ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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此れは、燃えて来るね!!Byみほ      継続のミカ……侮れないわね?Byエリカ     でも、私達は負けませんよ!By小梅


Panzer79『激しく燃えまくってる練習試合です』

 

Side:エリカ

 

 

 

みほの読みがバッチリと当たって、先手は黒森峰が取った形になったけど、形勢不利と見るや否や、継続の隊長は黒森峰本隊の戦車の履帯を切った上で離脱して体勢を整えるって言う戦術で来たか。

 

あの状況の中で、即座に撤退の一手を打ったのは見事だし、ドイツ戦車の弱点でもある足回りを狙うってのも悪くない――だけど、若しもみほが継続の隊長だったら、状況が不利になる前に何か手を打っていたのは間違いない筈だわ。

 

 

つまり、継続の隊長は秀でた能力を持ってはいるけど、みほよりも上って事は無い……そうであるなら、此の試合に負けは無いわ!!

 

西住の猛虎であるまほさんと、西住の女豹のみほが一緒に居る時点で黒森峰に弱点は無いんだから――と、言う所だけど、継続には島田流の長女であるミカが居るから油断はできないのよね。

 

 

「ねぇみほ、逃げた相手を追撃ってのは良いんだけど、具体的な作戦は如何するの?」

 

 

「特にないよエリカさん……ぶっちゃけ、好きにやってくれて構わないって所かな?

 

 私達のやるべき事は、本隊が行動可能なって此方に向かうまで、継続の部隊を足止めする事と、黒森峰の本隊を、例のキルゾーンに誘い出させないようにする事だから。

 

 其の2つが果たされるなら、どんな事をしても構わないよ……ルールブックで合法とされてるものならばね。」

 

 

 

 

そう……あくまで目的は足止めとキルゾーンへの誘導阻止だから、遊撃隊5輌に対して、継続の本隊は17って言う不利な戦いでも、戦いきる事は出来るわ――遊撃隊の目的は、相手のフラッグ車を叩く事じゃなくて、如何にして勝利を自軍に呼び寄せるかって言う事だもの。

 

 

でも、そう言う事なら私の血が騒ぐわ……何よりも、足止めと誘導阻止との事だったけど……だけど、別にフラッグ車を倒してしまっても構わないのよねみほ?

 

 

 

 

「主な目的は、足止めと誘導阻止だけど、継続のフラッグ車を確実に撃破出来る状況であれば、迷わず倒しちゃって構わないよ!――フラッグ戦は、フラッグ車を撃破すれば勝ちだから。」

 

 

「了解したわ、遊撃隊長!!」

 

 

数の差がアレだから、本隊が合流するまでは可成りきつい戦いになるでしょうけど、隙あらばフラッグ車の喉笛を喰いちぎってやろうじゃない!

 

黒森峰の銀の狂犬の爪牙を、其の身で味わえ継続高校――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer79

 

『激しく燃えまくってる練習試合です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

 

自ら隊長であるトウコに、みほ率いる遊撃隊の相手を申し出たミカは、Ⅳ号戦車J型2輌を引き連れての3輌編成で、みほ達を探していた。

 

主砲の破壊力ならばⅢ突の方が上なのだが、自分達の乗るBT-42が回転砲塔のない突撃砲タイプの戦車なので、フレキシブルに動けるようにⅣ号を連れて来たと言う所だろう。

 

 

 

「其れでミカ、西住の妹さんが指揮してる遊撃隊に勝つ見込みはあるの?」

 

 

「勝つ見込みはない。だけど、打撃を与える事位は出来ると思ってるよ。」

 

 

 

5輌編成の遊撃隊に、3輌編成で、しかも性能で劣る戦車で挑むと言うのは無茶を通り越して無謀としか言いようがない――トウコもその様に考え、ミカに対してⅣ号とⅢ突を2輌ずつ引き連れて行くように言ったのだ。

 

 

が、其れはミカが、3輌のビハインドを背負った状態で本隊の数を減らすのは拙いと言って、Ⅳ号2輌のみを引き連れて来たのである。

 

 

確かにミカの考えは理に適っているとは言えるだろう。

 

