ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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作戦会議は重要です!!Byみほ      そうね……其れで全てが決まると言っても過言じゃないからね?Byエリカ     大事ですね、作戦はBy小梅


Panzer76『練習試合前の作戦会議です!』

 

Side:エリカ

 

 

 

継続高校との練習試合を3日後に控えた本日の練習は、隊長チームと副隊長チームに分かれての紅白戦で、みほ率いる遊撃隊のメンバー全員が隊長チームである紅組に組み込まれた訳だけど……流石にこの試合結果は予想してたとは言え凄まじいわ。

 

 

 

 

『白組フラッグ車行動不能。よって、紅組の勝利!』

 

 

 

 

隊長の指揮が見事だったのは当然だけど、それ以上に此の試合では、みほ率いる遊撃隊がその力を十二分に発揮したと言っても過言じゃなかったわよ!

 

同じ中学だったって事を加味しても、隊長が認めた副隊長である凛さんを、あそこまで完璧に抑え込むとは思って居なかったわ……それ以上に見事だったのは、『フラッグ車を確実に撃破する』事に重点を置いた戦術ね。

 

黒森峰は、真正面からの蹂躙戦術を得意としてるから、フラッグ戦であっても、相手の戦車チームを全滅させてしまう事が多くて、其れが批判の対象となる事も少なくないんだけど、みほの戦い方はそうじゃない。

 

 

副隊長の乗るフラッグ車の動きを予測した上で、其れを誘導するような攻撃を仕掛けて、最後は隊長の前に誘き出した訳だからね?

 

校内の紅白戦とは言え、遊撃隊の有効性は此れで可成りアピールできた筈――出来た筈なんだけど、最後の一手だけは少し解せないのよね……やろうと思えば、みほは副隊長のティーガーⅠを撃破出来た筈なのに、其れをせずに仕上げ役を隊長に任せるなんて、言い方は悪いけど隊長に花を持たせるような真似をしたのかしら?

 

みほ以外の遊撃隊の車輌は、敵フラッグ車の護衛と戦ってたからフラッグ車を狙う事は出来なかったから兎も角として……

 

 

「みほ、如何して隊長に仕上げ役を任せたの?貴女なら、副隊長のティーガーⅠを撃破する事が出来た筈でしょう?」

 

 

「うん、やろうと思えば出来たよ――だけど、遊撃隊の役目は敵戦車を撃破する事よりも、勝利を引き寄せる事だと思うんだ私は。

 

 あそこで欲張れば、撃破する事は出来たかも知れないけど、若しも撃破出来なかった場合は、其処から隙が生じて盤面を引っ繰り返されるかも知れないから。

 

 あの局面では、お姉ちゃんにフィニッシャーを任せて、私達遊撃隊はそのサポートに回るのが最善だったんだよ。」

 

 

 

 

つまり、より確実に勝つ為に、隊長にフィニシャーを任せて自分は黒子に回ったと?……一瞬で、其処まで判断するとは恐れ入るわ本気で。

 

でも、そんな貴女が隊長を務める遊撃隊なら不安は何処にもないわね……3日後の練習試合。必ず勝つわよみほ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer76

 

『練習試合前の作戦会議です!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

 

紅白戦が終わって、今は隊長室で、お姉ちゃんと近坂先輩と私の3人で、今日の紅白戦についての雑談中……お姉ちゃんが、戦車道の時間じゃないから、楽にしろって言ってくれたから、私は畏まった態度ではないけど

 

 

取り敢えず総合的に見て今日の紅白戦は結構巧く行ったかな?……遊撃隊としては、初めての試合だったけど、思ったよりも思い通りに動かす事が出来たからね。

 

エリカさんも、小梅さんも、直下さんも、自分の役割を確りと熟してくれたから次の一手も打ちやすかったし。

 

 

流石に、今度の練習試合では紅白戦とは違うから今日みたいには行かないかもしれないけど、今日の紅白戦で確信したよお姉ちゃん――この遊撃隊は、間違いなく黒森峰の新しい戦力になるって。

 

 

 

 

