問題児と000と弱者の箱庭物語   作:天崎

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アランの親父さん死ぬの速過ぎィ!!




様変わりと決意の引退と二度滅びし者

______”風浪の鉱山”居住区画の露天街。

山脈の谷間に造られた露店街は蛇の様に細長い道にずらりと店が並んでいる。

衣類や食器類などの雑貨は勿論のこと、鉱山で採れる鉱石を加工して作られた装飾品も数多く売られていた。

 

「霧崎、これなんかどう?」

 

「いいね。けど、こっちも似合うんじゃないか?」

 

「そう?でも、色合いが好みじゃないわね」

 

「そうか………………なら、これなんかどうだ?」

 

「ん~いいじゃない!!」

 

その装飾品の髪飾りをラッテンと霧崎は選んでいた。

その後ろに黒ウサギ、アーシャ=イグニファトゥスとアルマティアがいた。

アーシャの買い物に付き合う為に露店街へと足を運んだのだが、何時の間にかお熱い二人が二人で熱中していた。

 

「あはははは……………すみません、アーシャさん」

 

「いや、こっちが付き合わせてるんだし別にいいよ」

 

「いえ、これは確実にあの二人が悪いです」

 

「アルマさん、何か不機嫌な様ですがどうかしましたか?」

 

「べ、別に不機嫌などではありません!!」

 

黒ウサギは何故アルマが不機嫌か分からずに首を傾げる。

アーシャはアルマがチラチラとラッテンと霧崎に視線を送っているのに気が付いていたがあえて口出しはしないのだった。

むしろ、口を出せば面倒な事になる気しかしなかった。

そうこうしている内に髪飾り選びは終わったようであった。

ラッテンの髪には翡翠色の硝子玉が付いた簪のような物が刺さっていた。

霧崎のヘアバンドにも翡翠色の硝子玉が付いたヘアピンのような物が付いていた。

アルマはそれを見て頬を引き攣らせるが一瞬で元に戻る。

 

「さーて、ゲームもあって昼まだだけどどうする?」

 

「俺はラッテン達を待ってたからまだだぞ」

 

「この際ですし、皆さんで買い食いすればいいのでは?」

 

「YES!!黒ウサギも御煎餅しか食べていないので大歓迎です!!」

 

「審判業そっちのけでしたけどね」

 

「そうだな」

 

アーシャとアルマが黒ウサギに言葉の棘を刺す。

ラッテンとグリフィスの戦いを放置して差し入れの御煎餅を齧っていたのだから当然の報いなのだった。

アルマの方は単純に注意する的な意味合いもあったが。

アーシャは呆れながら一つの衣服屋を選んだ。

 

「私はちょっと買う物があるから、買い食いするならその辺で待ってろよ」

 

「おう」

 

「分かったわ」

 

「分かりました」

 

「YES!!ではお待ちしている間にオススメの店を探しておくのです!!」

 

ウサッ!!とウサ耳アピールをしながらアーシャと別れる。

一同は店から離れすぎない出店を物色し始める。

鉱山の近隣で獲れる食材は限りあるが、幸いなことにこの近くには河も森もある。

 

「あ、そうだ。アルマ」

 

「何ですか、霧崎殿?」

 

「ほら、お前の分だ」

 

言いながら霧崎はアルマに蒼い硝子玉が付いた髪飾りを渡した。

予想外の贈り物にアルマは目を丸くする。

 

「私などにいいのですか?」

 

「皆に渡してるからな」

 

「へ?」

 

ラッテンの方を見るとラッテンの背に張り付くメルン、メルル、メリルも硝子玉を付けていた。

それぞれ色は違うがラッテンやアルマの物と同じ硝子玉なのには違いない。

ようは霧崎は近しい女性に渡しているだけなようだ。

とはいえ、硝子玉の色でラッテンのだけは特別だと察せはしたが。

それでも、貰えただけで今は十分だった。

 

