その男は戦いに敗れ死んだはずだった。
存在そのものも
事実、
だが、歴史が改変されたことによって生まれた世界線と正しい世界線の狭間に位置する閉ざされた時空。
誰かが死ぬ度に繰り返し、繰り返す度に
その特殊なあり方ゆえに
時空の歪みそのものが発生し、余波で箱庭そのものが歪むのは想定内ではあった。
けれど、干渉した時空で死んだはずの
◆◆◆◆◆
意識を取り戻したのは唐突であった。
眼に光が灯ると同時に体の感覚がほぼ無いと自覚した。
下半身と右半身の感覚は完全に無かった。
左半身の感覚は辛うじてあったが左腕は肘より先の感覚が無い。
視界も右半分しか無い。
おそらく左半分は傷付くなりして機能停止しているのだろう。
唯一動く首を動かすと感覚は正しかったようで下半身と右半身が消失している事が確認出来た。
千切れたコードのような物も広がっていた。
「よう。目覚めたみたいだな、ガラクタ」
「貴様は……………大道克己」
「へぇ、俺の事を知ってるのか」
「財団Xが所有する技術によってネクロオーバーと化した不死身の集団NEVERを率いる者だろう?ショッカーの情報力ならばそれくらい分かりはする。それよりも何故俺はこんなところにいる?俺は敗れ死んだはずだ」
「知るかよ。俺が聞きたいくらいだ。なんせ俺達の隠れ家の近くに唐突に降ってきたのがお前だからな」
大道の言っている事はほぼ事実であった。
少なくとも大道達にとってはそうだった。
4号も仮面ライダードライブ タイプフォーミュラのフォーミュラドロップによって倒されて以降意識が途切れていたので何も把握できていない。
だが、考察することは出来なくも無い。
なので、まずは情報を得ることにするのだった。
「此処は何処だ?」
大道は面倒そうにしながらも逐一4号の問いに答えるのだった。
そして、4号は箱庭の事、大ショッカーの事を聞き大体の事は把握する。
歴史改変マシーンによって歪められた歴史、最早干渉することすら難しい時空に強引に干渉された事で自身の運命すら歪んだのだと結論付ける。
おそらく完全に爆散するはずが残骸が残る形となったのだろう。
その残骸が時空から零れ落ち、箱庭へと流れ着いたのが4号なのだ。
推測は出来ただからと言って何かが変わるわけでは無い。
歴史が正された事実は変えようが無いからだ。
「貴様は俺をどうするつもりだ?」
「特に決めてはいない。ただ、
「
「あぁ、俺達には大ショッカーからくすねてきたデータがある。その中にお前のデータもあってな。つまり、俺達ならお前を修復出来るというわけだ」
「なるほどな。貴様らは俺を手中に収めたいというわけだ」
「箱庭の連中を相手にするにはいささか戦力不足だからな。戦力と言うより人員だが」
「俺がショッカーを裏切り、貴様らに付くと思うか?」
「別に付かないなら完全にガラクタにするだけだ。その状態じゃ何も出来ないだろう?愛機も失っているしな」
「俺のスカイサイクロンも貴様が回収したのか?」
「残骸を、だがな。それでどうするつもりだ?」
大道は手の中でエターナルメモリを弄びながら言う。
その様子には余裕しか無かった。
それもそうだろう。
手足を失った4号がこの状況で何も出来るわけが無いのだから。
4号は考える。
そこで思い当たる。
現在の大ショッカーは自身が忠誠を誓っていたショッカーと同質な物かどうかをだ。
確かに行動理念としてはほぼ同一だろう。
だが、此処は箱庭である。
あらゆる可能性が集う地だ。
つまり、ショッカーの名を名乗るだけで別の組織が基盤の可能性もあるのだ。
たとえば、別の存在が首領として君臨している可能性もあるのだ。
4号は自身が従っていたショッカーにしか忠誠を誓うつもりは無い。
そして、ショッカーの名を名乗りながらその理念と違う道へ進む組織だったのならばショッカー怪人の名の元に正す必要がある。
