ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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見せてやる、西住の戦車道を!Byみほ      軍神招来キタコレ!此れは勝てる!Byエリカ     負ける気がしませんね此れはBy小梅


Panzer78『継続高校との戦い白熱してます』

 

Side:ミカ

 

 

 

黒森峰との練習試合が始まった訳だが……正直な事を言わせて貰うなら、私達が勝つ確率は相当に低いと言わざるを得ないだろうね?精々1割の勝率があれば上等と言う所だよ。

 

 

 

 

「まだ始まったばかりなのに、もう負ける気なの?」

 

 

「ミカらしくねーな?

 

 幾ら相手が黒森峰だからって、其処まで悲観する事もねーんじゃないか?確かに、勝つのは難しいかも知れないけど、トコトン食い下がる事位は出来るんじゃねーの?」

 

 

「うん、ミッコの言う事も一理ある。

 

 トウコさんの能力を考えれば、まほさんを出し抜く事だって出来ただろうし、其処から黒森峰の陣形を崩す事が出来たかもしれないだろう。」

 

 

だが、今年の黒森峰は、まほさんのワンマンチームじゃない。

 

去年1年で副隊長の凛さんは急成長を遂げたし、何よりも今年から加入したみほさんと、逸見さんと、赤星さんの戦車乗りとしての能力はずば抜けているとしか言いようがないよ。

 

ヤークトティーガーの直下さんも、中々侮れないんじゃないかな?

 

 

其れだけでも、私達との戦力差が如何程か分かるけど、何よりも恐ろしいのはみほさんだ。

 

トウコさんはトリックスターとして高校戦車道界隈に名を轟かせているけど、みほさんの考える策は、トウコさんの比じゃない……分かり易く言うなら、トウコさんの策が、戦車道の常識の中での奇策だとしたら、みほさんの策は戦車道の常識が通用しない物だからね?

 

 

それと、忘れてはいけないのが、みほさんと戦う時には、前後左右よりも、注意すべきは上だって事かな?

 

……砲弾だけでなく、信号機に、ビルの瓦礫に歩道橋に、挙げ句の果てには戦車が降って来るからね?

 

いやぁ、中学の時に味わった戦車プレスは未だに鮮明に思い出せるよ。

 

 

 

 

「戦車が降って来るって、幾ら何でも有り得なくね?」

 

 

「でも、其れをやるのが……」

 

 

「黒森峰遊撃隊隊長の西住みほさ……」

 

 

黒森峰に入学したと聞いて、君の自由な戦車道が失わてしまうのではないかと危惧したが、まほさんが遊撃隊を組織した事で、彼女の才能を無駄にしないで済んだようだね。

 

 

とは言え、この練習試合は、私にとってはリベンジマッチと言えるものだからね?……継続高校として勝つ事は出来なくとも、みほさんの乗る戦車を倒したいと思っていたからね……君達と邂逅するのを、楽しみにしているよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer78

 

『継続高校との戦い白熱してます』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

 

試合が始まった直後、私達遊撃隊は本隊と離れて、早速独自行動を取らせて貰ってる――って言っても、独立機動権が認められてるんだから、試合直後に本隊から離脱しても何の問題もない事なんだけどね。

 

 

で、何をしてるのかと言うと、本隊と離れながらも、実は本隊が進んでるルートに並行する形で存在してる高台の上を、ある意味で本隊と並走してる所。

 

この高台の便利な所は、上からは下を走る戦車を見る事が出来るけど、傾斜の角度のおかげで、下からは上を走る戦車を見つける事が極めて難しいって事にある――つまり、敵からも味方からも私達の姿は見えないけれど、此方からは動きは丸見えって訳。

 

 

 

 

「そうでありながら、こっちは本隊との連絡を取り合えるから、継続に対して高台からの攻撃を一方的に仕掛ける事が出来るって訳ね?

