問題児と000と弱者の箱庭物語   作:天崎

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口論と“ズレ”の謎と譲れない物

 

空中城塞・第三貴賓室。

レティシア、白雪姫は対アジ=ダカーハの戦闘における一通りの作戦を聞いた後、少々気不味くなっていた。

理由は簡単だ。

もう一人、作戦を聞いてた者、霧崎カブトが苛立つ様に座っていたからだ。

 

「……………何なんだよ、あの作戦は………正気かよ………なあ、レティシア。あいつって信用していいのか?」

 

「ああ。こと勝算を立てるというスキルに於いてラプ子は箱庭最高の頭脳だ」

 

「うむ。“ラプラスの悪魔”の立てた作戦ならば信じるしかあるまい」

 

レティシアの意見に白雪姫が厳しい顔で同意する。

だが、霧崎が苛立っているのはその部分では無い。

多少非人道的な作戦でも、霧崎は納得する覚悟はあった。

しかし、聞かされた作戦は納得し難い物だった。

 

「……勝率ね。まぁ確かにあの作戦なら勝率が上がるだろうよ。でもよ………あいつにどんだけ負担掛ける気だよ…………ラッテンは………………」

 

「あら、私がどうかした?」

 

「ッ!?」

 

いきなり乱入してきたラッテンに驚く。

そして、その姿を見て二度驚く。

失われたはずの左腕があった。

が、よく見れば義手なのが分かった。

パッと見で分からない程度には精巧な物だった。

 

「あ、これ?これは無理言ってさっさと付けて貰ったのよ。まだ馴れはしないけど、十分な程度には動くわよ?」

 

「お前、安静にしてなくて大丈夫なのか?」

 

「大丈夫に決まってるでしょ。この通り、ピンピンしてるし。それに“作戦”には私が必要なんでしょ?ラプ子から聞いたわよ?私の“演奏”で戦力の底上げ、そのくらいならお安い御用よ」

 

どうもどうやら、ラプ子から直接作戦の全てを既に聞いてたようだ。

だが、霧崎はラッテンが作戦に参加するのには納得してなかった。

たとえ義手があろうと万全でも無いのに参加させるのは納得出来ない。

 

「………ダメだ。お前は参加するな」

 

「何でよ。私が参加しなきゃマズイでしょ?」

 

「それでもダメだ!!」

 

互いに見つめ合う。

互いの考えてる事は分かる。

分かるからこそ、意見が対立する。

 

「じゃあ、どうやってあの化け物から霊格を吐き出させるつもり?私が強化させないと、ままならないはずよね?」

 

「…………俺が真っ正面から相手にする」

 

「は?」

 

「俺の“PSI”なら奴の攻撃も祓える。俺が攻撃を祓い続けてる内に攻撃を仕掛けてくれればいいだろ」

 

「あのねぇ………それじゃ消耗するだけでしょうが」

 

「それでもだ」

 

「…………分からない奴ね~私が強化した方が効率いいでしょうが!!」

 

「効率とかそういう問題じゃねぇよ!!」

 

「なら、あんたの作戦もそういうの関係無しに問題あるわよ!!」

 

口論はそのまま平行線を続いた。

結局、根本は二人とも一緒なのだ。

霧崎は、傷付いているラッテンにこれ以上負担を掛けるのが納得出来ない。

ラッテンは、倒れるまで“PSI”を酷使した霧崎にまた脳への過剰な負担を加えさせる事に納得が出来ない。

つまりは互いに互いの身を案じてるが故に口論は平行線なのだ。

作戦を実行した結果の被害などは二の次であった。

究極的に今の二人の眼中には互いしか映って無かった。

 

「お前たち……一旦落ちt

 

「「うっさい!!」」

 

レティシアが止めに入ろうとするが、二人は即座に声を合わせて言い放ち、レティシアを怯ませた。

 

「完全に我々など眼中に無いな」

 

「………のようだな」

 

レティシアと白雪姫は、軽く引いた様子で呟く。

もはや、割り込んで止められる様子では無かった。

止められそうな男に心当たりはあるが、この場にはいない。

 

「……少しいいか?」

 

そんなレティシアと白雪姫に扉の向こうからマンドラが話し掛けてきた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

少しして、ラッテンと霧崎の口論は一先ず止められた。

マンドラの作戦に対する話を聞く為にだった。

話は火龍達の鬼化、その代償、マンドラの覚悟…………そして、混世魔王の手からサンドラを救う為に必要な条件とそれを満たす為の策だった。

霧崎は苦々しい顔をして聞いているのだった。

 

「___というわけだ。だから、我々が戦う必要があるのだ。そして、その為には鬼化と…………“演奏”による強化が必要なのだ、サンドラを救う為にも」

 

