問題児と000と弱者の箱庭物語   作:天崎

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今週は遅れました!



再度の接触と返却の武具と嵐を貫く一矢

アステリオスと白額虎は精霊列車側の思わぬ反撃に苦戦していた。

周囲で起きている戦闘が突入の邪魔にならないと判断して乗り込もうとした時だった。

甲板に弩砲が現れ一斉掃射をしてきたのだ。

それだけならば問題は無かった。

それだけならば。

反撃しようとした弩砲は消え、回避したはずの弾が自身たちを囲んでいたのだ。

その数は徐々に増えていく。

対処に追われ、甲板に足止めされるのだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

敵を翻弄しているのは久藤彩鳥の策だった。

鈴華の恩恵を利用して弾を送り込んでいるのだ。

 

「遠くないうちに種がバレるとは思いますが、これでしばらく時間が稼げるはずです。この間に霊脈の中に入ってしまえば超加速が始まり引き離せるはず」

 

「……………。そっかー。彩ちゃんは物知りだねえ」

 

何気ない笑顔と言葉に彩鳥の鼓動が跳ねる。

今のは失言だった。

彩鳥の今までの言動を鑑みても、彼女が箱庭の関係者だと気が付くのは時間の問題だろう…………というか、そろそろ秘密を守るのも限界だ。

今のままでは彼女もやりにくいし、何より鈴華や焔に秘密を造っているのは心苦しい。

誤魔化すように踵を返した彩鳥はラプ子Ⅸを鈴華に預け、前方の車両に向かって歩き始める。

 

「鈴華。ラプ子Ⅸ.此処をお願いします。私は少し、女王に謁見してきます」

 

「え?あ、うん。一人で大丈夫?」

 

「ええ。もし危なくなったら黒ウサギさんを頼ってください。この車両で動ける中では、彼女が突き抜けた最高戦力ですから」

 

笑顔で言い残し、最後尾車両を去る彩鳥。

鈴華は去り際の言葉に、ポカンと半口を開いて驚いていたが、それも当然だろう。

あんな幼くも愛らしいウサ耳少女を頼るよりは、まだ騒がしくも努力しているシャロロを頼るべきだと考えたのだろう。

彩鳥はそんな彼女の心情を読み取りながら小さく笑う。

そろそろ傍観を決め込むのにも限界が来ている。

 

久藤彩鳥も_______己の剣を握る時が来たのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

西郷焔は息を切らしながら群体精霊の一匹、地精のメルルに連れられて貴賓室の前まで来た。

その手にはバースバスターがあった。

箱庭に来る前に伊達明に渡されたアタッシュケースの中にあった物の一つだ。

反動を小さくするように改造されてはいるが、それでも焔が普通に撃てるようになるにはそこそこ鍛える必要があった。

護身術の一つとして教わったのだが、意外なところで役に立った。

此処に辿り着くまでの間にそれを使ってアリコマンドをどうにかやり過ごしているのだった。

 

「ここ!!女王の部屋、ここ!!」

 

「ありがとな。案内はここまででいいから、お前は機関室に帰っていいぞ」

 

ぴょん!!と焔の頭から飛び降りたメルルは、トッタカトッタカと可愛らしい足音を立てて去っていく。

その焔の背後に不穏な気配が迫っていた。

ズルリズルリと何かが這うかの様に迫っていく。

焔は気付かずに扉へ向き直る。

飛び掛かられる一瞬前だった。

 

「先輩!!」

 

彩鳥が叫びながら飛び出してきて、手に持った槍で焔の背後の壁を突き刺す。

同時に血が飛び散るが、彩鳥は構わず槍を振り下ろして両断する。

途端に絶命したガメレオジンが姿を現す。

いきなりの事に焔は呆然とする。

 

「危なかったですね、先輩」

 

「……………ああ、ありがとう。それで、その槍はどうしたんだ?」

 

「車内に敵が潜んでるようだったので拝借しました」

 

よく見たら彩鳥が通ってきた道にはアリコマンドの影が幾つも倒れていた。

そこに最早驚きは無かった。

 

「それで先輩はまた女王に呼び出されたのですか?」

 

「いいや、此方の用件で来た。そっちは?」

 

「私は……………………ええ、先輩と似たようなものです。預けていた物を返していただこうかと」

 