「あぁ、そうだな。此れだけの動きが出来るのならば問題はないだろう……信じていなかった訳ではないが、まさか此処までの成果を上げるとは思って居なかったけれどな。……だが、其れだけに頼りになる。

 

 いずれにせよ、今日の紅白戦で機甲科の生徒の多くは――取り分け、紅白戦に参加していた者は遊撃隊の有効性を実感した筈だから、後は、今度の継続との練習試合で結果を出せば、口喧しいOG会も文句は言えなくなるだろうさ。」

 

 

「ま、そう言う訳だから、今度の練習試合は結構重要な試合になるって言えるわね。」

 

 

「そうなんだ?なら、尚の事頑張らなきゃいけないね!」

 

 

そう言う事なら、早速部屋に戻って、直下さんと狭山さん(前回紹介を端折られたパンターの車長)を部屋に呼んで、遊撃隊車長会議をしないとね!

 

そう言う訳だから、今日は此れで失礼するねお姉ちゃん、近坂先輩!

 

 

 

 

「ふむ、作戦会議か……普通ならば、結果を報告しろと言う所だが、作戦会議の結果は報告しなくて良いぞみほ。

 

 本隊が遊撃隊の作戦を全て知っていては遊撃の意味を無くす……味方ですら思わぬ形で戦況を動かすのが遊撃の本領だからな?遊撃隊の、みほの好きなようにやってくれて良いさ。」

 

 

「本気で?って、言う所だけど、遊撃隊の隊長がみほである事を考えると、其れがベストね。

 

 みほの場合、本隊の動きに合わせて動いて貰うよりも、みほの考えで動いて貰う方が結果として本隊に合わせるよりもいい結果になるからね?……中学時代は、実際にみほの考えでチームが動いて、結果として明光大は優勝できた訳だし。」

 

 

「今にして思えば、みほが隊長を務めていた明光大は、チーム全てが本隊であって遊撃隊のような物だった訳か……改めて考えると、恐ろしい事この上ない事だな此れは……」

 

 

 

 

其処まで怖いかなぁ?……私の主観と、第三者の主観じゃ違うのかも知れないけど。――その明光大も、今年最初の練習試合は白星で飾る事が出来たって、この間、梓ちゃんからメールが来てたなぁ?

 

抽選の組み合わせにもよるけど、中学戦車道の全国大会は、明光大と黒森峰が前半ブロックと後半ブロックで分かれた場合、決勝戦のカードは、去年と同じく明光大vs黒森峰になるだろうね。

 

 

ま、何にしてもそう言う事なら、やりたいようにやらせて貰うよお姉ちゃん。

 

 

 

 

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・・・

 

 

 

 

と言う訳で、此れより『第1回遊撃隊作戦会議』を始めます!!――何て言っても、部屋の真ん中に、今度の練習試合の試合場のマップを広げて、適当にお菓子やジュースを持ち寄っての物だけどね。

 

服装だって、皆ラフだからね?……って言うか、色とメーカーこそ違うけど、全員がジャージの長ズボンにTシャツって言う組み合わせだから。

 

まぁ、晩御飯を食べて、お風呂入ってからになったら、こう言う服装になるとは思うけどね。

 

……本当は、直ぐにでも始めたかったけど、それをやったら間違いなく晩御飯を食べそびれる事になるってエリカさんが言うから、晩御飯とお風呂の後になったんだけど、ある意味で良い判断だったかもだよ。

 

自分で言うのもどうかと思うけど、色々と作戦を考えると徹夜してたって事も有るから、下手したら晩御飯抜きになったかもだからね……エリカさんの判断には感謝だよ。

 

 

さて、その作戦会議だけど、色々な意見が出てるみたいだね?……いろんな意見が出るのが作戦会議の醍醐味って言えるよね♪

 

 

 

 

「今度の練習試合は、継続高校の学園艦の演習場で行われるから、アウェーでの戦いになる……つまり地の利は継続の方にある事になるか ら、余計に私達遊撃隊の働きが大事になって来るわね?」

 

 

「地の利が向こうにある以上は、待ち伏せなんかはあまり意味がない気がします――何処が待ち伏せポイントになっているか、継続側は把握してると思いますから。」

 

 

「うん、エリカさんと小梅さんの言うように、地の利は継続さんにあるから、待ち伏せはあまり有効じゃないかも知れない。

 

 だけど、地の利があればこその弱点も存在してるかな?」

 

 

「うん?如何言う事よみほ?」

 

 

 

 

簡単な事だよ直下さん。

 

地の利は継続さんにあるって言うのは、試合場が継続さんのホームだからだよね?……だからこそ、向こうには『此処から攻めて来る事は無いだろう』って言う、いわば精神的死角とも言うべき物が有るんだよ。

 

このマップで言うなら、ポイントAの岩石地帯と、ポイントCの荒野地帯が其処に当たるかな?

