殿下が投獄された牢獄が破られたことが知られたのは、半刻ほど経った後のこと。
此れより数年間、彼らが表立ってコミュニティを襲ったという記録は存在しない。
だが不可解なことに、これよりすぐ旧” ”が封印したと思われる魔王の封印塚が次々と破壊されるという事件が発生した。
激しく争った跡もあれば、大ショッカー連盟の構成員と思われし怪人や戦闘員の死骸の山が築かれている物もあれば、封印塚が壊されただけというものもあったが、これらの事件には共通の出来事が重なっていた。
封印を解かれたはずの魔王は、何処のコミュニティを襲うことも無く人知れず姿を消していたのだ。
この封印塚が破壊されるという珍事件は目立った被害もなかったということで調査は一年程で打ち切られた。
怪盗アルティメット・ルパンや大ショッカー連盟の目立つ事件やNEVERやネガタロス達による暗躍などもあり、半年後には誰の記憶にも残らなかった。
◆◆◆◆◆
あらかた片付けられてはいたが三頭龍アジ=ダカーハの分身体の生き残りは潜んでいた。
様々な物と同化し、特性を得る双頭龍とその血肉から産まれる化物達。
それらを全て探し出すのは難しい面があった。
それゆえに人里を襲う事件が時折発生していた。
だが、同時にこんな噂も広まっていた。
助けを呼ぶ声に応え、光と共に現れる巨人が存在すると。
「巨人が私達を助けてくれたんです」
「双頭龍の前に光と共に現れて私達を守ってくれたんです」
噂によればその巨人は赤色や青色に体色を変化させる事もあるのだとか。
体色を変化させた後は戦い方も変わり、様々な双頭龍に合わせた戦い方をするのだとか。
興味本位に双頭龍達を倒し終えて飛び去った巨人を追い掛けた者もいたが、巨人は途中で光となって姿を消したらしい。
助けられた者達は巨人に感謝し、瞳に光を取り戻しているのだった。
正体は分からないが確かに存在する物としてその巨人の噂は広まっていた。
「へぇ、そんな事があったのか」
子供達から巨人の話を聞きながらアスカ・シンは呟くのだった。
多少尾びれ背びれが付き始めてるの聞きながら苦笑していたが、その訳は子供達には察せないのだった。
リーフラッシャーを眺めながら一人呟く。
「皆を助ける為とは言え、ちょっと暴れ過ぎたか?」
あまり目立って箱庭に影響を与えすぎるのは良く無いとは考えていた。
三頭龍との戦いの後はフラフラと各地を巡り、噂にある通り双頭龍などに人里が襲われているところに遭遇したら変身して助けていたのだった。
三頭龍の戦いの時にマクスウェルによって分身体が送られて被害が出た土地の復興を手伝いながら旅をしているとはいえ、よくよく双頭龍と遭遇する悪運には自分で苦笑する。
「体が馴染んできているのか、ダイナとして戦える時間は伸びてきているけどあんまりやり過ぎるのも良くないよな~」
自分は本来なら箱庭にはいない人間である。
放っておけなくはあるのだが、あまり現地の人間が独力解決する場を無くすのはどうかと思っていた。
しかし、箱庭を離れるわけにもいかなかった。
各地を巡っている内に自分が知っている何かに似たような臭いを感じていたのだ。
自分達と因縁があるかもしれない相手が暗躍している可能性があった。
なので、各地を巡り様子を見ているのだった。
時折ゼロなどに向かってメッセージを送る事で異常な事態は無いか探ってもいるのだった。
「さて、手伝うとするか」
考え事を切り上げてアスカは復興の手伝いをする為に立ち上がる。
今優先すべき事は街の人たちの手伝いをすることだった。
◆◆◆◆◆
「語るとしてもまず何処から話すかな……………」
十六夜の方を向きながら晴人が呟く。
まずは晴人から話す事になっていた。
晴人は何処から話すべきか悩んだ末に始まりから話す事にした。
サバトに巻き込まれた事、絶望を乗り越えて魔法使いになった事、白い魔法使いにコヨミを託された事を話す。
「今にして思えば全部仕組まれた事だったんだけどな」
それから魔法使いとして戦ってきた事を話した。
魔力を持つ人間ゲートを絶望させ、ファントムを産み出させる為に暴れるファントム。
そのファントム達との戦いを語って行く。
ゲートにも、人間にも、ファントムにも色んな奴はいた。
晴人は絶望を希望に変え戦い続けた。
そして、それら全てが一人の上の掌の上での戦いだった。
「笛木は白い魔法使い、ワイズマンという二つの顔を使って俺やファントム達を誘導していたんだ。必要な数の魔法使いを揃えさせる為に」
「娘を生き返らせる為にか………………」
全てを仕組んだのは笛木という男だった。
笛木は死んだ娘を甦らせる為にサバトを起こした。
それにより、多くの人々が強制的に絶望させられてファントムと化した。
魔法使いになった晴人を除き全て。
