風紀委員長のパラレル奮闘記   作:まきびし

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正ちゃんと白蘭さんの出会いを妄想してみました。
パラレルワールドだから(言い訳)。




第3話 白蘭さんとの出会い

 日々を面白おかしく生きることができたらそれでいい。

将来のことなんて僕には関係ない。

だって、僕の目の前にはこんなに真っ直ぐできれいなレールが敷かれているのだから。

 

 僕が人生に諦めを覚えたのはいつのことだったか。

両親に言われるままに勉強して、地元の有名私立中学に進学して。

僕は人より頭のできが良いらしく、入って早々にトップを獲れた。

 

 周りや家族は僕を褒めてくれたけど、僕は特別な努力を何もしていなかった。

それを言うと、謙遜だとか何だとか言われるけど、本当に僕はただ授業を聞いていただけだ。

 

つまらない。

どこか非日常を求めていた。

だけど僕には勇気が無くて、両親が敷いてくれたレールをただ歩むことしかできなかった。

 

 

 そんなある日、家にいたときに突然非日常がやってきた。

僕の家が自称マフィアによって半壊させられた。

本当に突然のことでビックリしたし、両親はパニックになっていたけど、僕は内心ワクワクしていた。

僕を囲う箱庭の壁が取っ払われて、決まり切った人生をぶち壊してくれるような予感がした。

 

 家を壊してしまったお詫びとして、自称マフィアからボヴィーノお詫び詰め合わせセットが届いた。

驚いたことにそこには武器が入っていた。

人殺しの道具。

一瞬本気で怯えてしまったが、よくよく考えたらあんな子どもが本物のマフィアなはずがない。

 

 まさか、これはおもちゃだろう。

一人で苦笑し、一番大きな武器、バズーカを手に取ってその引き金を引いた。

 

 

 

 

「…えっ!?」

 

 発砲音がしたと思ったら急に視界が暗転し、一気に開けたかと思うと、見知らぬ場所にいた。ビックリして、腰が抜けて、つい座り込んでしまった。

 

様々な人種の若者が周りを闊歩していて、どこか場違いな気持ちになる。

大きな広場の中心に僕はいた。

昼寝をしたり談笑したりする若者が多く周りに見受けられた。

 

近くには大きな建物と大人というには少し幼い若者たち。

どうやらここは日本ではない国の大学らしい。

 

…いや、待て待て。そんなわけないだろう。

冷静に考えてみろ。

銃の引き金を引いて何で自分のいる場所が移動するんだ。

 

近くにあった鞄が目に留まった。まるで僕が今さっきまで持っていたみたいに横に倒れていた手提げかばんの中から、身分証のようなカードがはみ出している。

 

その身分証を手に取って見て、僕は開いた口が塞がらなかった。

 

 

「ぼ、僕の名前じゃないか! しかも年齢は24!?」

 

 

驚きのあまり思ったことを口走っていると、不意に後ろから肩を叩かれた。

 

 振り向くと、まず目に入ったのは目の下のタトゥー。そして次に銀色の髪の毛、でも何より気になったのは、僕のことを本気で案じているようなその目だった。

 

 

「正チャン? 大丈夫?」

 

「あ、ハイ。 大丈夫です」

 

 

 誰だろうこの人。 というか僕の名前を知っているのはなぜだろう。 考えても知り合いにこのような顔の人はいなかった。 銀髪の男性は訝しげに僕の顔を見つめる。 僕も負けじと見つめるがなぜか緊張してそのままその人の顔から目が離せなかった。

 

 

「入江正一、クン?」

 

「…はい?」

 

「君は、本当に正チャンなんだね?」

 

「あ、あなたは、入江正一の関係者ですか?」

 

 つい声が震えてしまう。 一瞬面くらった顔をした銀髪の男性は僕を安心させるように微笑んだ。

 

 

「関係者なんてものじゃないよ。 こ・い・び・と♪」

 

「ここここ恋人ぉ!?」

 

 

 いや、待て待て僕にそんな性癖はないけど、境界がどんどん取っ払われて行っているこの社会、変化のスピードもすさまじい。

 まして10年後ともなると同性愛同性婚なんて本当にごく普通になっているんじゃないか?

 それなら10年後の僕だってそんなこんなこんな人とこここ恋人でもおかしくはない~っ!!??

 

唇に指をあててウインクする銀髪の男性はいじわるく笑った。

 

 

「嘘だよ♪」

 

「勘弁して下さい!!」

 

 

 これが、僕と白蘭さんの出会いだった。

白蘭さんは10年後の僕ととても仲がいい友人らしく、小さくなってしまった僕を見て、不意に何度も笑ってきた。

人の顔を見て笑う人を僕はどうかと思っているけど、僕はこの人の親しみやすさに心惹かれて、ここまでの事情をすべて話した。

 

ふうん、と白蘭さんは面白そうに笑い、気遣うように僕に笑いかけた。

 

「大変だったね、正一クン。 君が元の時間に帰れるまで、僕が君の引受人になろう。 こうやって過去から来たことを、これからは安易に人に話してはいけないよ? 君を利用しようとする輩が出てくるかもしれないからね。」

 

「でも、これが僕の夢ではないとも言い切れないんです。

 

