___近隣の樹海。
樹海の奥で燃え上がる火柱。
それは近くで双頭龍が戦っているという事だ。
だが、天道は気にせずにパーフェクトゼクターを操作する。
カブトパワー!!
ザビーパワー!!
ドレイクパワー!!
サソードパワー!!
オールゼクターコンバイン!!
ザビーゼクター、ドレイクゼクター、サソードゼクターがパーフェクトゼクターにくっついていく。
天道はパーフェクトゼクターをソードモードにして構える。
その間にも鋼の天使が迫ってきているのだが気にしてはいない。
天使の大剣が天道に向けて振り降ろされる。
「ハァ!!」
マキシマムハイパータイフーン!!
天道は大剣を軽く避けると返す刀でパーフェクトゼクターを振るう。
放たれた斬撃は天使の半身を消滅させ、周囲の木々すら広範囲に渡って斬り裂く。
さすがにこれだけ体を削れば再生には多少時間が掛かるのか修復は遅い。
天道の背後ではリン達が天使の正体を考察していた。
そして、雷光が樹海を燃え上がらせていた。
天道はそちらを向かずにマクスウェルともう一体の天使を相手にしている殿下の加勢に入る。
己の命を鼓舞するかのよくな激しい雷光を見てジンは瞳を見開いて大きく息を呑む。
「まさか………彼女が…………!?」
これだけの稲妻を行使出来る存在を、ジンは一人だけ知っている。
一際激しい雷光が一帯を満たした瞬間_______その術者は、煉獄と共に姿を現した。
◆◆◆◆◆
散るならばせめて、仲間の為に。
この命よ、今こそ燃え上がれ…………!!
「ああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっぁあぁ___!!」
その断末魔と共に黒ウサギは全身が焼失し___同時に、生誕の産声を上げる。
燃え落ちた四肢は稲妻と共に再生し、緋色の髪は赤い稲妻となって灼熱の炎を撃ち抜く。
そしてその頭上には、黒ウサギのトレードマークであるウサ耳が生えていた。
神代の縫術で編まれた衣を身に纏い、天地神明に雷鳴を轟かせる。
これは黒ウサギに霊格が戻ったのではない。
“月の兎”の伝承を体現し死を超過して転生した新たな黒ウサギの姿がそこに有った。
「何よ……あれ………黒ウサギ?」
ラッテンはディーンの肩の上で頬をひきつらせながらも、黒ウサギの身に何があったかを察する。
黒ウサギの額に浮かび上がる帝釈天の神紋。
あれは紛れもない神格の証だ。
黒ウサギの見せた同士への献身が、帝釈天の神格をその身に宿らせたのだ。
「覚悟しろ、双頭龍ッ!!」
黒ウサギは神雷をその身に宿らせ、灼熱を放つ双頭龍へと突進する。
稲妻だけで灼熱を振り払い、黒ウサギは双頭龍の身体を一太刀の許に両断した。
「GEEEEEEEEYAAAAAAAaaaaaaa!!」
燃え落ち、炭と化す双頭龍。
だが、敵は一体ではない。
純白の双頭龍の凶爪と金剛杵を打ち合う。
そして、切っ先で片首を斬り落とす。
鮮血の噴水から産まれた十や二十どころではない害獣は黒ウサギの放つ赤い稲妻の一閃によって焼き払われた。
「凄い力ね………でも、あれだと………………」
黒ウサギに宿っているのは疑似神格だ。
疑似神格は本体の命を削る諸刃の剣。
黒ウサギは今まさに、命を燃やして戦っているのだ。
「この駄ウサギが…………無茶して!!あんたはもういいわよ!!あとは私がやる!!それくらいならディーンでどうにかなる!!だから!!」
ラッテンの言葉を無視し、全身の骨と肉が軋み、衣が身を焦がす炎に変わっても、黒ウサギは戦いを止めない。
双頭龍は片首を失って、重症である。
しかし、それでも片腕を失っているラッテンでは手に余る。
この身が燃え落ちたとしても、此処で戦いを止めることだけは絶対に出来ない。
「…………っ、あああああああああッ!!」
退けない。退けない!!
退けるはずがないッ!!
退けば同士が死ぬのだッ!!
(我が主神よ………………!!どうか、もう少しだけ、黒ウサギに恩恵を……………!!)
