今回はweb短編の話です
人としての体を奪われ。
人としての生を奪われ。
平穏な生活を奪われた彼は、こう言った。
俺は_____ 人間の自由と平和を守る為に戦っている。
◆◆◆◆◆
_____“北東の境界壁”。
追悼式はかつて“火龍誕生祭”が行われた赤壁の街で行われた。
尖塔群の先には戦いに参加した全てのコミュニティの旗印がなびき、彼らを讃えている。
その中で一際高い位置でなびく三つの旗があった。
魔王アジ=ダカーハを倒した赤地の旗の“ノーネーム”。
命と霊格をなげうってまで勝機を作った“ウィル・オ・ウィスプ”。
多くの犠牲者を出しながらも獅子奮迅の働きをした“サラマンドラ”。
彼らの活躍無くしてこの度の勝利はあり得なかっただろう。
階層支配者と地域支配者たちは彼らに感謝の意を述べ、コミュニティ再建に向けての支援を惜しまないという言葉で追悼式を締めた。
その様子を士は少し離れた場所で撮っていた。
他にもその様子を遠くから眺める者は何人かいた。
◆◆◆◆◆
戦没者の名前が順々に読み上げられ、全ての行事が終わった頃。
“階層支配者”の一人である蛟劉が、“ノーネーム”に泊まっている宿に足を運んでいた。
棍を肩に負い宿の茶席に座りる蛟劉は、肩を回しながらため息を吐いた。
「いやあ、こんな堅苦しい行事に出るのは久しぶりやから肩凝ってしゃあないな」
「おいおい、不謹慎だろ。今日ぐらいは喪に服してもいいんだぞ」
「そりゃこっちの台詞や。何やこれ。顔見に来たら、殆ど宴会状態やないか」
「それはまぁ仕方無いだろ」
そう言いながら士が写真を撮る。
その先では宴席が開かれていた。
酒瓶や料理が東西問わずに転がっている。
死者を労うのも大事ではあるが、生き残った者が何時までも暗くては仕方無い。
心を癒す為には酒と肴、そして痛みを分かち合う場が必要なのも事実だ。
蛟劉、十六夜、そして士は共に宴席を眺めて熱い茶をすする。
「しかし、“ノーネーム”はよく全員生き残れたなあ。所属が半分くらいに減るんやないかと心配しとってんで。特に君らなんて途中から行方不明やったしな」
「あれは大ショッカーが面倒な置き土産を置いてったせいだからな。まぁそうなる可能性も十分にあったとは思うが」
「俺達が流すはずだった血を肩代わりした奴が多かったってだけだろ。“ウィル・オ・ウィスプ”にせよ“サラマンドラ”にせよな」
熱い茶を一気にあおる。
十六夜が宴席に交ざらず遠巻きに眺めているのは、彼なりに何か思うところがあったのだろう。
三頭龍が己の力だけで勝利を掴めない相手であったことは彼が一番よく理解している。
故に酒で痛みを紛らわせる必要は無いと思ったのだろう。
こうして静かに死者を想い、偲ぶ声に耳を傾けるのも_____
「ほら、霧崎!!あんたも飲みなさいよ!!」
「ウボァ!?酒瓶を口に突っ込むなよ!?」
「いいからいいから、ほらグイッと!!」
「ちょ、やめゴバァ!?」
まあ、偲ぶだけが追悼とは限らない。
死者を安心させる為に宴を開く文化は少なからずある。
きっとある。
痴話喧嘩は勝手にやってればいい。
「いやはや。ラッテンちゃんは楽しんどるみたいやね」
「あいつらは別枠だ。特にラッテンは他人の死より我を優先する奴だ」
「巻き込まれる霧崎の方はたまった物じゃないだろうがな」
蛟劉はクックッと苦笑いを浮かべ、そこで幾つか顔が見当たらないのに気付く。
知ってるであろう士の方に顔を向けて問う。
「そういや映司君や晴人君が見当たらんけど、君知っとるか?」
「映司なら此処にはいるだろうが宴席自体には参加してないと思うぞ。あいつは気にし過ぎる質だからな」
晴人の方は士も十六夜も知らない様だ。
蛟劉は納得すると拝借してきた日本酒の瓶を取り出すのだった。
◆◆◆◆◆
映司は士の言った通り、宴席をすみから眺めていた。
そんな映司に後ろからアンクが話し掛ける。
「お前はまた一々気にしてるのか?」
「そう簡単に割り切れる物じゃないんだよ」
後悔はしている。
もっと何か出来ていたのではないかと思えする。
けれども、それで止まる映司では無い。
とはいえ、宴席に参加する気にもなれないのでこうして部屋のすみにいるのだった。
◆◆◆◆◆
蛟劉の取り出した酒が異様に美味かった。
とはいえ、士は特に気にする事も無く淡々と飲む。
十六夜の方は何処から持ってきたか視線で問おうとしていた。
そんな時に“混天魔王”鵬魔王が、同じ酒瓶を持って近寄ってきた。
「次兄。宴席から離れて飲むとは珍しいですね」
「なんや、迦陵ちゃんも来てたんかいな」
迦陵ちゃんと呼ばないでください、と一言釘を刺して同席する。