ファーストアタックを喰らった継続は、行き成り3輌を失い、数の上では20対17――黒森峰が遊撃隊として5輌別行動をしているとは言え、その遊撃隊とやり合うために5輌輩出してしまっては、本隊の数は12なのだ。

 

それに引き換え、無傷の黒森峰の本隊は15輌――其れを考えると、本隊を離れるのは3輌と言うのがギリギリ連れて行ける最大数なのだ。

 

12対15では余りにも不利だが、14対15なら、数の差は1輌で足りるのだ。

 

 

そして何よりも、ミカ自身、みほ率いる遊撃隊を撃破出来るとは思っていない――と言っては語弊があるだろう。撃破出来ずとも、足止めをする事が出来れば良いと考えているのだ。

 

 

 

「打撃を与えれば良いって……其れで良いのかよミカ?」

 

 

「良いんだよミッコ。

 

 みほさんは恐らく、黒森峰の本隊の足がやられた事で、本隊が行動可能になるまで継続の部隊を足止めしようと考える筈さ――此方の切り札とも言える、あの場所に黒森峰の本隊が連れて行かれない様にね。

 

 だから、私達はそんなみほさん達の邪魔をしてやれば良いのさ。……そう、トウコさんがまほさんをキルゾーンへ誘導し始めるまでね。」

 

 

「あのキルゾーンに誘導できれば、私達の勝ちだから?

 

 だけど、黒森峰の隊長さんって、あの西住まほでしょ?……うちの隊長の誘導なんかに引っ掛かってくれるかなぁ?」

 

 

「其処は、トウコさんの演技力と挑発の能力次第じゃないかな?――まぁ、まほさんを挑発して逆上させるのは可成り難しいと思うけどね。

 

 まぁ、其処はトウコさんに任せよう。私達は私達の戦いをしようか。」

 

 

 

自分達が遊撃隊をある程度足止めすれば、其れだけ継続が自軍の切り札を切り易くなるのだから。

 

カンテレの弦を軽く弾くと、ミカは少し速度を上げてみほ達を探すが、ミカと同じ戦車に乗っているアキとミッコも気付いていなかった――勝つ見込みは無いと言ったミカの瞳に、静かな闘志が宿っていた事に。

 

 

 

「(下手に緊張させない為とは言え、アキとミッコには少し嘘を吐いてしまったね。

 

  足止めが出来ればと言うのは本当だけれど、私はみほさんと戦いたいんだ……中学の頃に味わった、あの高揚感をもう一度味わいたい。

 

  不利な戦いなのは分かって居るけれど、挑ませて貰うよみほさん――!)」

 

 

 

その静かな闘志を胸に、ミカはみほとの再戦の時が訪れるのを心待ちにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でみほ率いる黒森峰の遊撃隊は、中々継続の部隊を見つけられずにいた。

 

遊撃隊が陣取っていた高台は天然のGPSとも言うべき場所だが、完全に空から見る訳ではないので、森や林、ビルが立ち並ぶ場所に入り込まれてしまった場合には見つける事が困難になるのだ。

 

 

これが、勝利に固執する輩だったら、ルールで禁止されてないと言う理由でドローンでも飛ばして上空から見つけるのだろうが、生憎とみほはそんな事はしない――故に、林に潜んでいた継続の部隊を見つけ出す事が出来なかったのだ。

 

 

 

「(高台から見つける事が出来ないって事は、林か森、或いはビルが密集してる場所に隠れたかな?

 

  黒森峰本隊の足回りを壊して撤退してからの時間を考えると、街中に到達したとは考え辛い――いや、街中だけは絶対にないか。

 

  例のキルゾーンは街中とは離れてるからね……となると、継続の部隊が居るのはさっき通り過ぎたC地点の林か、この先のG地点の林だけど、継続の使用戦車の速度を考えるとG地点に到達してる可能性は低い……となると、居るのは通り過ぎたC地点!

 

  でも、これは逆に考えれば継続の部隊を、本隊と遊撃隊で挟み撃ちに出来る状態……其れも、真後ろからじゃなくてこの高台から突っ込んで行けば奇襲効果も狙えるから……やる価値はあるね!)

