風紀委員長のパラレル奮闘記   作:まきびし

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ペルソナシリーズにはまり中…


第15話 お花見③

本当に感情の自制が利かなかった。

蹴散らした沢田綱吉、獄寺隼人、山本武を残し、複雑な表情で見送る三浦ハルには目もくれず、赤ん坊から離れた。

三浦ハルが間に割って入らなければ僕は赤ん坊を本気で殺しにかかっただろう。その実力差を見誤ったまま、だ。あの赤ん坊は混沌に満ちた『前の世界』でも圧倒的な実力を漂わせていた。アルコバレーノにとって劇薬となる大気が無ければ、ミルフィオーレが覇権を握ることは無かっただろう。そう戦力分析をしていたにも関わらず、理性を欠いて馬鹿なことをしようとした。

 

ああ、今日の僕はどうかしている。サクラクラ病で膝から崩れ落ちた前回と、耐性を持って迎えた今回。結局、Dr.シャマルは現れずサクラクラ病に羅漢することも無かったが、内心では崩れ落ちそうになっていた。

 

『おめー、実は人が好きなんだよ』

『俺はそんな雲雀さんの力になりたいって思っています』

 

沢田綱吉は真っ直ぐな眼をしていた。照れも慌てもせずにあんな言葉が吐けるとは、若さ故の特権かな。

本当に二回目というのはどうしても思考に老いが出てしまって、前は盛んに燃えていた負けん気みたいなものが今は落ち着いてしまった気がする。

それでも今回みたいに理性を吹っ飛ばすときもあるんだから、体と心の年齢の乖離というものは、どうも自分自身を不安定にするらしい。

 

併せて体の動きも鈍るし、女の若い体なんて本当に良いことない。

桜、あぁ、今回も花見に失敗した。

…沢田綱吉に押し倒されたときにひねった足首が痛い。早く帰ろう。

 

 

道路を足を引きずりながら歩いていると、突然、足を引っかけるように誰かの片足がぬっと突き出てきた。

…面倒臭い。今、出てこられるのは本当に面倒臭い。

無視を決め込もうとして、少し大股でまたいで何事も無かったかのように歩く。

だが相手は無視されたことにイラついたらしく背中にうるさいダミ声を浴びせかけられる。

 

「ヴぉぉおい どこに行くんだぁ?」

 

あえて後ろは振り向かない。まともに相手したら本当に面倒くさい相手だからだ。色々と。

 

「……」

そんな問いかけも無視する。前回はそこまで縁が無かったコイツだが、今回は何かとよく会う。

 

「まァた人助けか?それで怪我するなんざ、ざまぁねぇな。ヒーローはスマートにいかねぇとちびっこも喜ばねぇぜ」

 

スクアーロは意地悪い笑みを浮かべて、背後から耳元にささやきかける。

 

「男装のヒーローは大変だな?」

 

コイツの女いじりは今始まった話ではない。去年の秋頃、おそらく沢田綱吉のことを探るために並盛町を訪れていたコイツの目の前で人助けをしてからというもの、何かとちょっかいをかけてくる。ヴァリアーと戦うのはとても楽しみなことだけど、今は別件で忙しい。まだコイツに構ってはいられない。

 

「…用が無いなら僕は行くよ」

呆れを隠しもしない表情と声音でこの目立つ風貌の男から離れようとした。

 

「おい、待てよ。」

いつもは意地悪い笑みを浮かべながらコイツも去っていくのに、今日は本当に用事があるらしく呼び止めてきた。

 

珍しく真剣な表情で「お前、殺されるぞ」なんてことを言ってくるから、ついにはため息までついてしまった。

「僕が殺される?…はぁ。僕を舐めているのかい?」

 

「良くて、監獄行きだな。これ見ろぉ」

そういって差し出された携帯には、ボンゴレIXの電子署名付きの処刑通知が届いていた。

なるほど、ボンゴレファミリーへの加入を断ったことに対する制裁…

併せて次期ボス候補への危害、報復…口封じのために抹消ってことか。

さっきの花見での衝突が敵対と見なされたか。面倒な…。

 

「…で、それをどうして君が教えてくれるわけ?ヴァリアーだよね」

当たり前の疑問を口にすると、スクアーロは肩をすくめた。

 

「一枚岩じゃねぇってことだよ」

「なるほどね。つまり君は僕と戦わないの?」

「あー…女に手ぇかけるの趣味じゃねーしなぁ」

「それ言われるとものすごく咬み殺したくなんだよね」

 

懐から取り出した拳銃を腹にグリグリと押し付ける。

 

「ここジャポーネでお前ぇ一般人だよなぁぁ!?なんでこんなモン持ってんだぁ」

「マフィアが言えた言葉じゃないでしょそれ」

「わわ、安全装置まで外しやがってこの」

 

拳銃が見えないように詰め寄った雲雀とスクアーロは、傍から見れば子どもと大人くらいの身長差と風貌の差があるため、子どもが上を見上げて駄々をこねているようにしか見えない。

しかし、慌てて駆け付けたリボーン一行から見るとその光景は全く別のものに見えていた。

 

(スクアーロ!?ヴァリアーがなぜここに)

リボーンは一応は敵対せず向き合っている二人の関係について思考を巡らせる。

 

(はひーっ!あの強面の巨人が雲雀さんを殺そうとしてるの!?ハル、勝てる気がしません…!でも…)

何か決心したように足を踏み出すハルを静止したのはツナだった。攻めるように見つめるハルの顔を見て、ツナは静かに首を振る。

 

(雲雀さんってああいう人がタイプなんだ……)

ツナは二人の恋路を邪魔してはいけない、という意味でハルを静止したことに、ハルは気がついていない。

 

「なんだー?雲雀、全然大丈夫そうじゃん」

山本がへらっとした顔で、それでもどこか安堵した表情でリボーンに話しかける。

 

「あんなやつ、心配するだけ損っすよ。ね、リボーンさん」

獄寺は笑顔でリボーンに同意を求めつつ、内心早く帰りたそうだった。

 

(これ以上、雲雀を焚きつけても今は何も出なさそうだしな)

 

「…俺、雲雀さんが並盛町を出て行くことを否定しなかったこと、ずっと気になってて…やっぱり、聞いてくる!」

「あっ、ツナさん!」

先ほどまでツナに静止されていたため動けなかったハルが慌てて追いかける。

 

ツナとハルはスクアーロと雲雀のところに向かった。

 


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