そう言ったら白蘭さんは、少し悲し気に微笑んだ。

 

「そうだね。 でも、君と僕の出会いを無かったことにはしないでほしいな。 たとえ一回限りの夢なのだとしても、僕にとって君は現実なんだ。 さあて!」

 

 白蘭さんは僕をひょいと持ち上げて立たせた。 突然のことに「ちょちょちょっと!?」と叫んで慌てふためく僕の顔を見て、白蘭さんは「本当に君は正チャンなんだねぇ」と言ってまた笑っていた。

 

 

「君にとっては10年後の世界なんだろう? 少し、僕とお散歩しようか♪」

 

 

 僕にとっての10年後の世界。

白蘭さんに連れられて訪ねたのは大学の研究室の一室だった。

壁際には本がうずたかく積まれており、残りのスペースは何やらよく分からない機械や論文が所狭しと敷き詰められている。

 

 

「白蘭さん、ここは何ですか?」

 

「ここはね、僕と正チャンが所属している研究室の部屋だよ♪ ここで僕らは、タイムトラベルを研究しているんだ」

 

 急に神妙な顔になった白蘭さんを見て、そして僕の今の状況を考えて、ここに連れてこられた理由が分かった。

 

 

「僕は良い研究対象ということなのですね?」

 

「ご名答♪ というか、君が来てくれたことが既に僕らの実験の成功を意味しているんだけどね?」

 

「あ、なるほど…」

 

「僕の正チャンが帰ってくるまで、10年前の正チャンで遊ばせてもらうよ♪」

 

 

怪しげな顔で手をわきわきと動かしながら迫ってきて、正直怖い!

 

 

「やややめてください!」

 

「嘘だよ♪」

 

「なんなんですかもー!!!」

 

 

 そうこうしながら、僕と白蘭さんは友達になった。

この研究室にいることにも慣れて、白蘭さんが僕を膝の上に乗せてアルバムを見せてくれていた。アルバムといっても、タブレット端末と呼ばれるものの中にある写真集だったが。

 正チャンはこの後派手にすっころんで眼鏡を割るんだよ、などと白蘭さんが楽し気に説明してくれた。

 

(僕が失敗したところばかりじゃないか…)

 

 あまりにも僕の失敗話ばかり話すのでふてくされていると、白蘭さんはごめんごめんと優し気に言った。

 

 

「いや、ね? 正一クンの反応が僕の知っている正チャンの反応にそっくりだったからついね♪」

 

「からかわないでくださいよ!」

 

 白蘭さんに聞いた僕の失敗を脳に焼き付けて、絶対繰り返さないことを誓う。

今の10年後の自分以上の存在になって、この銀髪の男を絶対見返してやるんだ!!

 

そして日が暮れてきたとき、自分の体に突然の浮遊感が訪れる。

 

これは、もしかして帰還の合図?

手や足が薄れていく。

ソファで寝そべっていた白蘭さんもそれに気がついて起き上がった。

 

 

「白蘭さん、僕は元の時間に帰るみたいです。」

 

 

 急に目の前にいる銀髪の男と別れるのが名残惜しくなって、顔をじっと見つめた。

 白蘭さんは優しく笑って言った。

 

 

「また10年後に会おうね、正一君。 絶対だよ? 今日たっくさんからかわれたからって、僕の事、避けたりしないでね。 僕に君以上の友人はいないのだから」

 

「白蘭さん…」

 

 

その一言で、この10年後の僕とこの目の前の青年との深いつながりを伺うことができた。

 

 

「またね、正チャン」

 

 

 白蘭さんが笑顔で手を振っているのが見えたところで、僕の視界はまた暗転する。

そしてたどり着いたのは、住み慣れた僕の家の、慣れたベッドの上だった。

 

 帰ってきたんだ。そう思うと同時に、白蘭さんのことが頭を離れず、未来へ自分の心を置いてきてしまったような気がした。

親友なんて、生まれてこの方持ったこのはなかった。 10年後の未来で白蘭さんと僕は出会い親友になる。 でも、僕はそこまで待つことができない。 会いたい。

 白蘭さん…僕の、親友。

 

 

 親友の姿を求めた入江正一は、近いうちにもう一度あのバズーカの引き金を引く。

しかしそれは入江少年に絶望を与えることになった。

未来世界で未来の唯一の繋がりである白蘭の姿を捜し出し、再会する。

 しかしそこでの白蘭は自分との面識がなかった。

諦めて帰ろうとする正一のその寂しげな姿に心動かされた白蘭は、その時、パラレルワールドの自分同士をリンクさせる能力に「目覚めて」しまった。

 

 親友同士との再会に喜ぶところだが、頭の良い正一は逆に恐怖する。

パラレルワールドの記憶を持つ白蘭の存在が、どれだけ世界にとって異質なことかに気がついたからだ。

 

 幼い入江少年はその場から逃げ出し、気がついたら自分の時間への帰還を果たしていた。

帰還した少年は、さらなる混沌へと巻き込まれていく。

 

 

 それは非日常を追い求めた末の罰なのかもしれない。

幼い入江少年は知らない。

日常こそがかけがえのないものなのだと。

 

 

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