小説かくのって難しい
インデックスちゃんという不思議な少女と別れてからおよそ2時間後、私こと上条当麻は今年の4月に入学した自分の高校にやってきていた。
え、なんで夏休みに突入しているにも関わらず学校にいるんだって? よく聞いてくれたね。
その理由とは!……普通にサボりと成績不振で補習である。大嘘憑きでも、俺の過負荷な(ひどすきる)成績と内申書を無かったことにはできなかったよ。
もちろん学園都市においてみんなから”風”と呼ばれ慕われており(呼んでないし慕われてもいない)、何事にも囚われることはない上条さんは補習なんて面倒くさいものに行く気なんてさらさらなかった。
でもそれを予想していたらしい担任の先生から、上条ちゃーん、絶対に来てくださいね~? 来ないと…×××ですよ-?という連絡をうけて、仕方なく学校に来たわけだ。かわいい女の子の誘いを断るほど俺は無粋じゃない。決してびびった訳じゃないぜ!
はい説明終了
教室に着いたがまだ時間が早かったようであまり人がいなかった。席は自由なようなのでどこにすわろっかなー、と教室を見回していると、
「おおー! カミやんがこない早く来るなんて珍しいこともあるもんやね。どないしたん? いややわー! 明日の天気はきっと大雨やで!」
と青く染めた頭と耳のピアス、そして何より聞くものすべてをなんかイラッとさせるエセ関西弁が特徴の俺のクラスメートの……の…………
…………、
…………えーと、名前なんだっけ?
…………………………………………。
クラスメートの青髪ピアス君が話しかけてきた。
「『まあね』
『俺も最初はサボろっかなーて考えていたんだけど』
『小萌先生からあんな熱いラブコールをもらったらさすがの俺も』
『期待しちゃって30分前には教室で待機せざる得ないよ!』」
「な、なんやてー! 小萌先生からのラブコールぅ? 期待って小萌先生とどうなっちゃう期待ぃ? カミやん!そこんとこ詳しく‼」
興奮しながら俺に詰め寄る青髪ピアス。
おいおいそんな目で俺を見んなよ。そんな風に期待されたら柄にもなくやる気になって、ないことないこといっちゃうじゃん。
「『え』
『それ聞いちゃう?』
『しょーがないなーここだけの話だよ』
『実はね…』」
俺が青髪ピアスに子萌先生からの電話の内容(事実0%)を教えてあげようとしたそのとき、
「カミやんの言うことは話し半分で聞いといた方がいいぜい。どーせ、来なかったらすけすけ見る見るを夏休みの間、成功するまでずっとやらせるとかそんなこと言われたんだにゃー」
割り込んできた彼の名前は土御門元春。金髪グラサンという他人に威圧感を与える容貌だが、中身はこの通り間抜けなしゃべり方をするとても楽しい性格の男だったりする。
ちなみに同じ学生寮に住むおとなりさんだ。
「『ふ』
『ばれてしまっては仕方がない』
『元春ちゃん よく分かったね』
『でもなんだろう不思議と全然くやしくないや』
『俺のことを理解してくれてるんだね』」
「にゃーあれはただでさえきつい罰ゲームですけども、カミやんの場合、もはや終わりのない拷問だぜい」
そう、すけすけ見る見るとは、目隠ししたままポーカーで10回連続勝つまでずっと繰り返すという透視能力専攻の時間割りである。
俺は一度だって成功させたことがない。10回連続どころか1回だって勝ったことはない。
というか俺はそもそもポーカーで勝ったこと自体人生で一度もなかった。
つまり今日の補習をサボってすけすけ見る見るをやるはめになるとき、それは俺の夏休みがなくなることを意味しているんだ。
「なーんや、どうせそんなこったろうとおもっとったわ」
いや、君は間違いなく俺の話を完全に鵜呑みしていただろ
「はーい。夏休みにまで学校に来るはめになった困ったちゃんたちー。時間になったので補習を始めるのですよー。おしゃべりはやめて席についてくださいですー」
いつの間にかすべての元凶である俺の担任の月詠小萌先生が教室にいた。
小萌先生はランドセルが似合う小学生にしかみえないが、あれでもれっきとした教師で大人だ。
話に夢中で気づかなかったが、すでに補習の時間になっていたいようだ。
せっかく来たんだし、たまには真面目に授業を受けるのもいいかな
そんなことを考えながら空いている席に座った。
眠い。飽きた。
小萌え先生の話していることの半分も理解できず、あまりにも暇だからなんとなく今朝のことを思い出す。
インデックスちゃんは今ごろ何をしているんだろう
ちゃんと彼女を追っているという魔術師からはにげられたんだろうか
………おいおい上条さんはそんなキャラじゃないだろう
どうやら先ほどの敗北をまだ引きずっているらしい。
でも、リベンジのチャンスはなくなった訳じゃないよ。実は彼女は、うちにあるものを忘れていったんだ。そう、彼女がつけていたパンツ!…だったらよかったんだけど、実際は頭に着けていたフードさ。気づいたとき返そうと思って声をかけたんだけど、すでに彼女は外に出でしまっていたようだ。とんだおっちょこちょいさんだぜ。
インデックスちゃんがうちに忘れものを取りに来るときが楽しみだ。
だってあれだけ威勢よく出ていったのに、その日のうちにまたうちに来るんだぜ?