 

 全体停車!本部隊は此れより此処で待機――継続は、さっき通り過ぎたC地点の林の中にいる筈だから、此処で出て来るのを待とう。」

 

 

「んな、本当ですかみほさん!?」

 

 

「間違いないよ小梅さん。

 

 継続の使用戦車の最高速度を考えれば、私達が追い抜いてしまってもおかしくないから……完全に継続の部隊の前に出てる筈だよ。」

 

 

「別に良いんじゃない?

 

 通り過ぎたって事は、逆を言えば戻る事でまほさんが率いる本隊と、私達遊撃隊で継続を挟み撃ちに出来るって事でしょ?――なら、前と後から挟み込んで逃げ場を無くしてやれば良いだけよ!」

 

 

「相変わらず、考え方が暴力的ってか、攻撃的だなぁエリカは?……そんなんだから、狂犬って呼ばれんだよ。」

 

 

「ハッ、狂犬上等よ直下!!

 

 敵と見れば、其れが格上の存在であっても牙を剥いて噛みつくのが私だからね?……狂犬は狂犬らしく、相手を噛み殺してやるだけよ!」

 

 

 

だが、そうであっても遊撃隊に焦りはない。

 

隊員全員が1年生で構成されていると言う事も有るだろうが、それ以上に、遊撃隊の面子――特に各車両の車長は、親友と言える間柄故に、こうして、緊張感があまり無い会話も、試合中でも出来るのだ。

 

 

 

「勿論、エリカさんの言うように、挟み撃ちにする心算だよ。

 

 隊長率いる本隊も、そろそろ切られた履帯の修理を終えて、此方に向かってきてる筈だからね。――一応、連絡は入れてみるけど。

 

 ――此方、遊撃隊のみほです。」

 

 

『如何した、みほ?』

 

 

「現在遊撃隊は、継続の部隊を追い抜いて、継続の進行方向の先に出ていると思われます。

 

 なので、遊撃隊は此処で待機し、継続の部隊が見え次第、高台より砲撃を行って足止めし、黒森峰の本隊が継続に追い付いた所で、高台を駆け降りて強襲して挟み撃ちにしようと思うのですが、如何でしょう?」

 

 

『挟み撃ちか……悪くない作戦だな。

 

 丁度此方も、履帯の修理が完了した所だ――大体10分もあれば継続の部隊に追い付く事が出来るだろう……履帯の跡を追って行けば、その先に継続の部隊が居るのは間違い無いからね。

 

 トリックスターにあまり動かれても面倒だからな……地の利を生かされる前に、挟み撃ちで倒してしまうとしよう。

 

 只、私達が到着するまでの足止めくらいなら大丈夫だろうが……ミカには気をつけろ。

 

 アイツの戦車乗りとしての実力は、トウコ隊長以上だからな。』

 

 

「分かって居ます、隊長。」

 

 

 

挟み撃ち作戦を決めたみほは、まほと連絡を取り、ザックリとではあるが此れからの戦い方を決定する。少々ザックリし過ぎていると思うかもしれないだろうが、みほとまほには、この程度のやり取りで充分に伝えるべき事は伝わって居るのである。

 

此れも、姉妹故の信頼感と言うやつなのだろう――ともあれ、此れでやる事は決まった。遊撃隊は現在地で待機し、継続の部隊が現れるのを待って居ればいいのだ。

 

 

だが、待っている間も、みほをはじめとした遊撃隊の車長達は、周囲への注意を疎かにせずに、常に周りに目を配っている。

 

単に継続の部隊を探しているという訳ではない……全員が、挟み撃ち作戦へとすんなり移る事は出来ないだろうと考えているからこそ、周囲に目を配り、状況を確認しているのだ。

 

 

そして、其れは正解だった。

 

 

 

「前方に敵影!BT-42が1輌と、Ⅳ号J型が2輌!!」

 

 

「BT-42って言う事はミカさんか……やっぱり、本隊と別行動に出て来たね――そう来なくっちゃ!!」

 

 

 

暫くして、進行方向から向かってくるBT-42とⅣ号を発見。ミカが率いる部隊が、みほの遊撃隊へと向かってきていたのだ。

 