 

岩石地帯は、大小様々な岩石が無造作に配置された場所で足場が悪いから、如何に戦車であっても其処を通って来る事は考えないし、見渡しの良い荒野地帯で馬鹿正直に仕掛けて来る者は居ないって考えちゃうんだよ、無意識にね。

 

だからこそ、その何方かから、或いは両方で遊撃隊が継続さんに仕掛けるのは、間違いなく有効打となると思うけど、皆は如何思うかな?

 

 

 

 

「精神的死角……まさか、そんな物が有ったとは、考えた事も無かったわ……良いじゃないみほ、それで行きましょう!!」

 

 

「此れは、確かに有効な一手になるかも知れませんからね……継続の皆さんの驚く顔が目に浮かびますよ♪」

 

 

「継続のペースを狂わせる事が出来れば、こっちに流れを引き寄せる事も出来るしね?……良いじゃんみほ、その作戦でバッチリ決めよう!」

 

 

「隊長の意見に賛成ーっす。」

 

 

「じゃあ、その方向で進めてみるね。

 

 尤も、開始時の自軍の陣営が何処かによっても、此れを仕掛けるタイミングは異なって来るから、其れは試合当日に決める事になるけど。」

 

 

「まぁ、其処は臨機応変に行くとこじゃない?

 

 と言うよりも、直前に細かく色々決めるより、その場で臨機応変に対応する方が得意でしょ、みほの場合は?――だから、試合中に想定外の事態が起きても即時対応が出来る訳だし。」

 

 

「其れを言われたら、そうなんだけどね?」

 

 

臨機応変に対応できないと、いざって言う時に困るし。

 

取り敢えず、継続さんの精神的死角を利用するのは良いとして、他に何か思いついた事ってある?あれば遠慮なく言ってくれて良いよ?

 

ちょっとした事から新たな作戦が思い浮かぶかもしれないし、見落としてた注意点なんかに気付く事も有るかもだから。

 

 

 

 

「なら、アタシから。まぁ、思い付いたってか、マップ見てて気づいた事なんだけどさ……此処、マップ中央のやや北側なんだけど、ちょっとオカシクないか?

 

 継続のフィールドは、見た感じはあんまり起伏のない場所なのに、此処だけが不自然にアップダウンの多い地形になってるんだよ。」

 

 

「ドレドレ?……言われてみれば確かに――最大高低差100mって言うのは小さくないわね?」

 

 

 

 

確かに、ちょっと不自然だね此れは?

 

普通に高台があるだけなら兎も角、高台のすぐ下は抉れたような大きな窪地になってる訳だからね?……なんで、こんな不自然な地形をしてるんだろう……?

 

 

 

 

「此れは……若しかして、継続用キルゾーンじゃないでしょうか?」

 

 

「「「「え?」」」」

 

 

 

継続用キルゾーンって……詳しくお願いできますか小梅さん!スッゴク大事な事だと思うので!!

 

 

 

 

「えっと、あくまで私の想像として聞いて欲しいんですけど、多分この窪地って結構勾配がキツクて、一度中に入ったら出るのが結構大変な作りになってるんじゃないでしょうか?

