(クソッタレが!!あの隠者の恩恵は本当に厄介だなッ!!)
ルイオスの姿は消えていた。
隠者の兜を使って姿を消しているのだ。
アルゴールの相手をしている隙に使われたのだった。
十六夜は”
ハデスの恩恵を受けた隠者の兜は十六夜と相性最悪である。
霧崎からPSIの事を教わったとはいえ、さすがにイアン式ライズは使えない。
時折命令を出す為に声を発するが、それ以外は全くと言っていいほど気配が感じられない。
結果として十六夜は不意討ちを受けない為に随時走り回ることを強要されている。
それに加えて悪魔化した”
十六夜の体力を削ることに集中しているのか、足払いを掛けるかの様にし掛けてきたり、避けた先に鋭く尖らせた”
更に道中の所々が何か激しい争いでもしたかの様に破損しており、走破するのを苦労させる。
とはいえ、一時間やそこら走り回った程度で体力が尽きることは無い。
けれど、此れではルイオスの持ち点は維持されてしまう。
十六夜は獰猛な笑みを浮かべると洞穴の角に張り付き、見ることの出来ないルイオスへと叫ぶ。
「ルイルイ、最後の勝負だ!!自分の力で勝つんじゃ無かったのか?姿を見せてかかってこいッ!!」
安い挑発だが、失敗するのは分かっている。
十六夜の狙いは三手先の攻防にある。
すると狙い通りとばかりに、彼の周囲の岩盤が悪魔化して脈を打ち始めた。
(きやがったな……………!!)
十六夜は不意を突かれたかのように両手両足を拘束される。
洞穴の角に背を預ければ、ルイオスは間違いなくその部分を悪魔化させると読んでいた。
そして最後の一撃は、ルイオス自身が決めに来ると言うことも。
先程言っていたようにルイオスは今回自分自身の力で戦うことに意味がある。
それゆえの拘りでもあるのだろう。
「そのまま押さえ付けておけ、アルゴールッ!!最後は僕が決めるッ!!」
声の距離からして約十メートル付近。
意外に近くまで来ていた事に気が付いた十六夜は、すぐに右足の拘束を引き千切り、その場で地面を蹴り崩した。
「しゃら、くさいッ!!」
轟音と共に巻き上がる弾丸の嵐。
蹴り上げられた岩石は真正面全域に散弾となって飛び散り洞穴全域を揺り動かす。
鍾乳洞はその衝撃で天井にヒビが入り、鍾乳石が槍の様に降り注ぐ。
しかし十六夜の本当の狙いは別にあった。
(よし、土煙が上がった。此れで何処から来ても動きが分かる!!)
イアン式ライズはライズ波動を放射し、相手の生命波動を感知する。
蝙蝠の超音波や海棲哺乳類の音波に近い仕組みだ。
ようは一定ペースに放たれる波に何かがぶつかり反射した物を感じ取るという事だ。
もちろん十六夜にはそんな芸当は出来ない。
ならば、どうするか。
その答えがこれだ。
巻き上がる土煙に空間が満たされれば姿が見えなくとも、土煙の歪みで動きを見る事が出来るというわけだ。
この
一撃で仕留めねば二度とチャンスは来ない。
拳に力を込める。
まだ片足以外は悪魔化した岩盤に拘束されているがこんなものは何時でも解き放てる。
現に右腕周辺は淡く光らせた右腕から流れ込むエネルギーによってヒビが入り、即座に崩れるレベルになっていた。
ギリギリまで拘束されていた状態の方が釣れると判断したのだ。
土煙の流動を僅かでも見逃さないように瞳を凝らす。
右方向に土煙が揺れた途端、十六夜は瞳を見開いた。
「____そこかッ!!」
右腕を何時も通りに振るえば既に内部がボロボロになっていた岩盤は積み木のように崩れていった。
そして、勢いのままに拳を突き出す。
まだ制御が完全では無いゆえに土煙にもエネルギーは流れ込み激しい光を周囲に撒き散らしながら十六夜の拳は土煙を消し飛ばして現れた隠者の兜を正確に捉えて砕き飛ばした。
だがその直後、十六夜の瞳に驚嘆の色が広がる。
(っ___________!?ルイオスが居ない!?隠者の兜と飛翔の具足だけだと!?)
