問題児と000と弱者の箱庭物語   作:天崎

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月龍と太陽龍と穿つ槍

全てのラプ子が十六夜の言葉を全軍に伝える。

士、映司、晴人は作戦を把握してないので近くにいたラプ子に軽く説明して貰っている。

デンライナーはそれなりに無理して出てきた様ですぐに時の砂漠に戻っていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

蛟劉は“契約書類”を手に取り、夜明けでうっすらと消えそうになっている月を見上げた。

 

「……………此処まで来たか。なら僕も覚悟を決めないなあかんな。____降りて来い、月龍ッ!!」

 

月龍と一体化した蛟劉は一匹の星龍と成って戦う。

こうなればアジ=ダカーハが蛟劉を打ち破れば戦いは終わる。

後はやるかやられるかだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方のレティシアも、未発動だった“主催者権限”を発動し、太陽の主権を掲げた。

二度と使う事はないだろうと思っていた力だが、アジ=ダカーハが相手なら出し惜しむ理由は無い。

天を仰いだレティシアは呼吸を整え、緊張をほぐす。

 

「此処が最後の一番だ………………頼んだぞ、主殿……………!!」

 

“蛇使い座”を象徴する二頭の蛇が絡み合う杖。

それを掲げると同時に、夜明けの地平線から大気を揺るがす咆哮が聞こえた。

 

「____GYEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

夜明けの地平線から一直線にレティシアへ突進する巨龍。

彼女を取り込んだ巨龍はその瞳に意思を宿し、地上の三頭龍を睨みつける。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

大まかに作戦を聞いた三人は加勢をする為に立ち上がる。

 

ドライバーオン!!

 

三人は変身の為にベルトを腰に装着する。

映司はアンクに手を伸ばす。

が、アンクは面倒そうに言う。

 

「此処まで来たら、他の奴らに任せておけばいいだろ。こんな所でメダルを失うわけにはいかないだろ?」

 

「いいや、此処まで来たからこそやらなくちゃいけないんだ。だからアンク、メダルを」

 

「ふん。相変わらずだな、お前は」

 

呆れた様に呟きながらメダルを渡す。

映司はメダルを受け取ると、一枚ずつベルトに入れ、スキャナーを構える。

晴人はベルトを操作し、指輪を構える。

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!!

 シャバドゥビタッチヘンシーン!!

  シャバドゥビタッチヘンシーン!!

 

ウィザードライバーから電子音が鳴り響く。

 

「「「変身!!」」」

 

叫ぶと同時に

士はカードをディケイドライバーに入れ、映司はベルトにセットしたメダルをスキャンし、晴人は指輪のバイザーを下ろしベルトにかざす。

 

カメンライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

フレイム、プリーズ!!ヒーヒー、ヒーヒーヒー!!

 

幾つもの残像が士と重なり、姿をディケイドに変える。

映司を中心に回転していた幾つもの円状の物体が赤の物が頭、黄の物が胴、緑の物が足の前に止まり、胸の前で一つになり、オーズへと姿を変える。

晴人は左手を横にやると赤い魔法陣が現れ、晴人の体を通過し、ウィザードの姿へと変えていく。

更に晴人は右手の指輪を変え、ベルトにかざす。

 

「ドラゴン、俺に力を貸してくれ」ドラゴライズ、プリーズ!!

 

晴人の後ろに魔法陣が現れ、そこからウィザードラゴンが出てくる。

そして、バイクと合体し、晴人を背に乗せる。

士もドラゴンの背に乗ると映司達の方を見る。

 

「お前達はどうする?」

 

「俺達は地上から加勢に行きます」

 

「そうか」

 

言うと士と晴人を乗せたドラゴンは、アジ=ダカーハへと向かっていく。

 

「じゃ、行こうかアンク」

 

「あぁ」

 

二人は地上からアジ=ダカーハへと向かっていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『フン。月龍と太陽龍、そして魔力の龍。それが貴様らの切り札か』

 