 

 ……だけどみほ、この高台の有効性は継続側だって知ってると思うんだけど?」

 

 

「そう思うよね?だけど、継続の人達はこの高台の存在は知らない筈だよ。」

 

 

「地元なのに知らないって、どう言う事ですかみほさん?」

 

 

 

 

うん、実に簡単な事なんだけど、此の場所って前回継続の学園艦が寄港した時には、今みたいな高台の平原じゃなくて、斜面も、今私達が進んでいる場所も、杉が生い茂ってた、杉の丘だったんだ。

 

だけど、今回寄港するまでの間に、スーパーメガソーラー設置の為に僅かな部分を除いて、殆どの木が伐採されちゃったんだよ。

 

まぁ、私も此処が、こんな事になってるって言うのは今日初めて知ったんだけどね?グー○グルアースの航空写真で見た時には、まだ此処は林だったし。

 

 

当然継続さんも、此処は今まで通り杉の丘が広がってると思ってた筈だよ?……だからこそ、此処に部隊を派遣して来る事は無い。

 

例えばの話だけど理子さん、自分が良く見知った景色が、何処か様変わりしてて、その変わった場所が何処かを断定したとして、戦車道の試合で、其処に戦車隊を送り込む?

 

 

 

 

「いや、アタシなら送り込まねーわ。

 

 自分の知ってる場所が知ってる場所じゃなくなってた場合、其処には何が有るか分からないじゃないよ?……何もなければ僥倖だけど、何かあったら、特に不利に働くような事が有ったら笑えないじゃん?」

 

 

「そう、其れが正解。だから、継続さんは此処には、部隊を展開してこない。」

 

 

「でも私達は、此の場所を知らなかったから、そんな前提なんて纏めて吹っ飛ばして此処を進む事が出来るって事?

 

 そうだとしても、試合当日に知った情報を、こうしてぶっつけ本番で作戦に組み込むなんて、隊長でも思いつかないんじゃないの?……毎度の事ながら、貴女の戦車道には驚かされてばかりだわ。

 

 柔よく剛を制したかと思えば、剛よく柔を折り、セオリーに沿った戦い方をした方と思えば、セオリーを無視した戦術を繰り出し、普通なら一瞬考えちゃうような事でも、即決して作戦に組み込んじゃうんだから……今更ながらに、去年の決勝、我ながら良く引き分けたモノだわ。」

 

 

「自慢じゃないけど、私の頭の中には古今東西ありとあらゆる戦車道の戦術がインプットされてる上に、それ等の戦術と戦う場合にはどんな戦術が有効なのかを考えた私独自の戦術が無数に存在してるから、どんな相手にだって対応する事は出来るからね?」

 

 

だから、王道の戦いも、奇策上等な戦いも出来る訳だし。これも、車長専任免許を取る為に、必死に勉強した賜物なんだけどね。

 

で、私と引き分けられたのはエリカさんが凄かったからだよ?

 

――正直言って、隊長って言う役職から解き放たれたエリカさんは、本気で其れまで戦って来たどんな戦車乗りよりも強かったからね……若しかしたら、あの時のエリカさんはお姉ちゃんを上回ってたかもだし。

 

 

 

 

「隊長以上だなんて恐れ多い事言わないでよ!

 

 其れよりもみほ、この高台に継続が部隊を展開してこない理由は分かったけど、私達は遊撃隊として如何動く心算なの?」

 

 

 

 

先ずは黒森峰の本隊と、継続が戦闘状態に入るのを待とうと思う。

 

私の予想の通りに進めば、およそ10分後にマップの略中央のCF(セントラルフィールドの略)地点で黒森峰と継続は接敵して戦闘状態に入る筈だから、その戦況を見てから行動を開始しようと思うんだ。

 

 

継続側が何輌で進軍してるかによって私達が如何動くかは変わって来るからね?

 

 

 

 

「参考までに、継続が20輌全てで進んで来た時にはどうする心算ですかみほさん?」

 

 

「その時は、この高台から一斉砲撃をブチかまして、横っ腹から継続の部隊を喰いちぎるだけだよ小梅さん――勿論、其れだけじゃなく、砲撃の他に煙幕か閃光もぶつけてあげる心算でいるけれど♪」

 

 

「笑顔でサラッと恐ろしい事言うんじゃないわよみほ!

