SF-ストライク・フォース   作:田んぼのアイドル、スズメちゃん

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入学編-5

 講習や実力測定は昨日で終わり、今日からは普通授業が始まる。それと同時に部活動への勧誘も始まる。

 SF学園は軍管轄の学園ではあるが、普通の高校生と同じように部活動に所属する事ができる。しかし、SF学園特有の普通高校には無い部活動が存在する。例としては、実銃を使用したサバイバルゲームのようなことを行うサバイバルフィールド部、SFを使用したアクロバティックな演技を行うアクロバット飛行部などが存在している。

 もちろん、普通高校のような運動部や文化部に属する部活動も存在している。

 これは、どの高校にも当てはまることなのかもしれないが、いい新入生を取り合うという光景を目にするだろう。それがSF学園では少々過激になることがある。これが、教員の中で言われている『年に一度のバカ騒ぎ』である。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 時刻は早朝5時半。

 藍那は横のベッドでぐっすり眠っている香奈子を起こさないように運動着に着替え、部屋を後にした。

 

 藍那は第一グラウンドへ向かい、トレーニングを始める。

 メニューとしては、第一グラウンドは1周1㎞なので、これを10周。その後、片手腕立て伏せを左右100回ずつの予定である。

 何故、藍那が早朝トレーニングをしているのか。それは、昨日の模擬戦闘で疲労を感じてしまったためである。

以前の自分であれば、あの程度では疲労を感じなかっただろう。にも関わらず、疲労を感じてしまったがために藍那自身は、体力が落ちてしまったということに少しショックを受けていたのだ。

 そのため、本格的に訓練が科目として始まる前に、全盛期の体力へ戻そうと努力しているのだ。

 

 自主トレーニングを終えて部屋に戻ったのは6時半頃のことだった。」

 トレーニングによって汗をかいため、このまま登校するというのは憚られる。そのため、1度シャワーを浴びて着替える必要があった。

(流石にもう、香奈子も起きているでしょう。起きているのなら、シャワーの音を気にする必要もないわよね。)

 自室の扉を開けて、藍那はため息をこぼす。トレーニングに行く前と同様に香奈子は眠っているのである。

(まだ6時半ですし、起こさないと遅刻してしまうという時間でもないから、そのままでいいわよね。)

 着替えとタオルを取り、シャワールームへ向かった。

 素早く汗を流し、タオルで体を拭いて、予め用意していた下着を着用する。

 自室にいるのは香奈子だけということもあり、藍那は下着姿のままでシャワールームから出てくる。

 普通であれば、何かしら香奈子が反応を示すだろう。しかし、当の香奈子本人は以前爆睡している。

(まだ起きませんか・・・。まだ時間的にも余裕がありますし、このままでいいでしょう。)

 藍那は再び部屋着に着替え、昨晩し忘れていた準備を始めた。

 この時代には教科書と言う分厚い紙の本は存在しない。教室の各座席には埋め込み式タッチパネルディスプレイの搭載PCがあり、教科書は全部その中にデータとして入っている。そのため、登校する際最に低限必要なものは授業用のノートと筆記用具だけとなる。

 しかし、年頃の女子生徒はそれ以外にも必要なものがあり、男子生徒に比べて少し荷物の量が増える。

 例に漏れず、藍那にもそれが当てはまる。しかし、藍那の場合はナイフを1本忍ばせているのだ。これは、あくまでも護身用である。そのため、むやみに取り出したりはしない。このことはルームメイトの香奈子にも知られていない。

 人間誰しも、秘密の1つや2つ持っているものである。

 

 時刻は午前7時を迎え、香奈子がセットしている目覚まし時計のアラームが鳴り響く。

 しかし、香奈子に起きる様子は全くない。ただアラームが鳴り続けている。

「香奈子。起きてください。起床時間よ。」

 流石にもう起こさないとまずいと判断し、藍那は香奈子を起こす。

「うぅん・・・。あと1時間・・・。」

「あと1時間も寝ていたら、間違いなく遅刻よ?いいから起きて。」

 揺すってみても香奈子に起きそうにない。

「もう起きないと朝食を食べる時間が無くなるわよ?それでもいいの?」

「・・・・・・。」

「こうなったら最終手段ね・・・。」

 藍那が香奈子の脇腹をくすぐる。すると、たまらず香奈子が飛び起きた。

「や、やめてください。あ、藍那さん、本当にやめて・・・。」

 香奈子は涙目になりながら笑い声を上げている。

「もう起きる気になりましたか?」

「なりました!!なりましたからくすぐらないで!!!」

 藍那はようやくくすぐるのをやめた。

 

