とある過負荷の上条さん   作:あきしょう

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ゲームのイベントが重なって書くのが遅くなった!
そしてまた予定より長くなって7000字オーバー。

どうしてこうなった!


7月20日⑤

「あー、うん。ちょっとした邪魔があったがもう大丈夫だ。心配要らない、彼女は無事に保護した。…………うん、傷も治した。……いや、迎えはいい。君ももう少し休め。声からまだ本調子じゃないことがわかる。…………ああ、僕たちが戻るまでにそのひどい顔を少しはマシにしといてくれ。あの子にそんな顔見せるわけにはいかないからね。じゃあ僕は少し休んでから戻るとするよ」

 

 人の気配がまったくないとある通りの外れの一画。そこはかつて多くの製品を生産するための工場が稼動していたが、学園都市の方針転換の都合上移転し、今ではすっかり寂れてしまった場所であった。

 そしてそこに立ち並ぶ廃工場の一つにステイルはいた。

 閉鎖してからだいぶ時間がたっていることがわかるほど、その工場はさびれ朽ちており、そんな場所に神父の服を着た大男が1人でぶつぶつしゃべっている姿は、何も知らない人からみたら完全にホラーであった。

 

 ステイルは魔道具らしきものに話しかけていたが、それを手で握りつぶすことで会話を終了させる。そのつかれきった後ろ姿はさながら終電帰りのサラリーマンの姿と重なって見える。

 

 なかなか捕まらないインデックスに我を忘れて取り乱す神裂、そしてとどめにあの気持ち悪い雰囲気を漂わせた殺しても死なないツンツン頭の少年だ。

 ステイルでなくても胃に穴が空く気分だっただろう。

 

 ストレスで猛烈にニコチンを摂取したい衝動をステイルは抑える。

 理由は2つ。

 目の前でこちらの気も知らずすやすやと寝ているインデックスを眺めているうちに、とあるおせっかい好きの女の子との約束を思い出して。

 

 そして

 

「まさかまた君の顔を見ることになると思わなかったよ。上条当麻」

 

 目の前の化け物に隙を見せる余裕など一切なかったから。

 

 それはしばらく前のこと。

 ルーンを通してつながっていた「魔女狩りの王」(イノケンティウス)とのパスが突然途絶えた。

 たしかに上条が完全に死んだとき消えるような命令を出していたが、今回は他者の手によって強制的に消されたものだった。そこから導き出される答えは一つ。あの男、上条当麻がなんらかの手段で「魔女狩りの王」(イノケンティウス)を破壊したのだ。

 

 そこまで考えた後のステイルの行動は早かった。

 自分たちの拠点に戻るのをやめ、人気のない場所で罠を張って迎え撃つ準備を整える。

 今の不安定な状態で上条にあわせるのは非常に危ういと考え神裂は呼ばなかった。

 不思議と逃げようとは思わない。たとえどこに逃げようともこいつはどこまでも這いよってきて、自分たちから離れないという予感があった。

 だから、灰も残さない程度ではまだ温い。生きることの醜悪さを教えてやり、心をへし折り、そして魂ごと燃やし尽くしてやろう。

 

「僕が甘かった。時間稼ぎなんて考えじゃいけなかった。今度こそ君を……絶対に殺すと約束するよ。体でなく、その心をね」

 

 ステイルはそう力強く宣言する。

 

(……僕は、いったい何をしているんだろうな)

 

 その一方で、自虐している自分もいた。

 

 これだけ我慢して。

 これだけ苦労して。

 これだけ頑張って。

 

 その果てにやることが彼女の記憶を奪うこととは、余りにもばかばかしすぎて笑う気にもなれない。この男のことを道化といったが、実際のところ本当の道化は自分だった。

 

 そんなステイルのわずかな表情の機微に気づいたのか、上条は尋ねた。

 

「『んー』

 『どうしたんだい?』」

 

「いや、僕も君と変わらないなと思ってね」

 

「『?』」

 

 ステイルの返答に上条は首をかしげる。ステイルと会ったばかりの彼に、その複雑な心のうちを読み取ることなどできるわけがない。だが上条はなんとなくステイルの言いたいことが少し理解できるような気がした。

 

「『そうだね』

 『近い』

 『君の魔法は敵も味方も周囲のもの全て巻き込んで焼き尽くす』

 『だから「全てをなかったことにする」という点において』

 『キミの異常(魔術)と俺の”過負荷”はちょっぴり近いよ』

 『ただし俺の大嘘憑きは異常(きみ)と違って取り返しがつかないーー』」

 

