ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~   作:吉良/飛鳥

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準決勝でもたつく事は出来ないよね?Byみほ    なら、持てる力の全てをもってい
くわよ!Byエリカ     目指すは勝利のみですね!By小梅


Panzer91『熱闘!激闘!大爆闘の準決勝です!』

Side:まほ

 

 

私と凛以外が撃破され、絶体絶命のピンチと言う状況で、援軍が駆けつけてくれるとは……みほの判断に感謝しかないな此れは。

此れで此方の本隊は5輌、サンダースの本隊は7輌だが、私達の5輌は此れまでとは訳が違う――小梅と直下と狭山は、私が黒森峰の改革の為に組織した遊撃隊のメンバーだ。

 

此の3人が車長を務める戦車が援軍として加わってくれた以上、私に負けは無い。――此処からは、私達のターンだ!覚悟は良いな?

 

 

 

「まさか援軍が来るとはね……だけどまほ、この状況を覆せるのかしら?」

 

「覆す!!」

 

私を誰だと思っているんだ?

天下の西住流を継ぐ者だぞ?……そして、私と凛を助ける為にやってきた援軍は遊撃隊の隊長であるみほが寄越したものだ――ならば、絶対に負ける事は出来ないだろう?

みほが援軍を送ってくれたにも拘らず負けたとあっては、みほに合わせる顔が無いからな!!

だから私は負けん!!――何よりも、逆転勝利と言うのは、存外観客を盛り上げるモノみたいだからね?

 

 

 

「此処から逆転する気?……良いわ、見せてもらうわよまほ、貴女の力を!」

 

「存分に見るが良い。

 そして知れ、姉と言うのは妹の応援を貰ったら最強の存在になるのだと言う事をな!!」

 

そして、それ以上に此れまでの礼をさせて貰うぞサンダース!!

ファイアフライによって撃破された8輌の仇、先ずは確りと取らせて貰う――全車撃破されても文句を言うなよ?

……鋼の虎の闘気に火を点ける所か、ガソリンを放り込んで盛大に燃やしたのはお前達自身なのだから!

 

そして虎は追い詰められた時にこそ100%の力を発揮すると言うからな?……手負いの虎の潜在能力、とくと味わうが良いさ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer91

『熱闘!激闘!大爆闘の準決勝です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:エリカ

 

 

ったく、相変わらず可愛い顔してやる事が大胆だわみほは。

一体何処の誰が、数で劣る戦いの中で、敵部隊に単騎で斬り込むなんて言う、言い方は悪いかも知れないけど『狂った』としか思えない戦術を選択する事を予想出来るかだわ。

 

下手したらまほさんでも予想できないかも知れないわ――私が予想できたのは、単純に小梅も交えて、何度もみほと自室で戦術シミュレーションをしたからに過ぎないし。

だけどその経験のおかげで、みほが何を狙ってるのかは分かった。

 

みほの単騎駆けは、要約するなら『私ごと撃て』って合図だった。

……まさか、シミュレーションの時に『単騎駆け敢行した味方を追う形で砲撃したら、相手は絶対驚くよね』って冗談で言ってた事を実行するとは思わなかったけど。

 

だけど、其れに従ってみほを追う形で放った砲撃は効果抜群だったわ……その弾はみほのパンターに直撃する事は無く、地面に着弾して炸裂し、舞い上がった砂埃でサンダースの連中の視界を一時的に奪う事に成功した訳だからね。

 

其れは斬り込んで行ったみほも同様な訳だけど、サンダースとみほには決定的な違いがある――サンダースの連中からしたら、敵戦車が1輌だけ入り込んだ状態で視界が悪いと言うのは、攻撃の手が完全に止まる事を意味してるわ。

下手に撃ったらフレンドリーファイヤーの危険性があるしね。

 

だけどみほは違う。例え視界が悪くても、単騎で斬り込んだみほの周りに居るのは全てサンダースの戦車……つまり――

 

 

――ドゴォォォォォォォォォォン!!

 

――キュポン!!

 

 

 

『M4シャーマン5号車、行動不能!』

 

「Wha's!?マジで!?」

 

 

 

普通に攻撃する事が出来るって訳ね。

まぁ、視界が悪い中で攻撃するのは余り良い手じゃないけど、みほなら着弾直前のサンダースの車輌配置を記憶しててもオカシクないし、仮に覚えてなくても、サンダースの隊員の声や戦車の出すエンジンから距離と方角を略正確に割り出すでしょうしね。

 

今更ながら、本気で化け物だわあの子――尤も……

 

「そんな化け物に追い付き、追い越そうとか考えてる時点で、私も小梅も充分化け物なのかも知れないけどね!