その瞬間、嵌められたのは自分の方だと気が付く。
ルイオスは隠者の兜と飛翔の具足を囮にして、十六夜から渾身の一撃を引き出したのだ。
そして、ルイオスにとっても予想外だろうが周囲の土煙も消し飛ばされた事によって十六夜の姿は浮き彫りになっていた。
時間にして刹那にも満たない隙を、ルイオスは見逃さなかった。
「
上空から十六夜の背後めがけて落下するルイオス。
対して十六夜は拳を突き出したまま姿勢が崩れ、ルイオスが何処にいるかまだ把握出来ていない。
此れで互いの明暗は完全に分かれた。
獅子座の恩恵も星霊殺しの鎌が相手では分が悪い。
体内を脈打つ”何か”による光の力も全身に巡らせれる程制御も把握も出来ていない。
ライズもバーストもまだ咄嗟の対応が出来るレベルでは無い。
見様見真似による技も即座に出せる物では無い。
しかもルイオスは上を取り、十六夜は下に居る。
体勢的にも此処から迎え撃つのは不可能だ。
だが騙し合いで劣勢を取らされた十六夜の沸点は、そんな条理に降るほど柔ではない。
「上等だッ!!だったら、上下左右、
右手を包む淡い光は途端に光る紋様に変わる。
紋様は右腕から右頬まで広がる。
そのまま振り被った拳を、大地に突き立てる。
瞬間、大地震を錯覚させる程の衝撃が鉱山街全域にまで届いた。
十六夜が全力全開の本気で拳を叩き付けた岩盤は突き立てられると同時に粉滅し地殻にまで衝撃を届かせてヒビを入れる。
周囲はそれどころでは無く地割れかと思える勢いで瓦解していく。
山は傾き沈み、洞穴は各所で崩落が始まり、観客席にも岩石が幾つも落ちてくる事態に陥った。
それに対して誰よりも速く映司は動く。
オーズドライバーを腰に巻き付け、白のメダルを入れて、オースキャナーに読み込ませる。
「変身!!」
サイ!!ゴリラ!!ゾウ!!サゴーゾ!!サゴォォォォォゾ!!
サゴーゾコンボに姿を変えるなり、映司はドラミングする事で周囲の重力を操る。
それによって観客席に落ちる岩石を一つ残らず空中に留めさせる。
それを黒ウサギが”
「映司さん、ありがとうございます!!」
「いいよ、このくらい。観客の人達に怪我をさせるわけにはいかないしね」
更に何故かいたマンドラとサラも落石を砕いていく。
その頃、鉱山の貯水池では。
「変身」
ウォーター!!ドラゴン!!ザバザババシャーン、ザブンザブーン!!
晴人はウォータードラゴンに変身して白雪姫と共に、貯水池の水が街に流れてしまわないように堰き止めていた。
それに加えてドラゴタイマーで分身して、街の方もサポートしていた。
レティシアとクロアも彼らをサポートしていた。
白雪姫は苛立ちながら苦言を漏らす。
「ええい、主殿は加減を知らんのか!!」
「全くだ。今回は白雪殿と晴人がいたから何とかなったが、流石に反省して欲しい。一歩間違えたら大災害だ。
「キハハハハ!!ま、三分の一は俺様の空間跳躍のおかげだけどな!!」
「あいつに反省しろって言っても無駄だろうしな~」
彼らは苦言を口にしつつも、同時に十六夜のことを理解していた。
彼が本気の拳を振るわねばならないほどゲームに取り組めていることを素直に安心してもいるのだった。
◆◆◆◆◆
十六夜とルイオスの戦いに決着が付いたのは、全ての騒ぎが沈静化する少し前のこと。
右肩を激しく斬られた十六夜と、岩盤に叩き付けられたルイオス。
しかし立っているのは十六夜だった。
ルイオスの一撃は十六夜が大地に拳を叩き付けた衝撃で斬撃が鈍り、致命傷を与えるに至らなかった。
そして二度目の一撃を叩き込むことも無く、ルイオスは倒れ伏した。
ルイオスは脱力したまま倒れながらも、悔しそうに歯噛みをする。
「くそ………………くそ、くそ、また負けた…………!!此れだけの好条件で、捨て身まで何もかも全て上手くいっても、………………まだ、勝てないのか………………!!」
ドンッ、と地面を叩く。
ルイオスなりに決意を持って臨んだ一戦だった。
そうでなければ単独で一番の難敵である十六夜に真正面から挑み掛かったりはしないだろう。
前回のゾディアーツスイッチを使った状態での一戦より善戦はした。
だが、そんなことは何の慰めにもならない。
十六夜は肩で息をしながらその様子を見ていた。
ルイオスが言う通り、全ての面においてルイオスに天秤が傾いていた。
十六夜が倒れていなかったのは、基本能力がルイオスを上回っていたからに過ぎない。
それ程に際どい勝負だった。
_________しかし、本当にそれだけだっただろうか?
「……………………」
壁に凭れ掛かり、何かを言おうとして止めた。
此処まで格下に噛み付かれた経験が十六夜には無い。
それは格下が相手でも全力を尽くすのが十六夜の流儀だったからだ。
どんな相手にも万策を用意してゲームに臨み、その上で捻り潰してきたのではなかったのか。
ならば今回はどうだ?
