問題児と000と弱者の箱庭物語   作:天崎

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今回は十六夜回です!


深まる悩みと見様見真似と天に届きし火柱

 

十六夜の目の前にはゴ・ガドル・バ。

その身は全身の所々から流血し、甲殻にヒビが入っている。

だが、平然と立っている。

弱っている様子など欠片も見せはしない。

対して十六夜は肩で息をしている。

両手は自身の血で真っ赤に染まり、額からも血は垂れている。

 

「俺もまだまだだな。だからこそ、悩みどころではあるんだが」

 

十六夜は独り言を呟く。

その悩みは十六夜の胸の中だけを渦巻いている。

だが、周囲の数人はそれを察している様な様子を見せる。

自身が一番経験が薄いという自覚はある。

だからこそ、悩みは深まる。

十六夜が自覚出来る部分でも、無自覚な部分でも。

ゆえに、こんな所で苦戦している場合では無かった。

 

「さて、続きと行こうぜ!!カブト野郎!!」

 

十六夜が動くとほぼ同時にガドルも動く。

このままただ殴り合うだけでは先に力尽きるのは十六夜だ。

それゆえに変化が必要だ。

なので、十六夜は士との手合わせを思い浮かべて両手を構える。

 

「確か赤心少林拳、梅花の型……………だったか?」

 

見様見真似の型でガドルの拳をいなそうとする。

ガドルの全身を観察し、殺気を感じ取り、その動きを解析する。

そして、ガドルが放つ拳の力の流れを自然にズラす様に側面から手を打ち付ける。

とはいえ、即興の技が上手く決まることなどそうありはしない。

力の流れは完全にはズレず、十六夜の右腕を掠める様に通過する。

 

「チッ、やっぱ最初は上手くいかねぇか」

 

「ゴロギソギ!!」

 

十六夜は苦笑いしながら呟く。

ガドルは十六夜が見せた新たな動きに面白そうに声を出す。

それで何を思ったのか、懐から取り出した”欠片”二つを両手で、それぞれ一つずつ握りしめる。

すると、ガドルの体に変化が現れる。

両手から金の管の様な物が全身に伸びていったのだ。

 

「ガサバス ヂバサ ソ リゲスガギギ!! ボヂサ ロ ゼンシジョブ ゼ ギブグ!!」

 

「何言ってるかはさっぱりだが、お前が更に強くなったというのは分かったよ!!」

 

それが分かっても十六夜は勝負を捨てない。

こんなところで負けるわけにはいかないのだから。

こんなところで負けているようでは、”アジ=ダカーハ”を倒すなど不可能なのだから。

だから、止まっている暇は無い。

とはいえ、”極光の柱”は使わない。

あれで勝つのは違う。

 

「オラァ!!」

 

先手必勝。

十六夜は一気に懐へと踏み込んでいき、拳を放つ。

それは読まれていたかは定かでは無い。

けれども、ガドルは拳の軌道を完全に読んでいて軽く十六夜の拳を受け止めていた。

拳はピクリとも動かなかった。

まるで岩盤にでも挟まれたがごとくの怪力であった。

先程までとは格が違っていた。

 

「ボシガ ヂバサ ザ!!」

 

音が消えた。

ガドルの拳は十六夜の胸板に突き刺さる。

吹き飛びはしなかった。

衝撃は全て突き抜けるようだった。

ゆえにダメージも絶大。

十六夜は膝を振るわせながら吐血する。

ガドルはそれを気にすることも無く、十六夜から距離を取る。

決着がついたのではない。

追撃の為に距離を取ったのだ。

ガドルが力を込める様に両腕を広げる。

同時に右足に雷の力が収束していき、放電を始める。

 

「ジョグ・ゼンゲビ・ビブブ!!」

 

「そう簡単にやられるかよ!!」

 

ガドルが助走を付け、右足に雷を纏わせた上で十六夜に向けて蹴りを放つ。

だが、十六夜の方も黙って見ているわけが無い。

とっさに左腕で拳を放つ。

とっさとはいえ全身全霊全力全開を乗せた拳であった。

拳と蹴りの衝突によって凄まじい衝撃波が生じる。

十六夜もガドルもダメージと反動によって吹っ飛ぶ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜は吹き飛んだ末に住居の壁にめり込む形になっていた。

出血と負傷は更に酷くなっている。

特に左腕はかなり損傷していた。

肉は裂け、骨は砕け、動かすことすら困難だった。

当然、激痛を常に感じさせるが意地で押し通す。

壁の中から這い出て立ち上る。

もはや、生きている方が不思議なレベルではあるがそれでも立った。

何故ならまだ終わっていないからだ。

 

「さて、次で終わりにするとしようか」

 

