真っ先に獄寺が雲雀の前に躍り出て、爆弾を数十個投げつける。
それを雲雀がトンファーで全て獄寺に向けてそっくりそのまま弾き返した。
「餞別だよ」
「ウソだろ!?」
獄寺はとっさに飛びのいたが自分のボムスプレッズの弾幕をもろに受けて戦闘不能になる。
「起爆までの時間が長すぎだね」
「瞬殺かよ。さすがヒバリだな!」
「!」
山本がバットを振りぬいたかと思うと瞬時に日本刀に変わる。
山本の日本刀と雲雀のトンファーの打ち合う音が何度も響く。
山本の一つ一つの重い一撃を雲雀は受けているだけだった。
体重差が作用して、じりじりと雲雀が後退していく。
「へへ。お前力押しには弱いもんな」
刀の向こう側で山本が挑戦的に嗤った。
雲雀はむっとなって山本をにらんだ。
「うわっ!?」
もう一撃刀を振り込もうとした時、小柄な雲雀は山本の腕の下をするりと通り抜けた。
そして身軽に飛び上がると、山本の腰に回し蹴りを放つ。
腰を正確に打たれた上に、刀を振るうと同時にわずかに前に移動していた重心が作用して、山本は前につんのめる形になる。
(コイツ!体幹ブレっとこ的確に突いてきやがった!!)
その後瞬時にしゃがみこんだ雲雀は山本の膝裏に再び回し蹴りをたたき込み、山本は地面に崩れ落ちる他無かった。
その一撃で足がしびれ、山本は地面に手をついたまま立ち上がることが出来ない。
「
リボーンに撃たれて死ぬ気を覚醒させたツナがうおおと雄たけびをあげながらヒバリに向かって直進する。
「冷静さを欠いた草食動物なんて虫以下だよ」
雲雀は直進してきたツナの手首を掴んでその推進力のままにツナをぶん投げた。
しかしツナはすぐさま起き上がって向かってくる。
「効かねぇ!!」
「仕方がないね」
瞬時に後ろに回り込んだ雲雀はツナの首の裏にトンファーを叩きこむために飛び上がろうとした。
が、足をもつれさせてしまい、倒れ込んだものの、ただでは転ぶかとツナの足首にトンファーを叩きこむ。
「痛ってー!!」
お返しだと言わんばかりにツナは倒れた雲雀に拳を振り下ろそうとする。
それを防ぐためのトンファー越しに相対した雲雀の顔を見て、ツナはハッと冷静になる。
(待って!ヒバリさんは)
ツナの頭にともっていた死ぬ気の炎がすっと鎮火し、拳を下ろした。
雲雀が怪訝そうな顔でツナを見た。
「…?なぜやめた?」
「ヒバリさんは」
(女の子だから戦うべきじゃない)
そう言おうとしたツナだったが、雲雀と目が合った瞬間口をつぐんだ。
明らかに劣勢な状態で目が合ってもなお、雲雀は動じず、瞳はいつものように静かな光を放っている。
雲雀さんは、どんなときでも我を忘れることが無い。
戦いの中でも常にどこか冷静さを保っている。
それはひとえに彼女の心の強さだと思う。
この雲雀恭弥という女の子が、戦いの中で心を乱さぬようになるまでに、どれほどの痛みや苦しみを乗り越えてきたのか。
女の子としての楽しみを一切捨てて、戦いの術ばかりを学んできたのか。
そうして捧げてきた人生を否定するようなことを、俺はさっきまで言おうとしていたんじゃないか。
彼女にとって戦うことはきっととても大切なことなんだ。
だったら、
唇を一瞬固く結んだツナは、真剣な眼差しで雲雀に言った。
「俺はヒバリさんと一緒に戦いたいって思ってます!」
「は?」
「こうやってヒバリさんと喧嘩しているのって…何となく、なんですけど、ヒバリさんが、喧嘩の仕方を俺らに教えたくてやっているような気がして。
さっきから弱点ばっかり狙ってきてますよね?
