SF-ストライク・フォース   作:田んぼのアイドル、スズメちゃん

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学期末編-2

 週が明けた7月20日月曜日、今日より5日間の学期末期末考査が始まった。

 藍那たちは早朝のトレーニングは継続して行っていたものの、放課後の自主訓練は中断し勉強に注力していた。

 しかし、以前にも述べたがSF学園は国内有数の高い偏差値を誇る高校である。一夜漬けなどの付け焼刃では通用しない。

 藍那は自分の席へ座り深呼吸を一度する。

 授業の板書を何度も復習し、演習問題や発展問題を何度も繰り返し解いた。自分の考え得る最高を尽くし、今日を迎えた。

 しかし、いくら勉強しようと、いくら「大丈夫だ」と自身に言い聞かせようとテスト前は不安なものである。

 それは藍那だけではなくクラスメイトも同じようで、直前まで授業ノートを復習や問題を解いている者が目に入る。

 藍那はテスト前の憂鬱な気分を払拭するため、もう一度深く深呼吸し気持ちを落ち着かせた。

 

 期末考査などの定期テストは始まってしまうと短いもので、あっという間に1日目が終わった。ちなみに、今日の科目は数学Iと公民、そして英語であった。

 公民のように暗記系の科目は正直に言って藍那は苦手であった。しかし、教師が親切であったため、授業中に出題するような問題を言っていたのだ。

 藍那は惨憺たる結果にはなっていないだろうと思い頭を切り替えた。過ぎ去ったことを後になって悩んでもどうにもならないのである。

時刻はまだ昼前である。昼食を済ませ自室に帰ろうと思い、隣の席にいる香奈子へ声をかけようと顔を向ける。

 香奈子は机に突っ伏していた。

「香奈子、どうしたの?」

 香奈子は顔だけ向けた。

「エイゴ、・・・オワッタ・・・。」

 返答は片言になり、心持ち語彙力も低下しているように思う。どうやら英語で玉砕してしまったようだ。

「今から昼食へ行こうと思うのだけれど、香奈子はどうする?」

「イッショニイキマス。」

 返答は相変わらず片言のままだが、藍那について食堂へ向かった。

 

 こうして期末考査1日目が無事でない者も居るが終了した。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 あっという間に期末考査最終日の放課後になった。

 教室内では「テスト内容が難しかった」やその逆に「簡単だった」といった感想や、他人の出来栄えを聞いて一喜一憂する者たちが多くいる。

 この風景は如何に高偏差値の学校といえども他と変わらない。

 

 藍那は内心焦っている。

 期末考査最終日の金曜日は2科目だけだったこともあり、かなり早く終わった。

 しかし、帰って自室でゆっくりなどは出来ない。

 週が明けた月曜日、その日から1週間が競技大会の日程なのである。

 1日1種目の開催が予定されており、2年生以降は2種目追加されるので計5日ということとなっている。

 初日に開催される予定となっているのが藍那も出場する『フライ・&・ショット』である。

 今日までテスト期間ということもあり、生徒へのSF貸し出しは禁止されていたためにはっきり言って練習不足なのである。

 SFの飛行練習を開始してまだ約2か月、射撃練習に至っては1か月も経っていない。

 SFには姿勢制御ユニットや照準補正などの射撃補正機能も搭載されている。しかし、圧倒的に練習量の足りていない今、本番までに少しでも練習をしてSFになれる必要があるのである。

 これは他人より早く飛行訓練を開始した藍那も例外ではない。

 飛行に限っては上級生とそん色ないほどに成長している。しかし、射撃練習は他の者と同じタイミングで開始するようにされ、アドバンテージを稼ぐことが出来なかった。

 藍那はこの学年では1番銃になれているという自信がある。だが、SFでの射撃と生身で撃つのとでは勝手が違い、独特の癖に慣れるのに少し手間取っていた。

 つい最近まで銃を見たことも触ったことも、ましてや撃ったこともない者には撃ち方に変な癖などついておらず、SFでの射撃の独特の癖も「まぁ、こんなものか」程度で済ませることが出来た。

