 

 

 

 

そうは言われましても、お姉ちゃんが『尊敬するに値する』って言った天城さんに声を掛けられたら、大抵の1年生は硬くなると思いますよ!?

 

私を含め、この面子は合宿で耐性が付いてたからアレですけどね!?

 

 

 

 

「其れは失礼。

 

 其れは其れとしても、今度の試合、頑張ってね?貴女なら、負ける事は無いと思うけれど、件の遊撃隊は、まほが黒森峰を改革する為に考えた事だから、絶対に成果をあげさせたいの。」

 

 

「「「「黒森峰の改革?」」」」

 

 

 

其れって何なんですか天城さん?

 

 

 

 

「黒森峰女学園は、去年で全国大会9連覇を達成した絶対王者となっているけど、その戦い方は圧倒的な戦力で相手を真正面から押し潰す蹂躙戦術で、そこそこの相手なら叩きのめせるけど、技が切れる相手には苦戦を強いられる物なの――実際に、去年は練習試合で継続とアンツィオには思わぬ苦戦を強いられたからね。

 

 その経験から、まほは黒森峰の押せ押せ戦術とは違う戦術が必要だと考えて、独立機動権をもつ遊撃隊の発足に踏み切ったのよ。

 

 そして、その遊撃隊の能力を120%発揮するには、貴女が遊撃隊長にならないとなのよみほちゃん。」

 

 

「お姉ちゃんは、其処まで考えてたんですね……」

 

 

「正に、剛と柔が融和した戦術って事ですよね此れは……」

 

 

「確かに、其れなら遊撃隊長はみほさん以外に有り得ないですね……みほさんの戦車道は、次の一手が読めない凄さがありますからね?」

 

 

「そう言う事なら、尚の事アタシは頑張らないとだわ!……3日後の勝負、勝ちに行くわよみほ!!」

 

 

 

 

勿論だよ直下さん!お姉ちゃんが、其処まで考えてた以上、私は絶対に遊撃隊長にならないとだからね!!――私は絶対に勝つよ!!!

 

 

 

 

――轟!!

 

 

 

 

「……此れが噂に聞いた軍神招来か……宿した力は、猛将『真田幸村』ね?」

 

 

「私には、幕末の英傑にして新撰組の一番人気の『土方歳三』が見えましたけど……」

 

 

「アタシには、三国志最強の『呂布奉先』が見えたぞ?」

 

 

「甘いわね天城さんも、小梅も直下も……私には、みほの背後に最上級能力を発動した上で、『神の進化』によって最上級のランクを得た、攻撃力∞の『真祖オベリスク』が見えたわ――みほは、神をも従える戦車乗りなのよ!!」

 

 

 

 

……戦国の英雄と幕末の英雄と三国志の英雄は兎も角、此処で神に至るってのは如何なのエリカさん!?……と言うか、神を従える戦車乗りって訳が分からないよ!!

 

 

 

 

「貴女の戦車道は神レベルって事よ!はい、説明終了!!」

 

 

「幾ら何でも説明が大雑把過ぎるよエリカさん!!」

 

 

でも、私の戦車道を『神レベル』って評価してくれた事は素直に嬉しいかな?……私は、まだ私の戦車道を見つけきってはいないけど、その欠片は掴んでるから、その状態の私の戦車道を高く評価してくれた事は嬉しいよ。

 

でも、其処までの評価を貰ってるなら尚の事負ける事は出来ないね!!

 

 

 

 

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・・・

 

 

 

 

で、あっという間に3日後です。

 

今日の訓練の最初に、私のチームとヒカリさんのチームによる、二対二のフラッグ戦が行われる事になってる……勝った方が遊撃隊長になる此の戦いは、お姉ちゃんを始めとして、色んな人が見てるから、少し緊張しちゃうかも……直下さんは大丈夫?緊張とかしてないかな?

 

 

 

 

「貴女と組むと言うだけで、緊張なんて宇宙の彼方のブラックホールまで吹っ飛んだわ……此の試合、屁のツッパリはいらんですよ!」

 

 

「なら、大丈夫だね。」

 

 

それじゃあ、確りバッチリ勝ちに行こうか!!――隊長、試合を開始してください!!

