SF-ストライク・フォース   作:田んぼのアイドル、スズメちゃん

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入学編-14

 予想外のアクシデントが発生したが、それはもう昨日の話。

 休日にとなれば皆昨日の事故のことなど忘れたように羽を伸ばす。

 そんな中、藍那と香奈子、刀華と佳乃は平日と同じように朝のトレーニングをした後、射撃訓練場に来ていた。

 目的はもちろん射撃訓練である。

 これは、刀華が藍那に剣術を教える代わりに、その他の戦闘技術を教えるという藍那の提案によるものである。

 藍那は刀華と2人で特訓する予定でいたが、何故か香奈子と佳乃が2人についてきている。

 射撃訓練場を使用するにあたって、監視員として教員がつく必要がある。そのため、藍那は予め岸に監視員を頼んでいた。

 岸は快く監視員を引き受けてくれた。

 そんな岸は現在、教員室でアイマスクと耳栓をして爆睡していた。

 岸曰、「お前(藍那)がいるんだったら、俺がいる意味はないだろ?射撃の腕だって一流なんだからな」とのことである。

 実際、藍那は国からのライセンスを持っており、刀華達に教える分には問題ない。

 それに、休日であるにもかかわらず、嫌な顔1つせず協力してくれた岸には感謝しなくてはならない。

 射撃訓練場を借りているのは午前中いっぱいである為、あまり長い時間訓練できるわけではない。

 それもあって刀華達3人は的へ向かって、銃の引き金を引いていた。

「柴田さんはリコイルの衝撃を肘で吸収する癖があるわね。それは今使っているオートマチックの銃にあまり適さないわ。どちらかというとリボルバー向きね。でも、オートマチックを使っていく予定なら、その癖は直した方がいいわね。」

 藍那は佳乃の射撃を見て的確なアドバイスをする。

「藍那さんでよろしかったですよね。私も苗字ではなく名前で佳乃と呼んでください。それと、アドバイスありがとうございます。リボルバーでしたっけ?今から試してみます。」

 佳乃は藍那に言われたように、銃が保管されている棚にリボルバーを取りに行った。

「それにしても、撃ち方の癖から適した銃がわかるなんてね。やっぱ只者じゃないね。私も撃ち方で相性ってわかる?」

 そういう時刀華は的に向かって3発の銃弾を打つ。しかし、そのことごとくが的を外した。

 それを見た藍那はため息をつき「まずは練習ね。」とだけ言った。

 刀華の横で香奈子はアサルトライフルを撃っていた。

 香奈子はハンドガンを授業で藍那にある程度教わっていた。

 そのため、今回はアサルトライフルを練習しようと予定していたのだ。

「アサルトライフルって難しいですね・・・。」

 香奈子も見事に的を外している。

「香奈子も練習あるのみね。ちょっと貸してくれる?」

 香奈子は藍那に持っているM4A1を渡す。

 藍那は受け取ったM4A1を的へ向け構える。その動作は無駄な動きが一切なく、そのまま教本に乗せていいほどであった。

 藍那はセレクターレバーをSEMI(セミオート)からAUTO(フルオート)へ切り替える。そして、短くトリガーを引き3発ずつ発射する。

 撃った弾のことごとくが的の中心付近へ命中する。

 藍那が1つのマガジンを撃ち尽くすころには、香奈子達3人は息をのみ魅了されているようだった。

「香奈子は姿勢よく構え過ぎよ。こんな風に」藍那が銃を構えなおす。「ほんの少し背筋を丸め、両肩をすぼめるような意識をして構えるの。そうすれば自然と前傾姿勢になるわ。腰を少し落として膝を少し曲げて肩幅に足を開くの。そうすると、重心が下に落ちて自然と前傾姿勢になるわ。」

 藍那はセレクターレバーをAOUTからSAFEへ切り替え、香奈子へ返す。

「銃を構えてみて。構え方を修正していくから。」

「分かりました。」

 香奈子は先程の藍那の姿勢をまねて銃を構える。

「そんな感じよ。そんな感じで重心を落とすの。ストックは肩の付け根部分にしっかりとあてて。そうすれば、構えた時の安定性が向上して、弾の軌道がぶれにくくなるわ。後は頬付けね。」