そういうのを克服させたいって思っているんじゃないかなって。
俺らを強くしたいのかな?って思ったんです。
それに加えて、最近学校に来ずに風紀委員の仕事を草壁さんによく任せていますよね。
俺たちを鍛えて俺たちに並盛町を、草壁さんに風紀委員会を任せて…
ヒバリさん、もしかして並盛町を出て行こうとしていませんか?」
「!」
雲雀の目が一瞬見開かれる。
「何か大きな危機が並盛に迫っているんですね…?」
ツナが雲雀にだけ聞こえる声でささやいた。
眉間に皺をよせながら、ツナは雲雀に懇願する。
「俺…ヒバリさんは良い人だと思ってます。
山本やイーピンがヒバリさんのことをすごい信頼してるから…。
だから、俺はそんな雲雀さんの力になりたいって思っています。
その、本当にちっぽけな力にしかならないけど……
それでも並盛は俺にとって大事な場所だから」
「勝手な妄想、余計なお世話」
フラフラと立ち上がった雲雀がしゃがみこんでいるツナを見下すようににらんだ。
「群れるのは小動物や草食動物がやることだよ。
そんな妄想を垂れ流す暇があったら、自分をどう高めるかを考えた方がいい。そうでないと、君たちに秋は来ない」
「へ?それはどういう…」
「失せなよ」
今度こそ雲雀はツナの首の裏にトンファーを叩き込み、ツナは気絶してしまった。
雲雀はイラ立ちの矛先をリボーンに向ける。
「リボーン。そろそろ僕の相手をしてくれるよね」
「ヒバリ、いい加減正直な気持ちに気がついたらどうだ。
風紀委員会にせよ、並中にせよ、並盛町にせよ、お前は結局のところ、人の集まりから離れられないんだ。
群れるのは嫌いだとかなんとか言いながら、留まっているのはおめー自身じゃねーか」
先ほどまでのイラ立ちに加えてリボーンの挑発するような物言いにカチンときて、雲雀は完全にキレた。
「僕のことを知ったような口で語らないでくれる?」
「あーあ。雲雀をキレさせちまった」
いけしゃあしゃあとリボーンが呟く。
雲雀の不機嫌さは最高潮に達していた。
トンファーから紫色の火が漏れ出してチリチリと音を立てている。
雲雀は早口でまくし立てるように喋る。
「全然違うよ。リボーン。
僕が離れられないんじゃない。
僕の周りに勝手に人が集まってくるだけだ。
現に君だって、僕を執拗に勧誘してくる。
ファミリーを守るための力が欲しいんだろう?
本当に、自分で自分の身を守る力のない小動物は大嫌いだよ」
「それでも何だかんだ集まってきた人を受け入れているだろ?
本当に群れたくないなら、無人島にでも行きゃあいい。
集まってくる人を頭ごなしに拒絶しないのは、おめーがこの町を離れられない理由と関係あるんじゃねーのか?」
「…」
「本当に気づいてねーんだな。
おめー、実は人が好きなんだよ。
だけど群れる自分が許せなくて、町や学校を守るフリをして、人を守っていることを悟らせないようにしている」
それを聞いた雲雀は怒りを露わにする。
「ぐちゃぐちゃうるさいよ。
君は誤解している。
僕が本当に守りたいのはこの町の未来だよ」
「…!」
リボーンは人知れず息をのんだ。
「さあ、おしゃべりはもういいよね?僕は君を咬み殺したくて仕方が無いんだ」
雲雀はトンファーを構え、リボーンに向かって突進しようとする。
その二人の間に慌てて割って入る人影。
「待って下さいヒバリさん!リボーンちゃんをいじめないで!!」
バッと腕を広げて立ちふさがったのは息を切らし青ざめた表情の三浦ハルだった。
雲雀は明らかに不快そうな顔をして急停止する。
だが、ハルが現れた瞬間、先ほどまでトンファーの周りにちらついていた紫色の火は姿を消していた。
「三浦ハル…。何?君、リボーンと知り合いだったの?」
「そうです!ヒバリさんがハルを助けてくれた日にお友達になったんです!」
「ふうん…そうなんだ」
「ヒバリさんはあの日のことを覚えていないって言ってますけど、あの日は、ハルにとってとっても思い出深い日なんです。
リボーンちゃんとツナさん、獄寺さん、ヒバリさんとお友達になれた日ですから。
そのお友達同士が喧嘩する姿なんて、ハルは見たくないです…」
「…」
悲しそうな顔で雲雀の顔をじっと見つめるハル。
そのハルを見て、雲雀は毒気を抜かれたように肩の力を抜くとトンファーを懐にしまった。
「興がそがれた。僕は帰るよ」
先ほど倒れ込んだ際に足をくじいていたのか、雲雀は片足を引きずるようにしながらその場を離れた。
「大丈夫ですか?リボーンちゃん」
ハルが心配そうにしゃがみこんでリボーンの顔を覗き込む。
「…ああ。オレは大丈夫だぞ。
あっちで伸びてる3人も多分大丈夫だから気にすんな。
ハルは雲雀と仲が良いのか?」
「仲が良いかどうかは正直分からないですが、ハルは雲雀さんのことが大好きです!」
少し頬を染めながら照れくさそうに微笑むハルを見て、リボーンは少し引きつった笑顔を見せた。
(ハル…ヒバリは女だぞ…)
「!」
苦笑していたリボーンの顔が急に強張ったかと思うと、一点をじっと見つめた。
「どうしました?」
「殺気だ。オレらに向けてじゃねーな。
…ヒバリが危ねぇ」