 

 それで、継続が20輌未満の部隊で進んで来た時にはどうする心算?……地の利が継続に有る以上、連中が伏兵を使ってくる可能性は充分にある筈でしょ?」

 

 

 

 

20輌未満の部隊で現れたその時は、足りない車輌を見つけ出して撃破するだけだよエリカさん――20輌に満たない場合は、継続さんも遊撃隊の様な別動隊を派遣したって言う事だからね。

 

出来れば、20輌全てで来てほしい所だよ……正直な事を言うと、別動隊が展開されて居た場合、其れを片付けるのは決して楽じゃない可能性があるからさ。

 

 

 

 

「楽じゃないって、そうかなぁ?

 

 継続が別動隊を展開してたって、みほ率いるアタシ達遊撃隊が遅れを取るとは思えねーんだけどなぁ?……油断や慢心をしてるわけじゃないけど、アタシ等なら負けないでしょみほ?」

 

 

「……別動隊に、ミカさんの戦車が居なければね。」

 

 

「「「――!!」」」

 

 

「ミカ……そうだった、継続にはアイツが居たわね――!!」

 

 

 

 

ミカさんの戦車乗りとしてのレベルは、恐らくお姉ちゃんと同等クラス――お姉ちゃんが剛だとしたら、ミカさんは柔だから、戦車乗りとしてのレベルに差がなくとも、戦い方には差が出て来る。

 

中学校の時は勝つ事が出来たけど、ミカさんだってアレからずっと強くなってる筈……寧ろ島田の名を隠してる今の方が、島田流に拘ってない分だけ、余計に強さが底上げされてるかもだからね。

 

 

 

 

「そう言えば、中学の時にみほ率いる明光大とガンガンやり合ったんだよねあの人……何で、継続に居るんだろ?」

 

 

「お姉ちゃんが言うには『風に流されて来ただけさ』って言ってたらしいよ?」

 

 

「何ですか其れ?」

 

 

「さぁ?」

 

 

其れはミカさんにしか分からない事ですが……そろそろ準備をしておこうか?

 

東側から黒森峰の本隊が、西側から継続さんの部隊が来たみたいだからね?――サトルさん、継続側が何輌で進軍して来てるか見える?

 

 

 

 

「ちょい待ち、今数えてるから。

 

 Ⅳ号J型が10輌、Ⅲ突F型が9輌に、BT-42が1輌……20輌全部で進軍して来たみたいだよみほ隊長。」

 

 

「まほさん相手に全軍で真正面から来るとはね?

 

 奇策は予想されてると考えての正攻法なのかも知れないけど、其れは悪手だったって事をたっぷりと教えてあげるとしましょうか、みほ?」

 

 

「みほさん、御命令を。」

 

 

「派手に行こうか、隊長?」

 

 

「本隊と継続の部隊が交戦を開始する直前に、継続側に先制パンチを打ち込むから、全車何時でも撃てるようにしておいて。」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

 

 

さて、奇策で来るのは予測されてると考えての正攻法なのか、それともこの正攻法自体が何かの罠なのかは分からないけど、何にしても、先ずは、出端を挫かせて貰おうかな?

 

 

……それと全く関係ないけど、さっきのエリカさんの獰猛な笑顔はとってもカッコ良かったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

 

みほの予想通り、遊撃隊が高台に陣取ってから10分後、試合会場の略中央となる開けたCF地点で、黒森峰の本隊と継続の部隊は互いに相手を目視できる距離にまで近づいていた。

 

が、継続の部隊の戦車数を見たまほは、これに疑問を抱いていた。

 

 

 

「(全軍で進撃してきただと?真正面からの真っ向勝負は大歓迎だが……その戦力で黒森峰と真正面から遣り合うと言うのは自殺行為だ。

 

  火力でも防御力でも、此方の方が圧倒的に上だ――唯一Ⅲ号だけは、Ⅲ突やBT-42に火力と装甲で劣るが、小回りが利くと言う点で、機動力で勝る……トリックスターと言うから奇策で来ると思ったのだがな?