「藍那さん。勉強不足で申し訳ないのですが、頬付けって何ですか?」

 申し訳なさそうに佳乃が手を挙げ、質問してくる。

「頬付けはライフルのストック部分に頬をくっつけて狙いを定める体勢の事よ。正しい頬付けができれば狙いも正確になるわ。これは、肩付けと同様に安定した弾の軌道を得るためには大切な事よ。」

 藍那は佳乃の質問に対して、丁寧に解説する。

 佳乃は藍那の解説を受け、理解できたのか何度も頷く。

「まぁ、百聞は一見に如かずね。香奈子。撃ってみて。」

 香奈子は頷き、トリガーを引く。が、弾が出ない。

 藍那は香奈子の持つ銃のセレクターレバーの位置を見る。案の定、セレクターレバーがSAFEの位置にあり、安全装置が働いていた。

「香奈子。本気で撃つ気なら、セーフティーを外さないと。」

 香奈子は軽く赤面し、セレクターレバーをSEMIの位置へ変更する。

「じゃあ、気を取り直して。」

 香奈子は1度深呼吸し、引き金を引く。

 パンッという子気味の良い銃声とともに弾丸が打ち出され、標的に向かって真っすぐ飛ぶ。

 藍那は的の中央へ命中させたが、香奈子の弾は中心を大きく外れが的には当たった。

 先ほどまでは的に絣すらしなかったのに比べれば、大きな進歩といえた。

 それを見ていた刀華と佳乃は「おぉ~!」と感嘆の声を上げる。

「こんな感じで、正しい構えと正しい姿勢をとれば、命中精度は格段に上がるわ。佳乃は変な癖がついていないから、正しい姿勢をとれているわ。次は刀華かしらね。」

 藍那は香奈子の時と同様に刀華の姿勢を強制した。

 これも結果は顕著に表れ、先ほどまで見事に外していた弾が的に当たるようになった。

 

 藍那の指導の下、真剣に特訓し最初に比べれば格段に上達した。

 やはり弾が当たるようになると楽しくなるものである。

 しかし、楽しい時間とは瞬く間に過ぎて行ってしまうものである。

「おーい。もう昼だぞ?そろそろ後片付けを始めろよ。」

 教員室から岸があくびをしながら出てきた。

 岸の言葉を受け、4人は一斉に時計を見る。時刻は11時30分を過ぎており、片づけをすることを考えるともう始めないと昼までに終わらない。

「どうだ?だいぶ上手くなったか?」

「たった半日ではあまり変わりません。しかし、朝に比べると少しは上達したと思います。」

 4人を代表して藍那が応える。

「そうか。そいつは良かった。俺が休日返上で来たかいがあったってもんだ。せっかくだ。俺にもちょっと撃たせろ。」

 藍那は岸の言葉を想定していたかのように、ハンドガンを差し出す。

 岸は藍那と同じようなきれいな姿勢で銃を構え、的に向かい引き金を引く。

 1発で的の中心付近をとらえる。

「思ったより腕が落ちてないな。」

 岸はおどけるように笑いながら銃を下ろす。

「よし。俺も手伝ってやるから、さっさと片付けちまうぞ。」

 片づけは岸も加わり5人で行ったため、思ったよりも早く終わり12時までに射撃訓練場を後にした。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 射撃の練習を終え、4人は仲良く昼食をとっていた。