 しかし、藍那は銃に慣れ過ぎており、いつもと同じように撃っているにもかかわらずうまくいかないということに悩まされている。

 教官曰く、1度慣れてしまえばあとはどうにかなるとのことだが、藍那はあと少しというところまで来ているがまだ慣れたとはいいがたいというのが現状であるのだ。

 藍那が焦っているのにはもう一つ理由がある。

 期末考査を終えた今日の放課後から実際に競技で使用されるコースが解放されるのだ。

 初日ということもあり今日は混雑が予想されるため、1秒でも早く競技用SFの貸し出しを申し込みに行きたいと思っているためなのだ。

 

 競技に使用されるSFは実習でも使用されている『初風』である。

 初風の正式名称はSFT-T-60Cであり、初風は訓練及び軽攻撃機として10年以上前に登場した機体である。

 過去2度のマイナーチェンジを経て現在に至る。

 初風は国内におよそ220機あり、その内訳は国防軍が100機で学園が300機である。

 SF学園には1校、姉妹校がある。その学園との総数が120であり、SF学園の保有数60機である。

 この保有数は異常なほど多い。

 しかし、これは国がどれだけSFパイロットの養成に力を入れているという証明でもあるのだ。

 

 藍那は昼食をいつもと同じようにレーションで素早く済ませ、SF訓練場へと向かった。

 予め買っておいたレーションを食べてすぐに来たため、あまり貸し出しを待つ者は多くはなかった。

 しかし、現在受付を待っている生徒は藍那を含め5人おり、藍那が受付を済ませるころには長蛇の列になっていた。

 藍那がSF訓練場へ来たのは、SFを起動させるための許可をもらうためである。

 この学園にある訓練用のSF自体は基本的に学生証により起動させることが出来る。しかし、SFは国家機密相当のものであり初風もその限りではない。

 そのため、今現在誰が何処でどの機体を動かしているかということの申告が義務付けられているのだ。

 今日藍那が使用する練習機は、実習で使用したものと同じものを使用することになった。そのため、グラウンドに併設されているハンガーへ行き、解放された競技用コースへ向かった。

 コースは藍那にとってなじみのある第3特別訓練場である。

 第3特別訓練場は市街地エリアであり、ビル等の建物も忠実に再現されている。『フライ・&・ショット』はビルの間を縫うようなコースとなっており、ビルなどの建物に的が設置されている。

 的は直径60㎝の金属製のものが用いられ、使用弾頭はSF用のペイント弾である。

 大会当日までコース内での射撃練習は安全面等の関係により禁止されているが、飛行練習は飛行速度を抑えるなど制限はあるものの許可されている。

 藍那が第3特別訓練場内の市街地エリアへ到着した時には、まだ藍那を含め3人しかいない。

 飛行練習をするには絶好の機会である。

 あまりゆっくりしていると混雑が予想されるため、早速飛んでみることにした。

 

 とりあえず、スラスターの出力を抑え低速でコースを飛んでみる。

 SFのフルフェイスのヘルメットのような頭部装甲内はARのようになっており、レーダー情報や赤外線探知情報、火器情報、ムービングマップ、エンジン関係情報などの必要な情報が表示されている。

 これにより、コース内を飛行している時にナビゲーションをしてくれるため、コースを間違えることはない。

 コースをゆっくりと1周し、2周目は少し速度を上げて飛行してみる。

(思ったよりこのエリアは飛ぶのが難しいわね・・・。)

 市街地エリアは実際の道幅で道路が設けられており、それなりに広い。安全を考慮してある程度の道幅の道路の上がコースとなっている。

 道幅がそれなりに広いため、藍那は飛行だけなら簡単であると高をくくっていた。

 しかし、ビルの間を飛ぶとなると両側に高い壁があるようになり、かなり圧迫感を感じるのだ。

 飛行自体は難しくはないものの、精神的な面で難度が上がっている。

 今日は感覚をつかむために3周ほどコースを飛行した。

 かなり人も増えてきたため、現在の課題でもある射撃練習をするためSF用の射撃訓練場へ向かった。

 