其れを見たみほの顔には、歓喜と闘争本能が混ざった笑みが浮かぶ。

 

同時にエリカの顔には獰猛な野獣の笑みが浮かび、小梅の表情は引き締まって目が獲物を狙う猛禽類の様に細くなる。(直下と狭山も、気合が入っているが、みほ、エリカ、小梅は相当に別格レベルなのである。)

 

 

そして、戦闘態勢に入っていたのはみほ達だけでなく、BT-42の車長であるミカも同様だ。

 

 

 

「さぁ、風と共に舞おうか?

 

 黒い森に吹き込んだ、新たな風は、風の流れるままに生きる私に、どんな世界を見せてくれるかな?」

 

 

 

膝の上に置いたカンテレの弦を一弾きすると、其処から軽快な演奏を開始し、車内にカンテレの音が響き渡る。

 

普通なら、試合中に何をしているんだと言う所だが、ミカの乗る戦車に限っては、此のカンテレの演奏は突撃喇叭に近い物が有る――ミカがカンテレを試合中に演奏すると言うのは、テンションが高まっている証なのだ。

 

操縦士のミッコと、装填士兼砲撃手のアキも、はじめはこの演奏に戸惑っていたが、今ではミカの演奏が始まると、共にテンションが高まり、本来の実力以上のモノが出るのである。

 

 

 

「来ましたねミカさん?……出来れば、本隊で大人しくしていてほしかったんですけど……」

 

 

「其れも良いかと思ったんだけど、此れだけの新たな風をこの身で感じないのは勿体ないと思ってね?

 

 私の我儘に付き合わせる形になってしまって申し訳ないけど、楽しませて貰えるかなみほさん?――もう一度、君と戦った時の高揚感を味わわせて欲しいんだ。」

 

 

「そう言う事でしたら、喜んでお相手しますよミカさん!」

 

 

 

軍神招来状態のみほと、風の旅人とも言うべきミカは、軽く言葉を交わすと、そのまま交戦状態に突入!!

 

 

 

「此方遊撃隊のみほ。

 

 只今遊撃隊は、継続のミカさん率いる別動隊と交戦状態に入り、予定していた継続の本隊の足止めがやや弱くなると思われますので、出来るだけ急いで、継続の部隊に追い付いていただけますか隊長?」

 

 

『ミカのやつ、矢張り遊撃隊に仕掛けて来たか。

 

 だが安心しろ、如何やら整備班が今年最初の対外試合と言う事で気合を入れたらしくて、エンジンの調子がすこぶる良い――此れなら、予定よりも早く継続の部隊に追い付く事が出来る。』

 

 

「了解しました。

 

 ミカさんとの戦いを続けながら、継続の本隊を発見し次第、可能な限りの足止めを行います。」

 

 

 

その間でも、本隊との通信を怠らずに、作戦の微妙な変更を行っていく。

 

独立機動権を与えられているからと言って、全然マッタク好き勝手やったのでは部隊は大混乱してしまうので、最低限の通信と言う物は必要なのである。

 

 

そして、通信を終えると同時に、みほのパンターがミカのBT-42に向かって砲撃を放ち、BT-42は其れを巧みな操縦技術で躱して、反撃としてエリカのティーガーⅠに向かって砲撃!!

 

 

その砲撃をティーガーⅠは避けずに、食事の角度を取る事で弾き飛ばす。

 

其れと同時に、継続のⅣ号も攻撃を開始するが、Ⅳ号J型の主砲では、遊撃隊の戦車の装甲を抜く事は略不可能であり、ミカ率いる部隊が決定打を与えるには、BT-42の砲撃をウィークポイントに命中させるしかない。

 

 

となれば、圧倒的に有利となる訳だが、有利な状況と言うのは時として――否、少なからず必ず慢心を生む。

 

 

 

「そんな性能が下の戦車で仕掛けて来るとは笑止!此処で、沈めてくれる!!」

 

 

「サトルさん!?ダメだよ、突っ込んだら!!」

 

 

 

その慢心が生じたのは、遊撃隊の狭山だった。

 