 今日も朝のトレーニングの後、購買部で昼食を購入していた。

 12時となると他の生徒も昼食をとるため、庭園のように人気のスポットは人でいっぱいになっている。

 そのため、藍那達はグラウンドのわきにある四阿で昼食をとっていた。

 香奈子はクリームパンとチーズ蒸しパン、刀華はツナマヨと焼き鮭のおにぎり、佳乃は購買部特製日替わり弁当、そして藍那はいつも通りの不味いで有名なレーションであった。

「それにしても、藍那っていっつもそのレーションよね。不味いって噂だけど本当はおいしいとか?」

 刀華は藍那がいつも同じものしか食べていないことを、素直に疑問に思っていた。

「ん?気になるなら、食べてみる?」

 藍那は刀華へまだ封を破ってないレーションを渡す。

「・・・。・・・まずい・・・。」

 刀華はレーションを1口かじり、みるみる間に表情が“無“にかわっていった。

「なにこれ!?消しゴムなんて食べたことないけど、デカい消しゴムの味がする!こんなものよく食べれるね!?」

 “無”から再起動した刀華は怒涛のように話し出す。

 人をここまでにするレーションとはどんなものか気になるが、わざわざまずいものを食べたくはないため香奈子と佳乃はレーションに手を出さない。

「私には味覚がないの。それに、レーションは栄養バランスを考えて作られているから、栄養バランスを考えなくていいのよ。」

 藍那はサラッと応える。

 しかし、「味覚がない」という単語に佳乃が引っかかる。

「「味覚がない」ってどういうことですか?」

「味覚がないといっても、少しはあるのよ。ただ、何を食べても血や泥の味になってしまうの。」

「「「!!!???」」」

 藍那の衝撃的なカミングアウトを受け、全員が動揺を隠しきれない。

 3人は何を食べても血と泥という事を想像する。もし、自分がそれなら耐えられないだろうと思う。

「私なら耐えられない・・・。どうして、そんなことに・・・。」

「楽しい食事の時間を台無しにしてしまったようね。ごめんなさい。香奈子と刀華には話したことがあるけれど、私は元子供兵なの。私の味覚がこんなことになってしまったのは、脳の異常かと思って病院に行ったわ。でも異常は一切見つからなかったわ。精神科医の話によると心的外傷後ストレス障害(PTSD)の一種らしいわ。」

 藍那は「前例が無いから、確定ではないけれど。」と続ける。

 予め藍那の過去をある程度知っていた香奈子と刀華はともかくとして、初めて知った佳乃は口を手で覆い絶句している。

「まぁ、私の場合慣れてしまったから、苦痛には感じないわ。でも、周りの人がおいしいといって食べている者の味が気にならないといったら、嘘になってしまうわね。さあ、この話はお終い。楽しい昼食の時間にしましょ?」

 藍那はこの空気を何とかすべく、無理矢理話を終わらせた。

 

 昼食も終盤に差し掛かった時、

「やっぱり、私って走ったり飛んだりするの苦手だから、兵士に向いていないのかなぁ・・・。」

 神妙な面持ちで香奈子が呟いた。

「そんなことはないわよ。私は専ら動いて敵を討つタイプだけれど、そうでない人ももちろんいるわ。例えばスナイパーね。」

 3人は「スナイパー?」と聞き返してくる。

「えぇ。スナイパー。簡単に言ったら、物陰や建物の上などから敵を狙撃する者の事よ。」

「いや、流石にスナイパーの意味ぐらいは私でもわかりますよ。でも、何で私がスナイパー何ですか?」

 香奈子は心底不思議そうに藍那に尋ねる。

「さっきの射撃練習で思ったのだけれど、香奈子は呑み込みが良いいからすぐにアサルトライフルの射撃が上達したわ。それなら、スナイパーライフルも使えるのではっと思ったのよ。」

 なるほど、と思うと同時に、藍那に褒められたような感じがしたのか、香奈子は少し照れ臭そうにする。

「それなら、スナイパーライフルをちょっとでいいから使ってみたいです!」

 香奈子は意気込み十分といった様子で、とても気合が入っている。

「そうと決まれば、この後スナイパーライフルを使うのが上手い人のところへ行きましょうか。刀華と佳乃はどうしますか?」

「私は1日中特訓に使うと思ってたから、予定は空いてるよ。」

「私も刀華さんに同じくです。良ければついて行ってもよろしいですか?」

 どうやら、刀華と佳乃も予定が開いているらしい。

 藍那は「もちろん。」と応え、4人で四阿を後にした。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「それで、俺のところへ来たと・・・。」

