問題児と000と弱者の箱庭物語   作:天崎

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反逆と高利貸しと動き出すモンスター

「完成だ!!これでまた私の野望が現実に近くなる!!」

 

蛮野は黒いドライブドライバーを前に歓喜していた。

復活よりそれなりに時間が経過し、メガへクスのシステムと言う縛りから脱出するのに手間は掛かったが解放されていた。

そして、自身の研究を押し進め新型のバンノドライバーを完成させるのだった。

 

「おや、蛮野博士。何か完成したのかい?」

 

「戦極か。貴様にはかんけ、グァ!?」

 

声を掛けられたと思うと同時に背中より斬り付けられていた。

まさかこのタイミングで攻撃されるとは想定しておらず傷が深々と広がる。

火花が散り、内部の構造が丸見えになる。

 

「何をする!?」

 

「しばらくの間観察したがどうにも君は期待外れだったようだ」

 

「なんだと…………………」

 

「ロイミュードも、ベルトも君の発明品は全て誰かの技術の延長線上じゃないか。新たな物を期待した私とは失望するしか無いわけだ」

 

「私を愚弄するつもりか!!」

 

「その点で言えば君はあの三流以下だ。興味もそそられないし用済みというわけだ」

 

「だが、私がいなければロイミュード関連の技術を、ゴブゥ!?」

 

戦極の方を向いた蛮野の胸を何者かの腕が貫く。

計算通りと言えばそれまでだがあまりにも事があっさり進み過ぎて戦極は更に失望の色を見せる。

コアを掴まれ、蛮野は苦しそうに呻く。

 

「その心配はいらない。君の代わりの人材は既に見付けているからね」

 

「YES。蛮野様(```)、後のことは私に任せてください」

 

「貴様……………まさか、004か!!」

 

「イグザクトリー!!貴方は使い捨てるつもりの駒に消されるのです」

 

「クリム・スタインベルトをコピーしたロイミュード。君が仕込んだ服従プログラムを排除した上で再生させて貰ったよ」

 

「馬鹿な!!そんな機械人形より私の方がよっぽど…………………」

 

「グッバイ!!」

 

そんな一言と共に蛮野のコアが握り潰される。

蛮野だった肉体は塵に変わり、握り潰されたコアの破片は新型バンノドライバーに吸い込まれていく。

004はドライバーを手に取り、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

「安心したまえ、蛮野。君の残した物は私が十全に利用し尽くすのだから」

 

「君には期待してるよ。今度こそ私が望む予想外の物を見せてくれると」

 

「ご期待に沿うことを約束しよう」

 

かくして蛮野は消され、004がその後釜として収まるのだった。

クリムの記憶と蛮野の悪意を併せ持った004は今は消えたとある未来の様に笑みを浮かべる。

自身の野望を成し遂げる為にかつての主人すら踏み台にして。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

五月晴れの朝。

西郷焔は絶賛逃亡中だった。

御門釈天の運転する車の中で経理報告書を整える。

孤児院の子供たちの為に買った大型テレビを誤魔化す必要があるのだった。

というわけで、久藤彩鳥には今捕まるわけにはいかないわけだ。

釈天と雑談しながら作業を進めているとあることに気付き、叫ぶ。

 

「って、危ない釈天ッ!!」

 

車が細い路地に向けて右折したその直後、それを遮るかのように黒い高級車が前に滑り込んできたのだ。

交通事故一歩手前の荒業に二人は同時に舌打ちを鳴らす。

だがその黒塗りの高級車が誰のものか分かった途端に天を仰いだ。

………………というか、近所でこんな高級車を乗り回す者など、二、三人しかいなかった。

 

「………………この馬鹿テル。追いつかれてるじゃん」

 

「許せ。プリトゥが運転手として雇われているのを忘れていた」

 

ハンドルに凭れ掛ったままげんなりとする御門釈天。

高級車の運転席からは白髪褐色肌のスーツの女性が降り、後部座席の扉を開ける。

すると、鈴の音のような軽やかな声が響いた。

 

「………いい天気ですね、先輩。釈天さん。絶好のドライブ日和かと思われます。それと、此方は鴻上会長から先輩へのプレゼントだそうです」

 

「______、」

 

エウリシングカンパニーの会長の娘であり、学校の後輩であり、そして西郷焔の飼い主である久藤彩鳥はそう言ってアタッシュケースを焔に手渡した。

風鈴のように涼やかで静謐な声で親しみの籠った言葉だった。

口元には静かな笑みも浮かんでいる。

だが、瞳は笑っていなかった。

今にも襲い掛かってきそうなほどにお怒りである。

獰猛なご主人様を前に焔は腹を括る。

 

「……………どうも、彩鳥お嬢様。これの中身は何ですか?」

 

「私も聞いてはいません。困った時に役立つ物とだけ」

 

鴻上会長とは鴻上ファウンデーションの会長である。

底のが見えず、真意も分かりにくい人物であり行動の意図が読めない事が多々である。

とは言っても意味の無い事はそこまでしないので何かしら意味はあるのだろう。

焔がどうにか話題を反らそうとすると彩鳥の目が更に鋭くなる。

 

「本題がそれで無いのは分かっていますよね?」

 

「まだ一時間経ってないですよ」

 