 

 窪地の外形の直径と、底の直径と深さを考えたら、チャーチルみたいな戦車じゃないと脱出は難しい位の勾配があると思うんです。

 

 其れを考えると、継続さんは部隊を最低でも2つに分け、一方が高台に陣取って、もう一方がこの窪地に相手のフラッグ車を誘い込んでくるって言う事をしてくるんじゃないかと思ったんです。」

 

 

「成程、完全にホームでの試合だからこそ出来る必殺技って事ね?」

 

 

「確かに、その一手は考えられるね……」

 

 

となると、継続さんが部隊を分けて、フィールドの中央北側に黒森峰の本隊を誘導し始めたら危険信号って事か……此れを見落としてたら致命的な大打撃を被る所だったよ。

 

良く気付いてくれたね直下さん!それから、その地形の持つ意味を叩き出してくれてありがとう小梅さん!

 

 

これで、遊撃隊のやるべき事は一つ増えた――相手のフラッグ車を撃破する下準備だけじゃなくて、黒森峰の本隊をキルゾーンに誘導しようとする部隊の殲滅もだからね。

 

遊撃隊も、楽じゃないね?

 

 

 

 

「と言いつつ、みほが楽しんでる可能性について。」

 

 

「言うまでもなく楽しんでるでしょみほは?」

 

 

「楽じゃないねと言いながら、口元に笑みを浮かべて、瞳に剣呑な光を宿したみほさんの姿は正に軍神ですよ……私が男性だったら、間違いなく惚れてるって断言します!!

 

 否、同性でも惚れます!!みほさんは、中学校時代に異性同性問わずに大量のラブレターを貰ったと聞いてますし!」

 

 

「マジっすか!?……いやまぁ、小隊長の場合は、其れも否定はできねっすけど……」

 

 

「其処は否定して欲しかったかなぁ……」

 

 

今はまだそんな事は無いけど、全国大会が始まって、其れで優勝でもしたら先ず間違いなく、私とエリカさんとお姉ちゃんの靴箱は、謎の四次元空間になると思うんだよね……黒森峰が女子高であっても。

 

其れだけじゃなく、小梅さんと直下さんと狭山さんも可成りのファンレターが来るようになるかもなんだけどね。――遊撃隊が、黒森峰の勝利に大きく貢献したって事になれば、間違いなく注目されるし。

 

 

 

 

「注目されるのは悪い気分じゃないけど、行き過ぎた彼是は勘弁願いてぇっすな……」

 

 

「ファンレターもラブレターも、貰って悪い気はしないとは言え、持ち帰るのも処分するのも面倒だからな~~……」

 

 

「そうなんだよね~~……」

 

 

「その気持ちは察するわみほ……所で、アタシは貴女に言いたい事が有るんだけど、聞いてくれるかなみほ?」

 

 

「え~っと、何でしょうか直下さん?」

 

 

「何で、何で逸見と赤星は名前呼びなのに、アタシは名前呼びじゃないの!?狭山は兎も角として、アタシ等合宿でも一緒に戦った仲でしょ?

 

 其れなのに、アタシだけ名前呼びじゃないってのは、なんか寂しい!!!」

 

 

「えぇ、言いたい事って其れ!?」

 

 

完全に予想外だったと言うか何と言うか……名前呼びじゃないのが寂しかったと来ましたか……でも、確かにエリカさんと小梅さんは名前で呼んでるし、名前で呼ばれてるからね?

 

直下さんも私の事を名前で呼んでくれてるし……其れじゃあ、理子さんで良いですか?

 

 

 

 

「其れが良い!

 

 やっぱ、逸見と赤星が名前で呼ばれてて、アタシもみほって呼んでるのに、アタシは名前で呼ばれないってのはアレだから。

 

 其れとだ、この理論で行くと、貴女を小隊長って呼ぶ狭山は名前呼びする理由がないって事になるんだけど如何よ?」

 

 

「勿論狭山さんも、名前呼びにしましょう……良いですよね、サトルさん?」

 

 

「構わねぇっすよ……ちょっと男っぽい名前っすけど、名前で呼んでもらった方が親近感わくっすから。

 

 ……幾ら、初代タイガーマスクのファンだったからって、第一子の長女にこの名前を付けるのはどうかと思うっすけどな……なんで、弟が生まれるまで待てなかったし……」

 

 

 

 

其れについては何も言えないなぁ流石に。……って言うか、呼び方は戦車道とあまり関係がない――とは言えないか。

 

名前呼びが、イコール親密度の深さだとするなら、名前呼びで指示を出した方が、指示を出す→受ける→支持を熟すの一連の動作のタイムラグが短くなるかもだからね?