かつての敵による強化すら必要とする部分は心の底では気に入らないのだろう。

その部分は言い淀んでいた。

だが、しかし、それ故に霧崎も“納得”するしか無かった。

 

「…………分かったよ。ラプ子の作戦通り動くよ、仕方ねぇ」

 

「やっと納得した。強情なのよ、霧崎は。何時もはヘタレが見え隠れするくせに」

 

「……最後のは余計だ。それにあんな“覚悟”を聞かされちゃ、文句を言うわけにはいかないだろ」

 

「まぁ、そうでしょうね」

 

「…………またお前に負担を掛ける事になるな」

 

「そんな事は全然いいのよ。それに、危なくなってくれたら守ってくれるでしょ、霧崎?」

 

「……聞かなくても分かるだろ。お前は俺が絶対に守る」

 

マンドラとレティシアは準備を進める。

そして、ラッテンは霧崎に背中から抱き付いていた。

霧崎は、顔を少し紅くしながら顔をそらすのだった。

互いに体温を感じて顔を紅めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

クロアと十六夜が打ち合わせをしながら歩いていた。

 

「……やはり、“ズレ”の影響はそれなりにあるようだな」

 

「さっきから呟いているが、その“ズレ”ってのは何なんだ?単にお前らの思惑から外れた物ってわけじゃ無さそうだが」

 

「…………詳しくは倒してから、と言いたい所だが端的だけ言っておこう。思惑から外れた物ではあるが、そもそも想定すらしていなかった物だ。本来ならば“現れ”すらしなかった物だ」

 

「………“想定外”とは何か違うのか?」

 

「それで収まってくれれば、どれだけ良かったかと思えるくらいだ」

 

そんな事を話していると隣の廊下から聞き覚えのある二つの声、ジャックとリリの声が聞こえてくるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ジャック達と話を終え、クロアは十六夜達と一旦分かれた。

そこへ、赤い人影が現れる。

 

「アカレッドか。何かあったか?」

 

「お前が俺を呼び戻したんだろ。用件があるんじゃなかったのか?」

 

「用件という程では無いな。アジ=ダカーハに血を流させる要員で一撃離脱出来る面子足りないから任せようと思っただけだ」

 

「そういう事か」

 

「…………それと幾つか聞いておきたくてな」

 

「なんだ?」

 

この状況で聞かれる事に想像が付かずに首を傾げるアカレッド。

 

「……“ズレ”の原因に何か心当たりがあるか?」

 

「それを俺に聞くか……」

 

「私の方でも幾つか考えはしているんだがな。初めは、お前や“ネメシスQ”が原因かと考えていたが今の状況から考えると、確かに原因の一部ではあるんだろうがもっと大きな“何か”があると思えてくる」

 

「………まぁ俺も本来ならば此処にいないとは思うが、それだけで影響が大きく出るとは思えないしな」

 

「“彼ら”は“ズレ”の一部であり、原因では無いのは確信している。他に思い当たるのは“あの男”が言っていた“世界の破壊者”もあるのだが」

 

「確信が持てるわけでは無いか」

 

確かに“世界の破壊者”は怪しくはあるが、十六夜や黒ウサギなど、彼に関わった者達から話を聞く限り噂される様な者では無いとも思える。

それに単体で“ズレ”を広げれるか、というのも疑問である。

 

「だが、たとえ“ズレ”が発生していても問題は無いんだろ?」

 

「あぁ、“彼ら”でも充分果たせる。問題なのは“あの組織”だ。“ウロボロス”を相手にするのは“本来”の通りだ。だが、“あの組織”は“ズレ”そのものだ。どう影響してくるか分かった物じゃ無い」

 

「確かに奴らは俺が戦ってきた敵と似た雰囲気を感じる」

 

「………これ以上、状況を面倒な方向に荒さないでくれるといいが」

 

おそらく叶わないと思いつつ、クロアは呟くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「そう、“ズレ”だ。これは正に“ズレ”と言うのがぴったりだ。今はまだそこまででは無い。だが、いずれ見過ごせなくなるまで歪みは大きくなる。その時が俺は楽しみだ」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

原因は分からない。

だが、確かに“ズレ”は存在する。

その“ズレ”の中心に存在する“アレ”は世界の歪みを加速させていく。





半分くらい霧崎とラッテンの口論でした!!
次回は戦闘開始まで行くと思います。

“ズレ”に関しては話の根幹というわけでは無いですが、それなりに重要です。
“本来”がどういう意味かは大体察せれると思います。
“ズレ”がどういう物かは後々。
原因に関しては一つとは限らないというか、複数あります。
でも、中心とも言える“原因”があるにはあります。

それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます!!

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