それだけの命を犠牲にしても娘は甦りはしなかった。
肉体は賢者の石によって復活した。
だが、復活したのは肉体と言う器だけだったのだ。
人格は、魂は復活しなかった。
だから笛木は次なる計画を実行した。
四人の魔法使いを使って更なる広範囲でサバトを起こす事だった。
その間に器を保ち、守らせる為に晴人を利用したのだ。
ワイズマンの姿でファントムにゲートを襲わせ、ファントムを増やす様に指示をしておきながら実際は魔法使いを生み出す為の行動だった。
魔法使いになるには体内にファントムを宿す必要がある。
その為には一度ゲートを絶望させ、ファントムを発生させた上で肉体という卵の殻が破られる前に絶望を乗り越えさせ無ければならない。
ゆえに計画は遅々として進まなかった。
それでも、四人揃い笛木は遂に本性を現してサバトを実行した。
晴人も一時的にはコヨミを救う為にそれを受け入れ掛けていた。
だが、仲間の言葉と行動、そして真にコヨミを救うという事がどういう事か考えた上で笛木と戦った。
結果的に相討ちに終わるがそこに乱入する者が現れる。
「それが人格を保ったままファントムになった男、ソラだ」
「確か殺人鬼だったか?」
「あぁ、奴は多くの女性をファントムになる前から殺していたんだ」
ファントム・グレムリン、またの名をソラ。
彼は人格を保ったままファントムになるという稀有な存在だ。
その理由は不明確だ。
狂気や執念がファントムとしての人格を飲み込んだのかもしれない。
何はともあれソラは人間に戻る事を渇望していた。
それだけを見れば当然な願いでもあった。
強引に連れ去られて無理矢理怪物に姿を変えられたのだ。
人間に戻りたがるのは当然だろう。
ソラは晴人と笛木が相討ちになった隙に笛木を葬り、コヨミの体内から賢者の石を奪いとった。
それによってコヨミは消滅した。
ソラは賢者の石をその身に取り込むと魔力を集め、人間に戻ろうとする。
コヨミを救う為に晴人とソラは対立する。
コヨミの力が悪用されるのを防ぐという意味合いもあった。
晴人は賢者の石を取り戻すとその力でソラを打ち倒した。
「奴は決して許されない事をしてきた。でも、救われない奴でもあったんだ」
「そうかもな。罪はともかくとして願望は分からない事も無いからな」
その後、賢者の石を利用されない為にも誰の手にも届かない場所に置く為の旅を始める。
そして、封印された魔法使いのいる世界に引きずり込まれた。
そこで士と共にとある少年を救った。
それから時が経ち、オーガと出会う事になる。
「オーガって確かこの前味方を喰ってた奴じゃないか?」
「あぁ、どうやら大ショッカーの手で復活したようだ」
オーガは喰ったファントムの力を自らの物に出来る強力な敵であった。
晴人は一度敗れ、賢者の石を奪われてしまう。
賢者の石と晴人の願望を利用されてコヨミは間違った形で復活し、街を破壊し回った。
晴人は苦悩を振り切り、コヨミを救う事に成功し、賢者の石を取り戻す。
だが、隙を突かれてオーガに精神世界アンダーワールドに侵入されてしまう。
オーガの狙いは晴人の体内のドラゴンなのだ。
賢者の石が奇跡を起こし、晴人は自身のアンダーワールドに入り、オーガと戦う。
晴人の希望が溢れた世界においてオーガに負けるはずなど無く、見事に勝利するのだった。
そして、コヨミへの未練も振り切る。
自身のアンダーワールド内のコヨミに賢者の石を託す事で一つの区切りを付けるのだった。
それから数年後に再び封印されていた魔法使いと戦うことになる。
「俺の話はこのくらいだな」
鎧武との共闘などの話さなくても問題無い部分は省いた上で語り終える。
晴人も語る事で少しはすっきりしたようだ。
区切りを付けているとはいえ抱え込んでいる物が無いといえば嘘になる。
だから、たまにこうして打ち明けると多少は楽になるのだった。
「希望に絶望ね………………俺の希望か………………………」
「お前が何に悩んでるかは知らないけど一人で抱え込むとろくな事にならないぜ。一人で抱え込めば壊れるだけって俺の恩師も言ってたしな」
晴人の言葉に頷きながら十六夜は再度自身の願望を見つめ直す。
十六夜の願望、それは自覚はある。
夢に見る程度には、帝釈天の話に期待してしまう程度には自覚はあるのだ。
ピースは揃って来ているような気はしていた。
そして、次に映司の話を聞くのだった。
アスカは復興を手伝いながら旅している形です
移動は歩きな時もあれば、ヒッチハイクしている時もあれば、変身している時もあります
後半は晴人の過去話でした
ほぼ本編の確認レベルですが
それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!