胸骨の中心に輝く心臓を隠す素振りも見せず、三頭龍はただ泰然と構える。

片翼が潰され、弱点であるはずの心臓を剥き出しにされても、大魔王の魂は揺るがない。

此処まで己を追い込んだ者達は両手の指で数えるほども居なかった。

 

『…………短くも、鮮烈な戦いだった。箱庭の命運を決めるにはこれ以上ない戦いだった』

 

この魔王の心臓に彼らの牙は届くのか。

“絶対悪”を掲げて戦い続けた永刧の時は、意味ある物だったのか。

今、その答えが出る。

 

『来るがいい、英傑たち。そして踏み越えよ____我が屍の上こそ正義であるッ!!』

 

敵を待つ事はしない。

眼前に障害がある。

ならば砕くッ!!

敵より速くッ!!

翼があろうとなかろうと関係ないと、三頭龍は片翼を広げて跳躍した。

翼がない彼と飛翔出来る三匹の龍では空中戦の優位は明白だ。

故に、三頭龍は敵の優位を真正面から砕く。

三頭龍は何時だってそうして戦ってきた。

己こそ真の英傑だと名乗りを上げる者たちに、我こそは彼らが最期に行き着く巨峰でかると固持し続けた。

中には、決して勝てぬと知りながら、愛した者たちの為に戦った者たちもいた。

その愚直さ、その輝きを知ってたからこそ____彼の宗主は、人間の為に涙した。

 

_______“拝火教”悪神の母である、彼女は告げた。

“人間より素晴らしいものなど、この世には存在しません。

ならばこそ私は悲しいのです。

彼らの滅びが絶対的であることが”

 

そう。滅ぶのだ。

このままでは滅ぶのだ。

否定する者はいる。

目の前にもいる。

だが、“何をどう足掻いても人類は滅ぶのだ”。

“拝火教”という枠組みを超えてより強大な超越者としての視点を持っていた彼女には、人類が辿る結末が全て見えてしまっていた。

だから彼女は泣いていた。

己を糾弾して責める人類を、愛したが故に泣いていた。

その彼女の涙を少しでも拭えるのならと思い、三頭龍は最古の魔王____“人類最終試練”と呼ばれる存在を確立させた。

人類が滅ぶ要因を明確にし、細分化することで、彼らが勝利する未来を造ろうとした。

最も業の深い“絶対悪”の旗を己が背負い、世界の終焉にまで付き添うこと。

三頭龍は全ての案を話し終えた上で、彼女の手を取って誓った。

____貴女が背負う罪を、私が共に背負いましょう。

 

そして今、ようやくその契約が終わる。

 

(結末には妥協すまい。人類最終試練として、貴様らを砕こう…………!!)

 

試練の代行者として、加減しては意味がない。

故に挑戦者は渾身の力で砕く。

二頭の星龍と一頭のドラゴンに、三頭龍が吼える。

 

「____GYEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

四体の超龍が天地を揺るがす。

ディケイドとウィザードの銃撃、ウィザードラゴンの炎弾を軽く弾き、月龍の突進を真正面から受け止めた三頭龍は、すかさず切り札を切る。

 

『“アヴェスター”起動。相剋して廻れ、“疑似創星図”…………!!』

 

敵対者の霊格を己に上乗せする。

この力がある限り、数の有利は三頭龍に有効ではない。

三頭龍と宇宙観を共有し合う種族でなければこの力は破れない。

だが三頭龍は、即座に異変に気が付く。

 

(どういうことだ………太陽龍の霊格が上乗せされていない…………!?)

 

小細工で虚を付けるのは僅か一瞬。

だが、それで充分である。

ディケイドはドラゴンから飛び降りながらベルトにカードを入れる。

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

スキャニングチャージ!!

チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

 

ディケイドが上空からディメンションキックを放ち、遅れる様にウィザードラゴンが巨大な足に変型し、ウィザードがそれでストライクエンドを放つ。

加えて地上からオーズがタトバキックを放つ。

 

『甘いわ!!』

 

だが、全て三頭龍に弾かれる。

先程の衝突で体力をかなり消費していたので威力は普段よりは下がっていた。

その程度ならば三頭龍にとって弾くのは容易いのだ。

そして、そんな間に三頭龍は太陽龍の霊格が上乗せされない理由を突き止める。

 

『人類が生み出した遺産か!!ならば“覇者の光輪”で応戦するだけよッ!!』

 

三頭龍は落下しながら口内に閃熱を収束させる。

しかし、それは二方向から飛んできた閃光によって散らされた。

 

『何ィ!?』

 

離れた場所で天道はパーフェクトゼクターを構えていた。

 

「隙は作った。あとは生かすも殺すもお前達次第だ」

 

更に別の場所で黄金の杖を回収していた海東もディエンドライバーを構えていた。

 

「士に死なれちゃ困るからね。特別大サービスだ」

 

一瞬、完全に虚を突かれ、三頭龍の動きが止まる。

レティシアはその一瞬を好機と見て、最後の手段に出た。

そして、弾かれ落下中の晴人も指輪をベルトにかざしていた。

 

「やられっ放しじゃ終われないんでな」バインド、プリーズ!!

 

『“蛇遣い座”の恩恵よ………一瞬でいい、奴を拘束する力をッ……………!!』

 

幾つもの魔法陣から鎖が現れ、三頭龍に絡み付く。

更に黄金の巨龍はその巨体を超圧縮させ、蛇蝎を縛る鎖となって絡み付く。

巨龍の保有する超質量がそのまま鎖になった事で、流石の三頭龍も動きが制限された。

 

『小癪…………!!』

 

『今だ!!私に構わず撃て、黒ウサギ!!』

 

レティシアの声と共に、火龍の一団に強力な神気が発生する。

霧崎達では無いと、三頭龍は即座に判断する。

あれの性質は別だ。

それから序盤に感じた神気だと気が付き、牙を剥いて唸った。

 

『帝釈天………いや、違う!!“月の兎”の生き残りか!!』

 

二百年前に滅ぼした筈の一族。

そしてその手に握られる必勝の槍。

黒ウサギの構える槍を見て、今更宇宙真理の権能に頼るか、と激怒する。

神気を放つ槍と黒ウサギは、稲妻を放って狙いを定める。

 

「我が一族の仇!!此処で晴らします!!」

 

万感の思いを込めた槍が、三頭龍の心臓を狙う。

馬鹿が、と嘆いた三頭龍は”アヴェスター”を____

 

『_______!?』

 

“アヴェスター”が、起動しない。

帝釈天と梵天を二体一対として信仰する概念がある。

帝釈天の恩恵を宿す槍は即ち”拝火教”の宇宙観を宿した恩恵でもあるのだ。

二百年前_____御子だった黒ウサギを逃がす為に散って逝った同士の無念。

過去の痛みと、今日散って逝った同士たちの為に。

黒ウサギは全霊を込めて撃つ。

 

「穿て____“疑似神格・梵釈槍”____!!」

 

星辰体と同等の速度____第六宇宙速度を叩き出して進む必勝の槍。

逃れられない敗北。

僅かに抱く達観。

だがそれら全てを、三頭龍は、最強の魔王は、王威一つではね除けた。

 

『魔王を____“絶対悪”を甘く見るでないわッ!!』

 

魔力の鎖と星一つに匹敵する質量と封印を、力任せに引き千切る。

レティシアは言葉にならない悲鳴を上げて霧散し、人型に戻って落ちていくが地面に衝突する前に映司が受け止める。

アジ=ダカーハは先程の戦闘で得た経験値を元に、自力で星辰体化の恩恵を引きずり出す。

____誰が信じられるだろう。

瞬きの間にも満たない間に三頭龍は二度進化した。

星を砕く膂力と、星の光より速く動く術。

人智の及ばぬ二つの恩恵を魂の強さだけで引き出した。

こんな事を予想出来る者がいたとするのなら。

 

「____ああ。お前なら、避けると思っていたよ」

 

それは。

魔王と言う存在に羨望し、彼の王威を信じていた者以外はあり得なかった。

 





次回決着です!!
海東はちゃっかりお宝を回収していました。

それでは、質問があれば聞いてください。
感想待ってます。

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