 そういいながら話は終わりだと螺子を構えて臨戦状態に移る上条。

 それを見て両手に炎を出すステイル。

 今、異常(魔術師)と過負荷の最後の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ぐわあああああ』」

 

 端的にいうと、俺はまた負けていた。そりゃもう一方的に。反撃すら許されないほど。

 まあ、当然こうなるよね。常に戦いの中に身を置き人を殺すための異常(魔術)の研鑽を怠ってこなかっただろう彼と、平和な場所で暢気に遊んできた俺とで勝負になるはずがない。

 恥ずかしい。めっちゃ恥ずかしいんですけど。さっきあれだけ思わせぶりな引きをしておいて、次のシーンで速攻負けているとかマジあり得ない。今帰って寝たら全部なかったことにならないかな?

 

「まったく。ここまで拍子抜けだと、こっちもどう反応すればいいのか分からないね」

 

 コスプレ神父くんもあきれたように言う。俺と戦うために色々準備してくれてたみたいだけど、このままだと全部無駄になりかねないから本当に困っているみたいだった。いや、本当にすみません。

 

 とりあえず俺は大嘘憑きでぼろぼろになった体を元に戻し、両膝に力を込めて立ち上がる。その光景を何度も見ているコスプレ神父くんは苦虫をかみ締めたような顔をしている。

 さっきから彼が倒して俺がなかったことにしての繰り返しだからね。彼もいい加減飽きてきたんだろう。

 

「本当に厄介な能力だね。超能力って言うんだっけ? なにが科学の力だ。君たちのほうが僕たち(魔術師)なんかよりもずっとオカルトしてるよ」

 

 厄介。

 なんて的を射た言葉なんだ。この能力を知ったやつらはみんな、「すごい」とか「無敵」とか言うんだけど、それは大きな勘違いだ。こんなもの(大嘘憑き)、俺にとっては手品みたいなものだ。使ったところで"勝ち"なんてないし"価値"もない。だから彼の言葉は俺たち過負荷(マイナス)にとって最大の賛辞に違いない。

 

「『ううう』

 『ありがとう!』

 『こんなにも俺のことを褒めてくれた人は君のほかにはいなかったよ!』」

 

 コスプレ神父くんはとても嫌そうな、それでいて何か理解しがたい何かを目の前にしたような顔で俺のことを見ていた。

 おかしいな。俺の気持ち、ちゃんと受け取ってもらえなかったみたいだ。

 

「君と話しているとおかしくなりそうだ…… もういい!」

 

 そんなことをいったコスプレ神父くんの両腕にはいつの間にか何か大きなものを抱えられていた。おそらく魔術を使ったんだろう。大きな隙だ。普段ならそんな隙を見逃す俺じゃない、だけど。

 

「引け!上条当麻。さもなければ…」

 

 それは、ティーカップを連想させる継ぎ接ぎだらけの修道服を着た少女。

 

「これを殺す!」

 

 まぎれもなく俺が探していたインデックスちゃんその人であった。

 まだ怪我が完治していないのか、魔術で眠らされいるのか。これほど周囲が騒がしい状況でインデックスちゃんは目を覚ます気配はない。

 

「『ひっ』

 『卑怯だぞ!』

 『女の子を人質に取るなんて恥ずかしくないのか!』」

 

「ないね。」

 

俺は説得を試みる。が、コスプレ神父くんはとりつく島もない。

 

「僕が用があるのはこれの中に入っている魔道書の知識さ。君が引かないって言うんだったら、足手まといになる彼女を殺して、後でゆっくり死体から記憶を引き出すことにするよ」

 

「『よくもそんなひどいことを!』」

 

「知らないね。僕は僕の目的のためならどんな非情なことも喜んでしてみせる!」

 

「『俺にインデックスちゃんを助けるか見殺しにするか決めろって言うのか!』」

 

「助ける? 何をいっているんだい?」

 

 彼は口元に笑みを浮かべながら語りかける。その姿はさながら過負荷(マイナス)のように。

 

「君が引けば、彼女は僕たちのもとにつれていかれ記憶をむさぼられるだろう。逆に君が断れば、彼女を殺して君を永延と焼き続ける作業に戻ることになるだけさ。どっちにしろ助けられないのには変わりわない。君が選べるのは、せいぜい僕に嫌がらせを続けるかどうかぐらいさ」

 

「『き、君は』

 

「さあ、答えろ! 上条当麻!」

 

 どうやら彼は俺の心を折る方向にシフトチェンジしたらしい。たしかに延々と殴り続けるよりはるかに効果的な策だろう。人の弱みに付け込むなんて、なんてひどいやつなんだ! 恥を知れ! 

