問題児と000と弱者の箱庭物語   作:天崎

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破れるゲームと奪われる龍角と笑い転げる男

 

そして、全ての戦闘行動が中断された。

 

「ちょ………さすがに早過ぎでしょうが!!」

 

「マジかよ………」

 

ラッテンと霧崎が顔を引きつらせながら呟く。

十六夜に言わせれば、純粋な謎としての難易度なら“ハーメルンの笛吹き”やレティシアのゲームに比べて遜色がないほどだったという。

基本的にそちらの方向は丸投げしてる二人なので、あまり理解はしてないが、開催から一日も経たずにクリアしたのは驚愕した。

同じく火龍の背に乗っていたサラ=ドルトレイクが覚悟を決めた所にアジ=ダカーハが右手に黄金の杖を握りながら現れる。

そして、“GREEK MYTHS of GRIFIN”に対する考察を語り、更にはこのゲームの不自然さを付き、ジャックに視線を向ける。

 

『__火龍から報酬を要求する前に、貴様の解を一つ示すぞ、“パンプキン・ザ・クラウン”』

 

誰もがマズイと直感した。

ジャックのゲームは解答と論拠だけでゲームクリア可能だ。

サラの開催したゲームをクリアする事で全体のゲーム進行を一度断ち切り、その中断してる最中に論拠を示せば、三頭龍は同時に二つのゲームをクリアする事が出来てしまう。

黒ウサギの様に“審判権限”を使って中断する必要もない。

この魔王は叡知と胆力だけでゲームを支配してしまった。

武力、知力、胆力、その全てに於いて真正面から敵を圧倒する。

最古参の魔王にして、最強の神殺し。

三つ首と六つの眼でジャックを見据えた魔王は_____

 

 

『ジャックよ。貴様は__貴様は、“切り裂きジャック”ではない!!』

 

 

_____英国が生んだ怪物に対し、その真実を叩き付けた。

硝子の割れるような繊細な音を立てて、ジャックの血塗られたナイフが砕けた。

同時に全身の傷という傷から血液が流出していく。

赤かった衣服は血によってより濃い紅色に染まっていく。

元々重傷だったジャックから不死性が完全に失われ、辛うじて止血出来ていた傷が無情にも開き始める。

ゴポリ、と。

とてもではないが血液が流れる音とは思えない音を立てて、腹部から血を流す。

 

「…………ヤホホ。よもや、これほどとは……………!!」

 

有りっ丈の力で空笑いを浮かべるが、それも限界だ。

膝から崩れ落ちたジャックは自らが流した血の海に横たわり、やがて動かなくなる。

呼吸で肩が揺れているのを見るとまだ死んではいないのだろうが、それも時間の問題だ。

その様子をつまらなさそうに見届けた三頭龍は、サラ=ドルトレイクに視線を戻す。

 

『………あの様子では残る謎を解く必要もあるまい。本題に入るぞ火龍の娘』

 

サラの顔が強張るが、ジャックの凄惨な有り様を視れば萎縮するのは仕方ないだろう。

だが、サラはそれを恥じ、頭を振って、視線に不屈の闘志を込める。

命を奪われても、誇りまではけがれさせない。

そんな力強い視線を受け止めた三頭龍は心底愉快そうに牙を剥いて笑みを作る。

 

『フフ。強い瞳だ。魔王を前にしても屈さぬ勇姿、私は高く評価しよう』

 

魔王に向ける不屈の瞳はこうでなければいけない。

誰もが息を呑んで緊張する中、三頭龍は嗜虐の笑みで報酬を要求した。

 

『火龍の英傑よ。私が望む物は…………貴様の霊格の全てを頂こう!!』

 

途端、サラの龍角が砕けた。

龍角を失って倒れるサラを霧崎が受け止める。

ラッテンにジト目を向けられるが今は本当にそういう場合では無い。

夜に響く雷鳴のように、火山が噴火するように、根元から折れて消滅したサラの龍角はアジ=ダカーハの手元に現れる。

だが、それだけでは終わらない。

終わるはずが無い。

火龍と鷲獅子の龍角を手にした三頭龍はその二本を地上に向かって投げ付けた。

 

『褒美だ。我が分身よ、龍角を得て力を得るがいい!!』

 