金剛杵を更に二つ、三つ、四つと召喚し、双頭龍に狙いを定める。
双頭龍も賭けに出てくる。
「GEEEEEEEEYAAAAAAAAaaaaaaa!!」
双頭龍は稲妻と金剛杵の放射によって出来た僅かな硬直を突いて決死の襲撃を仕掛ける。
純白の双頭龍は属性を持たないが故に他の双頭龍よりスペックが高い。
黒ウサギと双頭龍は超身体能力を発揮して樹海を駆け抜け、付かず離れずの攻防を繰り返す。
「あぁ……もう!!分かってるけど!!分かってたけども!!何でそうなのよ!!」
離れていく黒ウサギに向かってラッテンは叫ぶ。
ラッテンは自己犠牲というのが嫌いなのだ。
そういうもので助かっても後味が悪いだけである。
ラッテンは、息を切らしながらもディーンに黒ウサギを追い掛けさせるのだった。
◆◆◆◆◆
黒ウサギと双頭龍は戦いながらジン達がいた場所に現れていた。
ようやく再生した鋼の天使は両者の激しい戦いに反応する。
「La………………Ra……………………………!!」
初めて声らしきものを発しながら、黒ウサギに大剣を振りかざす鋼の天使。
しかし、ウサ耳を取り戻した黒ウサギに奇襲は通用しない。
背後からの襲撃を後天しながら避けた黒ウサギは、二体を一直線上に捉えたのを確認し、一枚の紙片を取り出す。
「召喚、“疑似神格・梵釈槍”___!!」
神鳴が響き、顕現する必勝の槍。
黒ウサギの纏う神代の衣は既に全身に火が点いているのだ。
これを外せばもう後がない。
大地を、天を、星を穿つ裂帛の気迫を込めて黒ウサギは吠えた。
「貫けえええええええええ_______!!」
太陽の光輪が切っ先に宿らせた神槍はかつてない霊格を放出し___第六宇宙速度という尋常外の速度を叩き出して双頭龍と鋼の天使を纏めて撃ち貫く。
稲妻は億兆もと束となって二体の化生を焼き尽くす。
槍は最後に日輪を夜空に輝かせて破裂させる。
その戦闘力に、“ウロボロス”の面々は顔を蒼白にしていた。
樹海は戦いの余波で焦土と化していた。
「これが“箱庭の貴族”………“月の兎”の真の力…………!!」
黒ウサギは、敵が完全に消滅したことを確認して、そこでようやく全身から力を抜いた。
「…………っ………」
そこで黒ウサギは異変に気付く。
身に纏う炎は、戦いを終えても消える気配は無かった。
(ああ…………やっぱり、そうなのですね………………)
全てを受け入れたように、金剛杵から手を放す。
これが恩恵の対価。
命を賭した“月の兎”の最期。
この炎は対価を徴収する為に煉獄から黒ウサギを手招いていた。
黒ウサギは全身を焼くその痛みで己の身体を抱き締める。
だが後悔は無かった。
(我が主神よ……………この命、貴方にお返しします)
奇跡に感謝して跪く。
そこに恨みは無い。
煉獄は間もなく黒ウサギを六道に導くだろう。
黒ウサギの意識はそこで途絶えた。
地獄の口が開こうとしているその瀬戸際_______己を顧みず飛び込む人影があった。
「本当に……いい加減にしなさいよ!!」
ラッテンは燃える黒ウサギに手を伸ばす。
煉獄は生者を焼きはしない。
だが、その身を焼く痛みは本物だ。
しかし、そんなことはどうでもいい。
片腕を斬り落とした今ではそんな痛みは今更だ。
そんなことよりもラッテンは苛立っていた。
「ったく、本当にこういうのは柄じゃ無いのよ!!何で私がこういう役割をやる事になってんのよ!!普通こういうのはもっと性格がいい奴がやるものなのよ!!」
溜まりに溜まった物をぶちまける。
だがそれで炎が消えるはずもない。
六道の地獄から吹き荒れる業火は津波の様に押し寄せて二人を包み込む。
このままではラッテンも命を落とす。
けれどもラッテンにはそんな気はさらさら無かった。
「帝釈天!!あんたが本当に……本当に善神なら!!世に蔓延る悪を討つという神というのなら!!その教義に邁進した、あんたの眷属くらい救いなさいよ!!」
ラッテンは胸に渦巻く苛立ちをぶちまける。
八つ当たりに近いがぶちまける。
そもそもこの苛立ちは黒ウサギに、敵に、魔王に、そして自分にすら向けている物だ。
神にはすがらない。
だが、文句はあるのだ。
「そもそも善神だというのならあんなものが現れた時点で駆け付けて来なさいよ!!それすら出来ないのに対価を取るってどんな善神よ!!大体眷属の一人くらいを救わないで何が善神よ!!そんなものは私は善神と認めない!!」
目の前の炎に叫ぶ。
それに黒ウサギに死なれたら困るのだ。
黒ウサギが死んだら皆悲しむ。
霧崎もきっと悲しむ。
そんな事にはなりたくないのだ。
だから、こんな終わり方は認めない。
そんな思いを無視するかの様に業火はまるで巨大な顎のように二つに分かれて二人を覆う。
全身に炎が奔り、煉獄に呑み込まれかけた瞬間。
ラッテンは雷鳴と共に苦笑する様な天の声を聴いた。
「…………遅いのよ」
想いを聞き届けたかのように、天空に轟く雷鳴。
二つ三つと輝く雷光の中、ラッテンは神の姿を見た。
雷光の中に中に佇む神の姿は獣のようでもあり、人のようにも見えた。
やがて業火は消え、静寂が訪れる。
全身の痛みと貧血でラッテンは気を失い、荒野に倒れ伏すのだった。
黒ウサギ覚醒でした!!
ほぼ原作通りではありますが!!
ラッテンは神にすがるタイプでも無いので文句をぶちまける形にしてみました。
それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。