 

  其れとも、己がトリックスターとして知られているからこそ、奇策を使わずに正面から当たって来たのか……先ずは、其れを見極めるか。)」

 

 

 

火力でも防御力でも圧倒的に劣る戦力で真正面から挑んで来るなんて言う事は自殺行為に等しいからだ。

 

無論、奇策で来る事を予想されていると考えた上で、其の予想を覆す為に敢えて正攻法を選んだと言う可能性が無くは無いが、リスクとリターンを考えた場合、リスクがあまりにも大きいのである。

 

 

であるにも関わらず仕掛けて来た全軍進軍の真っ向勝負――並の戦車乗りならば、『有り得ない事を普通にやって来た』と言う事に吃驚して次の一手が僅かでも遅れる所だ。

 

が、まほは高校生にして世界に名を轟かせている戦車乗りであり、その実力は超高校級でも足りない位な上に、胆力だって可成りなモノだ。

 

故に、疑問には思いながらも驚く事はせず、冷静に部隊に指示を飛ばして行く。

 

 

 

「如何やら継続の皆さんは、真っ向勝負を御所望のようだ。

 

 ティーガーⅠ、ティーガーⅡ、ヤークトパンターは私と共に真正面から敵部隊とぶつかる。

 

 パンターとⅢ号は、機動力で継続の部隊の横や後に回って撹乱してやれ。」

 

 

「私がトップ、まほがアンダーで良いわよね?

 

 フラッグ車同士の一騎撃ちでもない限り、フラッグ車が最前線に出るって言うのは余り良い手じゃないから。」

 

 

「あぁ、先陣は任せたよ凛。」

 

 

 

黒森峰の本隊は、副隊長である凛がヤークトパンター2輌を引き連れる形で最前線に出て、その後ろにまほがティーガーⅠを引き連れる形で続き、ティーガーⅡがその両翼を固め、攻守速のバランスのいいパンターと、小回りの利くⅢ号は本隊から離れて、継続を包囲するように展開して行く。

 

 

 

 

「さぁてっと、そんじゃあおっ始めるとしますかねぇ?全軍、攻撃開始ぃ!」

 

 

 

一方で継続の隊長であるトウコは、黒森峰の本隊を目視すると、黒森峰の部隊が何輌で来てるか等と言う事はマッタク考えずに攻撃を命令。

 

 

 

 

――ドゴォォォォォォォォォン!!

 

 

 

 

するよりも早く、継続の部隊を砲撃が襲った。

 

 

 

「んな!?……砲撃って、一体何処から!?」

 

 

「正面からじゃなくて上からの砲撃……此れは、如何やらまほさんが仕掛けて来るよりも早く、みほさんが仕掛けて来たみたいだね?」

 

 

 

その砲撃を放ったのは、言うまでもなくみほが率いる遊撃隊だ。

 

其れも只の高台からの砲撃ではない――自分達の姿が相手から見えないようにする為に、高台の際から離れて状態で砲身を上に向けての砲撃を行っているのだ。

 

 

其れでは相手が見えないのでは?と思うだろうが、其処は流石のみほ。

 

自身の戦車の通信士である神楽衛を、高台の際ギリギリに伏せさせて、高台の下を観察させながら、マルチ通信で継続側の戦車の位置を遊撃隊全てに伝えているのである。

 

これならば、相手を見ずとも可成り正確な砲撃を行う事が出来るだろう。

 

言うなれば『ドッカン作戦ヴァージョン2.0』と言うべき先制攻撃だが、この予想外の先制パンチは、継続に対しても、そして黒森峰に対しても充分な効果があった。

 

 

 

「(まさか、あの高台から砲撃してる?……でも姿は見えない――下からじゃ目視出来ない位置まで下がってるって事かい!

 

  何が有るか分からないから、木が伐採されたあの高台は敬遠してたんだけど、こんな事なら別動隊を編成して、そっちに向かわせるべきだったのかも知れないね此れは。

 

  其れ以前に、黒森峰の隊長さんは、有り得ない一手を見ても動揺すらしてないからね……此れは、早急に立て直さないとヤバ気だね。)」

 

 

 

「(今の砲撃はみほ達遊撃隊か?

