問題児と000と弱者の箱庭物語   作:天崎

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地下牢の少年と本物の連盟と道化を名乗りし者

 

____________山岳に出来た天然の地下牢。

鉱山街の賑わいとは対照的に、人の気配は露程にも感じられない洞穴の最奥に殿下は投獄されていた。

定刻に食事を持ってくる者が現れるまで、彼は一人きりで過ごしている。

捕虜の扱いというよりは、罪人の扱いだ。

鎖こそ繋がれてはいないが、小さな水樹の苗から流れる水で渇きを癒し、土埃を僅かに洗い流すという過酷な環境にある。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

望月 朧はそれなりの数の戦闘員の前に立ち塞がっていた。

数だけを見れば圧倒的に不利だが、余裕の笑みを浮かべている。

 

「君達も()を狙っているようだね。けれど、()は僕が目を付けた男だ。君達なんかに渡すわけにはいかないのさ」

 

「何者だ、貴様は!!」

 

「望月 朧。ただの道化さ(``````)

 

両手を広げ、ふざけた口調で言う。

本人的にもふざけた言い方ではあるが込められた意味は違った物でもあった。

戦闘員たちは話すのを切り上げて朧へと襲い掛かって行く。

話すだけ無駄と感じたのだろう。

 

「ちょうどいいし、新しいプログラムを加えた生命融和(ハーモニウス)の実験台になってくれよ」

 

言いながら朧は腕を異形に変化させる。

擦れ違い様に軽く腕を振るう。

それだけで戦闘員たちが細切れになっていく。

以前吸収した改造兵士の力である。

腕には刃のような物が生えている。

それが微振動し触れた物を全て切断しているのだ。

朧は冷たい笑みを浮かべたまま戦闘員たちを惨殺していくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「あれ?十六夜君たちじゃないか。こんなところでどうしたんだい?」

 

「お前こそ何で此処にいる?」

 

「俺は街を見て回ってきた帰りだよ」

 

「俺達は少し話をしていたところだ」

 

十六夜と霧崎の話が一段落したところで宿に帰って来たところの映司にばったり会うのだった。

そこへ同じく帰って来たのか晴人も現れる。

 

「晴人君も今帰ったところ?」

 

「そうだな。街は一通り見終わったんで」

 

「おい、十六夜。ちょうどいいんじゃねぇの?」

 

「そうだな」

 

「どうかした?」

 

霧崎の言葉に頷く十六夜。

後から来た映司と晴人は何の事かと首を傾げる。

十六夜はそんな二人の方を向くと意を決したかのように口を開く。

 

「ちょうど時間も空いてるし、いい機会だからお前達の話を少し聞かせてくれないか?」

 

「俺達の話?」

 

「具体的にどんな事が聞きたいんだ?」

 

「そうだな…………………お前達が経験した戦いとかを話せるとこだけでいいから聞かせてくれないか?」

 

十六夜の言葉に二人は少し考える様にした後に顔を見合わせ、頷き合う。

最近の十六夜の様子を見ていた二人はだからこそ頷く。

 

「いいよ、俺達の話なんかで良ければ」

 

「まぁ隠すようなことじゃないしな」

 

そう言うと二人はカフェに入って十六夜たちの近くの席に座るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

殿下が投獄された地下牢に現れたのは混世魔王だった。

混世魔王は”サラマンドラ”と交渉し、サンドラを解放する事で殿下の身柄を自由にしたと話す。

その上で自身の成り立ちを語り、殿下にとある提案をした。

本物の魔王連盟を作らないかと言う提案を。

近い内に開催されるであろう太陽主権を用いたゲームで”ウロボロス”の横っ面を殴り飛ばす為に。

 

「____俺様と組もうぜ、殿下。そして神群共を、お前の人生を縛ろうとした輩の全てを百億万度の焔で(```````)焼き尽くしてやろうぜ(``````````)…………………!!」

 

真正面から、同じ舞台で挑み蹂躙する。

混成魔王は己の使命を全うする為に。

殿下は己の本当の自由を手に入れる為に。

 

「…………………………、」

 

混世魔王の話を聞き終えた殿下は、岩肌に身を預けて思考する。

今まで考えることの無かった己の人生の指針を、初めて模索する。

今まで命じられるままに生きていた殿下は、命令を完遂する為の思慮はあっても、自分自身の為の人生を考えたことは唯の一度もなかった。

肌寒い風の吹く地下牢を、沈黙が支配する。

混世魔王に急かす様子は無い。

彼はその気になればいつでも逃げる事が出来る。

向かい合った二人が睨み合って一〇分以上経った頃。

フッと殿下は口元に笑みを浮かべた。

 

「混世魔王。なんだかんだ言ってるが………………要するに、俺の持ってる”龍”の太陽主権にあやかりたいだけなんだろ?」

 

「ヒハハ!!それも無いと言ったら嘘になるな!!」

 

二人は緊張を解す様に共に笑った。

だが二人が口にしたことが全てというわけではない。

殿下は混世魔王の復讐心は本物だと思った。

この男の熱量を、素直に羨ましいとも思った。

立ち上がった殿下は無言で牢獄の鉄格子に手を掛けて泰然と笑う。

 

「唆されているようで癪だが、小気味のいい甘言だった。いいぜ、乗せられてやるよ」

 

「………………ヒヒ。後戻りはできねぇぜ?」

 

「構わないさ。どうせ目的の無い人生だ。…………ああ、いや。一つ出来たか」

 

ほう?と混世魔王が意外そうに声を上げる。

鉄格子を握る手に力を込めた殿下は、一瞬だけ瞳に劇場を宿し、

 

「奴らの________俺を縛ってきた”ウロボロス”の横っ面を、全力で殴り付ける。それが出来たら最高に気分がいいのは間違いない…………………!!」

 