煉瓦を敷き詰めた石畳が、ドクンと鼓動を打つ。

その鼓動の大きさは街全域に響き渡るほどだった。

二本の龍角を得た双頭龍は大嵐の化身となって咆哮を上げ、アカレッド達の前に姿を見せた。

アカレッドは、双頭龍を正面から睨む。

彼は静かに怒っていた。

 

「フェイスレス、ジャックを頼んだ」

 

「え?」

 

フェイスレスが反応するよりも早くアカレッドは動いた。

双頭龍は己の周囲の気圧を操り、プラズマが可視化されるほど圧縮された壁を作りだす。

だが、そんな物は一切関係無かった。

 

「ハァ!!」

 

『GEEEYAAaaa!?』

 

圧縮された力の解放は大気に視覚化出来るほどの波紋が広がっていた。

しかし、それらを全て弾き返し、アカレッドは双頭龍を吹っ飛ばした。

双頭龍は元より神霊並みの力がある。

其処に加えて神格級の恩恵を与えられた。

その戦闘力は並の双頭龍を遥かに凌駕しているはずだ。

それをいとも簡単に吹っ飛ばした。

アカレッドは、双頭龍が起き上がるより早く近付き、見下ろす。

 

「受け継がれし赤の力を見せてやろう」

 

スーパー戦隊の“原典候補者”アカレッド。

その真の力を持って双頭龍を迎え撃とうとしていた。

とはいえ、相手も雑魚では無い。

殺し切るには少なからず時間が必要だろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

(あの男は…………)

 

眼下で双頭龍と戦うアカレッドを見て、三頭龍は記憶の端に見覚えを感じていた。

思い当たりはしたが今は相手にする物が別にある。

三頭龍は、目の前の集団に視線を向ける。

ちょうど龍角を失って倒れるサラ及び霧崎達と睨み合う形になる。

“サラマンドラ”にも“鷲獅子を持つ鷲獅子”の同士にも、先程までの意気揚々とした覇気は見られない。

見られるのは目の前の二人くらいだった。

だが、たかが二人では意味が無い。

主催者側の表情に恐怖が伝染していく。

ゴキリと首を鳴らした三頭龍は、そんな彼らをせせら笑った。

 

『フン。どうした?もう終わりか?』

 

『策謀は尽きたか?闘志は枯れたか?希望は潰えたのか?どうなのだ、英傑達よ』

 

三頭龍に答える声は…………

 

「そんな事はねぇよ」

「そんな事は無いわよ」

 

「「まだ、終わっちゃいない」」

 

……あった。

たった二人だがあった。

霧崎とラッテンは、顔をひきつらせながらではあるが、三頭龍を正面から見て声を揃え言い切った。

それにより、主催者側は恐慌状態に陥る一歩前で踏み止まった。

そんな彼らに対し、三頭龍は満足そうに目を見開き、

 

 

『____ならば、よい。手を尽くした上で死ね』

 

 

躊躇う事も無く、絶望の牙を剥く。

そして、主催者側も半ば自棄になりながらも三頭龍に向かっていった。

作戦も破られた、ゲームも半ば破られた。

だが、諦めるにはまだ早い。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

廃都にて、幻想と呼ばれた男は地団駄しながら腹を抱えて笑い転げていた。

背後でアポロガイストが呆れた顔をしているが関係無い。

ダンダンダン!!と、土埃が巻き上がるほど足をバタつかせた彼は、これ以上ないくらい品無く笑う。

 

「流石だ、流石は閣下だ!!此れでもかってぐらい甘い夢を見ている連中に、此れでもかってぐらい最高のタイミングで現実を叩きつけ返しやがった。相も変わらず酷い奴だ!!やられたら三倍返しに色付けて返しやがる!!ああ、最高にイカしてよアンタツ!!そう思わねぇか、アポロガイスト!!」

 

妖狐の尾で作られ、千里眼の恩恵を宿した布を広げ、位相のズレた場所にあるゲーム舞台を覗き見る。

一頻り笑い転げ、満足すると身体を起こしてアポロガイストに問い掛ける。

が、問い掛けておきながら語りを続ける。

 

「此れだ。此れこそがギフトゲームだ。此れこそが神魔の遊戯だ。外界の連中は無理難題に突き当たると己の未熟や無力を棚上げしてやれ才能だ、それチートだ喚き散らし、果てはやれイカサマだとかルールの横紙破りや拡大解釈に奔り、さも己が優秀であるかのように振る舞いやがる。悲しいことにそれらの小者の小賢しさは、徐々に箱庭すらも毒していった」

