問題児と000と弱者の箱庭物語   作:天崎

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金剛鉄の交渉と金の責任と怪しい気配

 

同盟の会合に足を向けていた十六夜と映司、アンクは、鉱山の数少ない憩いの場である”六本傷”のカフェ支店にまで来ていた。

三人は一際大きいオープンテラスに招かれていた。

テラスには同盟相手である”六本傷”の幼き頭首・ポロロ=ガンタックと、”ペルセウス”の頭首・ルイオスがいた。

会合の内容は”金剛鉄(アダマンティウム)”の専売契約についてだ。

ポロロが示した”金剛鉄(アダマンティウム)”の使い道は”精霊列車”だった。

”精霊列車”とは精霊の力を利用し、霊脈を通る列車だ。

その利便性は半端では無い。

霊脈を高速移動する列車は霊脈が引かれている場所に限り、数秒から数分で移動出来る。

それは人だけで無く物資も含めてだ。

箱庭の環境に大きな影響を与えると思える代物だ。

ポロロは抜け目無く”階層支配者(フロアマスター)”達にも話が通してある様子であった。

それら全ての話を聞いた上で十六夜はこう言った。

 

「お前______責任取れるんだな(````````)?」

 

十六夜の言葉の真意を察している映司とアンクの反応はそれぞれ別であった。

映司はただ続きを聞く様に構え、アンクは興味が湧いたように顔にうっすらと笑みを浮かべる。

ルイオスは首を傾げる。

そして、ポロロは息を呑み、思わず返答に迷った。

まさかこの段階でこの質問をされるとは思わなかったと内心で舌打ちするが、その苛立ちを隠す様にとぼける。

 

「責任……………か。何に対しての責任だ?」

 

「この起業によって起こる。副次的な環境変化に対してだ」

 

環境変化、それは確かに起こり得る物であった。

”精霊列車”が実用化されれば境界門が不要になる可能性も高い。

何故なら運べる量も速さも桁違いなのだから。

そんな事になれば箱庭は十年もすれば様変わりする可能性もある。

霊脈が通っていれば”精霊列車”は陸海空の何処にでも物資を運ぶ事が出来る。

霊脈が恩恵が集まる土地だというのならば、そこに住まう幻獣や土地神も多いだろう。

だからこそ、十六夜はポロロの案に警笛を鳴らす。

 

「俺が一番懸念しているのはその点だ。”精霊列車”の性能がお前の言う通りの物なら、今まで交通の問題で未開拓だった土地に雪崩れ込むコミュニティが大量に現れる。大量の移民と急速な開拓が現地の先住者たちとの抗争に繋がることは容易に想像出来ることだ」

 

「確かにな。人は欲が深い。特に目の前に宝が転がっている時なんて簡単に欲に溺れる。そこから争いに発展する確率は高いかもな。いや、確実に(```)起きはするな。大か小かの違いはあってもな」

 

「アンク」

 

映司がいさめる様に割り込む。

アンクはニヤニヤと笑みを浮かべながら一旦口を止める。

映司も止めはしたが、否定はしなかった。

分かっているのだ、アンクが言っている事は間違いだけでは無い事は。

十六夜は気にせず続ける。

 

「加えてだ。流通の一極化によって仕事を奪われるコミュニティだって出て来るぞ。甘い汁を吸っている”地域支配者”だって黙っちゃいない。そんな副次的な争いに、お前は責任取れるのか?」

 

「…………それは、」

 

十六夜たちの指摘に、ポロロはしばし黙り込む。

十六夜はあえて指摘しなかったものの、問題はそれだけでは無い。

”境界門”の使用料など最たる例だ。

それらの緩衝材とする為にポロロは”階層支配者(フロアマスター)”を押さえていたのだ。

 

「……………なるほどね。旦那も見える(```)人間なわけか」

 

「それくらいの見通しを立てられないで交渉になんかくるかよ。それに俺のいた世界じゃゴールドラッシュを筆頭に参考となる歴史は幾らでもある」

 

十六夜も、ポロロが根回ししていた点は正しく評価している。

だからこそより大きな視点で語り掛けた。

ポロロも彼が何を言わんとしているのかを察して、重苦しく奥歯を噛む。

 

「…………悪いけど、責任を取れるかどうかは答えられない。箱庭がゴールデンステイトの二の舞になる可能性だって俺は否定できないんだからな」

 

取り繕っても仕方がないと諦めたのか、ポロロは偽りなく本心を告げる。

急激な発展にともなう問題はまさしく欲が付いて回る。

だから、アンクはどうなるかが簡単に察せられる。

映司は中東などを旅していた経験もあるので似たような事例を見たこともあった。

ゆえに難しい顔をして考えるようになっている。

鉱山を掘る工夫が増え、彼らを食わせる為の商店が増え、消費が増え、民家が増える。

上手くことが運べば史上空前の大バブル期の到来だ。

しかし、事はそれだけに留まらない。

留まるはずが無い。

”精霊列車”は、今の箱庭の文化そのものを大きく変えてしまう可能性があるのだ。

数年後には都市を繋ぐ起点となるか、或いは兵どもが夢の跡となることは間違いない。

 