「ありがとうございます、霧崎殿」

 

「アルマとはまだ付き合いが短いし、親交の印みたいに思ってくれ」

 

「はい」

 

硝子玉を大事そうに握りしめながら返事するのだった。

それも見ながらラッテンは小さく頬を膨らませる。

意味は分かっていても納得出来ない物は出来ないのだった。

一同は”金目禿”の姿焼きを食べつつ、アーシャを待つ。

 

「アーシャさんのご相談とは何なのでしょう?やはりコミュニティのことでしょうか?」

 

「そうじゃない?ジャックが居なくなって色々あるだろうし」

 

「ウィラも気落ちしていたしな」

 

「私は聞いた話だけですが柱を失い、方針も決まっていないのであれば不安になっても仕方ないかと」

 

「コミュニティの主力と言うのは戦闘力に限ったものではありません。執務、外交、工房整備etc。……………………様々な分野でその才を発揮するものが組織の主力と成り得るのです」

 

「ふむ……………そういう意味ではそのジャックという方はオールマイティな人材だったのですね」

 

「そうだな。参加者(プレイヤー)主催者(ホスト)も出来て内外全般取り仕切ってたらしいからな」

 

「…………………………」

 

ラッテンは何か思うところがあるのか少し黙るのだった。

霧崎は写真を数枚取り出してアルマに見せながらジャックの事を説明する。

子供を愛し子供に愛されたカボチャの道化師。

ジャックの存在は”ウィル・オ・ウィスプ”のみならず”ノーネーム”にとっても大きかった。

ラッテンの義手の設計の基本形を作ったのもジャックだ。

彼が設計図を用意していなければアルマの定着は出来なかっただろう。

借りは多くあるがもう返せないのだ。

ラッテンが”金目禿”を骨ごとバリバリと喰らい、それに関してアルマに注意されている頃。

衣服屋の中からアーシャが出てきた。

 

「よっ。お待たせ」

 

「そんなに待ってないわよ」

 

ラッテンは(`````)軽く答える。

だが、他の面々はそうもいかなかった。

霧崎は思わず箸を手から落とす。

黒ウサギはウサ耳を跳ねさせて驚いている。

アルマは表面的にはそこまで変化は無いが目を見開いてはいた。

それほどまでに、衣服屋から出てきたアーシャは異様だった。

 

「それで、その服どうしたの?」

 

「おう。アーシャ様の初スーツ姿だ。似合うだろ?」

 

「んー大体85点ってとこかしら?」

 

「おい、どういう基準だ」

 

「独断と偏見と趣味」

 

「ようは適当ってことか」

 

額に手を当てて溜息を吐くアーシャ。

とはいえ、その姿は物静かだった。

普段のゴスロリツインテールから一転、今はタイトなスーツに身を包みネクタイを首に締めている。

ロングストレートに青髪を下したその姿からは子供っぽさが消え、僅かだが洗練された雰囲気を感じさせている。

 

「そういう反応はそういう反応でやりにくいな。普通は霧崎たちみたいな反応をするもんじゃね?」

 

「私はコミュニティの壊滅を二度体験している女よ?」

 

「あー・・・そうか、そうだよな。あんたにとってはそうか。でもまぁ、私としてはあの衣装は着納めって事で色々と感慨深いんだけどね」

 

「あぁそういう事ですか」

 

アルマが納得したように呟く。

黒ウサギも事情を察したかのように息を呑む。

 

「アーシャさん。もしや参加者を引退なさるのですか?」

 

「は!?」

 

「そうだよ。ギフトゲームプレイヤー・”アーシャ=イグニファトゥス”は店仕舞い。此れからはコミュニティの参謀として運営に関わるつもりだから、よろしくな!!」

 

背伸びした様子でネクタイを締めるアーシャ。

霧崎だけは訳が分からず首を傾げる。

 

「一応聞くけど私の所為?」

 