 藍那たちは第3特別訓練場の教職員室に、石塚を訪ねてやってきていた。幸い教職員室には石塚しかいなかった。

「はい。スナイパーライフルのことでしたら、あなたが1番かと思いまして。」

 藍那は石塚に当たり前だと言わんばかりに話す。

 藍那が「スナイパーライフルを使うのが上手い」と言われ連れてこられた3人は、何が何だかといった様子である。

「あのなぁ?今日は土曜日で、俺の勤務時間は午前中までなんだぜ?昼めし食ってたらいきなり来やがって。さっさと家に帰りたいんだが?」

 現在、石塚達教師の勤務時間は労働法で土曜日は午前中と決められている。

 それに加え、石塚は残業というのが大嫌いであるため文句が止まらない。

「かわいい生徒のお願いです。」

 石塚は深いため息をつく。

「何が「かわいい生徒」だ。勉強熱心ってのは認めるが、お前らも休日ぐらい休めよ。それに、家でかみさんが待ってるんだ。早く帰りたいの。」

 これまで悪びれることなく真顔で淡々と話していた藍那が、石塚の「かみさんが待っている」という単語に反応する。

「石塚先生。やっぱり、ご結婚なされていたんですね?てっきり、一生独身だと思ったのに・・・。」

「相変わらず失礼だな~お前は。」

「それで、貴方と結婚するなんていうもの好きは、どんな方なんですか?」

「もの好きって・・・。お前も知ってるやつだぜ。仁科。」

 藍那は少し考えこむ。

「まさか、祐美さんではないですよね?」

「おぉ。よくわかったな。旧姓夏目裕美(なつめゆみ)。今は石塚裕美だ。」

 石塚は軽くどや顔を藍那に向ける。

 藍那はため息を1つつく。

「なるほど。裕美さんなら納得です。」藍那はニヤリと口角を少し上げ、悪い笑みを浮かべる。「由美さんなら今から許可をとれますね。」

 藍那は胸ポケットからスマートフォンを取り出し、素早く操作しメールを送る。

 それを見て石塚は深いため息をついた。

「あのー、私達話についていけてないんだけど・・・。お2人さんて昔からの知り合い?」

 恐る恐る刀華が聞いてくる。

「あぁ、俺がまだ軍人だったころからの知り合いだ。」

「補足して説明すると、子供兵だった私を解放してくれた1人よ。本当に感謝しているわ。」

「本当にそう思ってるなら、少しはいたわってほしいもんだぜ。」

 3人は合点がいったという顔になる。

「それじゃあ、先生は藍那さんがSF学園に入学するから、ここへ来こられたんですか?」

「いいや。俺がここへ来たのと、こいつが入学したことは何の関係もない。偶然ってやつだな。」

 どうやら、香奈子は藍那が入学するからここへ来たのではと思ったらしい。

「俺は軍を退役してやることもなかったからな。まぁ、所帯も持って働かないってのは、かみさんに殺されるからここへ来たって感じだな。」

 石塚は笑いながらここへ来た経緯を話した。

 そうしていると、藍那のスマートフォンにメールの着信音がなった。

 藍那はすぐにメールを確認する。文面は「藍那ちゃん久しぶり。そこにいる私の旦那は、好きにこき使って構わないわよ♡」となっていた。

 藍那は、石塚にメールを見せる。

「奥さんからの許可は取ったので、ご指導お願いします。」

 石塚は観念したのか、両手を軽く上げ好きにしてくれと首を振った。

「それで、俺は何をすればいいんだ?他の3人ならともかく、仁科には教えることなんてないぞ?」

「はい。もちろん私ではありません。彼女にスナイパーライフルの使い方を教えて欲しいんです。」

 藍那の紹介を受け、香奈子が「よろしくお願いします。」と頭を下げる。

「そいつは構わないが、何で仁科自身が教えないんだ?お前もスナイパーライフルぐらい使えんだろ。」

「えぇ、使えます。ですが、超神兵であるあなたに比べれば粗末なものなので、ここはプロフェッショナルに教えていただこうかと。」

