殿下は身を隠しながら戦場を走っていた。
とある交渉は済ませたので一先ず様子を見ようと思ったら、今度は此方が交渉を仕掛けられた。
というか、どうにも割りに合わない事を押し付けられた。
「ったく、これも借りだぞ…………何で俺が時空の檻とやらの綻びを探さないといけないんだよ」
交渉を持ち掛けて来たのはアスカ・シンという男だった。
もはや交渉とはいえ無かったが、時空の檻による空間の綻びとやらを探す事を一方的に押し付けられた。
そんな頼みは普通なら聞く気は無いのだが、現状を打開するには必須と言われては試さないわけにはいかないのだった。
◆◆◆◆◆
一方、空中城塞では十六夜がマクスウェルに首を絞められていた。
絞められた所で応えはしないのだが、熱を奪われるのなら話は別だ。
体温を奪われれば、さすがの十六夜でも細胞が壊死して死に至る。
しかも直接では無く口内を冷気で満たす事で熱を奪っているので質が悪い。
とても暴走しているとは思えない妙手である。
「こっ、のやろ…………!!」
十六夜がマクスウェルの腕を引き剥がそうとすると、乱入者が現れる。
謎の高速移動をしながら現れたそれはマクスウェルに銃撃を放ち、マクスウェルの腕を吹っ飛ばす。
それから十六夜が蹴りを入れようとするが、完全に衝撃が伝わる前に空間跳躍で逃げられていた。
「助けてあげたんだ、感謝したまえ」
「別に助けなんていらなかったよ」
ケホッと咳き込みながら十六夜は、隣に立った偉そうにしてくる男に対し、悪態をつく。
隣に立った男、仮面ライダーディエンドこと、海東大樹は気にした様子も無く、マクスウェルの方を見る。
腕は既に再生していた。
よく見るとマクスウェルの姿は以前より変わっていた。
蒼と紅のコントラストで飾られた外套から白主体の衣装となり、背中には翼のようなものが生えて光る羽根を振り撒いている。
喩えるなら天使なのだが、本性と今の暴走している様子から壊れた印象が強い。
海東がどう手を出すか、と考えていると更に別の乱入者が現れる。
壁をぶち破ってその男は現れた。
「またかよ…………」
「やっと追い付いたか、マクスウェル」
「何だ、君か」
乱入者はハイパーカブトこと天道だった。
ハイパーカブト状態なら単独で飛行が可能なのだ。
海東はディエンドライバーの銃口をマクスウェルに向けながら天道を睨む。
「悪いけど、“あれ”は僕の敵だ」
「いいや、俺の獲物だ」
「何でもいいが悠長に話してる場合じゃ無さそうだぜ」
十六夜の言葉に天道と海東は、視線をマクスウェルに戻す。
「WEEEeeeeeLAAAAAAaaaaaa!!」
理性を失っても尚、ウィラの名を叫び続けるマクスウェルだが、それどころでは無かった。
変身している海東と天道は感じにくかったが城塞の中は寒冷地にでも来たのではないかというぐらいに冷え込み、石造りの壁には氷柱と霜柱が出来始める。
加えてマクスウェルは奪った熱を体内にため込み始めていた。
「なるほど……自爆するつもりか」
「熱量を操る能力と再生能力を生かした自爆攻撃、暴走している割りには合理的な事をするね」
「加えて残像が残るレベルの連続跳躍と無駄が無いわけだ、どうするつもりだ?」
一か八か仕掛ける為に十六夜は既に右腕を掲げていた。
とりあえず十六夜の“疑似創星図”が当たれば終わる。
それだけは分かっていた。
マクスウェルの攻撃が成功すれば、空中城塞が墜落する可能性は高い。
マクスウェルの全身は白熱しており、時間が無い事は間違いなかった。
連続跳躍するマクスウェルを見ながら天道は一言だけ言うのだった。
「とりあえず撃て。タイミングは五秒後だ」
「よく分からねぇが策はあるんだな?時間もねぇし、それで行くぞ」
「僕としては不満だけどね」
海東は無視して行動を始める。
十六夜の右手には光の柱が現れる。
それを見ながら天道は一枚のカードを海東に投げ渡す。
「お前はそれを使え」
「全く人使いが荒いね」
ハイパークロックアップ!!