華奢な腕からは想像出来ない剛力が殿下の右腕に宿る。

星の地殻に比するというその剛力を受けた鉄格子は、為す術もなく容易く撓んで崩壊した。

同時に息を呑むような音が何処かで響く。

鍵を他所に投げ捨てた混世魔王は、盛大に下卑た笑い声を上げて彼を歓迎した。

 

「ヒハハハハハハハハハハハッ!!よォし、ならお前さんのモチベーションは其処に決定だ!!俺様は大聖の野郎をぶん殴る!!お前は”ウロボロス”をぶん殴る!!複雑な事情説明なんざいらなかったな!!………………ヒヒ、何だよやっぱり俺様の思った通りだ!!俺様達は、上手く噛み合うだろうよ!!」

 

「目的が噛み合っただけだろ。__________それで、お前は何者だ?」

 

「気付いていたのか」

 

「さっきな」

 

先程の息遣いは殿下の耳にも届いていた。

混世魔王と殿下のやり取りを盗み聞いていた者は物陰から姿を現す。

それと同時に何かを殿下たちの方へと投げた。

べチャリという音と共にそれは地に落ち、少し転がって殿下の足元まで来る。

それは大ショッカー連盟の戦闘員の首を詰めた袋だった。

 

「君を狙っていた者達さ」

 

「何のつもりだ?」

 

「君の敵じゃないと示す証拠を見せてるんだよ。こっちは無駄になったけどね」

 

言いながらもう一つ投げる。

今度はチリンという音と共に転がり落ちる。

今度の物は先程混世魔王が持っていた物と同じ鍵だった。

 

「それで、俺の敵じゃないならお前は何者なんだ?」

 

「望月 朧。道化さ(```)

 

「何が目的だ?」

 

道化というのはあえて追及せずに目的を問い質す。

明らかに怪しい男ではあった。

快楽主義者に近い臭いを感じ取れる男だ。

聞かれた朧は静かに笑みを浮かべながら答える。

 

「君に面白い物を見せて貰うことさ」

 

「どういう意味だ?」

 

「君からは彼ら(``)とは違うけど輝く物を感じる。君なら彼ら(``)とは違った面白い物を見せてくれると思ってね」

 

「俺達の話は聞いてたんだろ?そんな事の為に箱庭のほとんどを敵に回したいのか?」

 

「そんな事?僕にとっては重要なことさ。つまらない人生なんて僕は嫌だからね。大切なのは、アーティスティックで、ファンタスティックでエキセントリックな人生!!君なら僕を退屈させずに楽しませてくれそうなんだよ!!」

 

テンションを上げて語り出す朧。

殿下は頭を右手で抑えながら察する。

この男はイカれてる類の人間だと。

だが、イカレ具合はともかくとして使えそうにはみえた。

なので、精々利用はさせてもらうことにはするのだった。

 

「いいのか?」

 

「いざとなれば消せばいいさ。それよりだ。これからどうするんだ?」

 

「それは僕に考えがある」

 

階段から予想外の声が響いた。

ジン=ラッセルと彩里鈴の気配が殿下の前に出ると彼は意外そうに瞳を見開いた。

 

「やっほー、殿下。地下の暮らしは快適だった?」

 

「そんなわけないだろ。……………でも驚いた。リンはともかくとして、ジン。お前も俺達と組むのか?」

 

「______、」

 

「ヒハハ!!この坊主が持つ”精霊使役者(ジーニアー)”は便利だからなァ!!誘いを断った魔王どもを俺達の手で倒し、此奴に従わせるって戦法よ。上手く噛み合えば一年で戦力が調うぜ!!」

 

下卑た笑みを浮かべる混世魔王。

だが殿下が言いたい意図は其処では無い。

 

「混世魔王の台詞じゃないが、後戻りはできない道だぞ。まず間違いなく”ノーネーム”に帰る事は一生出来ない。______それでもいいんだな?」

 

殿下は念を押す様にジンへ問う。

混世魔王の作戦で行くのなら、彼は連盟の要に成るだろう。

生半可な覚悟で参加させるわけにはいかない。

しかしそれは杞憂だった。

ジンは笛吹道化の指輪にそっと触れると、揺れることの無い覚悟を秘めて頷いた。

 

「僕には………………僕ら(``)には、太陽主権のゲームに参加しなきゃいけない理由がある。それが巡りに巡って”ノーネーム”を助けると信じている。君が心配するようなことは何も無い」

 

朧はその目を見て思う。

あぁ、これは唆された目だと。

確かに決断は自分でしたのだろうが誘導された様な匂いがあった。

せめて破滅に向かないようにね、と心の中で思いはするのだった。

 

「残念だけどアウラさんは先生の許に残る事になりました。グーおじ様は私達と一緒に付いて来てくれるそうだから、これからも一緒だよ。まずは身を隠そうと思うから北側に潜伏しよう」

 

「そうか。……………ゲームメイカーは継続でいいんだよな?」

 

殿下は当たり前のように問うて、リンは当たり前のことを笑顔で答えた。

 

「当然!!殿下みたいな世間知らずを放り出すわけにもいかないものね!!」

 

「ありがたくって涙が出るぜ。でもいいのか?お前が箱庭に来た理由って、家族を助ける為じゃなかったか?」

 

「その辺は変わらないけど、その為には頑張って詩人にならないといけないからね。殿下にはその辺り協力してもらうからヨロシク!!」

 

ビシッとふざけて敬礼をするリン。

殿下は呆れながら苦笑を浮かべて了承した。

 

 

 

 






殿下サイド回でした!
朧は殿下サイドに合流しました
ただし、信用は一切されていない
道化を名乗る理由は後々


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