1年生の中では優秀な戦車乗りであると言う事から、遊撃隊の隊員に抜擢されたが、戦車乗りのレベルとしては直下との差が可也あるのは否めない。

 

分かり易く言うなら、遊撃隊の実力差は、みほ≒エリカ≧小梅≧直下>>狭山と言った具合なのだ。

 

故に、圧倒的有利な状況に慢心し、単身ミカに突っ込んで行ってしまったのだ――其れが、ミカの狙いであるとも知らずに。

 

 

 

「血気盛んな事だね?……だけど、それが命取りだよ。」

 

 

 

突っ込んで来た狭山のパンターを囲む形でⅣ号が動くと、同時に砲撃を行い、履帯を破壊し動きを封じる。

 

如何に、大戦期最強と謳われた鋼鉄の豹であっても、その足が破壊されたのならば只の的でしかない……鋼鉄の豹は、風来坊の罠にまんまと嵌ってしまったのだ。

 

 

 

「Tulta!(撃て!)」

 

 

「喰らえ!!」

 

 

 

――ドッガァァァァァァン!!

 

 

――キュポン!

 

 

 

『黒森峰、パンターG型行動不能。』

 

 

 

そのまま狭山のパンターは白旗判定となり沈黙。――黒森峰側の初撃破車輌と言うのは不名誉極まりないが、此れも己の浅はかな行動の末の自業自得なので仕方ないだろう……此れを糧に、成長すべきだろう狭山は。

 

 

これで遊撃隊は1輌を失った訳だが、しかしながらみほの顔に焦りはない。

 

否、焦るどころか、『そう来なくては面白くない』と言わんばかりの笑みを浮かべているのだ……ミカの先制撃破は、遊撃隊に打撃を与えはしたが、同時に遊撃隊の残存戦力の能力の底上げもしてしまったようだ。

 

 

 

「流石ですねミカさん……だけど、これ以上はやらせません。

 

 何よりも、お姉ちゃん達が継続の本隊に合流するまで、私達は継続の本隊を足止めしないといけないからね……此処で倒させて貰いますよミカさん!!」

 

 

「ふふ、果たしてそう巧く行くかな?

 

 風は無形だけど、唯一風に流される儘の風来坊だけは風であっても捕らえる事は出来ないからね?……さぁ、其れを如何する心算だい?」

 

 

「知れた事……その風来坊が乗る事の出来ない暴風で吹き飛ばすだけの事です……サトルさんの代償は払って貰います――直下さん!」

 

 

「ほいさぁ!!」

 

 

 

――ズドガァァァァアァァァン!!

 

 

――キュポン

 

 

 

『継続、Ⅳ号行動不能。』

 

 

 

其れを示すかのように、直下のヤークトパンターが、Ⅳ号のどてっぱらをぶち抜いて吹き飛ばし、そのまま戦闘不能の白旗判定に持ち込む。

 

これで数の上では4対2と、2輌差であるのは変わらないが、一気に黒森峰が有利になったのは間違いないだろう。

 

パンター2輌と、ティーガーⅠが1輌、ヤークトパンターが1輌の黒森峰の遊撃隊に対して、ミカが率いる部隊は、BT-42とⅣ号J型が1輌ずつなのだ――戦車の性能に、圧倒的な差が存在しているのである。

 

 

つまり直下のヤークトパンターが、Ⅳ号を撃破したのは、ある意味で道理なのだ。

 

 

 

「流石だねみほさん……精々楽しませて貰うとしようじゃないか――見せてくれ、君の戦車道を!!」

 

 

「言われずともその心算ですよミカさん!!」

 

 

 

そして其れは、みほにとってもミカにとっても己の闘争本能を燃え上がらせるには充分過ぎたらしく、闘気の炎が巻き上がり、そして激しく燃え上がる。

 

 

黒森峰の遊撃隊と、継続の別動隊の戦いは、互いに1輌ずつ失った状態でありながら、しかし燃え上がる様相を見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:まほ

 

 

 

ミカの奴め、予想通りに仕掛けて来たか――否、仕掛けてくるしかなかったの知れないな。

 

慢心している訳ではないが、私の率いる黒森峰に対して、序盤からビハインドを背負ったというのはマイナスの要素でしかないから、其れを埋めるべく、遊撃隊を撃破する為にミカが動いたのは道理だ……と言うか、アイツが此処で動かなったら、アイツは所詮その程度の戦車乗りと言う事になってしまうがね。

 

 

だが、ミカは動いた。

 

それも、只動くだけじゃなく、みほが率いる遊撃隊を攻撃する形で仕掛けて来たのだ……何とも面白いじゃないか?