「朝っぱらからひどいですよ!いきなりくすぐるなんて。私は脇腹がとっても弱いんですから。」

「いいことを聞いたわ。明日からも香奈子が起きないときは、脇腹をくすぐって起こすわね。」

 香奈子が制服に着替えながら、藍那に対して抗議している。しかし、藍那は右から左といった様子で、香奈子の抗議を適当に流しつつ制服に着替えている。

「それにしても、ここの女子の制服って、変わったデザインですよね?」

 香奈子が制服に対しての疑問を投げかけてきた。

 SF学園の女子の制服はスリットの入った膝丈の白色ワンピースに腰骨の辺りまである黒の上着といったものである。制服自体はスリットが入っているおかげで、あまり動きにくいといった感覚はない。現在はまだ冬服であるため、中のワンピースと上着は長袖である。夏服はワンピースがノースリーブ、上着の袖が肘までとなり、生地も少し薄手のものとなる。

 ちなみに、男子の制服は一般的なブレザーとあまり変わらない。

「確かに、言われてみればそうよね。まぁ、動きにくいというわけでもないし、別にいいんじゃない?」

「そうですよね。それに、他の高校の制服よりも、こっちの方が私は好きですし。」

「そろそろ朝食をとった方が良くない?」

「そうですね。じゃあ、購買に行きましょう。」

 購買で朝食とついでに昼食も購入して、部屋に戻った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 数学や英語といった教科を終え、あっという間に昼休みになった。

 クラスの皆は購買や食堂に行っているため、教室の中はがらんどうになっている。

「いやー、仁科さんって銃を使うのも凄いけど、英語も得意なんですね。うらやましいなー。私、英語が苦手で・・・。」

 藍那の後ろの席の八月一日美咲が声をかけてきた。栗色の髪を肩まで届かないポニーテールにして、アホ毛が元気よく前に飛び出してきている少女である。彼女も藍那達と同じく、朝食を買うついでに昼食も購買で買ってきている。

「私は数年前まで海外で生活していたから、それで英語も少しできるのよ。」

「へー、海外ってどのあたり?」

「中東よ。国まではどこだったかしら・・・。」

「中東って、今でも内戦とか起こってて危なくない?」

「ええ、とても危険よ。」

「じゃあ、何でそんなとこへ?」

「まぁ、いろいろとね・・・。話すと長くなるから、先生も来たしまたの機会にね。」

 藍那は出入口の方を一切見ずに、担当の小鳥遊が来たことを察知し、美咲との会話を終わらせた。

 小鳥遊が教室に入ってくるなり、教室を見回す。どうやら、誰かを探しているようだ。

「仁科藍那さんはいますか?いるのなら、ちょっと出てきてくれませんか?」

「あ、藍那さん。いったい何をしちゃったんですか?」

 まさか藍那の名前が呼ばれるとは思っていなかったのか、香奈子が手に持っているロングのパンを握りつぶしながらあたふたしている。

「何で西原さんが慌ててんの?」

「私は何をしてないわよ。強いて言うなら、昨日の途中退出の件かしらね。少し行ってくるわ。」

 藍那はスタスタと小鳥遊のところへ歩いて行った。

「仁科さん、少し相談があるんだけど、時間大丈夫?」

「はい。構いません。昼食も先ほど終えましたし、問題ないかと思います。」

「そう、良かった。じゃあ、ちょっとついてきてくれる?」

「わかりました。」

 藍那は小鳥遊の指示に従って、後をついて行った。

 

「――ということが風紀委員としての仕事内容です。役職上、生徒に対して実力行使する必要が出てくる場合があります。なので、通常はある程度訓練を積んだ、2年生になってもらうんですが、生憎今年は希望者の数が少ないため、仕方なく1年生からも数人なってもらうことになったんです。そこで、仁科の実力測定の結果が目に留まってお願いしているんです。やってくれません?」