彩鳥は極めて自然な仕草でそれを口にする。

これももう驚きはしない。

何故なら、彼女は事の始まりから既にこの異変を知っていた節があるからだ。

だが、それで立場が変わるわけでもない。

焔は敢えて問い返さずに真剣な表情を浮かべて頷いた。

 

「そうか。並の相手じゃないってことは知ってるんだよな?」

 

「ええ。それはもう先輩以上に」

 

「マジかよ。その辺りの話も聞いてみたいが、それはまた帰ってからだな」

 

焔と彩鳥は共に頷き合う。

それぞれが別の事情を抱えていることを理解し合っているのなら、語るべき時を待つべきだろう。

そうして二人は中に入っていく。

中には女王と執事服を着た使用人らしき女性がいた。

中に入る際のマナーで一悶着あったものの一先ず落ち着く。

まずは彩鳥から話すべきと焔が一歩下がり、彩鳥が前に出る。

焔の手前、どのように切り出すべきか逡巡した彩鳥だが____彼女も決断すれば行動が速い。

最初の一言はこうあるべきと思い至り、優雅に一礼した。

 

お久しぶりです(´´´´´´´)、女王。スカハサ先生。女王騎士”フェイスレス”、只今戻りました」

 

「そう。久しぶりね。貴女の体感時間では十四年ぶりになるのかしら、スカハサ」

 

女王が視線で尋ねると、スカハサと呼ばれた女性は歩くキャンドルランプが運んできた紅茶を注ぎつつ同意する。

 

「左様でございます、女王。_____ふふ、彩鳥も元気そうで何よりよ。その騎士号は転生前の物だから、名乗るなら久藤の姓か英国姓を名乗るようになさいな」

 

「恐縮です。以後はそのように。……………先生もお変わりないようですね。今は執事長(ロード・バトラー)に就かれているのですか?」

 

「そうよ。似合う?」

 

執事長のスカハサは腰に手を当ててポーズを取る。

彩鳥は思わず苦笑いで同意するが、確かに似合ってはいた。

執事服のタイトな服は体のボディラインがハッキリ見える為、長身で抜群のプロポーションを誇る彼女が着ると立っているだけで絵に成るほどだ。

異性、同性を問わず魅力的に映るのは間違いないだろう。

彩鳥は困ったように愛想笑いを浮かべつつ、当たり障りのない言葉で続ける。

 

「先生なら何を着ても似合うかと思われます」

 

言葉を言い切る前にスカハサの手が彩鳥の額に伸ばされた。

怪訝な顔をしながらスカハサは首を傾げる。

 

「妙なところが開いてる(´´´´)わね。自覚が無いということは妙な干渉を受けて開かれた(´´´´)か」

 

「何の話ですか?」

 

「説明するには面倒そうなのよね。かといって、教える暇も無いし……………仕方がないか」

 

言いながらスカハサは彩鳥の額を軽く弾いた。

弾かれた一瞬彩鳥の頭に激痛が走る。

眩暈がし、ふらつくがそれもすぐに回復する。

 

「何をしたんですか?」

 

「安定させといたわ。一先ず意図せず暴発することは無いでしょう。自覚無しでスイッチ入ることはあるかもだけど」

 

いまいち分からなかったが深く聞ける雰囲気では無かったので先程の続きを口にする。

 

「ところで、他の師は来ていないのですか?」

 

「来てはいないけれど、報告は逐一入っているでしょうね。今頃貴女のこの度の醜態に、怒り心頭となっているに違いないわ。現に私がそうだもの」

 

柔和な笑みを浮かべるも、瞳を滾らせて怒りを伝えるスカハサ。

苦い表情で顔を下げる彩鳥と、紅茶を口に運びながら心底楽しそうに微笑む女王。

話を進めると女王は虚空から白銀のカードが出現させる。

スカサハは女王の意思を察し、口元に手を当てて怪しげに微笑んだ。

 

「なるほど。愛剣を返して再評定、というわけですか」

 

「そういうこと。使い慣れた武具を取り上げられたまま敗北したんだもの。一度くらいの敗北は大目に見ても良いでしょう?」

 

女王はカードを指先で弾くと、回転させながら彩鳥に渡す。

スカハサは後ろで腕を組み、笑みを消して告げる。

 

「_____そういうわけだ、久藤彩鳥。女王は敗北を不問にすると言っている。次こそはギリシャの怪物と中華の俗物に、アルスターの流儀を見せてあげなさい。

 