 

「『くっ』

 『わ、分かったよ』

 『だから彼女を殺すのはやめてくれ』」

 

 だが俺の答えは一つしかない。彼女を殺させないためにはここはうなずくほかはない。コスプレ神父くんは勝ち誇ったような表情を浮かべると、俺に動かないように言い渡し、インデックスちゃんを背中にかかえて去ろうとする。その隙に攻撃しようとも、俺と彼の間にはインデックスちゃんが挟まれているので、彼女を巻き込むことになる。彼もそれをわかってやっているのだろう。本当にいやらしいやつだ。

 

 

 

 …………んん!?

 その瞬間、びびっと俺は天啓に導かれるようにこの絶望的な状況を打破する素晴らしい策を思いつく。窮地に都合よくいい案を思い付くなんて、ジャンプの主人公にでもなった気分だ。

 

 --さて問題です。

 --犯人に殺されないように、人質にとられている女の子を()()にはどうすればいいでしょうか!

 

「『正解は…』」

 

「ぐっ!!」

 

 --人質ごと犯人をぶっさして、体を螺子で()()()()やればいい!

 

 隙を突かれて体中に螺子込(ネジこ)められた二人は派手な音を立てて床に倒れる。俺が彼らに近づくと、コスプレ神父くんの何が起きたか理解していない顔が映った。

 だめだぜ、まだ勝負はついちゃいない。油断した君が悪い。

 

 俺は動けないでいるその体に向け、新しい螺子を構えて額の部分に照準を合わせる。俺の行動の意図を察したらしいコスプレ神父くんは、青い顔で叫びだした。

 

「待て! お前は何をしている!!」

 

「『何ってリベンジマッチさ』

 『借りはしっかり返しておかないと気のすまない性分なんでね』」

 

「やめろやめろやめろやめろやめろおおおおお!!」

 

 必死に体を動かそうとじたばたしているが、体が螺子で固定されその行動はほとんど意味をなしていない。

 

「『無理すんなって』

 『しゃべるだけでも激痛だろうに』

 『今楽にしてやるから』

 『黙って待ってろ』」

 

「僕はあの時誓ったんだ! 僕は全てをかけてこの子を、インデックスを守ると! だからそれだけはやめてくれ!」

 

「『断る。』」

 

「なんでもする! 君の言うことなら何だって聞く! だから!」

 

「『もう遅い』」

 

「許してくれ! 僕が悪かった!」

 

 必死の懇願。その通り、君が悪い。だから…

 

「『俺は悪くない。』」

 

 その言葉を最後に俺は持っていた螺子を螺子込んだ。

 コスプレ神父くん……ではなくインデックスちゃんの頭に

 

「『彼女には前に色々あって負かされていてね。』

 『でも口げんかじゃ勝てそうもないから』

 『こうして暴力という手段でうったえてました!』」

 

「あああ、ああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 うっるさいなあ。近所迷惑も考えろ! 周囲に人はいなくても、虫さんとか鼠さんとかに悪いとは思わないのかい? 自分勝手な人はこれだから困る。

 

 コスプレ神父君も理解したのだろう。インデックスちゃんはもう治せないと。だって意識がないとか血が出ているとかいう以前に、頭に深く螺子が刺さっているんだ。誰だって手遅れだって思うよね。

 

 どこまでも続くと思っていた絶叫がいつの間に止んでいた。どうしたのかなーと思って顔を覗き込んで見るとなんと暢気に寝ているではないか。痛みからか、限界まで叫び続けて酸欠になったからか、インデックスちゃんが死んだと思ったショックからか、それともそれら全部か、コスプレ神父くんは、絶賛気絶中だ。

 

「『しょうがない』

 『心が折れた人間に攻撃するほどつまらないことはないから これぐらいにしてあげる…』」

 

 なーんて、言うと思った馬鹿はどのくらいいるー?