 

 

 

 

「其れでは、此れより西住みほチームと、時坂ヒカリチームの試合を始める。互いに、礼!」

 

 

「「よろしくお願いします!!」」

 

 

 

さて、私の本気を確りと見て貰おうかなヒカリさん?……遊撃隊長の椅子に固執してる訳じゃないけど、勝つのは私だよ――たっぷりと味わってみてね、私の戦車道って言うモノを!!

 

 

其れじゃあ行くよ?Panzer Vor!!

 

 

 

 

『『『『『『『『『Jawohl!!』』』』』』』』』

 

 

 

 

手加減なし!本気で行くから、覚悟してねヒカリさん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

 

遊撃隊の隊長の座を賭けて始まった此の試合だが、先ずは始めに両チームのオーダーを見て行くとしよう。

 

 

 

・みほチーム

 

パンターG型×1(隊長車兼フラッグ車)

 

ヤークトパンター×1

 

 

 

・ヒカリチーム

 

ティーガーⅡ×1(隊長車兼フラッグ車)

 

ヤークトティーガー×1

 

 

 

 

何方のチームも、戦車1輌と自走砲が1輌と言う編成だが、みほの方が攻守速のバランスを考えた編成であるのに対して、ヒカリのチームは攻撃力と防御力を重視して、機動力を捨てた編成と言えるだろう。

 

とは言え、みほチームの戦車では、フラッグ車のティーガーⅡを撃破するには、可成り相手に近付く事が必要となるので、決定打を与える為には、相応の戦術が必要になるだろう。

 

 

無論、そんな事はみほには分かって居る。

 

だからこそ、試合開始直後に、みほのチームは2つに分かれて、直下のチームを藪の中に隠れさせたのだ……其処を敵が通るのを待って。

 

 

待ち伏せ作戦は有効だが、しかし危険も多い――もしも、読み違えたら待ち伏せが無駄になっただけでなく、其処から手痛いカウンターを喰らう事だってあるのだから。

 

 

だが、みほはそんな愚を犯す戦車乗りではない。

 

 

 

「相手チームは予想通り、ポイントA-1に移動したみたいなので、やっちゃってください直下さん!!」

 

 

『りょーかい!!』

 

 

 

一方のみほは、試合開始直後に高台に移動すると、其処から戦場を見渡して、ヒカリチームの動きを逐一観察していたのだ――そして、直下のヤークトパンターが潜んでいる地点にヒカリチームが差し掛かった事を確認すると、即時攻撃命令を下し、直下も其れに応える。

 

 

 

「藪の中から……ヤークトパンターか!!」

 

 

 

その強襲には驚いたヒカリだが、ヤークトパンターの主砲では、ティーガーⅡとヤークトティーガーの正面装甲を抜くのは難しいと考えたらしく、『相手の戦力を削いだ方が良い』と思い至り、フラッグ車よりも先に、ヤークトパンターをターゲットにする。

 

如何にヤークトパンターが、最強クラスの駆逐戦車であっても、ティーガーⅡとヤークトティーガーの攻撃を真面に受けたら一溜りもない――にも関わらず、ヤークトパンターの車長である直下は余裕綽々の表情だ。

 

 

 

「何を笑ってるんだ?……敗北を前にして、気でも触れたって訳?」

 

 

「気が触れた?……馬鹿言ってんじゃないよ――アタシは、勝利を確信しただけだ――出番だよ、隊長!!」

 

 

「此処から一気に決めます!!」

 

 

 

その直下の余裕に応える様に、ヒカリチームの背後からみほのパンターが出現……と言うよりも、小高い丘をジャンプ台にして空を飛んでの驚愕の登場だ!!