「違う!!引退は前々から決めてたんだよ。今回のゲームで成績を残せなかったら参加者は引退するって」

 

「なら、良かった。もし私の所為なら別のゲームで完全に叩き潰してから引退させるつもりだったから」

 

サラッと恐ろしいことを言うラッテン。

霧崎は考える様に顎に手を当てる。

その様子を神妙な顔で窺っていた黒ウサギは、静かに問いかけた。

 

「…………………アーシャさん。よろしければ、事情をお聞きしても?」

 

「事情ってほどのことでも無いけど……………まぁ、よくある話だよ。私が参加者をやってたところでコミュニティの食い扶持を稼げそうに無いからさ。_______私、才能無いし」

 

一同静かにアーシャの話を聞く。

アーシャの瞳は何時に無く真剣であった。

引退を決意するには、並々ならぬ決意があったに違いない。

近くの縁台に腰を下したアーシャは天を仰いで少し遠い目をする。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その後、アーシャは自身の憧れを、参加者に拘ったわけを話すのだった。

”鬼姫”連盟の収穫祭のことを、それに対する想いを語った。

その瞳はとても輝いて見えた。

それらを聞いた上で霧崎は問う。

 

「引退はちゃんと納得した上での行動なんだな?」

 

「勿論さ。私が参加者を続けてもうちの子供達が食べていけない。_____ジャックさんはもう居ない。あの人は蒼炎の旗印(シンボル)に殉じて死んだ。なら私は組織の二番手として動き始めないと。私が夢を見ていられる時間は…………………終わったんだから」

 

一流の参加者として、この修羅神仏の集う箱庭に名を刻む。

この世界の住人なら誰もが一度は抱く本懐を彼女は諦めた。

新しい道を歩む為に、アーシャは青髪を下してスーツ姿になったのだ。

その視線、その瞳を見て霧崎は頷く。

 

「納得しているなら俺から言うことは何も無いな。今のあんたなら後悔はしないだろうし」

 

「あら、意外にあっさりなのね」

 

「そこまで口出しするべきことでも無いだろ?」

 

「私としては霧崎ならもっと何か言うかと思ってたんだけど」

 

「後悔さえ無いなら言わねぇよ。むしろ、何か言うとしたらお前じゃないのか?」

 

「そうねぇ………………」

 

ラッテンは一旦考える様にする。

その間に黒ウサギとアーシャは視線を交わし合って微笑みあっていた。

それらは”守られる側(子供)”から”守る側(大人)”になる決意をした者の笑みだった。

 

「二度滅びた身が何を言っても説得力は無いだろうからあんまり言わないけど。柱を失った気持ちくらいは分かるわよ。私は主を失ったのも二回だし。だから、今から貴女が歩む道も茨だとは言っておくわ。失うことには慣れない方がいいし、失うことへの恐怖はあった方がいいからね」

 

言外に自分のようになるな、と伝える。

ラッテンは慣れてしまった方であるから。

コミュニティが滅びるのも盛者必衰程度の認識である。

 

「まぁ、それはそれとして今回の勝ち方は私的にも腑に落ちる物では無かったし、優勝して箔付けておいてあげるわよ」

 

「ほう。それは今回のゲームという事でいいのですか、マスター?」

 

「当たり前よ」

 

「一気に大きく出たな」

 

いきなりの優勝宣言に悪乗りする面々。

ラッテンもラッテンで悪乗り全開で答える。

 

「えぇ、やってやるわよ。というわけで、適当に準備するから手伝いなさい」

 

「「は!?」」

 

驚く黒ウサギとアーシャ。

そんな二人を別に口を大きく歪ませて思いっきり悪人顔をするラッテン。

やれやれと言った様子でそれを眺める霧崎とアルマ。

何やら物騒な企みに巻き込まれそうな一同なのであった。

 

 





日常回でした!
霧崎が硝子玉を渡したのは契約している面々でした


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