SF-ストライク・フォース   作:田んぼのアイドル、スズメちゃん

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学期末編-3

 翌朝、藍那と香奈子の2人はSFを装着した状態で地下第1層にある屋内飛行訓練場に来ていた。

 屋内飛行訓練場は1週約400mのトラックが4レーン並んでおり、レーン幅はSFが飛行するものであるため陸上競技に使われるものより広くなっている。

 最初は翌週に飛ぶコースで練習する予定であった。しかし、藍那たちが行ったときにはすでに人でごった返しており、ゆっくり練習などできなくなっていた。

 そのため、やむなく実習などでも利用している屋内飛行訓練場に移動したのだ。

 コースのある第3特別訓練場に人が集中しているためか、幸い屋内飛行訓練場にはまばらにしか人がおらず練習をする環境としては最適といえる。

「それじゃあ、ウォーミングアップもかねて軽く飛んでみます?」

 香奈子の提案に藍那はうなずく。

「せっかくだし、コース3周の競争にしない?」

「いいですね!負けませんからね!」

 2人はコースのスタート位置に移動した。

 

 2人はスタートラインに着くなり、重力制御によって地面から数センチ浮上する。

「それじゃあ、カウント3で始めるわよ。」

「わかりました。」

「「3、2、1、Go‼」」

 2機のSFは背部スラスターの出力を上げ、一気に加速する。

 機体にかかる空気抵抗などの摩擦によって生じるエネルギー減衰を重力制御によって軽減し、スラスターの推進力を運動エネルギーに変換する。

 2機は轟音をあげながらほぼ同時に1回目のコーナーに差し掛かり、香奈子が藍那よりも少し早くコーナーを抜ける。

 ここで明暗を分けたのは、処理する情報量の差である。

 香奈子の場合は姿勢制御や重力制御関連を全てSFのシステムに任せており、香奈子自身は曲がりたい方向に意識を向けるだけで済む。

 しかし、藍那の場合はオールマニュアルでSFを操っていた。それにより、藍那は姿勢制御や重力制御などの複雑な操作を常に要求されている。

 カーブを曲がる時などは一瞬の判断で差が生まれる。操縦技能が五分五分ならばこの差は決定的なものとなるのだ。

 これにより、コーナー勝負で藍那は香奈子に敗北した。

 コーナーを抜けると直線勝負である。

 コーナーで僅かながらにリード許した藍那は懸命に香奈子を追いかける。しかし、2人の操縦技術は拮抗しており、なかなか追いつくことができない。

 香奈子は藍那の追撃から必死に逃げ、次のコーナーに突入する。

 先も述べたようにコーナーでは香奈子の方が有利である。

 2人がコーナーを抜ける頃には、藍那との差がまたしても開いていた。

 藍那は必死に香奈子に食らいついたが、善戦むなしく敗北してしまった。

 ウォーミングアップを終えた2人小休憩をとることにした。香奈子は藍那に勝つことができてご満悦といった様子である。

「いやぁー、何とか私の勝ちですね。オールマニュアル操作であそこまでの飛べるなんて、やっぱり藍那さんはすごいですよ!」

「そう?けれど、負けてしまっては意味がないわ。」

「そうですか?でも、そうですね・・・。週明けには本番ですし・・・。」

「そうよ。早速で悪いのだけれど、香奈子の飛行方法を教えてくれないかしら?」

 藍那はさっそく本題に入る。

「わかりました。藍那さんなら知っていると思いますけど、SFのシステムコンソールから各所設定を開いて、姿勢制御と重力制御を開いてください。開いたらどちらもマニュアルからオートに変更して完了です。これと同様に、コンソールから照準補正を開いて、命中予測円をOFFにすれば完了です。」

 香奈子はついでとばかりに照準補正機能切りかたの説明もしてくれた。

「なるほど・・・。参考になったわ。あとは飛んでみてなれるだけね。」

「そうですね。もう一回競争しません?」

 香奈子は得意げに藍那を誘う。

「いいわよ。次は私が勝つから。」

「私だって負けませんよ!」

 そうして2人はもう1度コースへ向かった。

 

