SF-ストライク・フォース   作:田んぼのアイドル、スズメちゃん

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更新遅れてしまい申し訳ありません。


入学編-10

 藍那の朝は早い。

 子供兵時代に日が昇ると同時に起床するという生活を送ってきていたため、日本に来た後も体が勝手に目覚めてしまう。

 いつもは朝5時に目覚めてしまうため、登校時間までかなりの時間がある。そのため、体力増強を兼ねて以前よりトレーニングを行っていた。SF学園へ入学して数日は行わなかったが、やはり日々のルーティーンともいえるトレーニングを再開していた。

 藍那はいつも通り5時に目が覚めた。

 今朝は刀華との約束もあり、少し早めに準備をしてグラウンドへ行くことにした。

 いつもと同じように寝間着から運動着に着替える。上は半袖のランニングウェア、下はロングのスポーツタイツに上とそろいの短パンを履いている。その後、あらかじめ準備していたスポーツドリンクを水筒へ移す。

 あくまで早朝の自主トレーニングである為、水筒は500mlの水色のものである。

 準備を済ませ、何時ものように部屋を出ようとした時、

「ん・・・。あれ、藍那さん。朝、早いですね・・・。こんな時間にどこか行くんですか?」

 朝に弱い香奈子が珍しく目を覚ました。

 実を言うと、香奈子は少しでも藍那へ追いつくべく今日から藍那に内緒で早朝トレーニングを始めようとしていたのだ。

 昨晩、腕時計式の目覚まし時計をセットして張り切っていた。

「自主トレよ。香奈子こそ今日は早いのね。」

「えっ!藍那さんも自主トレですか?」

 香奈子が驚きの声を上げる。

「私も、ということは、香奈子も自主トレ?それなら、一緒にどう?」

 香奈子は藍那に内緒でトレーニングをし、藍那を驚かせてやろうと画策していた。しかし、藍那に早くもばれてしまった。

 香奈子は「はい。」と返事をし、自分もトレーニングへいくための準備を始めた。

 

 刀華も5時頃に起床し準備を整え、待ち合わせ時間よりも少し早い5時25分にグラウンドへ来ていた。

 しかし、刀華は1人ではなかった。

 刀華のルームメイトの柴田佳乃(しばたかの)も一緒であった。

 佳乃は身長180cmほどもあり、かなりの長身である。整った美しい顔立ちをしており、おっとりとした目をしている。瞳の色は透き通ったセルリアンブルーをしており、とても美しい。背中の中ほどまである深みのある黒の髪を青い紐で一つにまとめ右肩に流している。

 刀華と佳乃の2人はSF学園の校章の入った学園指定の体操着を着ている。

「何で佳乃まで来てるの?ゆっくり寝ててもいんだよ?」

「いやいや、刀華さん1人だといろいろと心配ですから。いつ問題を起こしかわかりませんしね?」

 佳乃は刀華へ嫌味をサラッと言う。それに刀華は「ははは・・・。」と苦笑いをする。

「それより、いらっしゃったようですよ?」

 刀華たちと同じ学園指定の運動着を着た少女と、ランニングウェアを着た少女が歩いてきた。

「おはよう。刀華1人だと思っていたけれど・・・。この人は?」

 藍那が刀華に問う。

「こっちは私のルームメイトの柴田佳乃。私がトレーニングに行くって言ったらついてきたんだよ。」

 刀華が苦笑いしながら佳乃について説明する。その横で佳乃が「よろしくお願いします。」と一礼しながら挨拶している。

「それはそうと、そちらの方は?」

 刀華は香奈子を見る。

「はじめまして。藍那さんのルームメイトの西原香奈子です。よろしくお願します。」

 香奈子は刀華と佳乃に自己紹介をする。

「時間も惜しいから、早速ウォーミングアップしましょ?」

 藍那の一言で、早朝トレーニングが開始された。

 

 普通、ウォーミングアップとはストレッチと軽いランニング程度を思い浮かべるだろう。

 しかし、藍那の提示したメニューはストレッチと5㎞のランニングだった。5㎞は決して軽いランニングではないが、藍那に真顔で軽いランニングだと言われ他の3人はため息をついた。

