問題児と000と弱者の箱庭物語   作:天崎

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落下と救出作業と鴻上の誘い

自分たちを狙う襲撃者の存在にも気付かずに焔たちは落下していく。

気付かないのも無理は無い。

距離はあり、今は落下への対処で一杯一杯だったのだから。

焔の提案によって鈴華の力を使い、自分たちを180度方向を変えさせることで落下エネルギーを軽減しようと試みた。

結果的に上手くいって相殺自体には成功した。

ただし、鈴華だけは反転が上手くいかず、水面に対して平行に飛んでしまう。

 

「わひゃあ!!」

 

結果、水面を水切り石の様に転げまわって悲鳴を上げた。

肩口から落ちて水面を二回バウンドした鈴華は、幸運にもその勢いで川辺に押し上げられる。

そこに一人の男が駆け寄っていく。

 

「大丈夫か?」

 

「私よりも…………ケホッ、……二人を………………」

 

激しく打ち付けられて咳き込みながらも駆け寄った男に大河に落ちた二人を頼む。

男は命に別状が無いのを確認すると静かに鈴華を降ろして立ち上がる。

懐から取り出した指輪を装着しながら男は軽く言うのだった。

 

「任せな。俺は魔法使いだからな」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

大河に落ちた二人は完全に勢いを殺すことは出来なかったが、幸いにも水面の下にあった柔らかい何か(´´)に助けられた。

生物的な柔らかさだったが確認する暇は無い。

誤算は大河の流れが速く、深度が予想より深かったことだろう。

伊達より渡されたアタッシュケースの中身があればどうにか出来たかもしれないが今は鈴華の傍に転がっている。

何よりあったとしても取り出す暇は無かっただろう。

一人ならともかく意識を失っている彩鳥がいてはそこまでの余裕は生まれない。

何より担いだままでは岸まで泳げない。

激しい水流に流される中、焔は岸に向かって必死に泳ぐ。

このままでは彩鳥の容体はどう転ぶか分からない。

一刻も早く体を乾かす必要があったが、この状況ではまず焔が助からない。

 

(流れが…………速すぎる……………………!!)

 

河の水を飲み、歯噛みしながらも必死に体を動かす。

限界を超えて有りっ丈の力で水を掻く焔。

いよいよ覚悟を決めなければならないかと走馬灯が過ぎった途端______妙な音声が聞こえてくる。

 

バインド、プリーズ

 

(な、何だ……………!!)

 

リキッド、プリーズ

 

突然魔法陣が浮かび上がったと思うとそこから水の鎖が飛び出して焔たちを大河から引き上げる。

更に大河の上を半液体状の何かが駆け、焔たちに近付いてくる。

そのまま焔たちを掴むと岸にまで一気に運ぶ。

全く理解出来ない光景に呆然としてされるがままになる。

岸に押し上げられると焔の手が優しく包まれる。

 

「大丈夫ですか!?」

 

聞いたことのない少女の声が聞こえてくる。

焔の手を掴んだのは少女なのだろう。

だが、先程の現象を彼女が起こしたかどうかは分からなかった。

喘ぎながら岸に寝そべると、土の香りと日差しの暖かさが嫌味なくらいに心地好く感じた。

________兎にも角にもこれで一息つける。

助かったという安堵と共に、焔は急激に意識が遠くなるのを感じた。

しかし此処でふと、自分たちを助けてくれたであろう人物に礼を告げてないことを思い出す。

せめて一言だけでも礼を告げようとして奮起する。

だがそこで、本日最後の驚きが襲った。

 

「危ないところだったな」

 

『私の……………私の頭の上に墜ちてきたのは誰だああああああああああ!!』

 

自分たちを引き上げた半液体状の物体が鎧を纏った人型に変わる。

それとほぼ同時に大河から超巨大な蛇の鎌首が上がる。

先程川底で当たったのはあの大蛇の頭だったのだ。

最早反応を示すだけの力も無い焔は、皮肉気に笑うしかない。

 

「お待ちください、白雪姫様!!おそらく彼らは召喚されたばかりで_____」

 