 先ほどと同じように2人は同時にスタートする。

 前回と違うのは、藍那が処理しなくてはならない情報が一気に減ったということだろう。

 重力制御による浮遊1つとっても、姿勢を安定させた状態を保つだけでも緻密な制御が必要となる。イメージするならばバランスボールの上に立つといったものだろう。

 飛行時の制御は浮遊時の比ではない。高速飛行中はそれ以上だ。

(まさか、これほどとはね・・・。)

 藍那は姿勢などのこまごまとした制御をする必要がなくなった結果、これまで以上に速度を上げることに成功し香奈子より先にコーナーに入る。

 そして、ほとんど減速することなくコーナーのインコースギリギリを飛行する。

 藍那は飛行する際の無駄の一切を無くしていた。そうしなければオールマニュアルでの飛行など不可能であったためだ。

 これにより、藍那は完全に香奈子を置き去りにした。それも圧倒的な差で。

 香奈子は先ほど以上の差で置き去りにされ混乱する。

 そのまま香奈子は藍那との差を詰めるどころか、大差をつけられ敗北した。

「藍那さん、さっきは全然本気出してなかったんですね?」

 加奈子は若干不機嫌そうである。

「そうでもないわよ。オールマニュアルでの操縦はさっきが限界ね。」

「そうだったんですね・・・。オールマニュアルであれだけ飛べるなんて、やっぱりすごいですね。私じゃ絶対に無理ですよ。」

「そうでもないわよ。要は慣れだから。」

 香奈子は苦笑いを浮かべる。

「そうはいってもですね・・・。それより、月曜の飛行はどっちで飛ぶんですか?」

「オールマニュアルは疲れるし、タイムも望めないから制御はオートで行くわ。あと数回飛んで慣れたら射撃の練習に移ろうと思うのだけれど。付き合ってくれる?」

「もちろんですよ!」

 2人は再度コースへ向かった。

 