そこまで考えて4号は結論を付けた。
「確かめる事が出来た。それを確かめる為にも一時的にだが貴様らに我が力を貸してやろう」
「いいぜ。元より此方も利用する気だったんだ。互いに互いを利用し合っていこうじゃないか」
契約は成立した。
4号は大ショッカーの有り方を確かめるべく大道たちに付くのであった。
大道は元より興味半分ではあったが、4号が提案に乗ると口元を歪めるのだった。
互いに互いを利用し合う同盟が成立するのであった。
◆◆◆◆◆
_____”風浪の鉱山”六本傷の宿。
鉱山の一角に十六夜は宿を取っていた。
寝室で時計がカチカチと規則的な音を鳴らす。
時計の秒針の音とは、どうしてこんなに耳障りなのだろう。
寝苦しそうに寝返りを打つ十六夜の周囲で機械音混じりに鳥の鳴き声のような物が聞こえる。
否、聞こえるどころでは無く突っつかれていた。
よくよく見れば鳥では無かった。
タカカンドロイドが数匹十六夜の周囲を飛び回り、鳴き声と突っつきで起こそうとしているのだった。
だが、その程度では十六夜は完全には目を覚まさなかった。
数分経つとガタリという音が響く。
そして、十六夜の額に凸ピンが放たれる。
「おい、起きろ!!起きやがれ!!」
紅い右腕が叫ぶ。
どうもどうやら痺れを切らしたアンクが右腕状態となって窓から入って来たらしい。
凸ピンに加えて叫び声まで上げられ、さすがに目を覚ました十六夜は、不機嫌そうに布団から顔を出す。
「………五月蠅いぞ、鳥野郎」
「お前が何時まで経っても起きないのが悪いんだろうが、ガキ」
寝惚けながらも悪態を吐き合う。
頭を掻きながら時計を見て時間を確認する。
すると予想外の時間に目を丸くする。
(マジかよ。もう昼じゃねぇか)
なんてこった、とわざとらしく頭を抱えて跳び起きる。
そりゃ起こしに来るわけである。
アンクが、では無くおそらく一緒にいるであろう人物が。
今日は参加する予定のゲームがあるのだ。
伸びをした十六夜は、ゲームに参加する為に粛々と出立の準備を始める。
◆◆◆◆◆
”ノーネーム”一同は戦没者の追悼式や戦後処理、そして蛟劉から頼まれた依頼であるグロンギやアンデットとの戦いを終えた後、新たな活動を始める為に東側のとある土地にまで足を運んでいた。
その場所は、かつて旧”ノーネーム”を支えた”
第六桁・五六五六五六外門にある”風浪の鉱山”。
絶え間無く響いている鉄を叩く音は寝惚けた頭に少し辛いが、目を覚まさせるには丁度良かった。
鼻腔を突く鉄の匂いを胸一杯に吸い込んで眠気を払う。
鉄臭い空気は頭を刺激するのにいい。
「さっさと支度を済ませろよ」
人型に戻ったアンクが窓から飛び降りると下から入れ替わるように声が響いてくる。
「十六夜君、起きたかい?」
火野映司の声が響く。
十六夜は軽く首を鳴らして窓から身を乗り出して下を見る。
「あぁ、おかげ様でしっかり目覚めたぜ」
「それは良かった。けど、速く準備しないとゲームの予選に間に合わないよ」
「了解了解。用意するからしばしお待ちを」
苦笑する様な映司と呆れた顔のアンクに向けてヒラヒラと手を振って頷く。
窓を閉めてコーヒーを淹れて一気に飲み干す。
顔を洗い、風呂に入る。
たっぷり時間を掛けて用意した十六夜は、鉱山に相応しい作業服を着こむ。
採掘用の鶴嘴を脇に抱え、”サウザンドアイズ”に注文して作らせたオリジナルの土建屋スタイルを着込んで仁王立ちする。
「うっし。それじゃあ、元気に掘りまくるか!!」
ヤハハと軽快に笑って急造の小屋を出る。
今日も賑わう鉄火場には、”六本傷”を始めとした様々な商業・工業・鉱業コミュニティが集まっていた。
「そういえば、他の奴らはどうしてるんだ?」