逆廻十六夜はルイオス達に対策を用意していたか。
答えは否だ。
最近は道の先が不明瞭になり、自身の力にばかり目を向けていた。
(……………クソが。無様なのは俺の方だろうが)
万策を尽くしていない勝者が、善処を尽くした敗者に何を語れという。
お互いに惨めになるだけだ。
そのまま去ろうとした十六夜だったが、意外にも声を掛けたのはルイオスの方だった。
「覚えとけ………………次は…………………次は、必ず僕が勝つ。”ペルセウス”の名誉は、いつか必ず返してもらうからな………………………!!」
「________。」
滾る様な闘志を背中に受けて、首だけで振り返る。
其処にはもうボンボン坊ちゃんなど居はしなかった。
己の目標を見定めた一人の戦士が、万感の意思を込めて十六夜を睨み付けていた。
「……………ハッ。いいぜ、何時でも来い。好きなだけ相手してやるよ、星座の騎士」
言葉は自然と零れていた。
口元には愉しさを堪えられない笑みがあった。
随分と久し振りに本心から笑った気がした。
地盤がボロボロになるまで砕けた鍾乳洞を進んだ十六夜は、正面に立つ最後の敵を見た。
「…………最後はあんたか、門矢士」
「グリーの奴に順番を譲って貰っただけだ。お前が随分と苦戦してたから残りは五分程だぞ?」
そんなに経っていたのか、と十六夜は呟く。
体感からすればそんなに時間が過ぎ去ったようには感じられていなかったが、一刻近くルイオスと戦っていた事になる。
士はボロボロになった衣服を手で払う。
どうやら士は士でそれなりに手古摺ったらしい。
十六夜は士に向き合いながら何時か見た悪夢を思い出す。
自分と士が対峙し、黒ウサギの声を振り切って拳をぶつけ合い、それによって世界が崩壊していく悪夢を。
士とこうして対峙した事によってフラッシュバックしてくる。
まるで針が刺さったかの様に頭痛がする。
そんな頭を押さえる十六夜の姿を見ながら士は言う。
「色々悩んでいる様だが、そんな悩み俺が破壊してやるよ」
「は?」
「仕立てられた英傑とか、課せられた伝承とか何だか知らないがお前を縛る”運命”は俺が壊してやる。何て言ったって俺は破壊者だからな」
冗談めかした言い方に十六夜は思わず苦笑する。
十六夜としてはン・ガミオ・ゼダの件といい、魔神の件といい規格外の敵とそれに対する映司達や霧崎の対応。
自身の先を行くと思われる光景を散々見せ付けられて悩みが深まったというのにこれである。
解決へのピースも与えられてるのである意味でイーブンではあるのだが、苦笑したくもなる。
「あんたは何で俺に対してそこまでするんだ?」
三頭龍アジ=ダカーハとの戦いの後の対応全てを含めた上で言う。
士は少し視線を反らしながら答える。
「俺のかつての旅は世界の歯車を正しく回す為に仕組まれた物だった。そして、俺は使い潰された。今はこうして自由になってはいるけどな。そうして使い潰されるのは俺の様な奴で十分なんだ。お前のような奴はレールに乗らずに好きにした方がいいんだよ。旅の行先は自分で決める物だからな」
「ハッ、____」
今度こそ心の底から笑う。
ようは何だかんだ言ってただ、士がお人好しというだけの話ではあった。
自分のように潰されないように十六夜を導いているわけである。
ついでに、”運命”からは抜け出せて自分の道を進めるという前例でもあった。
「そうかよ。なら、いいか」
笑ながら十六夜は士から視線を外し、観客では無くこのゲームを見ている”ノーネーム”メンバーに向けて言う。
「俺はしばらく”ノーネーム”を離れる。箱庭って世界を思いっきり値踏みしてきてやるつもりだ。だから、その間は頼んだぜ」
言うことを言い終ると士の方に向き直る。
もう頭痛も悪夢もどうでも良くなっていた。
自分と士がぶつかった程度で壊れる世界ならその程度だったという事だろう。
それならそう値踏みするだけの話である。
「それじゃあ、始めるか」
「あぁ、_______”ノーネーム”所属、逆廻十六夜だ。覚悟はいいよな?」
「通りすがりの仮面ライダーだ。それは此方の台詞だ」
士は腰に巻いていたディケイドライバーを開きながら十六夜に向けて駆ける。
走りながらカードをディケイドライバーに投げ入れ、閉じる。
十六夜もそれに合わせる様に拳を構えながら士に向けて駆ける。
頭痛が酷くなるが、そんな物は意地で振り切る。
残像が重なり、士が完全に姿をディケイドに変えると同時に両者の右の拳が衝突する。
それだけで、空間が揺らぐ。
天地を揺るがし、時空を歪ませる力を持った両雄の最後の決戦の幕が開ける。
vsルイオス決着でした!
次いで士vs十六夜開幕です
士が十六夜を気に掛ける理由は色々あります
一つは三頭龍と十六夜の決着を見た事でもあります
それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!