 

  ……恐らくは、あの高台に陣取って居るのだろうが、此方が攻撃する前に先制攻撃を仕掛けるとは、相変わらず、私の予想を良い意味で裏切ってくれる。

 

  だが、此の先制攻撃で流れは此方に向いた……お前が作ってくれた勝利への一手、無駄にはしない!)

 

 如何やら遊撃隊が、私達の見えない場所から支援をしてくれているようだ――この機に一気に攻め立てる!!」

 

 

「一気呵成に行くわよ!全軍、砲撃開始!!」

 

 

 

継続の隊長であるトウコには焦りを与え、逆にまほには攻め込む好機を与えたのだから。

 

否、まほ以上に凛に攻め込む好機を与えたと言うべきなのかも知れない。

 

 

 

「フラッグ車への道を開けろ雑魚共ぉ!!」

 

 

 

ヤークトパンター2輌を伴って突撃すると、継続の部隊の砲撃なんぞ何のその――ティーガーⅠの装甲厚なら余程の至近距離でなければ、撃破される事は無いので、その防御力を生かして敵陣に斬り込み――

 

 

 

――ズドン!!

 

 

――バガン!!

 

 

――ドガァァァァァン!!

 

 

――キュポン×3

 

 

 

『継続高校、Ⅳ号3号車、7号車、10号車行動不能。』

 

 

 

瞬く間に継続のⅣ号を3輌撃破!

 

中学時代に、全国大会の全ての試合でフィニッシャーになったと言う前人未到の記録を打ち立てた凛にとって、これくらいの事は朝飯前だったのだろう。

 

 

 

「うげ、行き成り3輌も!?……此れはキッツいわぁ。

 

 予想外の正攻法で行けば、少しは動揺させられるかと思ったけど、如何やら効果は無いみたいね?

 

 ……そう言う事ならしゃーない、此処は一時撤退するよ?

 

 このまま此処で続けても、黒森峰に磨り潰されるだけだからね……そう言う訳で、逃げる為の時間を稼ぐために、全車『狙え』ってね♪」

 

 

 

序盤から3輌のビハインドを背負う事になった継続だが、其処は流石にトリックスターと呼ばれている隊長だけあって、すぐさま一時撤退を決めて、部隊に指示を出す。

 

 

 

「逃げられると思っているのか?」

 

 

「思ってるとかじゃなくて、逃げるんだよ私達は!~~そんな訳で、アディオ~ス♪」

 

 

 

追撃を行おうとするまほ達に向かって、継続の部隊は砲撃し、一点突破とも言うべき事をした――其れはつまり、黒森峰の足元を狙って攻撃したのである。

 

ドイツ戦車は、火力と装甲は強いが足回りは弱いと言われるように、履帯に弱点が存在している――アメリカやソ連の戦車と比べると、履帯が可成り脆く、斬れやすい。

 

 

其れを利用して、トウコは黒森峰の足止めを狙ったのだ――自分達が状況を立て直す為に。

 

 

そしてその効果は覿面!

 

 

 

「しまった!!」

 

 

「く……履帯が!!」

 

 

「……狙いは、此方の足を殺す事だったか――!」

 

 

「此れは、完全にしてやられたわね……!」

 

 

 

陣形の両翼を担っていたティーガーⅡの履帯が切られてしまい、黒森峰の本隊は継続を追撃できない状況になっていた。履帯の修理が必要だからだ。

 

 

其れを考えた場合、此の一手は最高の一手だったと言えるだろう――高台にみほが率いる遊撃隊が存在していなければ。

 

 

 

 

「形勢不利と見て離脱を選択し、更に相手の追撃を遅らせる為に履帯を斬るって言うのは悪くない作戦だね……この切り替えの速さも、トウコさんがトリックスターって呼ばれる所以なんだろうね。

 

 だけど、戦神であるお姉ちゃんから逃げても、軍神である私が逃がさない……逆に、私が取りこぼした相手はお姉ちゃんが撃破するからね。

 