 

此れはまた、理子さんがマップの不自然さに気付いたのに次いでいい仕事をしてくれたって感じだよ♪

 

 

これで、遊撃隊も――

 

 

 

 

――コンコン

 

 

 

 

って、ドアをノックする音?

 

誰だろう?……って、アレ?時計のデジタル文字盤が、何時の間にやら『22:10』を表示してる?……寮の完全就寝時刻を10分もオーバーしてるって、其れだけ作戦会議に集中してたって事!?

 

 

 

 

――ガチャリ……

 

 

 

 

「……作戦会議を行うと聞いてもしやと思ったが、矢張り思った通りだったか……」

 

 

「お姉ちゃん?」

 

 

「寮の見回りをするのも隊長の仕事だ……何時もならば明かりが消えているからスルーするのだが、今日はドアから明かりが漏れていたのでよらせて貰ったよ。

 

 完全就寝時間違反は、本来ならば軽く説教をする所なのだが……まぁ、黒森峰の象徴とも言える戦車道に関する事による違反だから不問にしておこう……事実、就寝時間違反以外の違反をしていた訳ではないからね。」

 

 

 

 

うん、ありがとうお姉ちゃん。

 

 

 

 

「どういたしまして……とは言え、夜更かしは良くないから、キリが良いのならばその辺にしておけ。

 

 直下と狭山は、私が部屋まで送って行こう――戦車道チームの隊長が一緒ならば当直の教師に彼是言われる事もないし、何か言われても『トイレに行った生徒を安全に部屋まで送る為に一緒に居た』と言えば何とかなるからな……」

 

 

「其れで何とかなるんだ……凄いんだね、黒森峰の隊長って……」

 

 

「下手をしたら、一介の教師よりも大きな権限を持っているかもしれないな私は。

 

 まぁ、其れは今は良いとして、直下と狭山は私が部屋まで送って行くから、みほ達もそろそろ寝ておけ――寝不足で頭が働かなかったなんて言う事にならない様にな。」

 

 

 

 

あはは……そうだね。お姉ちゃんの言う通りだよ。

 

寝不足で頭が働かなかったなんて言うのは、笑うに笑えないからね……了解ですお姉ちゃん、此れより西住みほ以下3名は就寝の床に就く事にします。

 

なので、理子さんとサトルさんを無事に部屋に送り返してねお姉ちゃん?

 

 

 

 

「任された。――それじゃあお休みみほ……Ein guter Traum.(良い夢を。)」

 

 

「うん、お休みなさいお姉ちゃん。」

 

 

 

「隊長のドイツ語での『良き夢を』って……本気でカッコイイです!ありがとうございました!!」

 

 

「流石は姉妹と言うか何と言うか……隊長もみほさんに負けず劣らずだって、実感しました――そして、無自覚なのが恐ろしいですよ。」

 

 

「西住流、恐るべしだな……割とマジで。」

 

 

 

 

なはは……西住流はあまり関係ないと思うけどね?

 

まぁ、お姉ちゃんは無自覚であぁ言う事やるからね……其れが凄く様になってるから何も言えないんだけどさ――さて、其れじゃあベッドに入ろうか?

 

理子さんとサトルさんはお姉ちゃんが連れて行ったけど、私達が何時までも起きてるのは悪いからね。

 

 

 

 

「そうね……だけど寝る前に、此れだけは言っておくわみほ――今度の継続との練習試合、絶対に勝つわよ?」

 

 

「私も其れを言おうと思ってました!必ず勝ちましょうね、みほさん!!!」

 

 

「うん、勿論その心算だよ――最初から勝ちに行く気でいたからね!」

 

 

だから、絶対に勝つよ!

 

今年最初の練習試合で白星を挙げる事が出来れば、其れが全国大会まで続く勢いを作る事が出来るともうからね?……必ず勝とう、エリカさん、小梅さん!!