 さぁ、もう1発ブチかますわよ?今度は地面じゃなくて戦車に当てるわ!!Abfeuern!!(撃て!!)」

 

「ぶっ放す!!!」

 

 

――ドゴォォォォォォォン!!

 

――キュポン!!

 

 

『M4シャーマン10号車、行動不能!』

 

「立て続けに2輌も……!It's Exciting!!やるじゃない貴女達!!

 数の上では有利だった筈なのに、あっという間に差が1輌になっちゃうなんてね?……何よりも、さっきの単騎駆けと、其れを追う形での一発には本気で驚かされたわ!!

 普通なら味方を撃つって言う行為に異を唱える所だけど、貴女達のアレは信頼の上に成り立っていた立派な作戦だった……もう、本当に貴女達は最高だわみほ、エリカ!

 こうなったら、とことんまで楽しませて貰うわよ2人とも!!」

 

「勿論、徹底的に楽しみましょうケイさん!楽しんでこその戦車道ですから!!」

 

「みほの意見に賛成。

 だけど、楽しむのは当然だけど勝つのは私達よサンダースの副隊長さん!!」

 

「Wao、言ってくれるじゃない?……でも、そう来なくっちゃ面白くないわ♪」

 

 

 

ちょっとした挑発程度じゃ動じないみたいね?……尤も、聖グロの田尻さんみたいでも困るんだけど。

だけど、今言った事は決して冗談じゃない――勝つのは、私達黒森峰よ!!

噂に名高い隻腕の軍神と、その軍神の文字通りの片腕である狂犬のコンビネーションをその身でもって味わうと良いわ……アンタ達に残された選択肢は、軍神の軍刀で首を落とされるか、狂犬の牙で喉笛を喰いちぎられるかの二つに一つよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

 

みほの単騎駆けと、其れを追従してのエリカの砲撃から一気に試合が動いた黒森峰の遊撃隊とサンダースの別動隊の戦いは、戦車道のセオリーを無視した様相を呈して来ていた。

と言うか、戦車道の王道を掲げる黒森峰に在籍しているみほとエリカが、思いっきり戦車道のセオリーを無視していた。ともすれば、戦車道のセオリーなど宇宙の彼方に蹴り飛ばした上でブラックホールで破壊している状態だった。

 

 

「如何したのナオミさん、私は此処だよ?」

 

「く……本当に嫌な位置に動いてくれるわねみほ――!」

 

 

相変わらずみほは、サンダースの別動隊の中を縦横無尽に動き回り、敵に的を絞らせない――と言うよりも、攻撃させないように動き回る。

此れには流石のナオミも歯噛みする……如何に動き回る相手でも撃破出来る腕を持つナオミだが、その射線の延長線上に味方の車輌が居るならばその限りではない。

ナオミの狙いは正確故に、若しもその正確な狙いの一撃を躱された場合、射線の延長線上にいる味方を誤爆しかねない……故に、ナオミはみほのパンターを攻撃出来ないでいたのだ。

 

そして、外からはエリカのティーガーⅠが攻撃を行っている。

此のまま試合を続けたら、負けるのは目に見えている――ケイはそう判断したのだろう。

 

 

「ナオミ、撃って!但し、パンターの足元を目掛けて!」

 

「履帯切りかいケイ?」

 

「其れが出来れば最高だけど、一瞬だけパンターの足が止まれば良いから、兎に角足元に一発かましてくれる?」

 

「Yes Ma'am.」

 

 

フレンドリーファイヤーの危険性を避け、みほのパンターの足元を攻撃する様にナオミに指示を下し、ナオミも其れに応える形で砲撃!!

其れを見たみほは、咄嗟に回避するも、地面に着弾した事で発生する揺れを完全に回避する事は出来ず、ホンの一瞬だけ動きが止まる。

 

其れは刹那の瞬間ではあるが、一流同士がぶつかる場に於いて、一瞬ではあっても確実に動きが止まったと言うのは絶好の機会なのだ。

 

 

「今よナオミ!」

 

「軍神の首、貰うわよみほ!」

 

 

その絶好の機会を逃すケイではなく、連射とも言える砲撃を命令し、ナオミも即座にみほのパンターに狙いをつけて引き金を――

 

 

「させないわ!!」

 

「「エリカ!?」」

 

 