 藍那は職員室に連れてこられるなり、いきなり多くの教員の目のある中で風紀委員に勧誘された。何ともNOとは言いにくい雰囲気である。

「分かりました。微力ではありますが、風紀委員の仕事を引き受けさせていただきます。」

仕方なく引き受けることにする。

「良かったー。引き受けてくれないんじゃないかって心配してたんですよ。」

 小鳥遊は心底安心したようで、先ほどまでの険しい顔はどこかへ行ってしまった。

「ところで、委員の仕事にはいつから参加すればいいんですか?」

「今日からお願いしたいんですけど、大丈夫ですか?」

「今日からですか?」

 流石にいきなり今日から参加するように言われるとは予想していなかったために、怪訝そうな顔をしてしまう。

「ええ。今日の放課後から1週間、部活動勧誘期間が始まりますよね。毎年、いい生徒を獲得しようと、部活動同士でいざこざが起こるんです。酷いときは傷害事件になりかねない喧嘩が起こったりもして、けが人が出たりするんですよ。それを未然に防いだり、仲裁する仕事を教員だけでは手が回らないので、風紀委員にもやってもらうんです。」

「なるほど、分かりました。」

「それじゃあ、放課後直ぐに風紀委員室に来てくださいね。場所は後で座席のPCへメールを送っておきます。」

「分かりました。それでは、失礼しました。」

 小鳥遊と別れ職員室を後にし、教室へ戻ることにした。

 

 教室に戻るとほとんどの人が昼食から帰ってきており、雑談を楽しんでいた。

「藍那さん。大丈夫でしたか?」

 藍那が教室へ戻ると、勢い良く香奈子が駆け寄ってきた。

「怒られませんでしたか?お説教されちゃいましたか?」

「香奈子。落ち着いて。怒られもお説教もされてないから。」

「え!じ、じゃあ何だったんですか?」

「風紀委員になってほしいとよ。」

「へー、風紀委員って規範的に上級生から選ばれるんでしょ?それに選ばれるって、やっぱり仁科さんすごいね。」

 美咲が感嘆の声を漏らしながら歩いてきた。

「まぁ、今年は希望人数が少なかったらしく、私はあくまで数合わせよ。そんなに凄いことじゃないわ。」

「そんなことないって。2年生の人が選ばれるときだって、成績次第では選ばれないんだから。それを先生直々に勧誘に来るなんて、やっぱりすごいって。」

「そうなの?それよりも、もうすぐ予鈴がなるわ。そろそろ席に着いた方がよくない?」

 美咲が時計を見る。時計の針はもうすぐ1時15分を指そうとしていた。

「もうこんな時間か!じゃあ、また後で。」

 3人が席に着くとほぼ同時に予鈴が鳴った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 6限目を終え、皆、帰り支度を始める。部活動見学へ行く予定があるものは、混雑する前に気になる所へ行くためにいつも以上に急いでいる。

 それと同じように理由は違うが、藍那もいつも以上に急いでいた。

 そんな時に声がかけられた。

「仁科さん、ちょっといいかしら?」

「何?」

 藍那は素っ気ない返事を返して、声の方を向く。

 すると、何故か少しおびえている静がいた。

小林静は藍那に声を掛けたはいいが、睨まれたため内心とても焦っていた。

(不味いよ。絶対に不味いよ・・・。怒ってるよ・・・。だって、あんなにらんでるんだもん。怒ってないと、あんな殺意のこもった目で睨まないよ・・・。)

 藍那は声をかけてきたのにもかかわらず、ずっと固まっている静を不審に思う。

「何か要件があるなら、早く済ませてもらえないかしら。」

 ただ、淡々とした口調で言ってくる藍那に静はまたしても怯える。

(ヤバイ!!殺気以上に怒ってるー!!)