 

「『スポーツじゃねえんだ』

 『気絶したからって心が折れたからって』

 『簡単に負けられるだなんて思うなよ!』

 『のどつぶして顔面の皮はいで口いっぱいに螺子入(ネジい)れて』

 『そんでもって「負けました」ってちゃんというまで殺し続けてやんよ!』

 

 そう言って完全に無防備なコスプレ神父くんに螺子を両手に襲い掛かる。俺は有限実行ができる男だ。まずはのどに狙いをあわせ飛びかかろうとする  

 

 が

 

「やめて!」

 

 --両手を広げて通せんぼするように立っているインデックスちゃんがそこにいた。

 

「『え?』」

 

 予想外の出来事に一瞬動作を停止させる。

 確かに俺は大嘘憑きで彼女の傷や「死んだ」という事実、その他彼女に影響を与えているものをなかったことにした。意識が覚醒してもおかしくない。

 だけど、目を覚ました瞬間、自分の置かれている状況を把握するなんて無理な話だ。混乱から立ち直るにはかなり時間を要すると思っていた。

 

 きっと彼女が目を覚ましたとき、俺が気絶した魔術師に追撃しようとする姿が目に入ったんだろう。そして自分の身に起きたこととか、そういったことは一切考えずただ守りたいという一身で俺の前に立ちふさがったんだと思う。ふざけた話だ。ばかげている。

 

 だがその愚かさ、

 

「『嫌いじゃないぜ。インデックスちゃん』」

 『おはよう 気分はいかがかな?』」

 

 インデックスちゃんはおれの挨拶に答えない。その代わり周囲をじっくりと観察している。

 飛び散った血痕、散乱する螺子、こげたり大穴が開いている壁や床、そして螺子だらけのコスプレ神父くん。さらにさきほどの俺の行動から、ようやく現状を把握できたらしい。彼女が次に発した言葉は「どうして?」だった。

 

「どうして君はそうなの? どうして君はそんな風に笑ったままひどいことができるの? たとえどんな敵だったとしても、ここまでする必要が本当にあったの?」

 

「『えー!』

 『ここまでって何いってんのさ』

 『君はのんきに寝ていたから知らないだろうけど』

 『彼にやられた分に比べたら俺がやったことなんてまだまだ軽いもんだったぜ』

 『ひどいっていうんだったらあと百回は苦しんで死んでもらわないと』

 『ぜんぜん割りに合わないよ!』」

 

「お願い。はぐらかさないで」

 

 真剣な表情。どんな嘘も見逃さないような、そんな強い光をもった目。俺はそんなインデックスちゃんに不覚にも威圧されてしまったみたいだ。怒っている。インデックスちゃんは見たまんま心から怒っている。

 

「『俺が彼をあそこまで追い込んだ理由か』 

 『なんとなく、ではだめなんだろうし』 

 『ふうむ』」

 

 うーん。最初は適当なことをいって済まそうかと思ったが、インデックスちゃんはそれを許してくれないみたいだ。しょうがない。俺の貧相なボキャブラリーでなんとか彼女が満足しそうな答えを精一杯言葉に出してみようか。

 

「『たとえばの話だけどさあ』

 『「努力は必ず報われる」』

 『――って言う奴いるじゃん』

 『でもさそれっておかしくない?』

 『勉強だってスポーツだって頑張っても結果を出せるのはごく一部のエリートで』

 『「努力は報われる」って言葉は』

 『結果を出したプラスの嘘か』

 『それが嘘だと認められないノーマルたちの幻想さ』

 『だから俺は』

 『その幻想をぶち殺す』」

 

 何をどう頑張ったところで、結果を出せるやつは最初から出るし、出ないやつは出ない。

 だったら初めから何もしないほうが、皆にとってハッピーだ。

 

「『もしかしたら俺がこんなことをしているのは』

 『そのことをみんなに知ってもらいたいからなのかもしれないね』」

 

「…………そう、」

 

 長い沈黙の末、インデックスちゃんは一言つぶやくだけだった。意外だ。てっきり反論してくるかと思ったのにこれでは肩透かしを食らった気分だ。

 

「私も最初はまたすがりつきたくなるような嘘かと思った。けど、最後の言葉にはなんだか強い意志を感じたんだよ。だからもしかしたら君の今の言葉は全部が全部嘘じゃないんじゃないかと思ったんだ」

 

「『……そうかい』 

 『じゃあそれは俺のことを理解してくれたってことでいいのかな』」

 

「ううん。残念だけど君の言うことのほとんどは理解できなかったんだよ」

 

 それはよかった。俺のことをわからないってことを理解してくれてとてもうれしいよ! 

