TS物ですがヒバリさんの性格が女の子寄りにはなりません。 あくまでもちょっと弱いヒバリさんを楽しむためのお話です。
では、どうぞ!
グチャグチャにかき回されていた僕の思考が一点に留まったので目を開けると僕は応接室にいた。
不意に訪れた懐かしさと気分の悪さに少し眉をひそめる。
ここは並盛中学校の応接室、でいいよね。
僕が見間違えるはずがない。
風紀委員として何年もこの部屋にいたのだから。
ここで事務作業をしたり、昼寝をしたり…色々自由気ままに使わせてもらったよ。
でも、一番の転機は沢田綱吉達がこの部屋に現れたときか。
弱かった彼らがよくあそこまで強くなったものだよ。
リボーンのおかげかな。
リボーンはあの時の僕がそれまでの人生で出会った最も強い相手だったと思う。
あの時はまぁ僕が青臭い子どもだったってこともあるけど、正直人生で一番ワクワクしたよ。
僕より強いやつがいるってことが嬉しかったんだろうね。
それにしてもこの頭のふらつき方、尋常じゃないな。
まるで僕とこの体が拒絶し合っているみたいだ。
あながち間違いではないかもしれないけどね。
僕はここからそう遠くない未来を生きていたけど、10年バズーカを改良してこの時代にやってきた。
僕が息を引き取る前に運試し程度でやったことだけど、うまくいった。
この頭のふらつきさえなければ完璧だったんだけど。
ああ、他にあり得る可能性としては、走馬灯かな?
…ワオ。 これが走馬灯だとしたら中々面白いね。
でも、この自分がここに立っているこの感覚…
話に聞き及んでいた走馬灯とは違うな。
走馬灯は一つの時間に絞らず多くの時間を遡ると聞いているからね。
走馬灯の思い出の一つとして応接室が出てくるのは分かるけど、でもそれなら多分あの黄色い鳥がいると思うんだよね。
僕はあの子を結構気に入っていたから。
もし走馬灯でもないのだとしたら僕は死に際に不思議な夢でも見ているのかな。
どこからかよく分からない気持ちが沸き上がってきて、柄にもなく感傷的になってしまいそうな、そんな夢を。
ただ夢だとしたら、僕の命が絶えてしまったらきっとこの夢も終わってしまうよね。
それなら僕の命が絶える前に、平和だったころの僕が最も愛した並盛を―――もう一度この目に焼き付けたいと願うのは、限られた時間の中で、別に過ぎた願いではないだろう?
頭のふらつきを無視して窓に駆け寄った。
窓を開けて外に少し身を乗り出すと硝煙の匂いなど何一つ無い澄んだ風が僕の顔をくすぐり、髪を揺らした。
空は夕暮れ。
空一面に広がる赤に近い橙色が僕を圧倒してくる。
季節の変わり目かな。
雲と大空が零れ落ちそうな黄金色を受け止めて輝いている。
その柔らかな光が並盛町を包み込んでいてとても穏やかな景色だ。
こういう空の色は一年に何度も見られるものじゃない。
夕焼けが眩しくて視線を下におろすと、帰路につく生徒達の影が校舎の方までぐっと伸びていて、それは楽しげに揺れていた。
消えろ、消えろ、つかのまの蝋燭!人のいのちは歩き回る影法師、哀れな役者にすぎぬ
口ずさんでから、この一節と自分を重ねていることに気が付いた。
でも僕はシェイクスピアの登場人物とは違う。
死を目前にしてもしなくても、僕にとっての真理はこの並盛町そのものだったんだ。
僕が愛したこの町で最期を過ごせて良かった。
窓枠から身を乗り出して景色を眺めている内に、夜のとばりが降りてきて街の明かりが目立つようになった。
若干の肌寒さを感じたときにようやく僕は窓枠から手を離して体を内側に引っ込めた。
さて。 とりあえず僕は今こうして存在しているわけだ。
並盛町の風景といい高級な調度品が並べられた応接室といい、昔見た景色と何一つ変わりない。
ここは間違いなく並盛中学校。
そしてここで目覚めて最初に姿見を見たとき僕が並盛中学の男子制服を着ていたことを確認しているし中学生なんだろう。
応接室の電気をつけ、今一度改めて姿見の前に立った。
顔は中学時代の僕そのものだけど、なんとなく身長に違和感を覚える。
僕はもう少し身長があった気がするんだけど…うん、明らかに少し小さくなっている。
成人したときより小さいことは当然のこととして、以前より身長が縮んでいるというのはいただけないな。
誰かに見下ろされる可能性を考えると特にね。
というか今歩いて気が付いたけどこの靴もしかしてシークレットブーツ?