 飛行訓練場を後にした2人は昼食をとった後、同じ階層にある射撃訓練場に来ていた。

 藍那は慣れた手つきでマガジンを取り付ける。

 藍那が持つ66式小銃の上部には後付けの小型照準器が取り付けられている。

 いつもであれば藍那は後付けの照準器はあまり使わない。それは、小銃などに元からついているピープサイトやゴーストリングサイトなどで十分な命中精度を実現できるためだ。

 しかし、SFでの高速飛行中にピープサイトなどで狙うのは、制御をオートにしているとしてもさすがに困難であったのだ。

 この照準器はSFの照準補正システムと連動しており、銃口の角度などを元に演算し着弾予想地点に赤い点が表示される。

 これにより、ダットサイトのようになるのだ。

 この照準器の利点は着弾予測円と違い赤い点しかAR内に表示されない。そのため、視界の邪魔になりにくいということだ。

 藍那は先ほど制御をオートにして今できうる範囲の全力で飛んでみた。

 とても正確な射撃などできない。

 一般的にSFでの射撃は1度停止又は減速して目標に照準を合わせる。

目標の弱点部位を自動的に精密照準するという戦車も存在するが、SFの場合は戦車と違い火器を手に持っているため自動照準を戦車と同じようにはできない。

藍那はセレクターレバーをア(安全)からタ(単射)へと変更する。

 今日は昨日と違い動く的を狙う。

 藍那は月曜の本番で的を狙うために毎度毎度静止するなど、そんな余裕は存在しないと思っている。

 いくらSFでも一度静止してしまうと再加速に時間がかかってしまう。

 更にコースに設置されている的の間隔的に一度静止してしまうと次の的までの間で、トップスピードまで加速するのはほぼ不可能であるというのは確認済みである。

 そのため、藍那は減速しても停止はしないと決めていた。

 仮に他の選手が停止していたとしてもむやみにタイムを落とすようなまねはできないのである。

 銃を構えると的が高速で動き始め、射撃練習が開始される。

 藍那は的を銃口でなぞるように動かし、交わった瞬間に引き金を引く。

 けたたましい銃声とともに打ち出された弾は的に命中するが、的の中心をとらえることはできていなかった。

 藍那は素早く射撃タイミングを調整し次の的に向けて引き金を引く。

 これもタイミングがうまく合わず、またしても中心を外してしまう。

 続けて3発撃つが同じような結果になる。

 藍那は思わず苛立ちから舌打ちをしてしまう。

 藍那は少し苛立ちつつも冷静さを保ち、引き金を引き続ける。

 30発の弾を撃ち尽くし、一呼吸おいて銃を下す。

「藍那さんってやっぱりすごいですね。動く目標に向かってこんなに早く当てるなんて。それも全弾命中なんてすごいです。」

 香奈子が感激しながら賞賛してくる。

 しかし、藍那からすれば満足する結果ではなかった。

「そうでもないわ。まだ的の中心を外しているし、照準を合わせる速さも遅いわ。もっと速さと正確性を上げないと駄目ね。」

 藍那はため息1つ漏らす。

「そんなことないと思いますけど・・・。少なくとの私はこんな正確な射撃はとてもできませんし。月曜日の大会でもここまでできる人はいないんじゃないですか?」

「香奈子。希望的観測はよくないわよ。まぁ、私も問題ないとは思うのだけれど・・・。私自身が納得いかないっていうのが正直なところなのよ・・・。」

 藍那はマガジンを交換し再び銃を構える。

「フライ・&・ショットだと使える弾の上限があるから、1発1発を無駄にできないのよ・・・。それに、マガジンチェンジはタイムロスにつながるもの。」

 『フライ・&・ショット』は20枚の的に対し、60発の弾が支給される。

 この競技はタイムと命中精度を競うというものであり、銃弾をばらまきその1発が的をとらえるというものでは意味がない。そのため、使用可能な銃弾の上限が決まっているのだ。

「何だか、藍那さんを見てると私も頑張らないとって思えてきます。私もこの練習してもいいですか?」

「ええ。私も競う相手がいた方が練習になるもの。こちらからお願いしたいぐらいよ。」

 2人は夕方になるまで射撃訓練場で過ごした。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 日曜日、藍那と香奈子は朝から第3特別訓練場にいる石塚を訪ねていた。

 今回は依然と違い藍那が予め石塚にアポイントメントをとっていた。

「失礼します。」

 2人は待ち合わせ場所として指定されていた教職員室に入室する。

「あら、おはよう。2人とも早いわね~。まだ約束の9時半前よ?」

 そこには藍那にとって予想外の人物がいた。そこにいたのは石塚裕美であった。裕美は大きな目とボブカットにした黒髪の美しい顔立ちの女性である。大きな目はネコ科の動物を思わせるような獰猛で愛らしいものである。そんな彼女であるが、一番目を引くのは香奈子以上の巨乳であることだ。