 ストレッチを終え、ランニングが始まって15分。藍那はいつもと同じ様にかなりの速さで走っていた。

 藍那の速度は普通の人にはとても速い速度である。しかし、以前から道場で下半身の強化を目的に走り込みをしていた刀華は必死で藍那に食らいつき、距離を離されないように走っていた。

 香奈子は最初の数分、藍那について走っていたがすぐに限界を迎えペースダウンした。一方、佳乃は自分のペースを守り順調に走っていた。ちなみに先ほど藍那に周回遅れにされた。

(はぁ・・・。興味本位で刀華についてきたはいいけど、こんなに真剣なトレーニングだったなんて・・・。刀華が言うようにゆっくり眠っていればよかった・・・。)

 佳乃は心の中で嘆く。気合を入れなおすため顔を上げると、今にも死にそうな香奈子を発見した。

 香奈子はゾンビ映画のゾンビか水を求め徘徊する亡者のように、とぼとぼと走っていた。

 明らかに限界を迎えている。

 このままではまずいと思い、少し前を走っていた刀華のもとまで走る。

「刀華、あれって少し不味くない?」

 佳乃は加奈子の方を指さし、刀華へ伝える。

 刀華も香奈子の方を向き、満身創痍の香奈子を確認する。そして、全力疾走で藍那に追いつき、ランニングを中断した。

 

 全員でグラウンドのわきにある芝生で休息をとる。5㎞を予定していたランニングは途中で中断となり、中でも満身創痍だった香奈子は大の字に伸びていた。

「ペース配分を考えないのはダメよ?」

 藍那が香奈子に忠告している。そんな藍那はほとんど疲労が見えない。

 刀華と佳乃は香奈子ほどではないが、疲労している。

「それにしても、藍那はすごいなぁ。あのペースで走ってほとんど疲れてない。やっぱりただものじゃないね。」

 刀華は藍那に感服したという様子である。

「私はただ訓練を重ねただけよ。」

 藍那は何でもないといった様子である。

「まぁ、仁科さんはともかくとして、やっぱり走るのって胸が小さい方が有利なのかしら?」

 いきなり佳乃が刀華を見ながら呟く。

 佳乃の胸は藍那と同じぐらいで平均以上である。香奈子は平均値を大幅に上回っており、今いる4人の中で1番大きい。それに対し、刀華は少々残念である。

 佳乃の言葉を受け、刀華は自分の胸と他の3人の胸を見比べる。刀華以外の胸は豊満で、自身の胸はチマッとしている。

 刀華は佳乃の言おうとしていることを理解した瞬間大爆発した。

「巨乳が何だっての!?ただ大きくても肩は凝るし、動くのに邪魔になるし。邪魔なだけだよ!!それに、胸の大きさで価値が決まるわけじゃないんだよ!!」

 刀華は最後の方はやけくそになり、涙目になっていた。

 今回のトレーニングは昨日予定していたような訓練ではなく、単に楽しく運動するだけになってしまった。

 

 藍那達2組と刀華達1組はともに、木金曜の午前中は丸々SFの操縦訓練である。

 早朝のトレーニングを早々に切り上げ、4人は各々SFスーツを着用した状態で第2グラウンドへ集合していた。

 1限目からグラウンドで実習ということもあり、SHR(ショート・ホームルーム)無しで現地集合となっている。

 しかし、トレーニングが早く終わりすぎてしまったため、8時現在まだ藍那たち4人しか集まっていない。集合時間は8時半であるため、当然ともいえる。

 SF学園は全国から優秀な人材が集まってくる。そのため、15分もしないうちに1組と2組の全員が集合した。

 操縦訓練の科目は1組と2組の担任とSF担当の教官が1人の計3人で担当する。このSF学園の教員のほとんどが元軍人かSF学園卒業者であり、担任を任されている教員はSFを操縦することが出来る。