アタックライド、クロックアップ!!
海東は受け取ったカードをディエンドライバーに入れ、天道は腰のハイパーゼクターをいじる。
電子音声が鳴り響くと同時に二人の姿は十六夜の視界から消える。
十六夜はそれに困惑はしない。
同じ事を士が出来るので今更なのた。
原理は分からないが、視認出来ない状態なのは確かだ。
だが、十六夜は天道を信じ、五秒後に正面に向かって光の柱を放つのだった。
「さすがにクロックアップとはいえ、あそこまでの連続跳躍を捉えるのは難しい様だね」
天道から受け取ったカードはアタックライドクロックアップのカードだった。
そのカードを使い、クロックアップした海東は通常の時間流とは別の時間流で行動していた。
それにより、周囲は全てスローモーションに見える。
十六夜の放った光の柱もかなりゆっくりに見える。
だが、マクスウェルの連続跳躍は残像が残らず現れるのがしっかり視認出来るという程度であり、攻撃のタイミングを合わせるのは難しかった。
とはいえ、天道の思惑は大体察しているので仕方なくそれに合わせる事にする。
「これで決着だ、マクスウェル」ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディエンド!!
ファイナルアタックライドのカードをディエンドライバーに入れる。
そして、ディメンションシュートを“光の柱と交わる軌道”で放つ。
ドレイクパワー!!
ハイパークロックアップ状態の天道には、クロックアップ状態の海東すらスローモーションに見えてた。
その状態でパーフェクトゼクターの一つのスイッチを押す。
ドレイクゼクターがパーフェクトゼクターに装着される。
今の天道にはマクスウェルが現れるのすら、ゆっくりに見えた。
だから、光の柱とディメンションシュートが放たれたのを見ると、目の前に現れたマクスウェルに蹴りを入れる。
そして、パーフェクトゼクターの銃口をマクスウェルに押し付ける。
「ハイパーシューティング」
パーフェクトゼクターの引き金を引くと零距離で光弾が放たれる。
光弾も勿論ハイパークロックアップ状態である。
マクスウェルは空間跳躍する間もなく、光弾によって光の柱とディメンションシュートが交差するポイントに押し込まれるのだった。
クロックオーバー
十六夜の視点では光の柱を放った直後に、高速の攻撃が放たれ、同時に超高速の光弾によってマクスウェルが視認出来ないレベルの速さで光の柱の軌道に押し込まれていた。
「前哨戦は終わりだ。消し飛べ、“マクスウェルの魔王”___!!」
十六夜が呟いた直後に輝く極光が周囲を満たす。
その時には天道と海東も通常の時間流に戻っており、マクスウェルに背を向けていた。
マクスウェルは大量の熱量を抱えたまま、三つの多大な力により、抱えた熱ごと消し飛ばされるのだった。
◆◆◆◆◆
突如、コッペリアは謎の頭痛に襲われて頭を押さえた。
「____っ!?」
「コッペリア!!避けろ!!」
ハッと顔を上げる。
が、遅かった。
霧崎の警告も空しく、コッペリアの乗っていた火龍の首を斬り落とされる。
きっと、霧崎には火龍を襲う“死の脅威”が見えてたのだろう。
霧崎は悔しそうに顔を歪めていた。
眼前には三頭龍が迫っていた。
凶爪が起こした疾風はコッペリアが何かをする前に霧崎が祓った。
『小僧、妙な力を使うようだが防御だけではどうにもならんぞ!!』
「う、うるせぇ!!分かってんだよ、そんな事は!!」
どうもどうやら三頭龍は、霧崎の“弱者のパラダイム”が守るだけでは無いのを察して、それを使わせようと挑発しているが彼の役目はラッテンの護衛なので易々と挑発には乗らずに言い返してはいる。
言い返す霧崎の顔が半ば引きつっているのは、多少ビビッているのだろう。
霧崎とラッテンを背に乗せる火龍も三頭龍から離れていく。
三頭龍が詰まらさそうな視線を向けた気がするが、気のせいだろう。
謎の頭痛に首を傾げるコッペリアはそれどころではなく、額を押さえながら火龍の死骸と共に落下していく。
(今…………誰かの意思が、私の中に入ってきたような…………?)
