ついにあいつ登場です!
完全に撃破するまでは行ってないがミノタウロスは崩れ落ちる。
息も絶え絶えで起き上がるのも難しいだろう。
伊達は息を吐いて軽く力を抜く。
ミノタウロスに近付き、どうにか拘束しようと画策する。
そんな時だった。
積乱雲から何かが吐き出されてミノタウロス近くに叩き付けられる。
「何だ!?」
伊達は困惑しながらも落ちてきた物体に目を向ける。
落ちてきたのは大戦斧だった。
数人がかりでなければ持ち上げられないであろうサイズの大戦斧はまるで太陽のように輝いていた。
瀕死のミノタウロスが大戦斧を掴み取る。
それだけで事態が急変したのを伊達は察した。
筋骨隆々の身体に数倍の力が宿り、先程までの傷は瞬く間に癒えた。
「何がどうなっている?」
伊達は疑問に思いながらもバースバスターを再び構え直す。
先手必勝とばかりに光弾を放つがその悉くが大戦斧の軽い一振りによって弾き飛ばされる。
その様子を見て分が悪いことを察する。
だが、距離を取る間など無かった。
一気に距離を詰められる。
振り降ろしはギリギリのところで回避する。
けれど、直後に大戦斧が横薙ぎに振り回される。
「ぐぅ!?」
さすがに回避のしようが無く弾き飛ばされる。
校舎の壁を突き破っても勢いは収まらず突き刺さる。
そのまま崩れていく校舎の瓦礫に埋もれるのだった。
◆◆◆◆◆
激しい音と共に校舎が崩れるのを焔は見た。
応急処置をする為に第三学研に向かっている途中だった。
背後から激しい音が聞こえて振り返った時にはもう後者は崩れていた。
「一体…………何が……………」
呆然とする焔の前に巨体が降ってくる。
大地を揺らし、伊達が足止めしているはずのミノタウロスが焔の前に立ち塞がる。
本能的に逃げることは無理だと察する。
無意識の内に彩鳥を庇う。
ミノタウロスは無抵抗になった獲物にも容赦はしない。
大戦斧が大きく振り上げられる。
西郷焔は振り上げられた大戦斧を睨み______次の瞬間、死を覚悟した。
◆◆◆◆◆
「…………………
◆◆◆◆◆
______そして。
その背中は、一陣の風と共に現れた。
「……………え?」
焔は素っ頓狂な声を上げて視界に現れた背中を見上げる。
刹那の視線を覆したその俊足は、疾風迅雷と喩えても尚形容しきれない。
人間の知覚速度を遥かに超えた俊足で現れた男は、人間の三倍はあろうかというミノタウロスが振り下ろした戦斧を、
何故輝いているのかはさっぱりだが、おそらく校舎すら簡単に崩壊させた怪力を身じろぎ一つせずに受け止めていた。
だが、焔が本当に驚いたのは其処ではない。
自分より背丈が高く、鍛えられた背中。
共に背丈が変わっているから、幼い頃に見たものとは若干違って見えただろう。
しかしたとえ姿形が変わったところで、それが誰なのか見間違えることなどない。
首には、五年前に渡しそびれたはずのネコミミのヘッドホンがぶら下がっていた。
頭の片隅で、この窮地を救えるのは状況的に彼だけだと分っていながら、この人だけは絶対に駆けつけないだろうと思っていた_______そんな、在りえるはずのない背中。
西郷焔を庇った彼_____逆廻十六夜は、戦斧を受け止め憤怒を込めて言い放った。
「…………………テメェ。
◆◆◆◆◆
呆気にとられた西郷焔だが、それは一瞬のこと。
ミノタウロスとの間に飛び込んできた逆廻十六夜に、彼は怒声をぶつけた。
「お______遅いッ!!今まで何してやがったイザ兄ッ⁉」
「ハッ、三年ぶりの第一声がそれか!!お前こそ何してるこんな場所で!?」
「見りゃ分かるだろッ!!牛畜生に襲われてるんだよッ!!あと再会は五年ぶりだ、間違えるな馬鹿野郎!!」
緊張の糸が切れたように畳み掛けて吠える焔。
確かに、怪牛に襲われているのは一目瞭然だ。
だが聞きたいことの本質は其処では無い。
他にも聞きたいことは多々あったが、今はその時ではないと共に理解している。
互いに言いたいことを端的に述べた後、二人は全く同時に行動を起こした。
「俺がこの牛の相手をする!!お前はすぐに逃げろ!!」
「逃げるけど、後輩の応急措置が先だ!!彩鳥の容体が危ない!!」
あん?と怪訝そうな声を上げて首だけ振り返る。
「……………なるほど。聞こえたか、鈴華!!」
「あいさ!!」
何処からともなく彩里鈴華の声が響く。
それと同時に、その場から焔たちの姿が消えた。
二人の姿が消えると十六夜は右腕の輝きを消す。
身体を螺子の様に捻り、真正面に向けてミノタウロスの鳩尾を輝く右足で蹴り抜いた。