 

 

お前を侮る訳ではないが、果たしてお前にみほを止める事が出来るかな?――一時的な足止めは出来ても、みほが率いる遊撃隊を完全に抑え込む事など不可能だからな。

 

 

 

 

「みほはミカと交戦中みたいだけど……如何するのまほ?」

 

 

「愚問だな凛……このまま一気に継続の部隊を叩く。」

 

 

少なくとも、みほとエリカと小梅の3人がミカに撃破される事は無いだろう……其れを考えれば、遊撃隊は最低でも3輌が残る形となるからね。

 

みほとエリカと小梅の3人が残っていてくれるのならば、黒森峰の勝利は絶対だ――みほが妹であると言う事を抜きにしてもな。

 

 

 

 

「そうまで言い切るってのは、其れだけみほを信頼してるって事ね?……OK、そう言う事なら貴女を信じるわまほ。

 

 継続の連中に目に物を見せてやろうじゃない――姑息な戦術なんて、黒森峰には通じないって言う事を。そして、トリックスターの力も隻腕の軍神と、冷徹なる猛将の前には塵芥に等しいって事を!!!」

 

 

「冷徹なる猛将とは私の事か凛?……ふふ、悪くない名だな。」

 

 

ならば、その名に恥じぬように、冷酷に、冷徹に継続に敗北の鞭を振り下ろすとしようか?

 

みほ達は必ずミカを倒して、当初の予定である挟み撃ちを成功させるはずだからな……行くぞ凛、継続の連中に、中学大会で全試合でフィニッシャーと言う前人未到の記録を打ち立てた、その腕を見せてやれ!!

 

 

 

 

「Ich habe zugestimmt, Maho.(了解したわ、まほ。)

 

 中学大会全試合フィニッシャーの力、存分に発揮させて貰うわ……期待してくれていいわよ隊長さん?」

 

 

「あぁ、期待しているよ副隊長。」

 

 

みほを押さえつければ勝てると思ったのだろうが、その認識は大間違いだ継続高校。

 

確かにみほ――と言うか、みほが率いる遊撃隊は、黒森峰にとって大事な要素だが、其れを抑えた程度で攻略出来るほど、黒森峰の戦車道は浅くはないし、みほ達は早々簡単に抑えらえるモノではない。

 

 

だから断言してやる、勝つのは私達だとな。

 

そして思い知れトウコ――トリックスターと隻腕の軍神の間に存在する、覆しようのない絶対的な壁と言う物を!!

 

 

お前の力は大した物だが、しかしみほ以上ではない――精々その身に刻み込むが良い、西住姉妹が揃った黒森峰の戦車道のスケールの大きさと、みほが率いる遊撃隊の強さをな。

 

 

みほは当然として、本気モードになったエリカと小梅の力も計り知れないからね……其れを相手に、お前が何処まで出来るか楽しみだよミカ。

 

 

 

――尤も、私達が勝つと言う結果は、どうやっても変わらないだろうがな。

 

 

 

 

「大した自信ですこと……不遜にも思えるけど、貴女がやると王者の威厳にあふれてるわねまほ。」

 

 

「実際に自信があるからな。」

 

 

と言うか、自信が無くてこんな事をしたら、其れは只の虚栄に過ぎないからね……自信があればこそだよ。――何にしても、次の攻防が、この練習試合の大事な場面だから、有利な状態を保たねばだ。

 

 

みほが女豹の狡猾さを有していると言うのならば、私は猛虎の勇猛さを宿しているからね……その猛虎の爪牙で、喉笛を引き千切ってやるから覚悟していろ継続高校!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 


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