引く直前に、エリカのティーガーⅠが射線上に割って入り、みほのパンターを撃たせんとする。――だけでなく、砲塔をファイアフライに向けた状態で割って入って来た事を考えると、既に砲撃の準備は整っているのだろう。

 

だが其れは、パンターを狙っていたファイアフライも同じだ。

みほを撃つのは、寸での所でエリカに邪魔されたが、何時でも撃てる状態であるのは間違い無い。だからケイは、即座に指向を切り替え、目標を、射線上に割り込んで来たティーガーⅠに変更する。

 

この距離ならば互いに外す事は無いし、ティーガーⅠの88㎜は容易にファイアフライの正面装甲を、ファイアフライの17ポンド砲はティーガーⅠの正面装甲をそれぞれ容易に抜く事が出来る――つまりは痛み分けになる可能性が凄まじく高いのだが、そうであってもエリカの乗るティーガーⅠを撃破するメリットは大きいとケイは判断したのだろう。

 

ベストなのはみほを撃破する事なのは間違い無いが、エリカは黒森峰の1年生の中でのナンバー2と言える実力者であり、みほが率いる遊撃隊で一番の撃破数を誇るスコアラーであるエリカを撃破すれば、黒森峰の攻撃力はガタ落ちするし、みほの最大の牙を折る事が出来るのだから。

 

 

「Very Exciting!貴女もみほに負けず劣らず最高よエリカ!!」

 

「サンダースの副隊長様に、そう言って頂けるとは光栄ね!!――でも、蛍の光は狂犬の牙で噛み砕かせて貰うわ!!」

 

「貴女はMad Dogよりも、Wild Wolfって感じだけどね?……でも、蛍は意外と攻撃的だから、狼でも鼻っ柱に噛みつかれたら痛いわよ?

 ――撃て!!」

 

「叩きのめしてやるわ!ブチかませ!!」

 

 

――ドガァァァァァァァァァン!

 

――ドゴォォォォォォォン!!!

 

 

次の瞬間、同時に砲撃が放たれ、至近距離で88㎜と17ポンド砲がそれぞれ、相手の戦車に突き刺さる!!

ティーガーⅠの88㎜は、M4シャーマンの射程外から一方的に攻撃出来るほどの強力な戦車砲であるが、ファイアフライの17ポンド砲は、パーシングを除けば、レギュレーションの範囲内のアメリカ、イギリスの戦車の中では唯一ティーガーⅠを撃破出来る火力を備えている。

其の2輌が、至近距離で砲撃を行ったらどうなるか……

 

 

――キュポン!

 

――キュポン!

 

 

 

『ティーガーⅠ123号車、ファイアフライ2号車、共に行動不能!』

 

 

結果は相討ち。

エリカからしたら、みほを守る事は出来たし、ケイからすればエリカを撃破出来たのだから、夫々目的は達成出来たと言えるのだが、撃破された筈のエリカの顔には笑みが浮かんでいた。――其れも『計算通り』と言わんばかりの笑みが。

 

 

「御膳立てはしたわよみほ。」

 

 

エリカがそう呟いた次の瞬間、砲撃音が立て続けに2連続で響き渡り――

 

 

 

『M4シャーマン8号車、6号車、行動不能!』

 

 

 

2輌のM4シャーマンが立て続けに撃破された。

其れをやったのは、言うまでもなくみほが駆るパンターだ。エリカのとっさの判断で窮地を脱したみほは、己に向かって突撃して来た2輌のM4シャーマンをパンターの機動力で翻弄し、そして必殺の履帯切りを敢行して足を殺した上で撃破したのだ。

その鮮やかさは、正に軍神と言った所だろう。

 

が、これでサンダースの別動隊は全滅させたとは言え、黒森峰の遊撃隊もエリカがやられてしまい、本隊と合流できるのはみほのみ……エリカと共に本隊に合流する心算でいたみほにとっては、この結果は誤算だっただろう。

パンターを停車させると、キューポラから飛び出して、エリカの傍までやって来る。

 

 

「エリカさん……ゴメン、私の為に……」

 

「謝るんじゃないわよみほ。

 黒森峰が勝つ為には何方が生き残るべきか……其れを考えた末の結果なんだから、貴女に罪は無いわ。

 だからみほ、貴女は行きなさい?――もしも私が倒された事に責任を感じてるなら、隊長を助けて。そして黒森峰を勝たせてくれるかしら?

