問題児と000と弱者の箱庭物語   作:天崎

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今年の夏映画も中々良かったです
夏映画の先行登場のエグゼイドは派手でした
ゴーストは無双は無いけど良い話ではありました

それでは、本編です


メールとナメクジと異世界召喚

一方の西郷焔と久藤彩鳥は、第三学部研究室の部屋の中心に来ていた。

意識が朦朧としている久藤彩鳥だが、先程体感した現象に驚嘆の声を上げた。

 

空間跳躍(テレポーテーション)……………………!!まさか、これを鈴華が…………………………………?」

 

「彩ちゃん、大丈夫!?」

 

彩鳥が驚いてる中、今度こそ見間違いが無い形でその兆帖を目の当たりにする。

この第三学研には焔と彩鳥の気配しか感じられなかったはずなのに突如、彩里鈴華が目の前に姿を現したのだ。

 

「鈴華………………貴女は今、何を」

 

「そんなの後だよ後!!今は止血が先!!焔、包帯で何とかなる!?」

 

「それだけじゃ無理だ!!針と消毒液、あと室長の机の下にある箱を取ってくれ!!」

 

「了解!!針と消毒液はコレ!?」

 

虚空から次々と現れる医療器具。

鈴華が右手を無作為に動かすと、左手の下に次々と医療器具が姿を現しているように見える。

彩鳥は益々以て驚愕した。

 

(これは……………………只の空間跳躍(テレポーテーション)ではない……………………!?)

 

「彩鳥。麻酔して縫合するから、軽く服を剥ぐぞ。我慢してくれ」

 

その間も手際よく応急処置を続ける焔。

臓器に傷が入っていないことを確認して安堵するものの、流した血が多すぎる。

外が大雨だった為、血がどんどん流れてしまったのだ。

次の行動に移ろうとした時だった。

窓に大量のナメクジが張り付いていることに気が付く。

 

「何だ、一体……………」

 

奇妙な状況に困惑していると煙が発生する。

同時に張り付いていたナメクジ達が一つになって人型に変わる。

怪人が擬態していたのだ。

 

「俺はネオショッカーの怪人、ナメクジン!!我々と一緒に来てもらおうか!!」

 

ナメクジンが叫び声を上げながら要求する。

焔はバースバスターを構え、鈴華も何時でも能力を使用出来るように構える。

敵がどういう存在なのかは分からないが自分たちを狙ってることは確かだ。

そして、ついていけばどうなるかも明白だった。

ゆえに抵抗の構えを見せる。

それでも怪人は構わないという様子だった。

アリコマンドが怪人の背後から湧いてくる。

 

「無駄な抵抗はよせ。貴様たちはもう逃げられないのだ!!」

 

「そいつはどうかな?」クレーンアーム!!

 

そんな声と共にクレーンが伸びてくる。

そのままナメクジンとアリコマンドを縛り上げる。

 

「何だ!?」

 

「助っ人参上!!ってな」

 

乱入してきた伊達はナメクジン達を縛ったままクレーンアームを振り回す。

その勢いでナメクジン達は第三学研の壁を突き破って外に放り出される。

 

「遅れて悪いな」

 

「伊達さん、無事だったんですね!!」

 

ミノタウロスが焔たちの前に現れたのでてっきりやられたのかと思っていたのだ。

伊達の無事を確認して安堵するように焔は息を吐く。

 

「まぁちょっと苦労したけどな。今度こそ敵は俺に任せておけ」

 

そう言って伊達はナメクジン達を放り投げたことによって出来た穴から飛び降りる。

実際のところは装甲にヒビが入ってたりしたのだが、暗さゆえに焔たちは気付かなかった。

伊達も特に問題は無かったので、余計な心配を掛けないために場所を移したのだった。

焔は気を取り直して彩鳥の応急処置を続ける。

 

「輸血しないとまずい。すぐに病院に運ぶぞ、鈴華」

 

「あー…………………………それは難しいかも?」

 

何?と予想外の声を上げる焔。

 

「………………何故?お前の物体転移(アポート&アスポート)ならわけもないだろ?伊達さんやイザ兄が牛畜生やナメクジ野郎を抑えてくれてる今しか逃げられないぞ」

 

「私も初めはそう思ったんだけど…………………校舎から出た途端に、落雷に狙い撃ちされてさ。イザ兄が助けてくれなかったら黒焦げになってたと思う」

 

鈴華の言葉に、怪訝な顔をする焔。

半信半疑ではあるものの、落雷に襲われるというのなら、迂闊に研究室を出るわけにもいかない。

 

「仕方ない。造血剤を使おう。あともう一つ、これはエヴリシングカンパニーから預かっている貴重な研究対象なんだが………………命に関わる状況だ。御目こぼししてくださるとありがたいぞ、彩鳥お嬢様」

 

「……………ええ。先輩にお任せします」

 

そう言って取り出したのは不透明な液体が入った三つの円形カプセル。

カプセルの表面には第三種星辰粒子体(3S. nano machine unit)と書かれていた。

 

(三つしかない貴重な”原典(オリジン)”だが、お嬢様の命がかかっている。背に腹は替えられない)

 

その内の一つを注射器で吸い上げて彩鳥に注入し、残り二つを上着の中に隠す。

一先ずこれで応急処置が終わったと安堵する焔。

だが休む暇も無く、今度は落雷が研究室の窓を貫いた。

 

「っ、二人とも伏せろ!!」

 

砕けたガラスの破片が一体に飛び散る。

軽く混乱状態に陥る焔だが、そうも言っていられない。

研究室の机に隠れながら雷雲を見上げ、様子を窺う。

そこで、この夜で最大の驚愕を得た。

 

(積乱雲が………………牛の形をしてる………………!?)