少女が体を張って大蛇を説得する傍らで鎧を纏った何者かの姿が変わっていく。

鎧は一瞬で霧散し、青年の姿に変貌したのだ。

バースシステムと似たような物なのかと思いながら朦朧とした意識を少女に向けて見上げる。

腰元まで伸びた青色の髪は、柔らかい月の光を彷彿させる。

彼女は、体の一部が明らかに人間と異なっていた。

 

(……………)

 

頭上に生えた長い突起物(ウサミミ)

短い尻尾。

青味のかかった長い髪。

僅かに見えたそれだけのシルエットでもうツッコミ処が満載なのだが、ツッコむ間もなく其処で意識が途絶える。

 

「救出のお手伝いありがとうございます、晴人さん」

 

「頼まれたし、見たからにはほっとくわけにもいかないしな。それで彼らは何者なんだ?」

 

「流石の黒ウサギでも状況が良く掴めないのですが。このキャットな耳当てを見る限り、十六夜さんのお知り合いということでいいのですよね?」

 

『それにしては随分とひ弱だがな。一応鍛えてはいるようだが。まあ、放置しておくわけにもいくまい』

 

三人とも頷き合う。

大蛇も怒ってはいるが、捕って食おうというわけではないらしい。

バニーガール姿の少女______黒ウサギと自称する少女と、自称魔法使いの青年と、白い大蛇は、焔と彩鳥、そして鈴華の三人の背負うと、天を見上げて一路、巨大な大樹の下へと歩き始めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

_____宝永大学付属学園中等部校舎。

校舎の壁に張り付くナメクジンに向けてバースバスターから光弾が放たれる。

ナメクジンは器用に動いて回避していくが、伊達の狙いはそこでは無かった。

ナメクジンが張り付いていた校舎の壁が崩れ始める。

光弾は元より壁を崩すために放たれていたのだ。

ナメクジンは落下しながら溶解液を下にいる伊達に向けて吐き出す。

 

ショベルアーム!!

 

伊達はショベルアームを展開するとそこそこ大きい瓦礫を掴み上げ、ナメクジンに向けて放り投げる。

それが溶解液に対する盾となる。

溶解液は全て瓦礫に降り掛かり、瓦礫は瞬く間に溶けて無くなる。

そこからナメクジンは更に溶解液を吐き出そうとするが、伊達の方が動きは速かった。

瓦礫によってナメクジンの視界が塞がれている間にバースバスターの先端に下部のメダル入れをセットしていた。

銃口にセルメダル数枚分のエネルギーが凝縮されていく。

 

「これで終わりだ、ナメクジ野郎!!」セルバースト!!

 

凝縮されたエネルギー弾が放たれる。

空中のナメクジンに躱しようは無い。

エネルギー弾と共に空へと打ち上げられていく。

 

「ネオショッカーに栄光あれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ナメクジンは断末魔を残しながら花火のように空中で爆散するのだった。

それを見届けて伊達は変身を解く。

バースの装甲が霧散して元の姿に戻るのだった。

ちょうどそこに里中が現れる。

 

「そちらは終わったようですね」

 

「焔達はどっかに消えちまったけどな」

 

「そちらは想定内です」

 

「里中ちゃんはどうして此処に?会長から何か伝言でもあるのか?」

 

「伝言はありますが伊達さん宛では無いです」

 

「じゃあ誰だ?」

 

「彼らです」

 

里中が指さした方を見る。

そちらには何故か大嵐が消えた澄み切った空の下で瓦礫の上に座る少年とその向かいに立って話している男がいた。

片方には伊達も見覚えがあった。

 

「伊達さんは一旦休んでいて貰っても構いませんがどうします?」

 

「俺も行く。どうやら焔達と無関係じゃ無さそうだしな」

 

そうして二人は目的の人物たちの方へと歩いていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「よう、釈天。こんなところで何をしてんだ?」

 

「伊達に、里中か。そりゃこっちの台詞だぞ」

 

「知り合いか?」

 

「一応な」

 

伊達と里中が来た頃には二人の話も大体纏まっているところだった。

伊達と里中は十六夜に軽く自己紹介し、十六夜も名乗ると本題に入る。

 

「会長からお二人に伝言です」

 

「俺はともかく十六夜にもか?」

 