 でも、反対に俺はインデックスちゃんのことを何も理解していなかったらしい。だから次のインデックスちゃんの言葉には本当に驚かされた。

 

「だからね。これから君にずっとついていくから!」

 

「『え!』」

 

「君のことが分からないんだったら分かるまで君の傍にいる! 君が次になにかとんでもないことをしようとしたら、私が絶対に止めてみせる!」

 

 おいおいこいつはなんとも予想外な展開だ。いつの間にか俺はインデックスちゃんルートを順調に攻略していたらしい…という冗談は置いといて。

 インデックスちゃんはこんなかわいい顔してとても頑固だ。俺が引くぐらいのレベルで。だからこうなった以上、彼女はてこでも自分から離れないだろう。

 

 しょうがない。わかったよ。俺は仕方なしに了承す る。また勝てなかった。

 

 

 だけどこれだけは言わせてくれ。

 

「『これから俺のことは親しみを込めて『裸エプロン先輩』と呼んでくれたまえ』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気絶したコスプレ神父くんを介抱した後、俺たちはアパートに帰る道を一緒に並んで歩いていた。

 

 完全に日は沈んでしまったが、街灯があるので迷うことはない。だけどやっぱり暗いのには変わらない。まったく仮にも最先端の科学技術をうたっているんだったらもっと夜でも明るくなるようにしろよな!

 え? 人工の明かりは好きではないんじゃなかったっけって? おいおいだれだよそんな気取ったことをいったやつ。俺の前に連れてこいよ。前言撤回させてやるから。 

 

 彼女は一回しか来たことがなかったはずだが、その足取りに迷いはない。これが完全記憶能力というやつか。全くうらやましいぜ。俺もそんなものがあったらきっとテストも毎回50点は固かったね。

 

 結局アレからインデックスちゃんは俺のことを裸エプロン先輩ではなく「とうま」と呼ぶようになった。俺のことを裸エプロン先輩と呼ばせることで裸エプロンにたいする抵抗を少しずつなくしていこうとする完璧な作戦は失敗した。ちくしょう。

 

 ……あっ、そういえば彼女に渡さなくちゃいけないものがあったっけ。

 

「『インデックスちゃん!』

 『はいこれ忘れ物』」

 

 そういってかばんから取り出したのは彼女が俺の部屋で落とした真っ白なローブ。

 

「あ、やっぱり! とうまが持っててくれたんだ! ありがとう!」

 

 探し物を見つけて嬉しそうにはしゃぐインデックスちゃん。その姿は見た目相応の子供だ。

うんうん渡せてよかった。だって

 

「『いやー』

 『かばんに入れておいてよかったよ』 

 『部屋においていたらもう渡せなかったところだからね』」

 

「へ? どういうこと?」

 

 インデックスちゃんは俺の言葉の意味が分からないらしくかわいらしく首をかしげた。そういえば彼女にはまだ言ってなかった。

 

「『ああ、実はね。』

 『最初は俺のアパートで襲撃されたんだけど……』

 『追い詰められちゃって』

 『どうしようもなくなって』」

 

 ここまで話しているうちにアパートはもうすぐ近く。この角を曲がれば目の前に見えるところまできていた。正確には、アパートがあった場所に。

 

「『だから「ルーンが貼りついているアパート」自体 なかったことにしてみました!』」

 

 インデックスちゃんはかつてアパートがあった場所が大きな地面むき出しの大きな穴に変わっている光景に絶句していた。

 

「『俺は君を守るためにこれから住む建物もなかにあった大事なものも捨てたのに』

 『インデックスちゃんは自分だけは助かって』

 『喜んでいるみたいで本当によかったよ』

 『フツーはそんなことできるわけないけどさ』」

 

 俺の煽りにインデックスちゃんは黙り込む。そして上目遣いの目尻に涙が浮かびあがりそうな顔をして、あまつさえちょっと下唇を噛んでこういった。

 

「とうまなんて、だいっっきらい!!」

 

 

 

 ……

 

 これでいい

 

 名前をよびあってとか、俺の家で一緒にご飯を食ってとか、ラッキースケベを起こしてとか、寝るときに同じ布団に入ってとか、そんな少年ジャンプみたいな感じで君となあなあで仲直りなんかしたくない

 

 だって

 

 きみとの和解は

 

 劇的であるべきなんだから

 

 




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