 

其れだけでも驚きだが、みほのパンターはヤークトティーガーに着地し、それと同時にヤークトティーガーからは、戦闘不能を現す白旗が上がり、先ずは先手を取った形だ。

 

 

否、先手ではなく、此れはフィニッシュへの一手に過ぎない。

 

 

 

「直下さん、狙って下さい!!」

 

 

「了解!喰らえ、掟破りのトラップカード『逆履帯の呪い』!!」

 

 

 

ヤークトティーガーから降りたみほは、直ぐに直下に指示を飛ばして、ヒカリの乗るティーガーⅡの履帯を切る!履帯が切れる直下が、相手の履帯を切ったのだ!……此れは、精神的にも来るだろう。

 

が、此の一手は有効だ。

 

 

ティーガーⅡは、攻防力は間違いなく最強クラスだが、機動力は最低クラスであり、そんな戦車の履帯が切れたとあっては、其れはもう『頑丈な的』でしかない。

 

 

 

「そんな……此れが、隻腕の軍神の力だって言うの!?……桁違い何て言うモノじゃない、格が違ったわね此れは……!」

 

 

 

攻撃能力は残ってるとは言え、機動力に長ける2匹の鋼鉄の豹を、機動力を失った鋼鉄の虎の王が捕らえる事は難しい。と言うよりも、先ず不可能だろう。

 

 

 

「此れで終わりです!!」

 

 

「打っ飛べやこらぁ!!」

 

 

 

動く事の出来なくなったティーガーⅡを相手に、みほと直下は機動力を駆使して背後に回り込み、ティーガーⅡの最大の弱点である後部装甲

 

とターレットリングに砲撃を叩き込む!!

 

 

 

――キュポン!

 

 

 

『ヒカリチーム、フラッグ車行動不能。よって此の試合、みほチームの勝利。』

 

 

 

その攻撃は覿面で、ヒカリの乗るティーガーⅡは沈黙し、撃破された証である白旗が上がっている――遊撃隊長の座を賭けた戦いは、みほがヒカリの事を圧倒して、完封勝利したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

 

と言う訳で、試合は私の勝ちです。なので、遊撃隊長は、私に決定って事で良いんですよね西住隊長?

 

 

 

 

「うむ、此の試合の結果を持ってして、遊撃隊の隊長は西住みほに決まった。――異論はないな?……尤も、有った所でこの決定が覆る事など、有りはしないがな。」

 

 

「みほは実力を示したからね……此れなら、文句はないでしょう?」

 

 

 

 

うん、私が遊撃隊の隊長だね!――精一杯頑張るよ!!

 

で、問題は私に負けちゃったヒカリさんなんだけど……え~~っと、頭抱えちゃって大丈夫?……流石に、ヤークトティーガーを戦車ボディプレスで潰した後での履帯切りから、集中砲火はやり過ぎたかなぁ?……え~っと、生きてるかなヒカリさん?

 

 

 

 

――グワバァ!!

 

 

 

 

!?……い、行き成り私の手を掴んで、如何したのヒカリさん!?ちょ、ちょっと怖いんだけどこれは!?

 

 

 

 

「負けた……完膚なきまでに負けた、其れは認めるわ。

 

 ぶっちゃけて言うと、去年の中学全国大会の時よりも強くなってる……確かに、遊撃隊の隊長は、貴女以外には有り得ないって実感したわ。

 

 だから……私は、今この時より、貴女に絶対の忠誠を誓うわ妹様!!」

 

 

「忠誠!?」

 

 

「てか、妹様って呼び名は如何なのよ?」

 

 

「普通にみほさん……忠誠を誓ったのなら、みほ様とでも呼べばいいんじゃないですかねぇ?」

 

 

「まさかこうなるとは、流石に予想できなかったわ……正にどんでん返しの驚天動地だっての!!……マッタク持って予想外だったわ。」

 

 

 

 

だよねぇ?……まぁ、取り敢えず実害はないだろうから、此のままで行こうか?

 

まさか、遊撃隊長の座を賭けた戦いで、勝利報酬として思わぬ物を手にするとは思ってなかったからね……でも、ヒカリさんの操縦技術は、つぼみさんには劣るけど一流レベルだから、仲間なら頼もしい事この上ないから大歓迎かな。

 

 

何にしても、遊撃隊長の任、確りと務めさせて貰うよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued…

 

 


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