絶体絶命 作:ぴのこ
印象的だったのは金木君のセリフ
「なにか欲しいものがあれば、傷つくことを恐れずに
踏み出すことが必要なんだよ」
では、本編行きましょう~
猛暑日の熱帯夜だった昨晩、金木はなかなか寝付けなかった。
昼間、電車を降りて研究所までの慣れた道のりを
いつものように徒歩で進むのだが、コンクリートの輻射熱が体全体を覆い
まるで熱射ベルトに縛り付けられているかのような
嫌悪感が金木を一層不快にさせていた。
「まいったな・・・夏が暑いのは承知のことだが
こう暑すぎると、思考が停止してしまう。研究室についたら
ちょっと休ませてもらおう」
まさか自分が熱中症になるとは、夢にも思わなかった金木だった。
「おはようご・・・・・・(バタッ)」
「キャ~!!!!金木さん!!!!」
助手の女性が悲鳴をあげた。
「なんだ?どうした?」
晧仁があわててかけつける。
「金木!しっかりしろ!バイタルは・・・?」
そばでピノコが金木の脈を測る。
「脈が弱くて速いわ。呼吸数が増加。顔面が蒼白だから
熱中症の疑いがあるわ。すぐに処置室に運びましょう」
「そこの冷蔵庫に冷却シートがあるから持ってきて!
洋服を緩めて」
金木はすぐに処置室に運ばれた。
医療チームの迅速な処置のおかげで大事には至らなかったが
数日間、研究に没頭していた金木は、ろくな食事もとらず
睡眠不足だったこともあり、体力が消耗していたようだ。
「点滴してるし、体力戻ったら食欲もでるかと
思うけど、未来さんとの約束はキャンセルしなきゃね。
あたい連絡しとくわ」
「ああ、頼むよ。姫乃。」
ーおい・・・やめろ・・・それはやっちゃいけない!
俺がなんとかするから!堪えるんだ・・・
あともう少しなんだ・・・もう少しで完成するから
だから、手を出すな!!!それだけは・・・・だめだ!!!!-
朦朧とする意識の中で金木は叫んでいた。
「おい、大丈夫か?金木?」
意識の戻った金木は、あたりを見回すと
「え?俺、何やってんだ・・・ここは・・・」
「熱中症で倒れたんだよ。金木ん。もう、無茶するから。
血圧も体温も正常に戻ってるから。あとは栄養と休養とれば
大丈夫。」
「あ・・・姫乃子さん・・ご面倒かけちゃって
ごめんなさい」
「謝るんだったら、とっとと体調戻して、研究室に
戻ってくるんだな」
「晧仁君も・・・すまない。迷惑かけちゃったな」
金木の意識が戻り、晧仁も姫乃子も安堵していた。
そんな中、ニュース速報が流れた。
6区付近でで殺人事件が起きた。
一同はかたずをのんで速報に聞き入っていた。
「そういえば・・・東都6区って・・・未来ちゃんの
家の近くよね?晧仁?」
「あ、ああ・・・物騒だな。こう暑いと人間も
おかしくなったりするのか・・・とにかく俺たちも
気を付けないとな」
金木は二人の会話をききながら、全身が震撼しているのを
感じていた。
(まさか・・・まさかそんなこと・・・あってはいけない。
あるはずがない。きっと思い違いだ・・・俺が考えすぎなんだ。
変な夢をみたから、そのせいだ・・・)
金木の脳裏に浮かぶ光景は、まるで真夏の蜃気楼のようだった。
暑い暑い暑い
わかってるから暑いって言うな!