 藍那は裕美に近接格闘で勝てたことが1度もない。巨乳は俊敏な動きの天敵であるはずにもかかわらずだ。

「おはようございます。裕美さんがいらっしゃるとは思いませんでした。」

「いやね~藍那ちゃん。昔みたいに『スターチス』って呼んでくれてもいいのよ?」

 裕美は母親を思わせるような柔らかな笑みを浮かべる。

「そうですね・・・。それでは,スターチス。石塚先生はどちらに?」

「藍那ちゃん。堅苦しいわよ。あの人なら明日のコースを見に行ってるわ。あとちょっとで帰って来るんじゃないかしら。そこのソファーにでも座って待ってて。」

 裕美は窓際のソファーを指さす。

「そうですか。ありがとうございます。」

 藍那と香奈子はソファーに腰掛ける。

「ところで、藍那ちゃん。そっちの娘が香奈子ちゃんよね?」

 香奈子は勢いよく立ち上がる

「はい!初めまして!西原香奈子といいます。えっと、石塚先生には大変お世話になっています!」

「そんなに緊張しないで。それよりも、うちの|旦那≪お馬鹿さん≫が迷惑かけてないか心配ね。」

 裕美は楽しそうケラケラと笑う。

「ハハハハハ。まったく、相変わらず口の悪い女だぜ。」

「あら、意外と早かったわね。もう少しかかると思ったんだけど。」

 コースの確認を終えた石塚が帰って来た。

「それで・・・。西原は練習ってわかるが、仁科はスピードシューティングに出ないんだろ?他の競技に出るんだったら、こんな所でさぼってていいのか?」

「ええ、今日は香奈子の付き添いです。私は明日のフライ・&・ショットに出場しますが、今日は英気を養うための休養です。」

「あら、明日は藍那ちゃんを応援しないといけないわね。それで、香奈子ちゃんはどの競技に出るの?」

「はい!私は水曜日のスピードシューティングに出場します。」

「そうなの・・・。」

 ニコニコしていた裕美がいきなり真面目な顔になる。

「香奈子ちゃん、競技にはどの銃で出るつもりなの?」

「えっと・・・。いつも練習で使っているレミントンM24を使おうかと・・・。」

 香奈子は少し戸惑いつつ答える。

 裕美は少し考えこみ口を開く。

「レミントンか・・・。啓吾、他の銃を使わせて練習させたことはあるの?」

「ん?今のところはね~な。どうしたんだ?」

「スピードシューティングって、言ってしまえば動きながらの速撃ちでしょ?それなら、いちいちコッキングするのって、タイムロスにならない?」

 石塚は少し考える。

「確かにそうだよなぁ・・・。西原、今日は違う銃を使うぞ。」

「はい。お願いします。」

「ところで、どの銃を使用するんですか?香奈子が使うとするならスナイパーライフルであることは間違いないと思うのだけれど。セミオートのライフルだとすると、ドラグノフかM110かしら?」

 藍那は興味がわいたのか、石塚に尋ねる。

「あぁ、M110だ。この学園にはドラグノフはねぇからな。」

「そうですか。」

 藍那と石塚、裕美の会話に香奈子は全くついていけずちんぷんかんぷんになっている。

「まぁ、そうと決まれば善は急げ、だな。さっそく移動するぞ。」

 石塚は香奈子を連れ、教職員室を出ていった。

「あらあら、行っちゃったわね。どう、藍那ちゃん。久々に組み手でもしてみない?」

「望むところです。スターチス、今日こそは勝って見せます。」

「まだまだ負けないわよ。」

 藍那と裕美は互いに獰猛な笑みを浮かべ、第3特別訓練場内の格技場へ向かった。

 

 第3特別訓練場内の射撃場に到着した石塚は早速香奈子に銃の説明をはじめた。

「こいつはM110SASSだ。SASSはSemi-Automatic Sniper Systemつまりは半自動狙撃銃システムって意味だ。まぁ、これはどうでもいいや。いつも使っているレミントンとの大きな違いは、1回1回コッキングする必要がないってところだ。その他にも細かいところはいろいろと違うが、それは慣れるしかないからな~。」

 香奈子は石塚から渡された銃を的に向かって構えてみる。

 ストックの長さや重心の位置、銃自体の重さなど違うところはいろいろとあるが、射撃自体にはあまり問題ないように感じる。

「今、そいつには光学照準器とバイポットがついていて、だいたい7㎏ってところだ。いつも撃っていたM24はだいたい4.4kgってところだから、かなり重く感じるだろ?」

「はい。確かに少し重いですけど、問題ないと思います。」

 香奈子は銃を構えたまま答える。

「M24の装弾数5発だが、M110は10発だ。M24は長距離精密射撃に向いているが、スピードシューティングみたくそこまで精密射撃を求められない競技なら、M110の方が装弾数もリロード速度も上だからな。」