「えぇ、確証は無いですがおそらく関係はあるかと」

 

言いながら里中は小型モニターを取り出す。

電源を入れると男の顔を映し出す。

モニターにもカメラが付いている辺り、リアルタイムで通信しているのだろう。

 

「あんたが鴻上か?」

 

「そうだ、私が鴻上ファウンデーション会長の鴻上だ」

 

「何の用だ?俺としては鴻上ファウンデーションとは一切関わりが無い気がするんだが」

 

「それは当然だ。今から関係を作るのだからね。いや、ある意味では私たちと君はそれなりに関係ありそうなんだがね」

 

「どういう意味だ?」

 

「此方の話だよ。それよりビジネスの話をしようか」

 

「ビジネスだと?何を企んでいる?」

 

「別に企んではいないさ。私としては君の弟である焔君とは協力関係にあるので君とも協力したいだけさ」

 

「あんたと焔の関係はともかく俺にどう協力するつもりだ?」

 

十六夜としては焔との関係も気になりはしたが、そこは本人たちの問題であるのであまり踏み込みはしない。

だが、鴻上と名乗ったこの男は十六夜の事情を大なり小なり知っているかのような口調だ。

釈天関係ならともかくこの男の様な存在が箱庭を知っているとは考えにくい。

だからこそ、警戒を見せる。

 

「君が焔君達と追い掛けていた怪物を追う手伝いをしようじゃないか」

 

「それであんたに何のメリットがあるんだ?」

 

「私の知り合いが数人ほど数年前から姿を消していてね。どうもそれが君と似たような状況なんだよ。だから、少しでも手掛かりが入ればいいのさ」

 

「………………」

 

理由としてはそうおかしくない。

話を聞くとその知り合いは十六夜とほぼ同時期に姿を消したらしい。

全世界に情報網があるらしいこの男が見付けられない辺り、異世界に消えた可能性も前例的にあるにはあるらしい。

だが、どうにも胡散臭さが出ているのだった。

十六夜がどう返すか迷っていると釈天が割り込んでくる。

 

「悪いが今は此方だけで解決させてくれ。本当に力が必要になったら連絡する」

 

「そうかい。君がそういうなら私はそれで構わないよ」

 

「話が早くて助かるよ」

 

「では、里中君。話は終わりだ」

 

「分かりました」

 

里中はモニターをしまうと名刺を十六夜に渡して立ち去っていくのだった。

伊達も鴻上と話があるようで里中の後を追うように走っていく。

十六夜は、釈天に視線を向ける。

 

「良かったのか?」

 

「良いも何も鴻上の様子的に今回は顔見せがメインだ。話に乗っかる必要は無い。それに…………」

 

「それに?」

 

「あいつに借りを作ると後が面倒だ」

 

「そういう事か。なら、あいつらに協力を仰ぐのは最後の選択肢ってわけか」

 

「一応選べる範囲内の選択肢ではあるけどな」

 

「それにしても鴻上ファウンデーションに、エヴリシングカンパニーか。よく伝手があったな」

 

「前者は勝手に寄ってきただけだ。後者はそりゃああの会社は……………ああ、そうか。お前はまだお嬢様に会ってないんだったな」

 

はあ?と声を上げる十六夜。

釈天はニヤニヤ嫌らしい笑みを浮かべながら歩き始めた。

 

「兎にも角にも、現状の把握が最優先だ。今後も含めて作戦会議をするぞ」

 

「いいけど、どこで?会社?」

 

「それもいいけど、あそこ汚ねぇからな。カナリアファミリーホームを借りて、明日にでも方針を固めよう」

 

_____ピクリ、と片眉を歪ませる十六夜。

何か言いたいことがある様子だったが、特に文句を言う事も無く後に続く。

二人は解決に向けてカナリアファミリーホームに歩き始める。

其処でふと、十六夜は天を仰いだ。

 

(そういえば…………………焔たちは、箱庭の何処に落ちたんだろう……………?)

 

 




十六夜サイドには鴻上会長が乱入してくるのでした

十六夜的にも鴻上ファウンデーションは聞き覚えが無い感じです
それでも大企業とは察せるあれこれがあるのです

それでは、質問があれば聞いてください
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