目の前から歩いてくるガドルに向けて言う。

ガドルの方も先程の衝突は無傷で済まなかったらしく右足を引きずる様な形になっている。

だが、それでも十六夜に比べれば軽いくらいだった。

ダメージが蓄積されているのは明らかに十六夜だった。

けれど、そんな物は関係無い。

体が動くなら戦いは続くのだった。

もはや、きっかけすら不要だった。

示し合わせたかの様に両者は同時に動き出す。

とは言っても、十六夜には対応するだけの体力が残っているわけでも無い。

だから、動きは最小限だった。

ガドルが拳を放った直後に身を沈め、拳の下側から右手を打ち付けて軌道をそらす。

そして、懐に飛び込んでその身を掴んだ。

 

「行くぜ、きりもみシュートだ!!」

 

地面にヒビが入るレベルで力を込めて、ガドルの体を回転させて投げ飛ばす。

その回転の余波で疑似的な竜巻が発生するレベルだった。

左腕も無理矢理動かして投げた影響で完全に動かなくなる。

だが、それすら無視して十六夜は跳ぶ。

投げ飛ばしたガドルの真上まで跳んで拳を構える。

 

「これが正真正銘全身全霊全力全開の最後の一撃だ」

 

残っている力を全て込めて十六夜はガドルを叩き付ける様に殴り飛ばした。

その時、右腕が淡く光っていたのは本人すら気付いていなかった。

ガドルはきりもみシュートの回転の勢いを残したまま地に叩き付けられる。

全身にヒビが広がり、ベルトが砕ける。

ガドルの目から光が消えると同時にその身は火柱を上げた。

その火柱はまるで天に届くかと思える程に強大で凄まじかった。

それはガドルが身に秘めていたエネルギーと、その身に叩き込まれたエネルギーの凄まじさを物語っていた。

 

「クソッ……………勝つには勝ったがこの様じゃまだ届かねぇな……………」

 

落下時に受け身を取る余裕すら残っていなかった十六夜は地面に転がったまま火柱を見ていた。

何処か悔し気に呟いた直後にその意識は闇に沈むのだった。

ゆえに気付かなかった。

緑色の靄の様な物がガドルが取り込んだ二つの”欠片”を回収していた事に。

ガドルが倒れた直後に街の中央にある時計塔が崩れ落ちた事に。

その時計塔の下から黄金の塔が出現し、見下ろすかの様に伸びていった事に。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「いやいや、面白い物が見れたね。やはり、この世界に来たには僕にとって正解だったようだ。この世界は僕を存分に楽しませてくれる!!」

 

十六夜とガドルの闘いを遠目で観察していた青年は両手を広げ、楽しそうに語る。

顔に笑みを浮かべながら青年は十六夜へと近づいていく。

 

「君も中々に面白そうだ。だからこそ、こんなところで死なれちゃ困るんだよね。君は僕の都合で生きて貰う」

 

倒れている十六夜の近くでしゃがみ込んでその身を観察する。

その手つきは何やら怪しくもあったが意識の無い十六夜ではどうする事も出来ない。

 

「こりゃ、酷いね。全身ズタズタだ。アゲハ君でもここまでボロボロにはならなかったよ。生きてるのが不思議なくらいだ」

 

最もアゲハ君の場合は体より脳のが危なかったけど、と一人付け足す。

目の前の惨状など気にすることなく彼は楽しそうに傷を体化める。

 

「かなり酷くはあるけど、大丈夫かな。再生力はかなり高いみたいだし、僕の”CURE"で十分治せるだろう。ヴァン君やイアンさんはほとんど死体の状態の人間を治した事があるみたいだし、僕に出来ない道理は無い」

 

そう言って彼は十六夜に抱き付き、”CURE"を発動する。

同時に彼の体が淡く輝き、その輝きは十六夜の体に流れ込んでいく。

自身の生命エネルギーを譲渡して、再生能力を高めているのだ。

しばらくすると彼は十六夜の体から離れて立ち上がる。

 

「骨を繋げて、止血はしておいた。これで最低限は動けるはずだね。君にはアゲハ君に似た可能性を感じるんだ。この望月 朧の人生を盛り上げる為にも簡単に死なないでくれよ」

 

意識の無い十六夜にそれだけ言うと朧は何処かに歩き出す。

あくまで己の為に彼は歩き続ける。

 

 





ガドル戦決着でした!
十六夜も周囲から色々と吸収していたりします

朧に関しては面白そうなことがあったからたまたま見ていたという感じです
十六夜にアゲハと似たものを感じて死なれたら困るので治療しました。
どれもこれも己の為に行動した結果ではありますが。
箱庭に来てからそう時間が経ってないのでそこまで箱庭の事情を把握しているわけでは無いです


それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!
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