直後にミノタウロスは内から弾けるような衝撃に襲われる。
そうして怯んだところに拳を振り上げる形で叩き込む。
ミノタウロスの巨体を宙に浮かせ、その状態で蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。
あの巨体を宙に浮かすことも、吹き飛ばすことも人間の身体能力とは思えない剛力だが、十六夜は特に誇ることも無く肩を回して仁王立ちする。
「ようやく再会したな、
力の制御が出来ていることを確認しながら、吹き飛ばした方へと突き進む。
あの程度で止まる相手ではないことは重々承知している。
ミノタウロスは絶叫を上げて襲い掛かってきた。
『GEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa___________________!!』
土煙を纏めて吹き飛ばしながら奔る戦斧。
先程までとは遥かに速く強靭な一撃。
恐らくは怪牛の腕力というより、この戦斧そのものが力の根源なのだろう。
対する十六夜は徒手空拳。
避けるかいなすかしなければ、五臓六腑を撒き散らして砕けるのは必定だ。
しかし十六夜は身を守る素振りすら見せず、
「ハッ______しゃらくさいッ!!」
_____
『GYaaa……………!?』
短い閃光と共に戦斧が大きく弾き飛ばされる。
ミノタウロスは初めて感情的な鳴き声を発する。
もし言葉に出来るのならば「そんな馬鹿な!?」とでも言いたかっただろう。
加えて今起きたことは決して比喩ではない。
十六夜はミノタウロスが全力で振りかぶった一撃を拳で受け止めて、まるで何かが爆裂したかのような閃光と衝撃と共に弾き飛ばしたのだ。
『_______!!』
勢いを抑え込まれるどころか跳ね返されたミノタウロスは、痺れる両腕を抑えながら即座に飛び離れる。
だが、それで逃がす十六夜では無い。
飛び離れるとほぼ同時に十六夜も踏み込んでいた。
十六夜も十六夜で拳が痺れているが、その上で構える。
「大した一発だが、残念だったな。お前が金牛宮を司るように、俺は獅子宮を預かってる。おかげさまで
『…………!!』
ミノタウロスが更に距離を取ろうとする前に輝く拳がその体に突き刺さる。
内から弾け突き抜けて行く衝撃と共にミノタウロスは地を何度か跳ねるようにして吹き飛んだ。
「ついでに、お前の動きは見えてるぜ」
指先で挑発する十六夜。
血を吐きながらもミノタウロスは起き上がる。
牛の表情からは分からないが、得心はしたらしい。
戦斧を構え直して、出方を窺う素振りを見せる。
(……………………?おかしいな。以前は知性が無い様子だったが)
何か劇的な変化でもあったのか________しかしその思考が答えを出す前に、ミノタウロスは咆哮を上げて襲い掛かる。
だが、何度も同じ斬撃を繰り返すほど愚かでは無かった。
瓦礫の山に突進したミノタウロスは巨体と戦斧を生かし、周囲の瓦礫を纏めて吹き飛ばして襲ったのだ。
「お………………………!!」
意外な戦術に思わず声を上げる。
瓦礫の弾丸は何かしらの装甲の破片を巻き込んで十六夜に飛来する。
それぞれ一つ一つが建物を破壊するほどの威力があるだろう。
故に十六夜は_____消し飛ばすことにした。
「
十六夜の腕の輝く紋様が腕全体に纏う様な物から直線的な物に変容する。
一喝と共に構えを取ってから放たれた拳が瓦礫の山に触れる。
その瞬間、目を眩ます様な光が広がる。
一瞬にして真正面の瓦礫全てが光に包まれて消滅した。
ただ破壊のみをプログラムされた
当然ミノタウロスも射程範囲内である。
『GEEEEEEEYAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaa………………!!』
「よしよし、段々と畜生らしい悲鳴になってきたじゃねぇか。…………………ったく、大人しく
唇を歪ませて笑みを作る逆廻十六夜。
彼は今、珍しく本気で怒っていた。
だがそんな問いにミノタウロスが答えを返せるはずもない。
全身から血を流しながら尚も闘志を緩めないミノタウロス。
十六夜も拳を握りこんで臨戦態勢に入る。
はい、十六夜vsミノタウロスでした!
伊達さんは性能差で負けたというより敵性能がいきなり跳ね上がったせいで対応できずに負けた感じです
十六夜の新技については後々
それでは、質問があれば聞いてください
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