出陣せよと、瞳に鋭い光を浮かべて命令する。

彩鳥は”クイーン・ハロウィン”の旗印が刻まれているカードを一瞥し恭しく頭を垂れた。

 

「勅命、謹んで承ります。______それでは先輩。先に失礼します」

 

「あ、ああ。けど大丈夫なのか?」

 

「問題ありません。これより先は先輩にも鈴華にも指一本____いえ、髪の一本ほどの危害も加えさせませんから」

 

静かに微笑んで、貴賓室を後にする彩鳥。

まもなく扉の向こうから最後尾に走り去っていく音が聞こえた。

此れから襲い来る敵を迎え撃ちにいったのだろう。

その音が完全に消え去ると、二人は西郷焔に視線を向けた。

そこから焔は先日の答えを返し、その上で自身の考察を元に交渉をする。

それによって焔はスカハサに師事することになり、情報を得る。

話が一段落したところで外部からの衝撃によって精霊列車が激しく揺れるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

列車の甲板は乱戦を極めていた。

晴人とネガタロス達とゼネラルモンスターが戦っていたのは比較的に前方の車両だったのだが、戦闘している内に最後尾まで下がってきたのだ。

そして、白額虎とアステリオスもその乱戦に巻き込まれたのだ。

 

インフィニティー!!

 

高速移動する晴人と白額虎が何度も何度もぶつかり合って火花を散らす。

ヤモリジンに姿を変えたゼネラルモンスターが尻尾を鞭のように振るう。

ネガ電王と幽汽が尻尾の鞭を弾きながら近づこうとすると真上に影が出来る。

飛び上がり、大きく振り被った大戦斧をアステリオスが降り落とす。

さすがに大戦斧の直撃は不味いので、ゼネラルモンスター、幽汽、ネガ電王、武神鎧武は後方に下がって回避する、

武神鎧武は地を転がりながらもセイヴァーアローを構える。

そこから正確にアステリオスに向けて矢を放つ。

アステリオスはほぼ反射的に矢を弾き飛ばす。

乱戦は敵味方入り乱れる形であり、”六本傷”も鈴華も迂闊に手を出せなくなっている。

 

「仙虎よ。お前の仲間とやらはまだ来ないのか?何時まで待たせる?」

 

『うむ、待たせたな。噂の相方が来たらしい』

 

息を整えながら問うアステリオスに対して仙虎は牙を剥いて笑う。

同時に嵐の風向きが変わる。

”天の牡牛”はいまだに戒斗と戦闘中ではあるものの積乱雲そのものに変化は無い。

にも拘わらず風向きが劇的に変化したのだ。

新たなる乱入者は精霊列車を壊す為に力を蓄え始めたのだ。

それに感付いた白額虎は焦り始める。

 

『今から止めても間に合わん!!一度離れるぞ!!』

 

アステリオスを背に乗せ直して白額虎は精霊列車を離れていく。

一方のアステリオスも焦っていた。

精霊列車を、その中にいる西郷焔を殺されるのは困るからだ。

術者ごと白額虎も殺すかと考え始めた時だった。

精霊列車”サン=サウザンド”号の甲板から、天を穿つ様に奔る一条の閃光。

千里の先でも撃ち貫けるかのような洗練された一矢は荒れ狂う水流と暴風の隙間を縫うように突き進み、見事術師の首を撥ね飛ばした。

 

「…………………な、」

 

絶句するアステリオス。

それはまさに絶技と呼ぶのが相応しい一刺しだった。

飛距離がではない。

荒れ狂う雨風を読み切り、操られる雨風が術師を守る最中、たった一矢で敵の首級を挙げるなど、正に神域としか喩え様のない弓技だ。

精霊列車の甲板の上に立っていたのは一人。

嵐の中にあっても輝きを失わぬ金髪を靡かせ、憤然と此方を睨み付ける少女。

平時の仮面を脱ぎ捨て、戦士の顔を露わにした女王騎士_____久藤彩鳥が、一人と一匹の前に立ちはだかっていた。

 

 





大乱戦からの新たな乱入者からの彩鳥参戦でした!

焔サイドはほぼ原作通りです
彩鳥とスカハサのやり取りの意味は後々
大体ネメシスQのせい

それでは、質問があれば聞いてください
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感想待ってます!


最近何故か異様に眠いのであった
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