 SF用の射撃訓練場は藍那たちがはじめに飛行訓練を行った地下第1層にある。

 SFの兵装に使用される弾丸は基本的に15㎜以上のものであり、実弾を使用してしまうとコンクリート製の建物を破壊してしまうのだ。

 そのため、地下第1層に大量の土嚢を積みSFでの射撃に耐えられるようにしてある。

 しかし、実弾を使用すると施設を破壊してしまう恐れがあり、授業や訓練等で使用される弾は金属製ではなくプラスチック製の模擬弾を使用している。

 なお、プラスチック製の模擬弾といえど殺傷能力は十二分にあり、SFの兵装の恐ろしさがよく分かる。

 藍那はアサルトライフルを構える。

 SF自体が人間の約2倍ある。それにより兵装もSFに合わせてサイズが大きくなる。

 今藍那が構えているアサルトライフルは、国防軍で使用されていた89式5.56mm小銃を模した66式15.5mm小銃である。

 66式15.5mm小銃の銃身長は850mmであり、口径は銃の名前からも分かるように15.5mmである。この銃のモデルとなった89式5.56mm小銃の銃身長は420mmで口径が5.56mmである。さらに、重量は小銃にもかかわらず30kgを優に超えることから、SFの兵装が如何に巨大かわかるだろう。

 銃を構えるとSFの照準補正機能によりAR上に命中予測円が現れ、自動照準補正機能が作動し照準の微調整が開始される。

 これが藍那の慣れない点の1つである。

 命中予測円は銃の角度や目標との距離などの情報をもとに予測演算したものである。

この命中予測円が邪魔に感じているのだ。

 藍那は視力と経験に基づく感覚で射撃を行っている。

ただでさえAR上に表示されている情報は1人で処理できるぎりぎりの量である。にもかかわらず、更に視界内に情報が追加されるのだ。

 それに加え、自動照準補正機能によって照準が勝手に固定される。

 初心者からすればこの命中予測円と自動照準補正機能はとてもありがたいものだろう。しかし、藍那からすれば邪魔でしかないのだ。

 藍那は深呼吸をして心を落ちつかせ、セレクターレバーをア(安全)からタ(単射)へと変更して引き金を引く。

 15.5mmという大口径の銃を撃ったにもかかわらず、あまり反動を感じない。

 これはひとえにSFの衝撃吸収能力がとても高いことが挙げられる。しかし、この優秀過ぎる衝撃吸収能力こそが藍那の慣れない違和感の一因である。

 衝撃吸収能力が優秀過ぎるあまりに生身で撃つ時よりも反動が小さいのである。

 藍那は反動を無意識に考慮し構えている。しかし、生身の時とあまりにもかけ離れており無意識に構えるのでは思ったところへ弾が当たらない。

 銃口の位置が1度ずれると100m先では約1.8cmのずれとなる。

 SFの操縦を行いながら撃つとなればいちいち意識して構えるなんてことはできない。一瞬の油断が命取りになるのだ。

 この反動に慣れるにはひたすらに数を撃ち、自分のものにするしかない。

 本番まで今日を入れてあと3日。

 藍那は少しの不安を感じつつも、引き金を引き続けた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 真っ暗な自室で刀華は座禅を組み、ひたすらイメージ内で藍那と戦っていた。

 藍那とは何度も手合わせをしているし、彼女からは多くの戦闘技能を学んだ。これにより、刀華の中にはかなりリアルな藍那をイメージ出来ている。

 刀華はそのリアルなイメージと何度も繰り返し戦っていた。

 勝率はどんなに自分に都合よくイメージしても3割弱。しかし、刀華が1番得意とする太刀の間合いでの戦いならば5割まで上がる。

 刀華が藍那とナイフで戦ったのなら間違いなく敗北するだろう。もしかしたら1分も持たないかもしれない。

 だが、自分が太刀で戦うのなら油断しない限り敗北はないだろう。まぁ、相打ちを考慮するならの話だが。

 ただ、刀華のこのイメージが正確ではない。

 それは、あくまでもこれはイメージでしかなく現実ではない事と、藍那の全力を体験したことがない事が原因である。

 もしも藍那の全力が私の想定しているものよりもっと上なら、その時はあきらめるしかないだろう。

 しかし、刀華は次こそは藍那に勝利しようと心に誓っていた。

 藍那に勝利しなければFFBで1組が優勝できないという事も勿論ある。だが、それ以上に刀華は藍那に負け越したくないのだ。

 藍那と始めて戦った時は己の油断と慢心により敗北した。

 あれまで刀華は負けたことがほとんどなく、藍那に敗北したということが刀華の自尊心を大きく傷つけた。

 だが、刀華は腐ることなくリベンジの機会を待ち続け、やっとその機会が巡ってきたのだ。

 次は絶対に私が勝つ。そう再度心の中で誓い、刀華は再びイメージトレーニングに集中する。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 夜も更け、藍那は自室で据え付けの椅子にもたれて休息をとっていた。