どの面下げて戻ってくるんだろうな。
そのときがリベンジを果たすときだ。どんな風にからかってやろうかな? 本当に楽しみだぜ!
「カミやんカミやん」
そんな俺の思考は後ろの席に座っていた青髪ピアスの呼び声で中断された。なんだよ。いいところだったのに。
「『静かにしなよ今は授業中だよ』
『わざとルール違反をして小萌先生にお説教されたいっていう性癖は知ってるけど』
『俺にそんな趣味はないんだ』
『巻き込まないでほしいな』」
「僕だってそないな趣味はあらへん…わけではないけども! 今回は違うんや! きいたら驚くで?」
「『ふーん』
『ま』
『どうせ下らないことだろうけど』
『友人のよしみで聞いてあげるよ』」
「さすがカミやん! 実はな、昨日趣味のエロ本探索にいそしんでいたら、なんと!小萌先生そっくりの子ぉが載ってる一品をみつけたんや! 今日帰りに一緒に買いにいかへん?」
学園都市では表向きR18的な本は売られていないことになっている。だか蛇のみちは蛇。警備員や風紀委員の目を盗み、そういった商品を取り扱っている店もまた存在する。青髪ピアスはそんないけない店をいくつか知っているのだろう。
だが、そんなことは今の俺には知ったこっちゃない!
「『おい』
『君は何を考えているんだい?』」
俺は確かにマイナスだ。
そんな俺でもしてもいいことと、いけないことの分別はついているつもりだ。
だから、目の前のふざけたことをぬかすこの名前を公式でもあたえられないようなモブ君に言ってやらなければならないことがある。
「『君は!』
『俺たちのような落ちこぼれのバカですら見放さないで頑張ってくれている恩人ともいえる小萌先生をそんな目で見て』
『何ともおもわないのかい?』」
「えっ?」
「『小萌先生が生徒が自分をそんな性欲まみれの目で見られていたと知って』
『ショックをうけるとか』
『傷つくかもしれないとか』
『そんな簡単なことも考えずに』
『ヘラヘラとそんないかがわしい本を買おうとしていたのかって聞いているんだよ』」
「う! そこをつかれると心が痛い! でもまさか僕と同じ変態やと思っとったカミやんにそんな正論を言われるとは思わんかったでー」
「『確かに俺は端から見れば変態と思われるような人間かもしれない』
『だけど』
『自分の性欲を満たすために大切な人を傷つけるような真似は』
『絶対にしないと誓えるよ‼』」
「か、カミやんがなんか格好よく見えるで。うぅ、なんか自分が格好悪い最低な人間に思えてきたで…」
俺の言葉で自分のおろかな言動をしっかりと反省してくれたらしく、青髪ピアスは見るからに落ち込んだ様子で項垂れていた。
でも安心して!
君はずっと前から格好悪い最低な人間だし、周りのみんなもそう思っているから! 俺の君に対する評価はちっとも変わっていないよ!