「ラッテンさんが今頃ゲームの予選かな。霧崎君はラッテンさんの応援だね。士さんは既にゲームの予選は終わっているけどそれからの動向は分からない。晴人くんは散歩と言って出かけたよ」
「そうか。で、お前らはゲームに出場しないのか?」
「俺は特に興味は無い」
「俺は今回みたいなゲームは遠慮しとこうと思う」
アンクの答えは予想通りだが、映司の答えは不明瞭であった。
だが、多少は察せる答えでもあった。
ライダーの力は強大ではあるが、積極的に振るうべき物でも無い。
特に今回みたいなゲームでは火力過剰な面がある。
そういう意味での遠慮なのだろう。
「あ、そうだ。ゲームの前に、”六本傷”のポロロ君と話し合いをすることになってるよ」
「ポロロ………?あぁ、あのネコミミチビッコ頭首か」
「採掘した”金剛鉄”の使い道について相談したいらしいよ」
「”金剛鉄”の使い道…………ねぇ。御チビが見付かるまで待たなくてもいいのか?」
「そうも言ってられないんだろ。今回のゲームの予算を出したのは
「これ以上世話になるわけにもいかなしね」
三人は”六本傷”の旗印を見上げる。
三頭龍アジ=ダカーハとの戦いから三カ月が経過し、下層は何事も無かったかのように平穏な日々を過ごしている。
だが、全てが元に戻ったわけでは無い。
三頭龍との戦いは様々なコミュニティに多くの傷跡を残していた。
”ノーネーム”は、リーダーであるジン=ラッセルが行方不明となっていた。
蛟劉や鵬魔王を通して方々に捜索願を出しているが、まるで痕跡が掴めないのが今の状況だ。
「これだけ探して見付からないんだ。死ぬか拉致されたんだろう」
「死んでは無いだろうけどな。身の引きどころを間違えてはいやがるが」
「ジン君なりに考えはあるとは思うんだけどね」
戻ってくる選択肢もあった筈だ。
しかし、ジンはそれをせずに”ウロボロス”の許に残ったという。
考えがあったにせよ、組織の最高責任者がいなくなったままでは、”ノーネーム”のあらゆる活動が凍結されてしまう。
取り戻す方法が無いわけではないが、それも現状のままではどうにもならない。
リーダーが不在である今、”ノーネーム”は幾つかの決断を迫られていた。
「しっかし、このタイミングで今後の方針を決めに掛かるとはね。”六本傷”のチビッコ頭首がやり手っていう噂は本当らしい。中々に容赦が無い」
「これでも待った方だろ。本当に容赦無かったらもっと悪いタイミングで提案してくるぞ」
「ジン君がいなくなって一番ヤキモキしていたのはポロロ君だからね」
わかっている、と十六夜は相槌を打つ。
頭首が欠席したままでは決めることも決められないという”ノーネーム”の事情を彼はよく汲んでくれた。
むしろ感謝すべきかもしれない。
「いつまでもおんぶ抱っこじゃいられないって事だね。人は助け合う物だけど限度があるしね」
「お前達も決めることを決めなきゃいけないってわけだ」
「わかってる」
そのまま三人は黙ったまま雑踏を歩く。
鉱山の街の賑わいは何処か遠い景色を思わせる。
鉄火場の横道をしばらく歩くと、会議室の洞穴前に着いた。
「ん?」
「どうした、アンク?」
「何やら妙な気配がするな」
「敵か?」
「そこまでは分からねぇが
アンクの言葉に映司は警戒を強める。
一方の十六夜は自身の右手を見下しながら何処か空虚な顔をしているのだった。
まるで何かを掴み逃したように。
4号復活!
NEVERと行動を共にすることになったとさ
前回と同じく前半敵サイドで後半ノーネームサイドでしたが別に決めてるわけでは無いのでどちらかに傾く場合もあります
それと、勢力図などは第一部完まで行ったら活動報告で纏めるつもりです
それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!
次回、あの科学者が復活!