 その中でもSF操縦訓練の担当教官である小久保夏希(こくぼなつき)は国防空軍に所属していた経験があり、学園内でも屈指の実力を持つ。

 生徒が集合して数分後3人の教員が集まり、少し早めに実習が始まった。

「今回はSFを装着しての歩行訓練と、前回と同じ握力制御を行う。それでは、各自SFを装着して再集合してくれ。」

 3人の教員を代表して小久保が指示を出す。小久保は今年で45歳を迎えるが声には張りがあり、よく通るためメガホンなどの拡声器は必要なかった。

 前回のSFを装着しての握力制御訓練では腕部のみを装着していた。しかし、今回はスラスター等の飛行ユニットと武装を除いたすべてを装着している。

 これは、藍那を含めて生徒は全員初めての経験であり、グラウンドに併設されているSFの格納庫から皆ぎこちない動きで出てきた。格納庫からグラウンドの集合場所まで100mの距離もない。普通であれば歩いて2分もかからないだろう。しかし、慣れないSFによって再集合に10分もかかってしまった。

「まぁ、初めてにしては上出来か。今日と明日の2日でまともに歩けるようになってもらう。飛んだり跳ねたり走るにはだいたい1ヵ月かかると思ってくれ。そのための基礎として歩行ができないと話にならない。間違えても怪我をしないように各々訓練に励んでくれ。」

 小久保の号令を受け、各々歩行訓練を開始した。

 SFは3~4mの人型のパワードスーツのようなものである。そのため、歩行方法は普通に歩くのと大差ない。しかし、SFのパワーは人間の10~20倍であるため、力加減がとても難しく気を抜くと転倒してまう。

 SFで転倒してしまうと3~4mの位置から落下してしまうのと変わらない。しかし、ガルダニウムが生み出すワームホールを応用した機体の周りに薄膜のように展開されているシールドと、SFによる重力制御によって大怪我をするということはない。

 だとしても3~4mの位置から転倒するのは恐怖である。そのため、皆とても慎重に歩いていた。

 これはコア適合率60%という驚異的な数値をたたき出している藍那も例外ではなかった。

 練習機の初風を装着した藍那はバランスをとりながら、他の生徒と同じように歩行訓練に取り組んでいた。

 訓練を開始して10分、藍那と香奈子はスムーズに歩行していた。

 SFでスムーズに歩行するには普通半日はかかる。しかし、藍那と香奈子はたった10分足らずで慣らしてしまったのだ。

 これは単純に才能があったとしか言えないが、教員を含め周りの生徒は目を丸くしていた。

「先生。一応歩行は問題なくこなせるようになりました。次の段階へ進んでもよろしいでしょうか?」

 小久保の元へ藍那と香奈子がSFを装着したまま歩いていく。

 そんな2人に度肝を抜かれつつも、小久保は2人に走行練習と握力制御訓練をするように伝えた。

 藍那と香奈子の2人は数分でSFによる走行をこなせるようになり、握力制御訓練へ移った。

 愛奈は握力制御をほとんど習得している。しかし、香奈子はまだまだであった。

「藍那さん・・・。どうやったらそんなにうまく掴めるんですか?」

 難なく訓練用の割れやすいボールを摘まみ、ジャグリングのようなことをしている藍那に香奈子が話しかける。

「香奈子はお箸を使うのは得意?」

 なぜSFの話の中にお箸が出てきたのかわからず、香奈子は首を傾げる。

「はい。得意か苦手かと言ったら得意だと思います。小さい頃から母に細かく言われてきましたし。」

「そう。なら、鍋の中の豆腐をお箸で崩さずに摘まむ感覚を思い出してみて。そうするとうまくいくと思うわ。」

 藍那は箸を使うのはあまり得意ではない。藍那にとっては箸で豆腐を摘まむのもSFで卵を摘まむのもあまり変わらないのである。ただ、他の人にそれが当てはまるかと問われれば、そうでもない。

 しかし、香奈子には藍那の助言がベストだったようで、ジャグリングとまではいかないが普通に摘まめるようになった。

 

 静と七海たちはなかなか上達しないでいた。

 藍那と香奈子を基準に考えては他の者たちの進捗スピードは遅いだろう。しかし、これが普通なのである。

 だが、あの2人はできているのにもかかわらず、自分たちはできていないという焦りは徐々に生徒全体に広がっていっていた。

 静は今年の入学生の中で2位の成績で入学した。自分的には運動も平均以上にできていたから、この学園でクラスのトップになれると思っていた。

 しかし、反則じみた仁科藍那という少女がいた。

 静は藍那を羨ましくは思うが、憎く思うことはない。それどころか、彼女と切磋琢磨することによって自分を含むクラス全体の底上げになってくれるのであれば、静は嬉しく思う。