 石塚は「使ってる弾は同じだしな」とつけくわえた。

「まぁ、御託はいいや。とりあえず慣れないとな。撃ってみろ。」

 香奈子は「はい」と返事をし、スコープ越しに見える100m先の的へ向かって引き金を引いた。

 

 藍那と裕美が来ている格技場は名ばかりで、30畳程の板間でありどちらかと言えば格技室の方がしっくりくる。

 格技場には採光窓があり、まだ時間が早いこともあって室内はとても明るい。

「組み手なんて久々だわ。体力が落ちない程度にはトレーニングしてはいるけどね~。」

 裕美はストレッチをしながら藍那に声をかける。

「私も最近は私より強い人とはやっていなかったので、本気でするのは久々です。」

「そうよね~。藍那ちゃんには物足りないわよね。三井君じゃあ藍那ちゃんには絶対に勝てないもの。」

 裕美が挙げた三井君とは、|三井昭正≪みついあきまさ≫という3年前から近接格闘実習の臨時講師として来ている国防軍の軍人である。三井は裕美が軍人だったころの部下であり、それと同時に教え子でもあった。

 三井は初回の近接格闘実習で自分の実力を生徒に見せつけ、それ以降の実習をスムーズに進める目的があった。

 そのため、三井は生徒から無作為に3人選び、3対1で組手を行い圧勝するということを毎年していた。

 しかし、今年はうまくいかなかった。

 三井は藍那を含む3人を運悪く選んでしまったのだ。

 藍那はデモンストレーションに選ばれ、内心面倒くさいと思ったのだ。そのため、小さな反抗を起こした。

 藍那は一切の容赦をせず、教員である三井を投げ飛ばし逆十字固めをかけたのだ。

 三井は理解が追いつくよりも速く藍那に敗北し、赤っ恥を書く結果となったのだった。

「私の教え子の中でも、三井君は結構やる方だったんだけどね。いきなり泣きついてきたときにはびっくりしたけど、話を聞いていたら納得しちゃった。」

 裕美はケラケラと楽しそうに笑う。

「まさか、三井先生がスターチスの教え子だったとは知りませんでした。世間は意外と狭いものですね。」

「まぁ、そんなものよ。さあ、始めましょうか。」

 裕美は藍那へゴム製のナイフを渡し、2人は臨戦態勢をとる。

 

 2人の動きには全く無駄がなく、最小の動きのみでナイフを振るい回避をとる。

(流石はスターチス。ナイフがかすりすらしない・・・。)

 藍那は低い体勢で一気に距離を詰めナイフを振るう。裕美は藍那のナイフを払い、距離を詰めてきている藍那へ前蹴りを入れる。藍那は裕美の蹴りを読んでおり、バク転をして距離をとる。

 これはもう何度目になるかわからない攻防である。

(このままじゃ埒が明かないわね。そろそろたたみかける!)

 藍那の様子が変わったことを鋭敏に感じ取った裕美は口角を上げる。

「さあ、いらっしゃい!」

 藍那は裕美の声にこたえるように突撃した。

 

 板張りの床の上で仰向けになり肩で息をしている藍那は、横で涼しそうな顔で立っている裕美を見て「やっぱり勝てない」と思う。

「藍那ちゃんが思いのほか強くなっててびっくりしたわ。何だか前よりも体の軸がしっかりしたわね。何か特別なことでもしたの?」

「えぇ、まぁ・・・。剣術を友人から少々教わるようになりました。」

 裕美は納得したといった顔をする。

「それで、気分転換はできた?」

「?」 

 藍那は首をかしげる。

「何かに悩んでたでしょ。私にはわかるのよ。」

 藍那は少々驚きつつも、納得する。

「藍那ちゃんはいろいろ考え過ぎちゃうからね。とりあえず、自分に出来ることを精一杯してみるといいわ。明日は頑張ってね~。」

 裕美は手をひらひらと振りながら格技場から出ていった。

 藍那は自分が思い悩んでいたことを見透かされていたと分かり、小さく笑みを浮かべる。そして、改めて裕美には勝てないと思ったのだった。

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