 

三頭龍のゲームメイクを恍惚の瞳で見つめる男は、力を込めた拳を握りしめ、

 

「だが……閣下は違う。英傑をねじ伏せ、賢者を策謀にはめ、勇者を王威の輝きで弾き返す!!ああ、そうだ!!これぞ、王道を許された者にのみ可能なゲームメイク!!閣下よ、貴方こそが最強の魔王だ………!!」

 

無邪気な子供の様に瞳を輝かせて男は両手を上げる。

 

「ふん、確かに“あれ”は貴様の言う様に凄まじい。だが、ならば私を勧誘するのだ?」

 

アポロガイストはそこが分からずにいた。

男の魔王像はよく分かった。

しかし、それに反する部分がアポロガイスト、そして大ショッカーにはある。

それなのに何故この男は、アポロガイストを勧誘するのか。

 

「そりゃ言っただろ?あんたの執念に目を付けたってな。それに“世界の融合を加速させる”能力に興味はあるし、大ショッカー内部の情報があれば俺も動きやすいからな」

 

「何を企んでいる?」

 

「おいおい、返事もしてないのにそれを聞こうってか?そこまでサービスする気はねぇぜ?」

 

「物は言いようだな」

 

アポロガイストとの会話に切りを付けると、男はリンと話を始める。

マクスウェルについて話した後、リンは探れる事は探っておこうと、挙手して質問した。

 

「率直に言って、先生はどちらが勝つと思ってますか?」

 

「おおっと、株を暴落させる質問だな。それぐらい自分で考えろと言いたいが今は許そう。___ふむ。そうだな。“イレギュラー”が頑張ってる様だが、まともにやれば確実に閣下が勝つと俺は見る」

 

笑みをふっと消し、男は答える。

だが、リンもアポロガイストも答えそのものより一つの単語が引っ掛かった。

 

「“イレギュラー”だと?アカレッドの事か?」

 

「いや、違うぜ」

 

リンは、アポロガイストが聞いてくれた事を好都合と思いながら続きを聞く。

 

「あいつに関しちゃ、大ショッカーが来てる時点で予測出来る範囲だ。本当の“イレギュラー”ってのはこいつの事だ」

 

言いながら男は布に映る霧崎を指差す。

アポロガイストは更に困惑を深める。

 

「そいつは、妙な力を使うだけの人間では無いのか?」

 

「そこだよ。あんたらは“そこ”を注視してないようだが、“そこ”が大事なんだよ。こいつの使う“妙な力”、PSIって言うらしいが箱庭ではマイナーもマイナーな力だ。そんなのを使う奴が外界から召喚されて、此処に参戦してる事自体が“イレギュラー”なのさ」

 

「どういう意味だ?」

 

「つまり、こいつは“ズレ”に影響されて召喚されたに違い無いが、それでも異常な存在って事だよ。あんたらにすら関わりが無いのに召喚されるくらいだからな」

 

“ズレ”だの、PSIだの意味が分からない事を言っているがリンは記憶に残していく。

その後、何故アジ=ダカーハが勝つと言い切れるかを聞かされるのだった。

 

「ところで彩里鈴。他のお子様二人は何やっとるよ?」

 

「あ、はい。ちゃんと拘束してあります」

 

「そうかそうか。ならそちらにも唾付けておかないとな。特に斑っ子は俺たちの切り札になるかもしれない大事な駒だ。いい機会だからお前もよく見て勉強なさい」

 

「勉強……ですか?」

 

何を?と首を傾げるリンに対し、ニヤリと怪しげに笑って返す。

よっこらせ、と腰を上げた男はノイズの上からでも分かる不適なオーラを見せながら、

 

「決まってる。悪鬼羅刹すら誑かす“遊興屋”の華麗な勧誘術を、だ」

 

「……………それ、この人には使わないんですか?」

 

「それをやったらつまらなくなるんだよ」

 

リンが思わず呟いた言葉に、笑って返すのだった。

 

 





追い詰められる主催者側でした!!
とはいえ、完全に追い詰められたというわけでも無いですが。

霧崎とラッテンは、両方経験から来る意地などで言い返す事が出来た感じです。
それにより、完全に陥落する事にもなりませんでした。
アカレッドが単体で双頭龍を抑えてるのも大きいです。

遊興屋達に関しては見物人というのが大きいです。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

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