 どんな謝罪の言葉よりも、私に対しては其れが一番の罪滅ぼしになるわ。」

 

「――!!!……分かったよ、エリカさん!!」

 

 

其れでもエリカは、恨み言一つ言わずに、寧ろみほの背を押してやった。

ルームメイトとして、ライバルとして、親友として……そして戦友(カラメイト)として。

 

みほもまた、エリカの思いを汲んで、パンターに戻り、何時ものようにキューポラから上半身を出した状態で戦車を発進させ、エリカに向かって右手をサムズアップし『行ってくる』の意を示す。

そしてエリカもみほに対してサムズアップし、『行ってこい』の意を示し、直後にパンターは本隊に合流すべく驀進!

 

 

「まさか、あそこで割って入って来るとはね……そしてみほを鼓舞して送り出すって、お前本当に『良い女』だよエリカ。」

 

「月間戦車道で『高校戦車道1のハンサムガール』に選ばれた貴女にそう言って貰えるなら光栄だわナオミ。」

 

「いやぁ、みほは撃破出来なかったかぁ……此れは、ちょ~~~っと拙いかな?

 みほとまほが揃ったら、最強なのは間違いない感じだしね……後は、本隊の頑張りに期待するしかないか~~。」

 

「ま、いくら頑張っても無駄と言っておくわ。

 みほと隊長が揃ったら其れは絶対無敵の『真の西住流』が発動する訳だからね?……そして真の西住流の前に敵は無いわ!

 みほが生き残って本隊への合流が可能になった時点で、私達が負ける要素は何処にもなくなったわ――みほが本隊と合流したその時が、この戦いの終幕の時よ。」

 

 

撃破されたファイアフライのナオミとケイと雑談をしながら、エリカはジャケットのポケットからアロマシガレット(乾燥させたハーブを紙巻にしたアロマ嗜好品。タバコではない。)を取り出して火を点け、その紫煙をくゆらせながら、みほが本隊に合流したその時が、此の試合の終幕の時だと告げる。

 

 

「Gewinnen Miho――!(勝ちなさい、みほ――!)」

 

 

其れは誰よりも――切磋琢磨して来た事で、まほ以上にみほの事を知っているエリカだからこその信頼の賜物だろう。

蒼空に突き出したエリカの拳は、黒森峰の勝利を疑う事が無いかの如く、力強く握りしめられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、小梅達が合流した黒森峰の本隊と、サンダースの本隊の戦いは熾烈を極めていた。

黒森峰の本隊を残り2輌まで追い詰めたサンダースだったが、ギリギリの所で小梅達が合流した事で、数の優位性が失われ、全面的な正面衝突となっていたのだ。

 

其れでも数の上ではサンダースの方が3輌だけ上回っていたのだが……

 

 

「小梅、ファイアフライの後ろに回り込め!

 直下は、どの車輌を狙っても良いから兎に角攻撃の手を休めるな!狭山は機動力で翻弄しろ!

 ――そして隙が出来たら、任せたぞ凛!!」

 

「了解、任されたわまほ!」

 

 

援軍を得たまほは水を得た魚の如く指揮が冴えわたっていた。

まほはみほと違い、正面からの押せ押せな攻撃的な戦車道を得意としているが、それ故に味方が必要以上に撃破されてしまった時には思わぬ弱さを露呈する事があり、此の試合もそんな展開になりかけたが、ギリギリで小梅達が駆けつけてくれた事でそうならずに済んでいた。

 

そして、小梅達の加入は、まほの戦力が増強された事に他ならない――其れが、まほ本来の戦車道に火を点けたのだ。

攻撃上等な戦車道に火が点いたらどうなるかなど、言わなくても分かるだろう。

 

 

「オラオラオラァ!!撃破しちまうぞゴルァ!!!」

 

「何処を狙ってるんですか?私は此処です!!よそ見はしないで欲しいですね!!」

 

 

援軍として駆けつけた遊撃隊の中でも、小梅と直下が大活躍し、サンダース本隊のM4シャーマンを立て続けに撃破し、数の差を1輌にする。

小梅の卓越した指揮と、直下のヤークトパンターの火力に物を言わせたイケイケ戦術は、思った以上に有効だったようだ。

 

何にしても此れで数の上では互角――本番は此処からと言う所だが……

 

 

 

「……来たか。」

 

 

 

――ドガァァァァァァァァァァァァン!!

 

――キュポン!