嫌な予感がして靴を脱いで確認してみると、やはり靴底がとても厚かった。 プラス10cmくらい。 ズボンの裾に隠れて見えていないだけで、割と厚かった。
それに足のサイズもかなり小さくなっているみたい。
ふと姿見を見るとさらに縮んだ僕の姿があった。
はァ。 頭のふらつきに加えて頭痛がしてきた気がする。
これだけは中々厳しいな。
だって、身長が低かったらその分他の草食動物に見下ろされるんだよ。
さすがに中身が成熟した今なら耐えられると思うけど、それがイラつくやつだったら咬み殺したくなる衝動を抑えられる自信が無い。
それにしてもシークレットブーツって…ダサいな。
なんかこの時の僕と相いれない気がする。
軽くため息をついて靴を履きなおした。
それより、さっきから何となく息苦しさを感じるこの胸の包帯を取ってしまおう。
シャツを脱いで胸に巻かれた包帯を丁寧に巻き終えると、とある事実に気がついた。
これは別に気にしない。
僕が僕であることには変わりはないからね。
サラシを巻きなおしているときに、ふと視線を感じた気がして雲雀は扉の方に目を向けたが、誰もいなかった。
気のせいか。
そう雲雀は判断したが、頭のふらつきによって正常な感知が働いていないことに雲雀は気が付いていなかった。
加えて、人影が二人大急ぎで立ち去って行ったことにも。
巻き終えると、頭の重さに加えて、いつものような眠気を感じたので僕はソファに横になった。
窓から入ってくる風とほどよい暖かさがとても心地よくて、すぐにでも寝られそうだ。 平和な並盛でこうして寝ることが、こんなに幸せなことだったなんてね。 この幸せは本当に満ち足りている幸せだ。 最期にここで過ごせて本当に良かった。
眠気が体中を巡り、体の奥深くまで達したころ、僕は意識を眠りに沈めた。
◇◇◇
沢田綱吉は並盛中学校の夜の廊下を歩いていた。
全校生徒・教職員共に家路についた後の学校はもぬけの殻だった。
それゆえに、怖さも昼間の数倍に膨れ上がる。
廊下を歩きながら、オレは昼間の出来事を思い出していた。
お昼休憩の時間に、オレは獄寺くんと山本とお昼ご飯を食べていたんだ。
そしたら突然現れたリボーンがアジトをつくるとかなんとか言い出した(後から思うと雲雀さんに興味があっただけだと思うけど)から、オレはリボーンと獄寺くんと山本と仕方なく応接室に向かったんだ。
そしたら、オレたちはそこにいた雲雀さんに一瞬で倒されてしまった。
マフィアの獄寺くんでさえも一瞬で倒すって、雲雀さんどれだけ強いの!?
後から聞いた話によると、応接室は、雲雀さんが委員長を勤める風紀委員の部屋だったらしいんだ。
お客さんを迎え入れるようなリッチな部屋を委員会の部屋に使うって、学校側からの許可も得ているってことだよね!?
雲雀さん色々強すぎでしょ―――っ!!!
昼間に雲雀さんから感じた身の毛もよだつような恐怖を思うと、雲雀さんがいる昼間の学校と、いない夜間の学校では、おそらく後者の方が数万倍は怖くない!! 絶対そうだ!!
でも怖いものは怖いよ~~~。
本当は誰かと来たかったけど、リボーンに馬鹿にされるのは嫌だったし、夜中だから獄寺くんや山本には悪いし…。
ああ―――っ、さっさと取ってさっさと帰る!!
「うわッ!」
背後でジジッと非常灯が鳴ってオレは必要以上に驚いてしまった。
もう嫌だもう嫌だ嫌だ―――っ!
若干パニックになったオレは廊下を走り抜けた。
何かが追いかけてきているような、そんな妄想に取りつかれながら。
そうして応接間が見えてきて、ほっと胸をなでおろした。
そしたら急に応接室の電気がついた!!!
本当にビックリして逆に声が出なかった(助かった)。
応接室に誰かがいるみたい。
何となく嫌な予感がするというか、正直一人しか思い当たらないというか…。
そっと応接室の扉の隙間から覗き見ると、案の定、雲雀さんがいた。
うわっ、やっぱり雲雀さんだったよ――――っ!!
今日は諦めて出直した方が良さそう…。
っていうか、あの人何時まで学校にいるんだよ!?
帰っておいてよ――――っ!
肩を落としたオレはここからなるべく気配を消しながら立ち去らなければ…と内心ビクビクしながら視線を外して、一歩後ずさると、おしりに何かが突き刺さった。
(~~っっっ!!)
声を上げないように必死になりながら何が起きたのかと後ろを振り向くと、リボーンがいた。
(リ、リボーン!!??来ないって言ってたじゃないか)
(ツナ、お前はこの先ファミリーになるやつのことを知っておいた方がいいからな。 ほら、見ろ)
(は?)
リボーンが指さした先には、上半身裸の雲雀さんが……って、ちょっと、ちょっと待って!!?
う、わ――――――っ!!
すぐに視線をそらした、だって、だって、女の人の着替えを覗き見るって、変態のすることじゃないか!!!というか、いや、ちょっと…ええ―――――っ!!??
(リボーン!まさかこれって…)
(ああ、雲雀恭弥は女だぞ)
(マジで――――――!!??あの雲雀さんが!?獄寺くんや山本のことを一瞬で倒してしまうような強い人が女の人――――――っ!?)
(見ないとお前信じねぇだろ。 そして、おそらく雲雀がこうやってボロを出す機会はそうそう無ェからな。 お前をここに来させたってわけだ。 ボスとしてファミリーのこと知っておくのは当然だろ?)
(は、はぁ………。 )
オレとリボーンは雲雀さんに気が付かれないように廊下を歩いて、学校を出た。
正直気が付かれているんじゃないかって内心ビクビクしてたけど、大丈夫だったみたいだ。
まさか、雲雀さんが女の人だったなんて…。
これはオレとリボーンだけの秘密にすることにした。
圧倒的強さで風紀を守る雲雀さんが他の人に知られたくない弱さだろうと思ったから。
でも、雲雀さんが女の人だって知った今、オレはファミリーの一員に雲雀さんを加えることに絶対に反対なんだ!!
◇◇◇
「ふあ〜ぁ」
伸びをして窓を見ると朝が来ていた。 ここまで意識が沈んだのは初めてかもしれない。 良く寝た……。
それにしても朝か。
僕の夢はもう少し続くらしいね?
それなら、夢の中で僕の夢を叶えてもらおうかな。
たった1つだけ、やり残したことがあるんだ。