 今日は半日SFでの射撃練習をしていたため、心身ともにかなり疲労している。

「あれ、藍那さん帰ってたんですね。」

 シャワールームから香奈子が髪を乾かしながら出て来た。

「えぇ・・・。なかなかうまくいかなかったから、こんな時間になってしまったわ。」

 時刻は8時をとうに過ぎている。休憩も取らずに昼の2時から8時までぶっ通しで射撃練習をしていたのだ。

 そのおかげか、だいぶ自分の思うように弾が飛ぶようにはなっていた。

「そうだったんですか・・・。藍那さんは夕食食べてきました?」

「いいえ、まだよ。いろいろと後始末をしてすぐに帰ってきたから。」

「やっぱり。そうだと思って、藍那さんの分のお弁当も用意しておきましたよ。藍那さんも先にシャワーを浴びて夕食にしましょう!」

「えぇ、そうね。香奈子、ありがとう。それじゃあ、シャワーを浴びてくるわ。」

 藍那は椅子から立ち上がり、香奈子を見る。

「それよりも、せめてタオルぐらい巻かないの?」

 香奈子は手に髪を拭くためのフェイスタオルだけを持ち、身体にはバスタオルなどは巻かれておらず生まれたままの姿となっている。

 隠すものが一切ない為、年齢不相応に育ち過ぎた胸にやはり目が行ってしまう。

「まさかと思うけれど、見せつけたいなんてわけじゃないわよね?」

「ち、違いますよーーーっ!ただ、藍那さんが帰ってるとは思わなくて、1人だからいいかなって思ったんですよ・・・。」

「はぁ・・・。いきなりの来客があるかもしれないのに油断し過ぎよ。」

「はい・・・。次からは気を付けます。」

 若干しゅんとした香奈子に目をやりつつ、藍那はシャワールームへ向かった。

 

「それで、藍那さんは何でこんな時間までっかったんですか?」

 夕食をとりながら香奈子が質問してきた。

「SFでの射撃にまだ慣れていないのよ・・・。反動への対応はだいぶ上手くいくようにはなったのだけれど、どうしてもARに表示される情報が視界に入って邪魔なのよ・・・。これになかなか慣れることが出来ないのよ・・・。」

「え?それって照準予測円とか姿勢制御ユニット系統の表示とかですよね?それって非表示に出来ますよ?」

「・・・え?」

「え?」

「も、もちろん知ってたわよ?」

 これは強がりである。

(え・・・、噓・・・。あれって非表示にできるの?知らなかった・・・。でも、どうやって非表示にするの?知っていたと言ってしまった建前いまさら聞けないし・・・。)

 藍那は内心かなり慌てつつも、なんとか平静を装う。

「表示したままということは、フライトするときにオールマニュアル操作なんですか?なのに射撃は演算に頼るなんて、藍那さん変わってますね!」

 藍那は少しイラッとしたが、素直に話を聞いてみることにした。

「香奈子はマニュアル操作にしないの?射撃もマニュアル操作にしようかと私も思っていたところなの。」

「そうですねー。私の場合は姿勢制御や重力制御とか難しいことは全部SFに丸投げして、加減速と左右への移動、あとは上下移動ぐらいしか自分ではやってないですね。射撃はオールマニュアルですけど。」

「そうなの・・・。私も香奈子みたいにしようかしら。参考までにいろいろと聞きたいから、よければなのだけれど明日SFの練習を一緒にしない?」

「藍那さんから誘ってくるなんて珍しいですね。いいですよ。その代わり日曜は私の練習に付き合ってもらってもいいですか?」

 藍那はうまくいったと心の中でガッツポーズする。

「ええ、構わないわよ。それじゃあ、9時から始めましょうか。」

「分かりました。」

 2人は微笑みながら食事を再開した。

 

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