 

生き物のように蠢く積乱雲。

全長にして数十㎞はあるだろう。

その姿、その現象が自然界に於いて有りえないものだと悟るまでそう時間はかからなかった。

しかも最悪なことに、積乱雲の牛は焔たちが隠れている研究室を睨んで敵意を露わにしている。

 

「……………………なんてこった。あれじゃ本当に”天の牡牛”じゃねぇか………………!!」

 

台風二十四号”天の牡牛”。

その皮肉的な名称に歯噛みする焔。

必死に策を練るが、ワイルドカードは全て使い果たした。

彼に打つ手はない。

万策尽きたと思われた時________彩鳥が、声を上げた。

 

「………………先輩。手紙は届いていませんか?」

 

「は?」

 

「手紙です。こんな時の……………最後の脱出装置として、貴方に届いているはず………………!!」

 

_____手紙。

そういえば今朝から彩鳥も釈天も同じことを言っていた。

焔の許に何かしらの”絶対にありえない(´´´´´´´´)”手紙が届いてはいないか、と。

その言葉を受けて焔は記憶を探る。

そして、一つのメールを思い出す。

第三学研のメンバーにしか教えられていないはずのメールアドレスに届いた、差出人不明のメール。

 

「くそ、間に合えッ!!」

 

携帯を取り出してメール欄を探す。

”天の牡牛”は巨大な積乱雲を纏ったまま急速に降下してくる。

それは比喩では無く、正に天が落ちてくるかのような光景だった。

メールボックスの中からようやく見つけた焔は、文面を確認しないまま連打する。

すると三人を包み込むような極光が周囲を満たした。

だが”天の牡牛”は怯むことなく天を地に落とす。

直後、三人のいた第三学研は爆撃にでもあったかのように跡形も残らずに砕け散った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

気が付けば彩鳥は漆黒に包まれた空間にいた。

 

「ここは…………?」

 

周囲を見渡しても何も無い。

自身の姿を見ると傷や汚れが消えていた。

現実感が薄い空間故に現状を一切把握出来ずにいた。

 

「ふむ、どうやら違ったようだな」

 

「貴方は…………………」

 

突然声が聞こえ、そちらを振り向くと奇妙な姿をした”何か”が宙に浮いていた。

人型ではあるが、人間のような気配を感じない。

”何か”は思案するように彩鳥を観察していた。

 

「時空の揺らぎを感じたから干渉してみたのだが興味本位で手を出す物では無かったな。そもそも奴に時空を移動する力は無いのだから当然なのだが」

 

”何か”は彩鳥を無視してぶつぶつと呟く。

聞こえてくる声は女性の物だった。

 

「まぁいい。余り面倒ごとには関わりたくは無いが拾った物は拾った物だ」

 

言いながら彩鳥の方へと近付いてくる。

彩鳥は警戒して構えるが関係ないように進んでくる。

 

「貴方は何者なんですか?」

 

「ただのサイキッカーさ。この姿ではネメシスQと名乗った方がいいかな?」

 

聞いたことも無い名だった。

転生前ですら聞いたことが無いのだ。

今の彩鳥が知る余地も無い。

 

「知り合いの知り合いがどうも別の世界にいるようでな。私の世界にまで揺らぎを届かせる者ならもしやと思ったわけだが違ったようだ。もしかしたら、そちらの世界に私の世界の住人がいるのかもしれないな」

 

「つまり、私が此処にいるのは偶然ということですか?」

 

「そうだな。謝っておこう。………………まぁついでだな。どうやら才もあるようだし切っ掛けは与えておこう」

 

「何をする気ですか!?」

 

「ただの詫びだよ。お前のPSIを目覚めさせるだけさ」

 

ネメシスQが腕を伸ばして彩鳥の額に触れる。

それだけで頭に何か電流が流れたように感じた。

脳の回路が変わったかのような感覚だった。

同時に意識が遠のいていく。

 

「これは一時の夢のような物だ。私が開放すれば即座に意識が肉体に戻る」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

再び視界が変化する。

彩鳥は急な変化に困惑しながらも首位を見渡す。

薄暗かったはずの夜の帳は燦々とした太陽の光に解け、まるで舞台に知らせるかのように眩い世界が瞳に映る。

大気が頬を擦るように激しく通過していく。

だがそれは突風によるものではない。

西郷焔、久藤彩鳥、彩里鈴華の三人は…………地上4,000mほどの地点から、自由落下していたのだ。

 

「なっ!!」

 

「わっ!?」

 

「っ……………!!」

 

眼前には見たことのない風景が広がっている。

天を衝くかと錯覚させるほどの大樹。

その幹を寄生木にする巨大な怪鳥や、根元に広がる水上都市。

落下に伴う圧力に苦しみながらも、西郷焔と彩里鈴華の二人は同様の感想を抱き、同様の驚愕を胸に抱く。

 

「ど…………何処だ此処!?」

 

二人の混乱、此処に極まる。

流石にこの展開は予想していなかった。

何よりこのまま自由落下していけば水面に叩き付けられて即死するのは目に見えている。

______だが心配することは無い。

来訪者が大地に辿り着く直前に緩衝の恩恵が働くことを、久藤彩鳥だけが知っていた。

 

(ああ……………………やはり、この世界に帰ってくる運命なのですね……………………)

 

先程の妙な干渉は置いておき只一人、静謐な瞳で全てを受け入れて達観する彩鳥。

 

 

そう______三人が呼び出された世界は、完全無欠に異世界だった。

 

 





異世界召喚回でした!

ネメシスQが介入してきたのは時空移動による”世界”の揺らぎを直接感じ取ったがゆえです
本来なら十六夜の世界→箱庭の移動でPSYREN世界まで揺らぎが届くことは無いのですが色々とあって届くようになった感じです

それでは、質問があれば聞いてください
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