 

 

『ファイアフライ4号車、行動不能。』

 

 

まほが不敵に呟いた次の瞬間に、ファイアフライの4号車が撃破されて白旗を上げる。

だが、今この場にファイアフライを撃破出来る戦車はいるが、だからと言ってこのタイミングでの攻撃は不自然さしか残らない――誰が、何の目的で行ったのか分からないのだから。

 

 

「待っていたぞみほ。」

 

「えへへ……ちょっと遅刻かな?」

 

「いや、良いタイミングだった。」

 

 

だが、その攻撃を行った人物を目にした途端、まほの顔にも笑みが浮かぶ。

ファイアフライの4号車を撃破したのは、他の誰でもないみほだったのだ――まほは、このタイミングでのみほの乱入を予測してたのか、否!

まほはみほならば必ず来ると信じていたのだ。

 

そしてみほは其れに応え、まほの前に現れた――こうなった以上、黒森峰の勝利は絶対と言っても過言ではないだろう。

『隻腕の軍神』と『不敗の武神』が隊を纏め上げている今年の黒森峰は、誇張でなくて過去最強と言っても過言ではないだろう――だが、そうであっても、サンダースは簡単に勝てる相手ではないが。

 

だが、そうであっても、姉妹揃った真の西住流は凄まじく、サンダースの事を完全に手玉に取っていた――みほとまほの身体に染み付いた西住流の教えのおかげかも知れないが、其れでも西住姉妹が揃った黒森峰の戦い方は、正に圧巻の一言に尽きた。

 

 

「馬鹿な……こんな事が――此れが、真の西住流だって言うの!?」

 

「その目に焼き付けろジェーン!此れこそがみほと私が揃った時にだけ発動する最強の『真の西住流』だ!とくと味わうが良い!!!」

 

「尤も、これで終わりですけどね!」

 

 

まほの剛性と、みほの柔軟性がガチっと噛み合わさった黒森峰の部隊はマッタク隙のない部隊となり、黒森峰対策をして来たサンダースの事を、逆に追い詰めていたようだ。

 

その布陣に翻弄されたサンダースの部隊は、次々と討ち取られ、残すは隊長車のみだが、其の命は風前の灯火だった。

 

 

「覚悟は良いか?」

 

「辞世の句は出来てるかしら?」

 

「大人しく負けを認めて下さい……此れで終いです!!」

 

「寧ろ、そのまま死んじゃって下さい♪そして二度と復活しないで下さい。」

 

 

其れを示すかのように、躍り出てきた隊長車を囲むようにみほとまほと凛と小梅が陣取り、その主砲は隊長車に向けられている――言うまでもなく、これでフィニッシュだろう。

 

 

 

――ドガァァァァァァァァァァン!!

 

 

――キュポン!

 

 

 

『サンダース、フラッグ車走行不能!――黒森峰女学園の勝利です!』

 

 

 

そして試合を決める一撃が炸裂し、アナウンスが黒森峰の勝利を告げると同時に、試合の行方を見届けていた観客連中も大興奮である!

序盤の窮地からの逆転勝利と言うのは、観客の心もガッチリと掴んだのだ。

 

かなり苦戦したとは言え、決勝の最後の椅子は黒森峰が手にした――此れはもうV10は確実と見て間違い無いだろう。

プラウダと黒森峰が真正面からぶつかっても、戦車の性能差的に黒森峰の方が上なのだから――故に栄光のV10は目前まで迫っていた。

いずれにせよ、この大会で得られたデータが戦車道に新たな風を吹き込むのは間違い無いだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:みほ

 

 

ふあぁ~~、ケイさんとナオミさんが居るからサンダースは強敵だって思ってたんだけど、蓋を開ければ何とかなったね?――自惚れかも知れないけど、私とお姉ちゃんが力を合わせれば、其れはもう絶対最強の存在だって思うから。

 

だからこそ言わせて貰うよ!

此の試合の逆転劇は、まぐれじゃない――私達が勝った、其れが重要だからね。

 

決勝の相手は黒森峰と双璧を成すって言うプラウダ……此れは、間違いなく決勝戦で何らかの事が起きるのは確定だよ!!――尤も、それを越えてナンボなのかも知れないけどね。

 

だから次も勝つ!勝って10連覇を達成したい!――って言うかする!

その偉業を達成するためにも、次の決勝戦は負けられないよ!――だから本気で行かせて貰うよプラウダ!――期待してるよ、貴女達の戦車道の魂と、私達の戦車道の魂がぶつかり合う決勝戦は、絶対に只では済まないだろうからね!

 

 

 

 

そして、此の決勝戦が『破滅の前触れ』だったなんて言う事は、この時の私は知る由もなかった――まさか決勝戦であんな事が起きるなんて

いう事は予想していなかったからね………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

 


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