凄まじい量の情報と、己ではない誰かの記憶がコッペリアの魂に介入してくる。
だが、それは何処か傷が付いた様な感触があった。
突然の事に動揺した彼女は火龍の手綱を握ったまま戦列を離れていく。
その様子を見た霧崎は最低限の指示を叫ぶ。
「コッペリアはそのまま離脱して、フェイスレス達と合流してくれ!!隙を見てジャックの介抱を頼む!!」
「…………申し訳ありません。了解、しました」
頭痛を堪えながら声を絞り出す。
空中戦は大混戦になっていた。
恐慌状態に陥らずに済んだ戦線はそのまは三頭龍との戦いを続行していた。
だが、三頭龍は霧崎とラッテンがこの戦線の核であると目を付けていた。
ラッテンと霧崎が戦線から離れ過ぎれば、三頭龍も追う様に向かってくる。
だから、ラッテンと霧崎は三頭龍から一定距離を保ちながら戦うしか無かった。
彼らを狙う攻撃は全て霧崎が祓い、ラッテンは演奏を続ける。
指示は霧崎の肩に乗るラプ子llが出している。
「全軍、一斉掃射!!」
三頭龍の四方を囲う“サラマンドラ”の火龍と“龍角を持つ鷲獅子”の幻獣達は高速で飛び回り、一斉射撃を浴びせる。
ラッテンの演奏で強化されたそれらは並の武具を遥かに凌駕する。
三頭龍は己の全身を龍影に包んで高速回転して弾いて避け、黒い弾丸となって戦列を縫う様に飛び回る。
弾丸が横を通過した火龍や幻獣達は払い抜けに斬り裂かれて絶叫を上げた。
『ガアアアアア!!』
「………またかよ」
「来てますよ!!」
ラプ子llに言われ、黒い弾丸の放つ“死の脅威”を祓う。
出来るだけ遠くに祓う事で被害を減らそうとするが焼け石に水だ。
既に爪で斬り裂かれたのは多数いる。
“死の脅威”が視認出来るだけに仲間が散っていくのはかなりキツい物だ。
だが、ラッテンは演奏を一旦止めて呆れた様に言う。
「ったく、まだ気にしてるの?割り切りなさいよ。覚悟は決めてきたはずでしょ?」
「それでもキツいのはキツいんだよ。逆に何でお前はそんなに平気なんだよ」
「一度コミュニティが滅んだ経験があるからね、これくらいじゃ動じないわよ」
つまりは割り切れてるという事だろう。
そこらへんはある意味、ラッテンの強みとも言える。
だが、それだけではない。
「……それに気にする程………余裕があるわけじゃないのよね………」
言ってる途中からラッテンの口の端から血が零れる。
口元の血を拭いながら平気そうなかおをするが、やはり双頭龍戦のダメージを残しながら“霊格共鳴”をやるのはかなりの負担なのだろう。
「………大丈夫よ。心配しなくても死にはしないわよ」
「………っ!!」
霧崎は何も言えず、拳を握る。
拳から血が垂れてきているが、それにはラプ子llもラッテンも触れないのだった。
その間にもマンドラが鬼龍を引き連れて三頭龍へと向かっていく。
が、マンドラの大剣は牙によって噛み砕かれ、爪によって肘から先を斬り飛ばされる。
胴体を真っ二つにされなかったのは具直な百年の鍛練が生きたのだろう。
マンドラは切断された腕を押さえ、血が出る程唇を噛み締めた。
「血を捨て去り………同士を捨て駒にして………それでも、一太刀も届かんのか!!」
痛恨の思いで吐き捨てる。
現状で懸けられる物は全て賭して、一瞬足を止めるのが精一杯という体たらく。
悔しさの痛みで気が狂いそうだった。
それでも引くわけにはいかない。
一人、また一人散って逝く同士を追う様にマンドラは立つ。
それを見て霧崎は悔しそうに奥歯を噛み締める。
必要な犠牲、そんな物は作戦を聞く時から言われている。
だが、納得出来るかは、割りきれるかは別だ。
「分かってる……分かってるんだよ………でもよ………」
霧崎の呟きは空しく響くだけだった。
マクズウェル死亡でした!!
少々オーバーキルだが気にしない方向で。
状況的にはドレイクのライダーシューティングを思い浮かべてくれればいいです。
それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。