「あんまり褒めんなって。まぁ、俺が超神兵だったってのは間違いないがな。」

 藍那たち4人は「自分で言っちゃうんだ・・・。」と心の中で呟く。

「まぁ、いいぜ。名前は確か西原香奈子だったよな?ついてきな。特別に俺じきじきに教えてやるよ。」

「はい!ありがとうございます。」

 香奈子は石塚についていく形で教職員室を後にした。

「それじゃあ、私達は近接格闘の練習でもする?」

 藍那提案に刀華と佳乃が賛成し、3人は第二グラウンドへ向かった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 香奈子と石塚は第3特別訓練場内の市街地エリアに来ていた。

 市街地エリアにはビルなどの建物が忠実に再現されており、普通の町といわれても遜色はない。ただ、街並みは廃墟をモデルに作られたものであり、敢えて建物の残骸などが設置されている。

 その中で、エリアの中心付近にある5階建てのビルの屋上に香奈子たちはいた。

「まぁ、スナイパーライフルとアサルトライフルの構え方に大きな違いはない。構え方は仁科から教わったか?」

「はい。一通りは教えてもらいました。」

「それなら話が速いな。ちょっと構えてみろ。」

 石塚はレミントンM24を差し出す。

 香奈子は受け取ると、午前中に藍那から習った構え方を思い出し忠実に再現する。

「ほー、なかなか様になってんじゃねーか。これならいきなり射撃練習に移っても問題ねーな。」

 石塚は一呼吸おき、先ほどまでの親しみやすいおじさんといった顔から、時たま藍那が見せる兵士の顔になる。

「まぁ、脅すわけじゃあねーが。普通、銃てのは何発も撃って、その中の1発がたまたま相手の急所に当たって死なせる。だがな、スナイパーってのは引き金を引けば確実に人を殺すんだ。その重みに耐えられるか?」

 香奈子は先ほどまでと様子が大きく変わった声音に息を吞む。

「耐えられるかはわかりません・・・。でも、ここ(SF学園)に受かった時にある程度の覚悟はしたつもりです。お願いします。私に教えてください。」

 香奈子は銃を下ろし、深く頭を下げる。

「よし。いいだろう。銃を貸せ。手本を見せてやる。」

 石塚は屋上から打ち下ろす形で、歩道に置かれていた人型の的の頭部を吹き飛ばす。

「俺に教えられる範囲で、全部を教えてやる。毎日、放課後に俺のところへ来い。俺はなかなか厳しいぞ?」

「はい。お願いします。」

 再度香奈子は石塚に深く頭を下げた。

 

 藍那たちは第2グラウンドでゴム製のナイフを使っての格闘訓練を行っていた。

 藍那1人に対し、刀華と佳乃の2人で訓練を行っている。しかし、2人のナイフは藍那にかすりすらしない。それどころか、藍那は2人を軽くあしらっている。

 思い通りにいかなければ、自然と苛立ちはつのる。それも、剣の腕に自信があり、至近距離での戦いにおいて自信を持っている刀華の苛立ちはかなりのものになっていた。

 そんな精神状態では自然と大振りになってしまい、大きな隙を生んでしまう。

 それを藍那は見逃さない。

 滑り込むように刀華の懐に入り、喉にナイフを当てる。

「この間合いにおいて、大振りはご法度。一撃で大きな傷を与える必要はないわ。」

 藍那は1度刀華から距離をとり、地を這うような動きで刀華の足を最小の動きで何度も切りつける

「このように、地を這うように。浅くても何度も斬る。」

 刀華はたまらず藍那から逃れるためジャンプする。

 すると、藍那はジャンプした刀華を肩に抱える形で捕獲する。

「逃れるためとはいえ、ジャンプなんてしたら好きに料理してくれと言っているようなものよ。」

 藍那は刀華を下ろす。

「まずは私にナイフを当てられるようにならないとね。」

 藍那の言葉に刀華と佳乃は顔を見合わせ、苦笑いした。

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