 静は心の中で叫ぶ。

「何も無いようなら、もう行きますね。」

 荷物の整理を終えた藍那はそそくさと教室を出ていく。

「ぁ・・・。」

 静は呼び止めようとするが、藍那は行ってしまった。

「委員長、どうしたんですか?藍那さんに何か用事があったんですか?」

 肩を落としている静に香奈子が声をかける。

「私、藍那さんと同室だから、私が代わりに聞きますよ?」

「そんな大したことじゃないんだけど・・・。それよりも、私、何で彼女を怒らせちゃったんだろう・・・。西原さんならわかる?」

香奈子は少し考え込む。

「うーん。たぶんですけど、藍那は怒っていないと思いますよ。藍那は目つきがあれなので、怖いようなイメージを受けますけど、凄く優しい人なんですよ?さっき、急いでたのは、風紀委員室に用事があるからですし。」

「そうなの?私の勘違いだったのかな・・・。」

「ところで、藍那への用事って何だったんですか?」

「あぁ・・・。昨日の講習を途中退出した理由を聞こうと思ってね・・・。それよりも、何で仁科さんが風紀委員室に用事があるの?」

「どうやら、藍那が風紀委員に選ばれたようなんですよ!」

「ええぇぇ!!普通、入学早々に風紀委員には選ばれないでしょ!?」

「でも、あんな戦闘スキル見せられたら、なんか納得しちゃうよねー。」

 香奈子と静の会話に七海が入ってきた。

「昨日の模擬戦闘で近接戦を見たわけじゃないけど、あんな射撃スキル持ってる人が近接は無理なんてないと思うよ。仁科さんっていったい何者何だろう?」

 香奈子は藍那の過去のことを本人からの聞いているため知っている。しかし、本人の許可もなく他の人に話していいことではないと思い、「さぁ・・・。」と、お茶を濁すことにした。

 

 藍那は風紀委員室に到着した。

 風紀委員室は生徒会室と隣接しており、同じ階には職員室も存在している。広さはだいたい40畳ほどであり、一般的な学校の教室と同じような広さである。部屋の中には長机がロの字に並べられており、各机に3つずつパイプ椅子が並べられている。入り口から見える位置に置かれている棚には、活動日誌などのファイルがきれいに整頓されて置かれている。

 3回ノックをし、入室する。中には風紀委員の先輩と思しき生徒が3人の女子生徒がいた。

「失礼します。」

「・・・?何か用事かな?」

 先輩方に若干不審そうな目を向けられる。

「はい。私は風紀委員担当の小鳥遊教諭より、風紀委員になるように言われ、本日の放課後にここへ来るように指示を受けて来ました。」

「君、新入生だよね?風紀委員って結構危険な時もあるけど大丈夫?ある程度の実戦訓練を積んでないと、たぶん務まらないよ?」

「はい。危険ということもある程度は職務内容の説明を受けましたので、承知しております。実戦訓練に関しては問題ないと思います。」

「へー、言うじゃない。まぁ、いいわ。メンバーが集まるまで適当なせきにすわってまってて。あと、私が風紀委員委員長の弓弦恵利佳だ。よろしく。それで、こっちが斎藤で、こっちが相模原。」

「斎藤奏恵よ。一応副委員長ね。よろしく。」

「相模原桃子です。書記と会計をやってます。よろしく。」

 委員長の弓弦を中心に、藍那から見て右側にいるのは副委員長の斎藤で、左側が書記兼会計の相模原である。

「仁科藍那です。よろしくお願いします。」

 短く挨拶と自己紹介を済ませ、藍那は席について待機することにした。

 

 藍那が風紀委員室に着いて10分が経とうとする頃には、かなりの人数が集まってきた。次々に入室してくるのは全員上級生であり、藍那は少しだけ居心地の悪さを感じていた。

「みんな揃ってますか?」

 かなりの人数がいる風紀委員室に小鳥遊が入ってきた。

「一応、皆さん知っていると思いますけど、今年の風紀委員には1年生を採用しています。彼女が仁科さんです。」

 小鳥遊の紹介を受け、藍那も立上り一礼する。

「仁科藍那です。よろしくお願いします。」

「仁科さん、わからない事があったら先輩たちに聞くように。皆さんも仕事内容などを教えてあげてくださいね。」

「「「はい。」」」

 

 紹介と簡単な挨拶を終え、今日から1週間の『年に一度のバカ騒ぎ』に関する説明と風紀委員の仕事内容の説明がされた。

 

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