「今完成されていない経理報告書が一時間後に完成しているとは思えません。何か理由があると推測されます。……………話して頂けますね?」

 

冷ややかな視線に圧が籠る。

こうなるともう手が付けられない。

どんな理由を付けても彼女を言い包めることは不可能だろう。

なので、破れかぶれに玉砕粉砕上等であった。

焔は天を仰ぎ、額を叩いて観念したように頭を下げた。

必死に弁明し、頼み込んだ結果、彩鳥個人に貸し付け三つということで話が進んだ。

一連の流れに焔は困惑するがその間に経理報告書は奪い去られる。

処理は彩鳥からの贈与という形でされるのだろう。

後部座席の扉を開いた彩鳥は、シートを軽く叩いて乗るように催促する。

 

「さて、参りましょう。貸しの回収一つ目として、今日は鈴華と私をエスコートしてもらいます。よろしいですね、先輩」

 

パンパンと座席を叩く彩鳥。

一難去ってまた一難。

金で人徳の貸しを作るとは、流石は天下に名立たるエヴリシングカンパニーの御令嬢。

見事な高利貸しである。

こうなると、もうどうにもならない。

焔は三度目の天を仰いで苦笑いを浮かべた。

 

「…………了解。それで手打ちにしてくれるなら安い物ですよ」

 

「全くです。…………………ッ⁉」

 

彩鳥は何かに気付いたかの様に振り返る。

だが、そこにはただ路地が広がっているだけであり人の気配も無かった。

焔に気付かれないように釈天とプリトゥに視線を向けるが首を振られるだけだった。

 

「どうかしたのか?」

 

「いえ、気のせいだったようです」

 

一先ず気のせいだということにしておいて焔の方を向き直す。

その後、しばらく彩鳥が孤児院に泊まることになるのを告げ承諾を受けた。

焔が車に乗り込もうとすると、急に日差しに陰りがさした。

 

「…………あれ。随分と速い到着だな」

 

台風二十四号の東京到着は今日の夜と予測されていたはずだ。

幾らなんでも早すぎると思った焔だが、半日単位で気象庁の予測が外れるなどよくあることである。

だが御門釈天はその天候を、不穏な瞳で見上げた。

 

「此れは尋常じゃないな」

 

「荒れるかな?」

 

「ああ、大荒れだろうな。今夜は家に帰ったらもう出るなよ」

 

釈天はそれだけ告げると、愛車を走らせて颯爽と何処かに向かっていた。

焔も、なるべく早く帰った方がいいという程度の認識を頭の隅に置いておき、久藤彩鳥と彩里鈴華の買い物に付き合うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

何処かの暗闇。

軍服を身に纏った眼帯を付けた男が焔の写真を眺めていた。

 

「これがかの西郷博士の息子であり、粒子体の研究者である西郷焔か」

 

暗闇の中には幾つもの光る瞳が浮かび上がっている。

男以外にもこの場に複数の何かがいることは確かだった。

そして、何処からともなく男でも周囲の何かでも無い声が響く。

 

「ゼネラルモンスターよ。今回の作戦、貴様に任せていいな?」

 

「勿論です。お任せください、大首領。我らが必ずや西郷焔を捕らえ、その技術をネオショッカーないし大ショッカーの為に役立たせましょう」

 

「では、以後の作戦は貴様の好きにするがいい」

 

「ところで、大首領。魔神提督は何処に?」

 

「奴には別の任務を任せている。貴様には関係の無い事だ。まずは貴様の任務に集中するのだ」

 

「分かっております」

 

それを最後に通信は途切れる。

通信が切れたことを確認するとゼネラルモンスターは暗闇に潜む者たちの方に向き直る。

 

「聞いての通りだ。我らはこれより西郷焔捕獲作戦を開始する」

 

ゼネラルモンスターの声に合わせて、ヒャイー!!やケイー!などの鳴き声が響く。

ゼネラルモンスターは淡々と作戦を説明していく。

作戦自体はシンプルな物だった。

台風に乗じて孤児院を襲撃するというだけの作戦だ。

だが、現在来ている台風の規模を考えれば有効な手段ではあった。

 

「作戦の決行は今夜だ。各地持ち場に付いて待機しておけ」

 

そうして暗闇に隠れていた気配は散り散りになる。

更に数人には西郷焔の監視を任せておく。

指示を出し終えるとゼネラルモンスター本人の気配も消えるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「へぇ、今動いているのはネオショッカーか。まぁどんな組織かは知らないけど僕が介入するまでも無い規模かな」

 

とある路地裏にて長髪の男が呟く。

彼の周囲には黒タイツの者が、ネオショッカーの戦闘員アリコマンド達が転がっていた。

無残な死体となったそれらから記憶を読み取りながら長髪の男は興味を無くしたかの様に落胆した表情を見せる。

期待外れの予感がするものの長髪の男はあえて観察を続けるのだった。

目当ての物が現れるのを期待して。

 

 




ラストエンブリオ編第二話にして実質の第一話でした
とはいえ、焔パート短いですが

平成二期の世界が融合しているので鴻上ファウンデーションも普通に存在します
詳しくは活動報告を見てください

それでは、質問があれば聞いてください
活動報告にて設定纏めてます
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