「人が増えれば需要が増える。需要が増えれば消費が嵩む。あらゆるバランスを欠いたままにな。その結果、様々な地域で衝突や摩擦が生まれる。絶滅の危機に晒される種族だって出てくるだろうよ」

 

「ゴールドラッシュで、土地を奪われたヤヒ族の様に?」

 

ポロロの呟きに一瞬、十六夜の瞳に熱が籠る。

刹那にも満たない時間だったが、彼はその一瞬、怒りにも似た激情を瞳に宿していた。

そして、映司も同じく瞳に何かを悔やむような色を宿していた。

おそらく救えなかった女の子の事を思い出したのだろう。

それら両方に気付いていたアンクは静かに呆れる様に息を吐くのだった。

髪を掻き上げた十六夜は舌打ちと同時に熱を隠し、結論を口にする。

 

「……………そうだな。ま、知っているなら話が早い。俺が言いたいのは要するに、そういう事件(``````)を起こすなってこと。それに対して何らかの答えを提示できないなら、俺はこの交渉を支持しない」

 

断固たる決意を感じさせる口調。

映司も似たような意見ではあった。

だが、十六夜の意見はさすがに言い過ぎでもあった。

映司がそれとなくフォローしようとするとタイミングを見計らったように十六夜は肩を竦める。

 

「とは言っても、それは俺個人の意見に過ぎねぇけどな。”ノーネーム”内の一票ってことで聞き流してもいい。映司は考えがあるか?」

 

「俺には聞かないのか?」

 

「お前は別枠だ」

 

「で、映司。お互いに代表なんだし、お前の意見も聞いておきたい」

 

意図は口を開く前から察していた。

ようは映司に緩衝役を頼んでいるわけだ。

仕方ないな、とばかりに息を吐いてから口を開く。

 

「利益だけならこれ以上は無いって話だね。ポロロ君なら上手くやるだろうし専売契約自体は参戦だよ。でも、十六夜君が危惧している点については俺も同意見ではあるよ。発展することはいいもとではあるけど問題点から目を背けるわけにはいかないからね。他にも支配者さんたちと交渉の必要もあるだろうし。だから、専売自体は問題無いけど、マイナス面への対策をしっかり考えていくのが一番かな」

 

「……………うん。”ノーネーム”の意思は分かった。前向きに考えつつ、一先ずは保留ってことでいいんだよな?」

 

「ああ。ゲーム開催中には方針をまとめて、閉会式の夜に意見を出し合うってことで」

 

ポロロの問いに、十六夜と映司は頷く。

この辺りが今の落としどころ判断したのだろう。

急いては事を仕損じると互いに分かっていた。

何と言っても話の規模が大き過ぎる。

今の箱庭の在り方そのものが変わるかもしれない規模のマネーゲームを始めようというのだ。

”六本傷”も”ノーネーム”も”ペルセウス”も”ウィル・オ・ウィスプ”も、その場で二つ返事とはいかないのだろう。

”精霊列車”の設計図の模写を取り出したポロロは、十六夜とルイオスにそれぞれ一束ずつ渡してから口を開く。

 

「この後、ちょっといいか?」

 

「何だ?まだ何か話すことでもあるのか」

 

「話は纏まって無いが、一応顔見せくらいはしておきたくてね」

 

とりあえず、一同が頷くとポロロは立ち上がってカフェの奥へと歩いていく。

十六夜達もその後を続いていく。

そして、ポロロは一つの扉の前に立つと時間を確認する。

 

「よし、ちょうどいいな」

 

「時間が何か関係あるのか?」

 

「入る為の条件が面倒なだけさ」

 

言いながらポロロは扉を開く。

扉の奥からは室内とは思えないような光が溢れてくる。

扉を抜けた先は一同が想像すら出来ないような光景が広がっていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

晴人は十歳より幼いと思われる男の子を肩車しながら歩いていた。

周囲を見渡すように歩いていると、突然男の子が声を上げる。

 

「あ、いた!!」

 

「そうか、どっちだ?」

 

「あっち!!」

 

「分かった!!」

 

ノリよく答えながら男の子が指差した方へと進む。

進んだ先には男の子母親と思われし、女性がいた。

晴人は母親から礼を言われた後に、男の子を降ろして手を振りながら去って行くのだった。

 

「ふぃ~」

 

特に目的があったわけでは無く散歩していたら偶然出会ったという形であった。

とはいえ、泣いている子供を放っておけないので一緒に探していたわけである。

ずっと肩車していたので、さすがに方が痛んでいた。

何処かで座ってお茶でもするかと思った時だった。

 

「ッ!?…………何だこの気配……………?」

 

何やら禍々しい気配を感じ、周囲を慌てて見渡す。

だが、怪しい物は見当たらなかった。

けれど、何かが起きているのは確かだった。

肌で感じる空気がそう告げているのだった。

 

 





はい、交渉回でした!
ポロロが何処に連れていったかは次回で!

街は街で何やら不穏な気配が漂ってきた模様


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