同じく同席していた二人に気付く。
十六夜の方には楽しそうに顔を覗き込んだが、士の方は何やら面倒そうな顔をされた。
「俺の顔に何かついてるのか?」
「貴方、世界の破壊者でしょ?」
「またそれか。お前も俺を消したいのか?」
「いいえ、妙な男に変な事を言われましたが特に何もする気は無いですよ。今のところはですけどね。一応、名を聞いておきましょうか?」
「門矢 士だ。覚えなくていい」
適当に返す士。
今のところ敵では無いのならそこまで気を張る必要は無い。
そんなやり取りを士とした後に鵬魔王は十六夜と似た様なやり取りをするのだった。
◆◆◆◆◆
「ったく、人使いが荒いな」テレポートプリーズ
晴人はテレポートの魔法で何処かに帰ってきたところであった。
追悼式が終わった後に野暮用で出掛けていたが今ようやく戻ってきていたのだった。
宿に入ると何故か宴席の参加者が一ヶ所に集まっていた。
「何をやってんだ?」
「晴人か。お前も交ざるか?」
酒樽を片手に持つ十六夜が視線を向けて言ってくる。
その周囲には十六夜、士、蛟劉、鵬魔王、そして映司とアンクもいた。
「いや、状況がさっぱり分からないんだが」
そんな事を晴人が言うと誰かが説明を始める。
宴席の真ん中にいた男が七天の“通風大聖”猴魔王であり、酒天童子であったらしい。
そこで七天の武勇伝を聞く事になった様だ。
ついでに皆酒を持ちあって聞いてたというわけらしい。
「そういう事なら俺も交ざるかな。話ってのは俺も聞きたいし」
そうして改めて参加者達は杯を掲げ、共に乾杯の声を上げるのだった。
◆◆◆◆◆
____宴会は月が頂に昇る頃まで続けられた。
結局のところある程度話した所までで大半の物は酔い潰れていた。
これも酒天童子が___
“ワシに合わせて酒を飲めるものだけに語って聞かせよう!!さあ、語り部ゲームだ!!”
_____と宣言したからである。
結果は見ての通りの死屍累々。
映司も、晴人もさすがに酔い潰れていた。
霧崎とラッテンは明らかに別要因で酔い潰れていたが。
残っているのは十六夜、士、アンクくらいであった。
話の方は酒天童子が盛ったという前提の物ではあった。
◆◆◆◆◆
月は巡り、既に傾き始めている。
随分と話し込んでいたのだろう。
十六夜、アンク、士、酒天童子は三つ目の酒樽に手を出していた。
「俺はともかくお前らは大丈夫なのか?」
「俺はグリード……メダルの塊だ。味覚を初めとした感覚を手にしたとしても酒に酔うほどやわじゃない」
「俺は酒には強いからな」
アンクはともかく士の方は説明になっていなかった。
此処まで来ると消化機関に何か重要な欠陥があるのではないかと疑えてしまう範囲ではあった。
「お前もよく飲んでる方だぞ、小僧。その点は金糸雀とはえらい違いだな」
「血縁でも無いのにそんなところ似るわけねぇだろ。それにアイツ酒だけは弱かったからな。グラス一杯でノックダウンしてたぞ」
「おお、それよそれ。あの娘ときたらどんな宴席でも絶対に酒は口にせなんだからな。無理矢理飲ませてぶっ倒れた時はその場が騒然となったものよ」
「それは飲ませた方が悪いがな」
豪快に笑う酒天童子。
適当に口を挟む士。
呆れた様な顔をするアンク。
十六夜も口を綻ばせていた。
箱庭にいた時の金糸雀の話は一度も耳にしていなかった。
十六夜は自身が取っ付きにくい人格をしている自覚がある。
それは士やアンクも同じであろう。
故に踏み込まない面もあるが。
この酒天童子はという化生とは馬が合う気がしていた。
流石は任侠の王と言ったところか。
何だかんだアンクが付き合って飲んでるのも、十六夜がついつい口を滑らせてしまうのもきっとこの男の人柄による業に違いない。
「…………まあ、アイツは何処にいてもあんな感じだったんだろうな箱庭でも外界でも」
「人ってのはそういう物だ。俺も世界を旅していたが“あいつら”は変わり無かった」
「そうだな。アイツが俺と旅をしていた時もそうだったよ」
「ほほう。旅とな?」
「ああ。あれは確か_____」
杯の水面に映る月影を揺らしながら、十六夜は過去を思う。
それは当時、彼が十三歳に成ったばかりの頃。
過激な宗教団体が、とある集落を襲った時の話。
web短編回でした!!
何かネタ的に危なくて更新止まってるけど一応時系列内の話なので
冒頭のが何の話かは続きか来た時に!!
それでは、質問があれば聞いてください。
感想待ってます!!
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他作品のアンケートもあるよ!!