 だが、静は自分が思う以上に負けず嫌いだった。

 素直に藍那へ助言を求めることが出来ず、1人で黙々と歩行訓練に励んだ。

 

 七海は自他共に認めるオタクである。

 このSF学園を目指したのは趣味であるインターネットの最新機器などに触ることができるということが目的であった。

 中学生の時、七海はクラス内でいじめにあっていた。そんなつらい時代に心の支えになったのがインターネットだった。

 七海からすればSFの操縦や勉強などはSF学園での最新機器に触るための手段に過ぎない。そのため、周りの誰よりも気楽に訓練に取り組んでいた。

 しかし、手を抜いて何とかなるほどSF学園は甘くない。周りにいるクラスメイト、特に自分のルームメイトである静は学年の中でも有数の成績を誇る。

 そんな者たちに囲まれ、ここでは自分の過去を知る者もいない。

 そうであるなら、自分も心機一転以前自分をいじめていたやつらを見返すためにも、努力してみようと思い隣にいる静のように歩行訓練に集中した。

 

 刀華と佳乃も例にもれず悪戦苦闘していた。

 2人は協力し合い訓練に取り組んでいたが、なかなか上達しなかった。どうすればうまくいくかということを話しながら取り組んでいたが、なかなか難しい。

 そうしていると、グラウンドのトラックをSFを装着したまま走っている藍那と香奈子を発見した。

「おーい。藍那ーッ!ちょっと来てくれーッ!」

 刀華達はあまり早く動けないので、ダメもとであったが藍那と香奈子に手を振る。

 藍那は手を振る刀華達に気づき、軽快な足取りで走ってきた。

「どうしたの?何か問題でもおきた?」

「いや、問題はない。が、何でもそんなに軽快に走れるんだ?以前からSFに乗ってたのか?」

「SFの前身装着は今日が初めてよ。ここまで動けるのは、そうね・・・、才能かしら。」

「・・・。才能は認めざる負えないが、何だか認めたくない・・・。」

 藍那の自分は天才だという言葉に唸る。

「まぁ、難しく考えないで、いつも歩いているように歩くことを意識するといいわ。」

「私は目をつぶって歩いてみたら、すぐに感覚がつかめました。」

 藍那と香奈子が2人に助言する。

「ありがとうございます。参考にさせていただきますね。」

 佳乃は藍那と香奈子の後ろにいる人物に気付き、2人に礼を言いって自分たちの訓練に戻った。

「仁科と西原。お前たちは特別メニューだ。ついてこい。」

 藍那と香奈子は自分たちを呼ぶ声に振り向く。そこには、小久保が先ほどと違い教員用の初風を装着した状態で立っていた。

 小久保の装着している初風は藍那たちが今装着している初風ようにスラスターを外していない。

 小久保の初風は腰部スラスターユニットと肩部に浮遊しているスラスターユニット、それに背中にあるメインスラスターを装備している。肩部のスラスターユニットは重力制御による相対距離の固定によって浮遊させている。

 この重力制御による相対距離の固定は、機体に直接装備しているユニットと同じような強度を持つ。スラスターの燃料はワームホールによる燃料供給を行っている。(ワームホールは生物を通過させることはできないが、生物以外の有機物と無機物は何の干渉も距離も関係なく通過できる。そのため、SFやガルダニウムを使用している飛行機や船のといったものに、燃料タンクというものは必要なくなった。)

「お前たち2人は筋がいい。例年であればまだ早いがお前たちには飛行訓練に移ってもらう。」

 小久保の声はSFの歩行音や生徒の声でにぎやかになったグラウンドにもよく通り、小久保の声を聴いた生徒は全員藍那たちの方を向いた。

 例年、SFの飛行訓練に入るには早くても1ヵ月は必要である。これは、歩行と走行、握力制御などの基礎的な技術を完全に習得しなくてはならない。そのため、たった1日もたたないうちに飛行訓練を行うというのは、異例中の異例である。

「飛行の難易度は走行の比ではない。いくらお前たちが天才的な才能を持っていても、そう簡単にはいかないだろう。覚悟しておけよ?」

 藍那と香奈子は「はい。」と応え、歩行訓練を行っている他の生徒の邪魔にならないよう小久保について歩き始めた。

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