 

 

 

 

「「Sir-Kapitan!!(了解です、隊長!!)」」

 

 

「良い返事だね?……本当に、頼りになるよ。」

 

 

既に士気は高まってるし、今日の作戦会議で色々決める事も出来たから、後は練習試合に臨むだけだよ……継続さんとの練習試合、本当に楽しみだね――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:ミカ

 

 

 

島田の家を出て継続高校に入学した訳だが、まさか2年次最初の練習試合の相手が黒森峰とは、何ともついてないと言うべきだね此れは?

 

ウチの隊長は『トリックスター』と呼ばれる程の奇策搦め手上等な人物で、私も其れを得意としているけど、今回に限っては黒森峰との練習試合を組んだのは良い選択ではないかな?

 

 

 

 

「ミカ、如何したの難しい顔して?」

 

 

「あぁ、アキかい?……ちょっと、今度の練習試合について考えていてね……」

 

 

「練習試合って、黒森峰との?――まぁ、相手が相手だから勝てるかどうか分からねーけど、ウチの隊長なら一矢報いる事位は出来るんじゃねーの?

 

 その一矢が、フラッグ車を撃ち抜いてくれれば最高なんだけどな~~。」

 

 

「マッタク持てその通りだねミッコ。」

 

 

まぁ、相手がまほさんだけの黒森峰なら勝てないまでも苦戦させる事は出来ただろうね?……ウチの隊長は『トリックスター』と呼ばれる程の策士だから、まほさんをキリキリ舞いさせるだけの作戦を考える事は出来るだろうさ。

 

 

――だが、黒森峰に隊長を上回る『トリックスター』が……否、トリックスターなんかじゃない『軍神』が居たら、その限りじゃないんじゃないかと思わないかい、2人とも?

 

 

 

 

「隊長を上回るトリックスター以上の軍神て……まさか!!」

 

 

「弱小校を全国大会で優勝させた稀代の戦車乗り……『隻腕の軍神』こと、西住みほさんが今年の黒森峰には居るって言う事!?」

 

 

「うん、間違いなくいる筈さ。」

 

 

スマホに、『黒森峰に入学しました』って言うメールが来てたからね……恐らく、私以外の人達にも送られたメールなんだろうけれどね。

 

だけど、みほさんと戦えると言うのはとても嬉しいね……2年前の雪辱を果たす事が出来る訳だから……ふふ、継続に来てから本気を出した事は無かったけど、久しぶりに本気を出してみようかな?

 

みほさんとまほさんが力を合わせたって言うのなら、私も本気を出さないと勝つ事は出来ないだろうからね……マッタク、こんな気分になるのは、2年前の大会1回戦以降だよ。

 

 

でも、其れだけの凄い試合になるって言うのは確実なんだろね……風もそう言ってるし、カンテレが奏でる音も何時もよりも堅いからね。

 

 

なら、精々堪能させて貰おうかな?『姉の剛』と『妹の柔』が合わさった戦車道と言うモノを――真の『西住流』とも言うべき戦いをね…………

 

 

 

私の挑戦状を、是非受けて貰うよみほさん――!

 

 

 

 

「眼光が鋭いミカ……カッコいいかも知れないけど、ミカっぽくない!」

 

 

「其れは言い過ぎじゃね?」

 

 

「いや、言い過ぎではないよミッコ――実際に私は、当てもなくふらついている風来坊だからね?」

 

 

だから勢是見届けさせて貰うさ――西住のお転婆姫の高校デビューって言うモノをね。

 

 

 

 

ふふ……君が高校でどんな戦いをするのか楽しみだよみほさん――さぁ、風の赴くままに思いっきり楽しもうじゃないか――戦車道は、勝つ事よりも、楽しむ事が大事だからね。

 

 

堪能させて貰うよ……貴女とまほさんの戦術が融合した、最強の戦車道って言うモノを――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 




キャラクター補足




狭山サトル

みほ率いる遊撃隊のパンターG型の車長。

語尾に『~~っす』を付けるのが特徴的な女の子だが、天真爛漫で誰とでも分け隔てなく仲良くなる事が出来る。

父親が初代タイガーマスクの大ファンであった事から、女の子でありながらも男の子のような名前を付けらえてしまったが、本人は『此れも仕方ない』と、受け入れている様子。

まかり間違っても『タイガー』と呼んではいけない、絶対に。


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