 ――西住姉妹から逃げる事が出来ると思ったら大間違いだよ!継続の部隊を追撃するよ、エリカさん、小梅さん、理子さん、サトルさん!!」

 

 

「上等じゃない?……狂犬は狂犬らしく、継続の喉笛を喰いちぎってやろうじゃない?……生憎と、私の牙は血に飢えてるのよ――油と鉄と火薬の匂いに染まった血にね!!」

 

 

「追撃して一気に決めるんですね?――仮に決められなくても、本隊が履帯を直して合流するだけの時間を稼ぐ事が出来れば御の字って言う所ですけど……此処で攻勢をかけるのは悪くないですね♪」

 

 

「寧ろここは攻め一択でしょ?――思いっきりぶちかましてやりましょうみほ!貴女となら、其れが出来るような気がする。

 

 うぅん、気がするじゃなくて絶対に出来るって思ってるわアタシは!派手に行こうじゃない!」

 

 

「アタシ達の存在に気付きながらも、目の前の相手に集中した結果が此れだからね……見せてやろうじゃないみほ隊長――継続の皆さんに、本当の戦車道が如何言うモノなのかって言う事を!!」

 

 

 

高台に陣取っていたみほ達は、即座に作戦を考えて次の一手を考えていたのだ。――此れもまた、みほの驚異的な記憶力に蓄積された数多の戦術が有ればこそだが、そうして導き出した答えは、安心ではなくとも安定ではあるだろう。

 

 

 

「うん、行こう!」

 

 

 

みほは速攻で継続の部隊を追撃を行うことを決定して、僅か5輌で17輌を相手にする戦いを行おうとしていた――普通なら無謀な戦力差であるが、機体性能を考えれば五分と言う所だろう。

 

 

試合は始まったばかりだが、そうであるにも拘らず、試合展開は白熱するばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:ミカ

 

 

 

予想していた事だけど、みほさんの戦車乗りとしての力は、2年前の全国大会の時よりも遥かに上がっているね……此方の、意識外からの攻撃はある程度予想していたとは言え、実際にやられると厳しい事この上ないからね。

 

 

此のままじゃみほさんに、黒森峰に勝つ事は出来ないだろうね――だからこそ、私は貴女に提案をしようと思うんだトウコさん。

 

 

 

 

「提案って?……内容によっては承認するけど――」

 

 

「其れが継続の良い所だね……」

 

 

まほさんが率いる黒森峰は確かに強敵だけれど、それ以上に恐ろしいのはみほさんが指揮している別動隊だ……みほさんが率いてる別動隊が存在してる限り、私達は苦戦を強いられるだろうからね?

 

だから、先ずは其れを討つだけさ……出来るかどうかは分からないけどね。

 

 

 

 

「西住妹の指揮する別動隊を?……確かに、アレは驚異だけど、任せても良いのかなミカ?」

 

 

「撃破出来ずとも、足止めくらいはして見せるよ隊長。」

 

 

「そうかい……なら任せるよミカ!!」

 

 

「期待には、最低限応えないとね。」

 

 

正直な事を言うと、足止めも可成りきついんだけど、私じゃないと足止めだって難しいだろうさ――トウコさんがみほさんと戦うのでなければ。

 

 

だけど此れは、私にとっては嬉しい事なのは間違いないかな?――また、みほさんと戦う事が出来るんだからね。

 

 

さぁ、本番は此処からだよみほさん――ぶつけ合おうじゃないか、私達の戦車道って言う物を。――精々、中学の時の雪辱を果たさせて貰うとしようかな?

 

 

いや、そんな事は如何でも良い事だね?……大事なのは、此処から如何動くかって言う事さ……ふふ、楽しませて貰うよ隻腕の軍神殿♪

 

 

貴女との試合は、心が躍るからね――!

 

 

感じさせて貰うよ、黒森峰に吹き込んだ新たな風って言う物を――まぁ、その風は、台風をも凌駕するモノだったみたいだけれどね。

 

だからこそ私も全力を出そう。……行くよ、みほさん――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 


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