「『分かってくれればいいんだ』
『でも』
『小萌先生を傷つけるようなことをまたやるんだったら』
『俺は君のことを許さないからね!』」
「分かった分かった。ほんまカミやんは小萌先生のことが大好きなんやね」
「『当然さ』
『なんたって小萌先生は俺の初恋の人なんだからね』」
「え、それマジでいっとんの? うわー、カミやんって、ひょっとして僕より業が深いんとちゃうん?」
「『何を言っているんだい?』
『素行不良な生徒が教育熱心な先生のお陰で更正し惚れる』
『ジャンプでかつて主人公が倒した敵が新たな強敵を前に味方になるのと同じぐらい』
『王道な展開だぜ』」
「いやー、見た目ロリッ娘の小萌先生と紳士という名の変態のカミやんやろ? 王道どころか犯罪臭しかせえへんわ」
そんな下らない会話を青髪ピアスと続けていると、
「こらー、あなたたち! 授業も聞かずに何を話しているんですか! 真面目に補習をうけないっていうなら、この後特別課題をやってもらいますよー」
と教壇の前に立って頬を膨らませ怒っている様子の小萌先生からお怒りの言葉をいただいてしまった。
「小萌先生、違うんや! 僕と上条くんは…そう! ちょっと分からない問題を相談しあってただけで、決して小萌先生のありがたい授業聞いてなかったわけやないんです」
「へーそうですか。じゃあ、前に出て黒板の問題を解いてみてくださいですー。当たったら課題は勘弁してあげますよー。でも外れたらすけすけ見る見るの刑でーす」
やれやれ、やっぱりとんでもないことに巻き込んでくれたね、青髪ピアス。
君の部屋にあるパンツとズボンはすべてなかったことにしてあげよう。下半身裸でしか外に出れない体にしてあげるぜ!
狼狽する青髪ピアスにこの事態の解決を図るのは無理だろう。
……やはり俺が出るしかない、か。
黙って立ち上がり黒板へと歩く。
(面倒な役割をおしつけてしもうてすまんカミやん! でも僕としては小萌先生と特別授業っていうのはご褒美で……)
そして黒板に向き合う…ことはなく、小萌先生の小さくて柔らかく、子供の体温のように熱い手を両手でがっしりと握り
「『そういえば小萌先生』
『青髪ピアス君がなんと先生にそっくりな女の子が載っている一品を発見したらしいんです』
『そうだ!』
『俺、帰りに本屋に寄ってエロ本を買いにいこうと思ってたんですけど』
『よかったら一緒にどれくらい似ているか確認しにいきませんか?』」
ちょっと爆弾を落としてみた。
「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! なんで!? なんで本人に言っちゃうの? さっきの会話は一体なんだったん!? 小萌先生を傷つけるようなことはせえへんとかなんとかいってたやんけ‼ あの誓いはどこにいったんや!? あれもいつもの嘘やったんか!?」
「『さっきの会話?』
『えーと』
『なんだったっけ?』
『確か君が最近下半身裸で夜の町を駆け抜けるのが気持ちよくってやめられないって ことまでは覚えているんだけど…』」
「完全に忘れているどころか勝手な話まで捏造してやがる‼ ちょっ! 洒落にならんこというのほんまやめてーな! ほら、さっきから女子たちが虫を見る目で僕を見てんねん!……はぁはぁ、あかん。ちょっと興奮してもうたわ」
さっきからなぜかうるさい青髪ピアス。
隠す気もなく腹を抱えて大笑いしている元春ちゃん。
ゆだった蛸のような真っ赤な顔で、完全に放心状態になっている小萌先生。
そして……
てめぇ上条! いつまで俺たちの小萌先生の手を握ってやがる! さっさとはなしやがれぇ! そしてそこ譲れ!
上条君と青髪ピアスさいてー でもありがとうございます!
羞恥心で顔を真っ赤にしている小萌先生ハァハァ
騒ぎ出す我が同士(補習仲間)たち
夏休みで静かなこの学校の中で、まるでこの教室だけ切り離されたかのように阿鼻叫喚の地獄絵図ができあがっていた。
俺はただ、この夏休みを謳歌したかっただけのはずなのにどうしてこんなことになったのだろう。
腕を組んで考えてみる
まあ、
すくなくとも
『俺は悪くない』
上条さん(プラス)要素で人付き合いは大元よりずっと上手いです。いくつもの学校を廃校にしたりしてません。だけどその分、大嘘憑きと◼◼◼◼は劣化しています。
次回、戦闘描写が入ります(予定)